- 英
- dilated cardiomyopathy DCM
- 同
- うっ血性心筋症 congestive cardiomyopathy CCM COCM
- 関
- 心筋症、特発性拡張型心筋症 idiopathic dilated cardiomyopathy
概念
- 左心室内腔の拡張と収縮不全を来す原因不明の疾患
- 特発性拡張型心筋症は難病であり、特定疾患治療研究事業に指定されている。
疫学
- 30-40歳より徐々に発生。男性に多い(男女比=2:1) (YN.C-132)
病理
- DCM is caused by ventricular dilatation with only minor hypertrophy.(PHD.253)
病態
- 心室内腔の拡張 → 血栓形成、不整脈
- 心収縮力低下 → 左心不全
症状
合併症
- 参考6
- 左室壁在血栓:左室拡張よりびまん性左室壁運動が低下するため
- 心房内血栓:左房拡張に伴う心房細動
身体所見
- 胸部聴診:III音(房室弁の弁輪拡大により僧帽弁閉鎖不全症をきたし、これにより容量負荷が起こっている場合)
検査
心エコー
[show details]
- 傍胸骨左室長軸断層像
[show details]
- Mモード
[show details]
- 左室拡張
- Mモードで僧帽弁を描出したとき、B-B' stepがみられる。僧帽弁エコー上のB-B'形成(B-B')は左室拡張末期圧(LVEDP)上昇を示す所見として重要視される(参考文献(1))。拡張期末期における心房収縮において、心室のコンプライアンス低下を反映している。
治療
- 治療目標:心リモデンリング抑制、心負荷軽減、心不全、不整脈、心臓移植
生活指導
薬物療法
- 参考6
- 慢性心不全の治療に準ずる。βブロッカーとRAA系を抑制する薬剤を用い、必要があれば利尿薬、アルドステロン拮抗薬、硝酸薬を用いる。
- βブロッカー
- RAA系抑制:ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(アンジオテンシンIIの作用(細動脈収縮、アルドステロン分泌)に拮抗、水とNaの再吸収の抑制、心室リモデリングを抑制)
- 利尿薬:
- 強心薬?
- 抗不整脈薬:クラスIは催不整脈作用を有するため適さない。重症心室性不整脈が存在する場合にはアミオダロンを投与。
心臓細動期療法
植え込み式除細動器
心臓移植
予後
- 肥大型心筋症に比べて不良で、死因の半数は突然死
- 5年生存率50%、10年生存率30%。(YN) 5年生存率76%で死因の多くは心不全・不整脈(参考6)
- 予後の悪化と関連する因子は男性、年齢の増加、家族歴、NYHAⅢ度の心不全、心胸比60%以上、左室内径の拡大、左室駆出率の低下(参考6)
参考文献
- 1. 心不全患者における僧帽弁B-B'stepの成因と意義に関する研究
- 三木 隆
- 神戸大学医学部紀要 51(1), 55-63, 1990-03
- … NYHA心機能分類,Mモードエコー図上の左房径(LAD),B-B'持続時間(BB'T),パルスドプラー図上の急速流入期最大速度peakR,心房収縮期最大速度peakA,その減速度(ADcR),peakAとpeakRの比A/R,左房前駆出時間(APEP),左房駆出時間(AET)心カテーテル上左室圧曲線a波の立ち上がりからそのpeakまでの上昇圧(LVa),LVEDP,肺動脈模入圧(PCWP)を測定した。 … (2) BB'TはpeakA,ADcR,APEPとの聞に有意の逆相関を示した。 …
- NAID 110002328905
- 2. B-B's stepちょっとだけ説明 画像が小さいけど・・・
- http://seminar.aloka.co.jp/muse4/ch2/sub2/index.html
- 3. 拡張型心筋症|慶應義塾大学病院 KOMPAS
- http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000200.html
- 4. TOP > 循環器系疾患> 特発性拡張型(うっ血型)心筋症> 診療ガイドライン - 難病ドットコム
- http://jpma-nanbyou.com/Category.aspx?view=c&oid=8&sid=2&kid=5
- http://grj.umin.jp/grj/dcm-ov.htm
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/301
国試
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/11/13 13:31:34」(JST)
[Wiki ja表示]
