出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/07/16 03:48:21」(JST)
プロラクチン (prolactin, PRL) は、主に下垂体前葉のプロラクチン分泌細胞 (lactotroph) から分泌されるホルモンである。
主なプロラクチンは199個のアミノ酸から成り、分子量は23kDa。下垂体のプロラクチン産生細胞の他、胎盤や子宮など末梢組織でも産生される。成長ホルモンと構造が近く、同一の祖先遺伝子が重複し、機能が分化したと考えられている。ヒトの場合遺伝子は6番染色体に位置する。
目次
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人間の場合、成人男性は3.6~16.3ng/ml、成人女性は4.1~28.9ng/mlである。
子供が母親の胸に吸い付く搾乳刺激により、視床下部からのドーパミンなどのプロラクチン抑制因子 (PIF:prolactin inhibiting factor) の放出が抑えられ、またTRHなどのプロラクチン放出因子 (PRF:prolactin releasing factor) の放出が促進される。それによりプロラクチンの分泌が促進される。搾乳刺激後1~3分で血漿中の濃度があがり始め、10分でピークに達する。
ラットにおいてプロラクチンの血漿中濃度は、発情前期の夜から発情期の朝にかけて最も高くなる。発情前期にエストラジオールのシグナルが視床下部に伝わり下垂体でのプロラクチン分泌が促される。
交配刺激がおこるとその刺激が脳の視床下部に伝わり、ドーパミンの放出を抑える。それによりプロラクチン分泌が促進される。プロラクチン血漿濃度は分娩時に最も高くなる。
サーカディアンリズムに影響され、一日のうち睡眠中に血漿中濃度が最も高くなる。
その他、聴覚・嗅覚からの刺激、ストレスの影響により分泌が促される。
プロラクチン受容体は、普段は単量体で存在しJak2というチロシンキナーゼと結合している。受容体がプロラクチンと結合すると二量体化し、ホモダイマーを形成する。すると受容体のJak2同士がお互いをリン酸化し、さらに受容体自身のチロシン残基をリン酸化する。Jak2や受容体のリン酸基は、Statというタンパク質に転移し活性化させる。Jak2からリン酸基を受け取ったStatと受容体からリン酸基を受け取ったStatが二量体を形成し、細胞核内へ移行して特定の遺伝子発現を促進する。
プロラクチンの分泌は視床下部からのPIFの分泌によって抑制されているのが通常である。即ち視床下部の障害によって脱抑制され、高プロラクチン血症にいたる。PIF分泌に最も関与するのがドパミンと考えられている。またTRHはTSHだけではなくPRLの分泌を促進する作用があるということを念頭に置くと理解しやすい。主な原因を列記する。
腺腫の存在によりPRLの自律性分泌によるPRL過剰である。以前はフォーブスオールブライト症候群といわれていた。ミクロアデノーマ、マクロアデノーマの両方が存在する。マクロアデノーマで視野障害や下垂体卒中がある場合はハーディ手術を行うこともある。
視床下部の機能的障害や視床下部におよぶ腫瘍、炎症、肉芽腫によってドパミンの産出、輸送が障害されるとPIF脱抑制によってPRLの分泌が亢進される。特発性の場合はドパミン作動薬であるブロモクリプチンの投与で改善することが多い。
ドパミン遮断薬クロルプロマジンなどが存在するとPIF脱抑制が生じ、PRL分泌が亢進される。
甲状腺ホルモンの低下によって視床下部からのTRHの分泌が亢進し、その結果PRL分泌も亢進される。甲状腺機能異常は亢進すると妊娠、周産期に問題となり、低下すると無月経となるため生殖においては非常に問題である。
プロラクチン分泌が過剰になり、排卵抑制や乳汁分泌などの症状が現れる。これらは無月経や不妊症の原因として重要である。
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原発性無月経 | 続発性無月経 | |
視床下部性無月経 | カルマン症候群 | 視床下部の機能障害 |
フレーリヒ症候群 | 神経性食欲不振症 | |
Laurence-Moon-Biedl症候群 | 体重減少性無月経 | |
プラダ・ウィリ症候群 | 高プロラクチン血症 | |
Chiari-Frommel症候群 | ||
Argonz-del Castillo症候群 | ||
下垂体性無月経 | 先天性ゴナドトロピン欠損症 | シーハン症候群 |
