- 3歳の男児。紫斑を主訴に来院した。2週前に38.7℃の発熱が2日間続き、近医で咽頭炎と診断された。昨日から全身に赤~紫色の点状の皮疹が出現している。診察前に鼻出血があり、止血に20分を要した。体温36.9℃。脈拍88/分、整。全身の皮膚に紫斑を認める。口腔内に粘膜出血を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球340万、Hb10.5g/dl、白血球6,700、血小板0.6万。血清生化学所見:AST31IU/l、ALT28IU/l、LDH284IU/l(基準176~353)。CRP0.11mg/dl。骨髄塗抹May-Giemsa染色標本を以下に示す。
- 治療として適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G034]←[国試_101]→[101G036]
★リンクテーブル★
[★]
- 53歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。6か月前の健康診断で白血球増加を指摘されたが放置していた。1か月前から倦怠感を感じるようになり、上腹部違和感も出現した。意識は清明。体温36.5℃。脈拍84/分、整。血圧136/76mmHg。表在リンパ節の腫大はない。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。左上腹部は軽度膨隆し、左肋骨弓下に脾を6cm触知する。血液所見:赤血球380万、Hb10.8g/dl、Ht33%、白血球56,000、血小板47万。血清生化学所見:総蛋白7.2g/dl、アルブミン4.0g/dl、尿素窒素16mg/dl、クレアチニン1.0mg/dl、尿酸8.6mg/dl、総コレステロール156mg/dl、総ビリルビン1.0mg/dl、AST48IU/l、ALT32IU/l、LDH380IU/l(基準176~353)、Na140mEq/l、K4.8mEq/l。CRP0.8mg/dl。末梢血塗抹May-Giemsa染色標本を以下に示す。
- 診断に有用な検査はどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G033]←[国試_101]→[101G035]
[★]
- 55歳の男性。下腿の浮腫を主訴に来院した。4か月前に夕方になると靴下のゴムの痕がつくことに気付いた。徐々に浮腫の程度が強くなってきた。意識は清明。体温36.6℃。脈拍72/分、整。血圧150/86mmHg。皮膚に発疹と発赤とを認めない。眼瞼に軽度の浮腫を認める。頸部と胸部とに異常はない。下腿と足背とに圧痕を残す浮腫を認める。尿所見:蛋白3+、潜血(-)、沈渣に赤血球0/1視野、脂肪円柱3/1視野。血液所見:赤血球520万、Hb16.2g/dl、Ht48%、白血球4,600。血清生化学所見:空腹時血糖96mg/dl、HbA1c5.4%(基準4.3~5.8)、総蛋白5.9g/dl、アルブミン2.2g/dl、尿素窒素22mg/dl、クレアチニン1.3mg/dl、Na135mEq/l、K4.6mEq/l。免疫学所見:抗核抗体陰性、CH50 37U/ml(基準30~40)。腎生検PAS染色標本を以下に示す。
- 最も可能性の高い疾患はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G035]←[国試_101]→[101G037]
[★]
- 英
- idiopathic thrombocytopenic purpura, ITP
- 同
- ヴェルルホフ紫斑病 Werlhof purpura、(immune thrombocytopenic purpura← これは上位の疾患概念?)
- 関
- 血小板減少
概念
- 血小板に対する自己抗体によって血小板数が減少し、出血傾向をきたす自己免疫疾患
- 他の自己免疫性疾患による血小板減少は除外(除外診断)。
- 他の自己免疫性疾患との合併も多く、自己免疫性溶血性貧血・SLE・橋本病などが合併しうる。
疫学
- 小児に多い。1-3週前にウイルス感染症に罹患した後に発症。6ヶ月以内に治癒。
- 成人(10歳以上。20-40歳)女性に多い。緩慢に発症。軽快と増悪を繰り返す。
病因
- 血小板に対する自己抗体の出現による。
- 凝集に関与する糖蛋白GpIIb\GpIIIaに対する自己抗体が出現することで、自己の血小板に対する免疫反応が惹起され、血小板の破壊亢進が起こる。さらに原因は不明ではあるが粘着に関与する糖蛋白GpIb/GpIXに対する自己抗体も出現してくる。
症候
- 出血症状:皮膚の紫斑(点状出血・斑状出血)・鼻出血・歯肉出血・性器出血(月経多過)
- 関節内出血や深部出血は稀。
身体所見
- 急性特発性血小板減少性紫斑病:軽度の発熱、脾臓の軽度腫大?(10%の子供の患者にみられるが、正常な群でも同程度みられる。また、脾摘を受けた患者では脾臓の重さは正常であった。(WCH.1537) → つまり脾腫は一般的な症状とは言えない)
検査
血液
- 血小板数 10万 /μl 以下。赤血球数・白血球数は正常
骨髄検査
- 正形成。巨核球数は正常or増加
- 血小板付着を欠く巨核球が多い。
- [show details]
巨核球が若干多いかもしれないがよく分からない
免疫血清学的検査
- 血小板結合性IgG(PAIgG):高値 ←特異度低(SLE、肝硬変などでも↑)
- GPIIb・GPIIIa・GPIb・GPIXに対する自己抗体:特異度は高いが、感度が低い。民間病院レベルでは施行できない。
診断
成人の慢性ITPの診断基準
- 厚生労働省特定疾患特発性造血障害研究班(2004試案)
- 1.血小板減少(10万/ul以下)
- 2.末梢血塗沫標本は正常
- 3.以下の検査のうち3項目以上を満たすこと
- (1)貧血がない
- (2)白血球減少がない
- (3)末梢血液中の抗GPIIb/GPIIIa抗体産生B細胞の増加
- (4)血小板関連抗GPIIb/GPIIIa抗体の増加
- (5)網状血小板比率の増加
- (6)血漿トロンボポエチン軽度上昇にとどまる(<300pg/ml)
- 4.他の免疫性血小板減少を除外できる(SLE, リンパ増殖性疾患, HIV感染症, 肝硬変, 薬剤性)。
鑑別診断
治療
modality
- ステロイド
- 免疫グロブリン
- ヘリコバクター・ピロリの除菌:日本ではHP感染症との関連が統計的に明らかとなっており、ステロイドに先んじてHP除菌が試みられる。
- 脾摘:ステロイドが奏効しない場合にはやむなく脾臓摘出が検討される。小児の場合は急性例であることが多く、かつ免疫機構の一部として重要な臓器であるため、発症6ヶ月以内では脾摘は見合わせる。
- 血小板輸血は、輸血後破壊されてしまうために、緊急時以外は適応ではない。
治療の選択
- 出典不明
- 血小板数3万/ul以上:経過観察
- 血小板数1万-3万/ul以上 or 重篤な粘膜出血:経口ステロイド
- 血小板数1万以下-3万/ul以上:免疫グロブリン
参考
- 1. 妊娠により重症化した難治性特発性血小板減少性紫斑病に対して摘脾が有効であった1例
- http://www.med.osaka-cu.ac.jp/labmed/ITP.pdf
- 2. 難病情報センター | 特発性血小板減少性紫斑病(公費対象)
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/303
uptodate
- 1. [charged] 成人における免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病の臨床症状および診断 - uptodate [1]
- 2. [charged] 成人における免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病の治療および診断 - uptodate [2]
- 3. [charged] 成人における慢性難治性免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病 - uptodate [3]
- 4. [charged] 小児における免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病の臨床症状および診断 - uptodate [4]
- 5. [charged] 小児における免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病の治療および予後 - uptodate [5]
国試