心筋症(しんきんしょう、英: cardiomyopathy)は、心機能障害を伴う心筋疾患。肥大型、拡張型、拘束型、不整脈原性右室心筋症、分類不能型に分類される。心臓移植がこの病気にとって非常に有効であることが多いことから注目を浴びるようになった疾患である。
目次
- 1 歴史
- 2 拡張型心筋症(DCM)
- 2.1 症状と所見
- 2.2 原因と発症メカニズム
- 2.3 治療
- 2.4 診療科
- 3 肥大型心筋症(HCM)
- 3.1 分類
- 3.2 症状と所見(HCM)
- 3.3 原因と発症メカニズム(HCM)
- 3.4 治療(HCM)
- 4 拘束型心筋症 (RCM)
- 5 不整脈原性右室心筋症
- 6 分類不能型心筋症
- 7 脚注
- 8 参考文献
- 9 関連項目
- 10 外部リンク
歴史[編集]
心筋症は数多くの名前で呼ばれてきたが、最初の解剖症例の報告は1891年のクレールによるものとされる[1]。その後、世界保健機関(WHO)と国際心臓連合(ISFC)の合同委員会は1980年心筋症を「原因不明の心筋疾患」と定義し拡張型(DCM, dilated cardiomyopathy)・肥大型(HCM, hypertrophic cardiomyopathy)・拘束型(RCM, restrictive cardiomyopathy)に分類し、心筋疾患でも原因または全身疾患との関連が明らかなものと厳密に区別した[2]。(なお、この分類でも分類しきれないものあるので分類不能心筋症という項目もある。)しかし、従来不明とされた心筋症の原因や成因を示唆する報告が相次いだため、先の合同委員会は心筋症を「心機能障害を伴う心筋疾患」と広く定義し直し従来の3分類に加え、催不整脈性右室心筋症、特定心筋症の範疇を設けた[3]。
拡張型心筋症(DCM)[編集]
心室とともにしばしば心房の内腔容積増加を伴う心拡大(cardiac enlargement)と収縮機能障害を特徴とする心筋の病気であり、不整脈による突然死と心不全をもたらす。初期には心拡大によってポンプ機能自体は正常範囲に保たれており、βブロッカー、アンギオテンシン変換酵素阻害薬あるいはアンギオテンシンII受容体ブロッカー、利尿薬などの薬の組み合わせにより進行を遅らせることが可能である。しかし、代償が破綻し末期重症心不全になると有効な治療薬はなく心臓移植を必要とする。女性より男性のほうが重篤な傾向がみられる。
日本では、特発性拡張型心筋症(とくはつせいかくちょうがたしんきんしょう、Idiopathic DCM)として特定疾患治療研究事業対象疾患に指定されている。
症状と所見[編集]
初期段階では自覚症状があまりなく、易疲労感・倦怠感や動作時に軽い動悸が起こる程度であるため、発見が遅れてしまうケースがある。病状が進行すると浮腫・湿性咳嗽・頸静脈怒張などの身体症状を伴う重篤なうっ血性心不全や治療抵抗性の不整脈を起こす。診断されてからの5年生存率は54%、10年生存率は36%とされていたが、最近では治療の進歩により5年生存率は76%と向上している[4]。しかし突然死もまれではない。激しい運動は心臓に大きな負担を強いることとなり、急な心臓発作を起こす可能性があるため避けるべきとされている。
心電図ではP波の持続時間延長が認められる。
原因と発症メカニズム[編集]
拡張型心筋症は、以前から、ウイルス、アルコール、毒物、免疫傷害など非遺伝的攻撃によってもたらされることが知られていた。原因不明なものは”特発性”拡張型心筋症と呼ばれていたが、サルコメア蛋白質、細胞骨格蛋白質、筋形質膜および核膜蛋白質の遺伝子の突然変異が拡張型心筋症の大きな原因であることが最新の研究で明らかにされている[5]。2013年の時点で、本症症例のおよそ3割が遺伝子突然変異が原因であると推定されている。遺伝子突然変異が拡張型心筋症を引き起こすメカニズムを明らかにするため、サルコメア蛋白質であるミオシン、アクチン、トロポニン、トロポミオシンに関して、組換え変異蛋白質分子や遺伝子改変動物モデルを用いた研究が活発に行われている。ミオシン変異はサルコメアの収縮機構そのものを傷害し(i.e.,アクチン-ミオシン相互作用の低下をもたらす)、アクチン、トロポニン、トロポミオシン変異は心筋収縮のカルシウムによる調節機構を傷害する(i.e.,ミオフィラメントカルシウム感受性の低下をもたらす)ことが明らかにされている[6]。一方、細胞骨格蛋白質と細胞膜貫通蛋白質の突然変異はサルコメアが発生する力の隣接心筋細胞への伝達を傷害し、核膜蛋白質の突然変異は心筋細胞に加わる力による遺伝子発現機構の傷害によって拡張型心筋症をもたらすのでないかと推測されている[7]。