empty sella症候群 | 下垂体腺腫 | |
Forbes-Albright症候群 | ||
卵巣性無月経 | 性腺形成不全 | 早発卵巣機能不全 |
ターナー症候群 | 多嚢胞性卵巣症候群 | |
卵巣摘出 | ||
卵巣の放射線障害 | ||
子宮性無月経 | ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群 | アッシャーマン症候群 |
子宮奇形 | 子宮内膜炎 | |
処女膜閉鎖 | 子宮摘出術後 | |
膣性無月経 | 処女膜閉鎖症 | |
膣閉鎖症 | ||
その他 | 半陰陽(先天性副腎過形成、アンドロゲン不応症) | Cushing症候群 |
Addison病 | ||
Basedow病 | ||
甲状腺機能低下症 | ||
糖尿病 | ||
生理的 | 妊娠、産褥、授乳、閉経 |
神経伝達物質 | トランスポーター阻害薬 | 受容体のサブタイプ | 選択的作動薬 | 選択的阻害薬 | 受容体と共役する分子 |
ドパミン | cocaine mazindol nomifensine |
D1 | Gs | ||
D2 | bromocriptine | sulpiride domperidone |
Gi | ||
D3 | 7-OH-DPAT | ||||
D4 | |||||
D5 | Gs |
ran]]
原発性無月経 | 続発性無月経 | |
視床下部性無月経 | カルマン症候群 | 視床下部の機能障害 |
フレーリッヒ症候群 | 神経性食思不振症 | |
ローレンス・ムーン・ビードル症候群 | 体重減少性無月経 | |
プラダー・ウィリー症候群 | 高プロラクチン血症 | |
Chiari-Frommel症候群 | ||
Argonz-del Castillo症候群 | ||
下垂体性無月経 | 先天性ゴナドトロピン欠損症 | Sheehan症候群 |
empty sella症候群 | 下垂体腺腫 | |
Forbes-Albright症候群 | ||
Simmonds病 | ||
卵巣性無月経 | 性腺形成不全 | 早発卵巣機能不全 |
ターナー症候群 | 多嚢胞性卵巣症候群 | |
卵巣摘出 | ||
卵巣の放射線障害 | ||
子宮性無月経 | ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群 | アッシャーマン症候群 |
子宮奇形 | 子宮内膜炎 | |
処女膜閉鎖 | 子宮摘出術後 | |
膣性無月経 | 処女膜閉鎖症 | |
膣閉鎖症 | ||
その他 | 半陰陽(先天性副腎過形成、アンドロゲン不応症) | Cushing症候群 |
Addison病 | ||
Basedow病 | ||
甲状腺機能低下症 | ||
糖尿病 | ||
生理的 | 妊娠、産褥、授乳、閉経 |
初期検査 | 特殊検査 | |||
内分泌因子 | 基礎体温測定 | 月経開始後10日以内。 | LHRH負荷試験 | |
内分泌検査 | プロゲステロンテスト | |||
頚管粘液検査 | 排卵期前後。エストロゲン活性 | エストロゲン・プロゲステロン | ||
経膣超音波 | その他の内分泌学的検査 | |||
染色体検査 | ||||
卵管因子 | 子宮卵管造影法 | 月経開始後10日以内。 | 腹腔鏡 | |
通気テスト(ルビンテスト) | 卵胞期。卵管の疎通性を見る | コツバンク右京 | ||
クラミジア抗体 | 通色素検査 | |||
卵管鏡 | ||||
子宮因子 | 子宮卵管造影法 | 子宮内膜日付診 | 黄体期。排卵を確認し、月経周期と子宮内膜の関係をみる | |
経膣超音波子宮内膜検査 | 子宮鏡 | |||
月経血培養 | MRI | |||
CT | ||||
頚管因子 | 頚管粘液検査 | フナーテスト(性交後試験) | 排卵期前後。精子と卵管粘液の適合性を見る | |
ミラー・クルツロック試験(ガラス板試験) | ||||
腟・会陰因子 | 腟鏡診 | クラミジア抗体染色体検査 | ||
帯下培養 | ||||
その他の因子 | 抗精子抗体 | 抗透明帯抗体 | ||
卵巣自己抗体 | ||||
抗リン脂質抗体 |
分泌促進 | 分泌抑制 |
吸乳 エストロゲン 妊娠 睡眠 ストレス プロラクチン放出因子 セロトニン作動薬 ドーパミン受容体遮断薬 TRH |
ドーパミン受容体作動薬 プロラクチン |
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