遺伝性拡張型心筋症の研究からはっきりした重要なことは、心筋細胞には単にその収縮機能が内因的に低下するだけで心拡大によって代償するメカニズムがはじめからプログラムされているということである。皮肉なことに、その代償メカニズムが働くことによって致死的不整脈による突然死のリスクが高まり、その破綻によって末期心不全がもたらされるものと推測される。現在治療薬として用いられるβブロッカー、アンギオテンシン変換酵素阻害薬やアンギオテンシンII受容体ブロッカーは、短期的には収縮機能を高めるが長期的には有害な”細胞内cAMPとカルシウムの増加を介する”代償反応を抑えることでその破綻を遅らせているように見える。細胞内cAMPとカルシウムの増加によらず収縮機能を改善することができる新規の強心薬であるカシウム感受性増強薬やミオシン活性増強薬などは、このような長期的には有害な代償反応プログラムの発動を抑えてより高い有効性を示すことが期待される[8][9]
治療[編集]
- 心臓移植
- 1967年に世界で初めてヒトからヒトへの心臓移植が行われ、現在では安定した成果を示している。そのため、本疾患の根本治療とされる。主な有用点は以下の通り。
- 唯一の根本治療である。
- 長年の研究成果により技術が安定している。
- 劇的な回復が望める。
- しかし、特に日本国内において以下の理由により移植の実施は少ない。
- 世界的に心臓を提供するドナーが心臓移植を必要とする患者に比べて少ない。
- 心臓移植の条件として心臓提供者の脳死が絶対条件とされるが、現在もまだ脳死をヒトの死とするかは人により異なる。
- 臓器移植法が改正されたことにより、子供からの心臓の提供が法的に可能となった。しかし、子供の臓器を提供することに対する戸惑いは依然として強く、心臓の提供を受けることが非常に難しい。
- 移植が成功しても一生免疫抑制剤を摂取しなくてはならず、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなる。
- 医療保険の対象外。
- 内科的療法
- 近年、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシン受容体阻害薬、ベータ遮断薬などが適用され効果を挙げている。遠隔生存率も比較的高い。しかし、体質・症状の進行状態により上記の薬が期待した効果を挙げない場合もある。また、これらは根治療法ではなく進行を遅らせることしかできない。
- 補助人工心臓の使用
- 心臓移植までの症状維持を目的とする埋め込みと、心臓移植待機を目的とせず補助人工心臓を使い続けていく目的での埋め込みの2通りの治療が行われる。心臓移植までの症状維持としての補助人工心臓は2004年に医療保険の適用となった。移植目的でなく補助人工心臓を使い続ける選択は、主に高齢のため手術に耐えうる体力がない患者に対してとられることが多い。補助人工心臓を使い続ける目的での世界初の手術は、1995年10月にイギリスで高齢のため移植手術が行うことが困難とされた患者に施された。
- バチスタ手術
-
詳細は「バチスタ手術」を参照
- ブラジル人のランダス・J・V・バチスタによって1980年代に考案された心臓外科手術で、正式には「左室縮小形成手術」と呼ばれる。直接肥大した心臓の左心房の3分の1程度を切除し心臓の形を整える術である。心臓移植と比較して以下の有効な点がある。
- 患者自身の心臓を使い続けるので、心臓移植の最大の問題であるドナーの不足がまったく影響しない。また、免疫抑制剤も不要であるため免疫力低下がない。
- 15歳未満の患児に対しても行うことができる。
- 医療保険の対象であり安価にすむ。
- しかし、以下の問題点がある。
- 世界的に行われるようになったのは心臓移植に比べてごく最近であり、研究途上である。
- 手術後、左心房が再び拡大するかどうか、またどの程度の期間をおいて再拡大が起こるのかは統計不足であり不明である。
- 手術自体が非常に難しくリスクが高い。
- 遠隔生存率が心臓移植に比べて若干低い。
- 不確定要素が多いが、心臓移植の代替手術としては有効という見解が一般的である。日本国内では1996年12月2日に心臓外科医・須磨久善によって初めて実行された。
- 左室縮小手術(Overlapping cardiac volume reduction operation)
- バチスタ手術は遠隔心不全回避率が低く、術後3年の心不全回避率は25%前後と報告されている。[要出典]左心室を切除してしまうため、心機能が低下してしまうのがその原因とされる。そこで、バチスタ手術を改良して発案された手術が左室縮小手術である。これは左前下行枝に沿って左心室を切開し、それを左心壁を巻き込む形で縫い合わせる手術である。心臓を提供するドナーが少ない日本では今後バチスタ手術と並んで研究が進められていくものと予想される。しかし、症例数がごくわずかで予後経過については心臓移植にくらべて不明な点が多い。また、心臓外科医に要求される技術レベルは非常に高く、手術における危険は他の治療法に比べて高い。
- バチスタ手術に対する、患者の編成部位特定に要する時間を省いたりすることができるオーバーラッピング法という術式も存在するがアメリカでは禁止されている。
- 遺伝子治療
- 現在は動物実験の段階である。ヒトへの治療が行われた症例は報告されていない。特発性拡張型心筋症の先天的原因を治癒しようという試みである。積極的治療法(心臓移植)を行うことが難しい患者への応用が期待されている。
- 心筋シート
- 患者自身の筋肉を5 - 10g程度摘出し、それを培養してシート状にして患部(左心室)に貼り付ける治療法である。その心筋シートを用いて弱った心臓のポンプ機能を回復しようという試みである。動物実験ではポンプ機能が回復されることが確認されている。欧米ではすでに実施されているが、重篤な不整脈などの副作用が報告されている。日本国内では2007年5月に、大阪大の澤芳樹教授によって実施された。
診療科[編集]
肥大型心筋症(HCM)[編集]
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
I42.1-I42.2 |
ICD-9 |
425.4 |
OMIM |
192600 |
DiseasesDB |
6373 |
MedlinePlus |
000192 |
eMedicine |
med/290 ped/1102 radio/129 |
MeSH |
D002312 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
テンプレートを表示 |
500人に1人が発症するよくある病気であり、若いアスリートなど若者の突然の心停止によくある原因である。男女差は見られない。 心筋細胞の肥大のため心室壁が厚くなるが心室のサイズはしばしば正常である。本症は心筋肥大による左心室の拡張障害が主体である。拡張期が短縮することにより、心室に血液が充分に流れ込まなくなる。その結果、全身に流れる血液量が不足したり、心室→心房への逆流が起こることによりひいては肺水腫に至って呼吸困難を呈したりする。病態が進行するとしばしば拡張型心筋症様になることがあり、拡張相肥大型心筋症と呼ばれる。
心房細動の合併が多い。
分類[編集]
大動脈弁付近の壁肥厚による閉塞性肥大型心筋症 (HOCM) と、心尖部の壁肥厚による非閉塞性肥大型心筋症 (HNCM) に分類される。HOCMの基本病態は、心流出路狭窄による心拍出量低下であり、一方、HNCMの基本病態は、心室筋肥大による左室拡張能の低下および不整脈である。欧米では前者が多いが、日本では後者が比較的多い。また、肥大が心尖部に限局したapical HCMと呼ばれる病態も報告されている。初報告は日本でなされており、また日本人に多いとされている。
これらの研究の結果、現在では、心筋の異常な肥大こそがHCMの本質であり、各分類は、その肥大する部位の差によって、左室流出路狭窄が起きるか否かに過ぎないと認識されるようになっている。
症状と所見(HCM)[編集]
臨床症状[編集]
- 左心不全症状
- 動悸
- 胸痛(狭心痛)
- 失神
- 二峰性脈
各種検査所見[編集]
閉塞性肥大型心筋症においては、下記のような所見が見られる。
- 聴診
- 胸骨左縁 第3、4肋間から心尖部を中心として、収縮期 駆出性雑音、IV音を聴取する。
- 心電図
- 左室肥大、異常Q波、ST-T変化、巨大陰性T波(apical HCMの特徴)が見られる。ただし、HCMに特有の所見はなく、むしろ、自覚症状に乏しい割に、心電図上の変化が派手であることが、HCMの特徴と言える。
- 頚動脈波
- 二峰性脈(pulsus bisferiens:spike and dome型)が認められる。大動脈弁閉鎖不全症の二峰性脈とは異なる。急激な立ち上がりのあと、収縮中期から後期にゆるやかな2つ目の峰を形成する。
- 心エコー
- 非対称性心室中隔肥厚(ASH)
- 僧帽弁前尖の収縮期前方運動(SAM)
- 大動脈弁の収縮中期 半閉鎖
- などが見られる。
- 心臓カテーテル検査
- 左室拡張末期圧(LVEDP)の上昇が特徴的である。
- 左室流入路と流出路の収縮期圧較差(20mmHg以上)が認められる。
- 病理学検査
- 肥大した心筋細胞が見られる。これらの配列においては、樹枝状分枝や渦巻き状などの錯綜配列が特徴的である。錯綜配列は、肥大した心室中隔を中心に分布する。
原因と発症メカニズム(HCM)[編集]
通常は遺伝性であり、本症症例のおよそ7割が常染色体優性遺伝形式をとる遺伝子変異が原因である。拡張型心筋症と同様にミオシン、アクチン、トロポニン、トロポミオシンをはじめとするサルコメア蛋白質の遺伝子の突然変異が明らかにされている[10]。カルシウムによる収縮制御に関わるトロポニンやトロポミオシン遺伝子の突然変異はミオフィラメントカルシウム感受性を増加させる。これは、これらの遺伝子における拡張型心筋症を引き起こす変異がカルシウム感受性を低下させることと逆であり、ミオフィラメントカルシウム感受性増加による収縮機能の亢進あるいは弛緩機能の低下が肥大型心筋症をもたらしていると考えられる[11][12]。高血圧や加齢によっても時間をかけて発症し、糖尿病や甲状腺疾患などの他の病気も原因となる。
治療(HCM)[編集]
最大の問題である、突然死の予防が最重点となる。
過激な運動を避け、また、心筋の拡張能を改善するためと、心筋の負荷を軽減するために、β遮断薬が使われる。しかし、喘息を合併している場合のようにβ遮断薬が禁忌の症例にはカルシウム拮抗剤などが用いられる。大動脈弁狭窄や僧帽弁逆流が高度な場合には、心室中隔切除術などの外科的手術を行う。場合によっては突然死予防のため植え込み型除細動器が必要になる。
拘束型心筋症 (RCM)[編集]
心室の収縮機能は正常だが左心室が硬く、拡張に問題がある。この点では肥大型心筋症と似ているが肥大や拡大等が見られない点で異なる。アクチン、ミオシン、トロポニン遺伝子の突然変異が発症に関与していることがわかっている[13]。
不整脈原性右室心筋症[編集]
右心室心筋が脱落し、脂肪組織または線維脂肪組織が置換する。
分類不能型心筋症[編集]
上記4型のいずれにも分類されない。
- たこつぼ心筋症
- ストレスなどにより、左室心尖部が収縮しなくなり、左室が「たこつぼ」のような形態を呈するもの。予後良好なものが多い。カテコラミンとの関与が示唆されている。
脚注[編集]
- ^ Krehl L. Beitrag zur Kenntnis der idiopathischen Herzumuskelerkrankungen. Dtsch Arch Klin Med 1891;48:414-431.
- ^ Report of WHO/ISFC taskforce on the definition and classification of cardiomyopathies. Brit Heart J 1980;44:672-673. PMID 7459150
- ^ Richardson P, et al. Report of the 1995 World Health Organization/International Society and Federation of Carrdiology task force on the definition and classification of cardiomyopathies. Circulation 1996;93:841-842. PMID 8598070
- ^ 難病情報センター|特発性拡張型(うっ血型)心筋症(公費対象)
- ^ Clinical Cardiogenetics, Baars, H.F.; van der Smagt, J.J. (Eds.) Springer, 2011.
- ^ Morimoto S. Sarcomeric proteins and inherited cardiomyopathies. Cardiovasc Res. 2008; 77: 659–666. PMID 18056765
- ^ Fatkin D, Graham RM. Molecular mechanisms of inherited cardiomyopathies. Physiol Rev 2002;82:945–980. PMID 12270949
- ^ R. John Solaro. Translational medicine with a capital T, troponin T, That is. Circulation Research, 2007; 101: 114-115. PMID 17641232
- ^ Teerlink et al., Dose-dependent augmentation of cardiac systolic function with the selective cardiac myosin activator, omecamtiv mecarbil: a first-in-man study. Lancet, 2011; 378(9792):667-675. PMID 21856480
- ^ Clinical Cardiogenetics, Baars, H.F.; van der Smagt, J.J. (Eds.) Springer, 2011.
- ^ Fatkin D, Graham RM. Molecular mechanisms of inherited cardiomyopathies. Physiol Rev 2002;82:945–980. PMID 12270949
- ^ Morimoto S. Sarcomeric proteins and inherited cardiomyopathies. Cardiovasc Res. 2008; 77: 659–666. PMID 18056765
- ^ Clinical Cardiogenetics, Baars, H.F.; van der Smagt, J.J. (Eds.) Springer, 2011.
参考文献[編集]
- 河合忠一 『心筋症の話』 中央公論新社 2003年 ISBN 4-12-101722-6
- 日本獣医病理学会編 『動物病理学各論』 文永堂出版 1998年 ISBN 4-8300-3162-X
- 日本獣医内科学アカデミー編 『獣医内科学(小動物編)』 文永堂出版 2005年 ISBN 4-8300-3200-6
関連項目[編集]
- 須磨久善 - 日本初のバチスタ手術執刀医
- 医龍-Team Medical Dragon- - 本症例の患者・バチスタ手術が登場
- チーム・バチスタの栄光 - 本症例の患者・バチスタ手術が登場
外部リンク[編集]
- 拡張型心筋症(DCM)関連
-
- Dilated Cardiomyopathy - Medscape
- Dilated Cardiomyopathy - American Heart Association
- 特発性拡張型(うっ血型)心筋症(公費対象) - 難病情報センター
- 非虚血性拡張型心筋症に対する新しい左室縮小形成術(Overlapping法)の麻酔経験 - J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
- 肥大型心筋症(HCM)関連
-
- Hypertrophic Cardiomyopathy - Medscape
- Hypertrophic Cardiomyopathy - American Heart Association
- 拘束型心筋症(RCM)関連
-
- Restrictive Cardiomyopathy - American Heart Association
- 不整脈原性右室心筋症関連
-
- Arrhythmogenic Right Ventricular Dysplasia - American Heart Association
心血管疾患 |
|
疾患 |
|
心疾患
|
不整脈
|
徐脈性
|
洞不全症候群 | 房室ブロック | 脚ブロック(右脚ブロック · 完全右脚ブロック · 左脚ブロック)
|
|
頻脈性
|
上室性
|
洞性頻脈 | 心房細動 | 心房粗動 | ブルガダ症候群 | QT延長症候群 | WPW症候群
|
|
心室性
|
心室細動 | 心室頻拍
|
|
|
|
虚血性心疾患
|
狭心症 | 急性冠症候群 | 心筋梗塞 | 冠動脈血栓症
|
|
弁膜性心疾患
|
僧帽弁狭窄症 | 僧帽弁閉鎖不全症 | 三尖弁狭窄症 | 三尖弁閉鎖不全症 | 大動脈弁狭窄症 | 大動脈弁閉鎖不全症
|
|
先天性心疾患
|
心房中隔欠損 | 心室中隔欠損 | 心内膜床欠損症 | 動脈管開存症 | ファロー四徴症(極型ファロー四徴症) | 大血管転位(左旋性 · 右旋性) | 総肺静脈還流異常症 | 大動脈縮窄 | 左心低形成症候群 | 両大血管右室起始症 | 三尖弁閉鎖
|
|
心内膜・心筋
・心膜疾患
|
心内膜疾患
|
感染性心内膜炎
|
|
心膜疾患
|
心膜炎(急性心膜炎 · 慢性収縮性心膜炎) | 心タンポナーデ
|
|
心筋疾患
|
心筋症(特発性拡張型心筋症 · 肥大型心筋症 · 拘束型心筋症 · 特発性心筋症) | 心筋炎
|
|
|
心臓腫瘍 | 心臓神経症 | 心臓性喘息 | 肺性心
|
|
|
血管疾患
|
動脈
|
動脈硬化 | 大動脈瘤 | 大動脈解離 | 大動脈炎症候群 | 動静脈瘻 | 閉塞性動脈硬化症 | 閉塞性血栓性血管炎 | レイノー病
|
|
静脈
|
静脈瘤 | 血栓性静脈炎 | 静脈血栓塞栓症 | 脂肪塞栓症
|
|
|
|
|
病態・症候 |
|
心不全
|
左心不全 | 右心不全
|
|
血圧異常
|
高血圧
|
本態性高血圧症 | 二次性高血圧 | 悪性高血圧症
|
|
低血圧
|
|
|
心臓発作 | 心臓肥大 | 心停止 | 心肺停止
|
|
|
|
所見・検査 |
|
血圧計 | 聴診 | 心雑音 | 心電図 | 心電図モニタ | 心臓超音波検査 | 胸部X線写真 | 胸部X線CT | 心臓カテーテル検査(肺動脈カテーテル) | 心臓核医学検査
|
|
|
治療 |
|
外科的治療
|
冠動脈大動脈バイパス移植術 | 経皮的冠動脈形成術 | 植え込み型除細動器 | バチスタ手術 | 人工心臓 | 心臓ペースメーカー
|
|
内科的治療
|
心臓作動薬
|
抗不整脈薬
|
Ia群: プロカインアミド, キニジン
Ib群: リドカイン, フェニトイン
Ic群: フレカイニド, プロパフェノン
II群: 交感神経β受容体遮断薬(プロプラノロールなど)
III群: アミオダロン, ソタロール
IV群: カルシウム拮抗剤(ベラパミル, ジルチアゼムなど)
|
|
心不全治療薬
|
利尿薬 | 血管拡張薬 | 強心配糖体 | 強心剤
|
|
狭心症治療薬
|
交感神経β受容体遮断薬 | 硝酸薬
|
|
|
血管作動薬
|
高血圧治療薬
|
利尿薬 | 交感神経β受容体遮断薬 | レニン-アンジオテンシン系 (ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬) | カルシウム拮抗剤 | アドレナリン作動薬 | 脂質降下薬
|
|
|
|
|
|
循環器系の正常構造・生理 |
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
- 1. 拡張型心筋症の原因 causes of dilated cardiomyopathy
- 2. 拡張型心筋症の遺伝学 genetics of dilated cardiomyopathy
- 3. 家族性拡張型心筋症:有病割合、診断、治療 familial dilated cardiomyopathy prevalence diagnosis and treatment
- 4. 心不全または心筋症患者の評価 evaluation of the patient with heart failure or cardiomyopathy
- 5. 心筋症の定義および分類 definition and classification of the cardiomyopathies
Japanese Journal
- 1.拡張型心筋症に対して免疫吸着療法が著効を示し,その後のカルニチン内服で心機能がさらに改善した1例(一般演題,日本アフェレシス学会第14回中部地方会抄録)
- 森田 弘之,馬場 彰泰,島田 恵,赤石 誠,村山 章,若林 靖久
- 日本アフェレシス学会雑誌 30(2), 177, 2011-05-31
- NAID 110008661284
- ウイルス性心筋炎から拡張型心筋症への進展機序 (特集 炎症・免疫からみた心血管病)
- 心不全(拡張型心筋症) (特集 新人ナースはここからスタート! 循環器疾患・症状の病態生理)
Related Links
- 特発性拡張型心筋症(とくはつせいかくちょうがたしんきんしょう、Idiopathic cardiomyopathy、Dilated cardiomyopathy)は心臓の細胞が変化し、特に心筋が伸び てしまう心疾患である。日本では特定疾患治療研究事業対象疾患に指定されている。 心臓が大きく ...
- 特発性拡張型(うっ血型)心筋症とは. 本症は心室の筋肉の収縮が極めて悪くなり、心臓 が拡張してしまう病気で肥大型心筋症に較べて予後の悪いものです。我が国のかつて 統計によると、診断されてから5年生存している人は54%、10年生存は36%とされてい ...
Related Pictures







★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、39、40の問いに答えよ。
- 58歳の男性。夜間の呼吸困難のため救急車で搬入された。
- 現病歴: 4年前に狭心症と診断され、アスピリンと硝酸薬とを服薬していたが、半年前から中断していた。3か月前から駅の階段を昇るとき軽度の胸痛を感じていた。2日前冷汗を伴う前胸部絞扼感が数時間持続し、自宅での安静で軽快した。しかし、昨夜就寝後呼吸困難のため覚醒した。横になると呼吸困難が再発するので眠れず、午前3時に来院した。
- 既往歴: 8年前に糖尿病を指摘された。
- 現症: 意識は清明。身長169cm、体重75㎏。呼吸数28/分。脈拍104/分、整。血圧102/88mmHg。頸静脈の怒張を認めるが、心雑音はない。両側下肺野にcoarse cracklesを聴取する。右肋骨弓下に圧痛を認める。両側下腿に浮腫を認める。
- 検査所見: 尿所見: 蛋白1+、糖2+。血液所見: 赤血球430万、Hb14.2g/dl、Ht42%、白血球9,500、血小板30万。血清生化学所見: 血糖150mg/dl、HbA1c8.8%(基準4.3~5.8)、総蛋白7.0g/dl、尿素窒素26mg/dl、クレアチニン1.2mg/dl、総コレステロール224mg/dl、トリグリセライド190mg/dl、総ビリルビン0.8mg/dl、AST60単位、ALT34単位、LDH620単位(基準176~353)、CK960単位(基準10~110)、Na148mEq/l、K4.6mEq/l、Cl103mEq/l。経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)96%(酸素3l/分投与下)。入院時の胸部エックス線写真と心電図とを次に示す。
心電図
- 異常Q波:I, aVL, V1-V3
- 陰性T波:I, aVL, V2-V6
- R波減高:V4-V6
- ST上昇:V1-V4
-
- 心筋梗塞#心電図の異常波形と時間経過 PHD.105
- ST上昇が残存
胸部単純X線写真
心筋梗塞の場合、上昇してくる生化学マーカー
- 上昇してくる時間
- AST 6-12時間
- LDH やんわりと出てくる。
- CK (CK-MBの場合) 3-4時間
[show details]
- ・主訴 呼吸困難
- ・現病(S)
- 狭心症(4年前~) → 狭心症の増悪や心筋梗塞を疑う根拠
- アスピリンと硝酸薬の休薬 → 狭心症の増悪因子
- 労作時の軽度の胸痛 → 労作性狭心症
- 数時間にわたる前胸部絞扼感 → 狭心症に続発した心筋梗塞
- 就寝時に呼吸困難で覚醒し、横になると再発 → 起坐呼吸(肺のうっ血と圧上昇が肺コンプライアンス減少、気道抵抗増大を生じ呼吸困難を来す。
- ) → うっ血性心不全?
- 8年前からの糖尿病 → 肝動脈疾患のリスクファクター
- ・現症(O)
- BMI = height/(weight)^2 = 26.3 軽度肥満? → 肝動脈疾患のリスクファクター
- 頻呼吸 → 換気の低下? → 低酸素血症(急性心不全、肺性心、肺梗塞、肺炎、呼吸窮迫症候群などの呼吸・循環器疾患の際にみられ、これは低酸素血症による頸動脈体刺激)
- 頻脈 → 交感神経↑ or 心拍出量低下よる代償的作用
- 頚静脈怒張 → うっ血性心不全
- 両側下肺野にcoarse crackles → 肺水腫かな?
- 右肋骨弓下に圧痛 → 肝腫大 → うっ血性心不全
- 両下腿浮腫 → うっ血性心不全
- ・検査所見(O)
- 蛋白 1+ → 糖尿病性腎症?
- 糖 2+ → 血糖やや高い(が、食後であれば正常) → 糖尿病
- HbA1c高値(正常4.3-5.8%(日本糖尿病学会)) → 糖尿病
- 尿素窒素高値 26 mg/dL → 糖尿病性腎症
- クレアチニン高値 1.2mg/dL → 糖尿病性腎症
- T-cho高値 224mg/dL 120-220 mg/dL → 高脂質血症 → 冠動脈疾患のリスクファクター
- TG高値 190 mg/dL 50-150 mg/dL → 高脂質血症 → 冠動脈疾患のリスクファクター
- LDH高値620単位 (基準 176-353) → 心筋梗塞を示唆
- AST高値60単位 40単位以下 → 心筋梗塞を示唆
- CK高値 960単位 (基準 10-40) → 心筋梗塞を示唆
- Na高値 148 mEq/l
- SpO2 96% (酸素3l/分投与下) → 換気能の悪化。
- ・心電図
- ・左房負荷:P terminal force 1mm2 → 左房に容量負荷がかかっている
- ・心筋梗塞を示唆 → 心筋梗塞が疑い
- 異常Q波:I, aVL, V1-V3
- 陰性T波:I, aVL, V2-V6
- R波減高:V4-V6
- ST上昇:V1-V4
- ・所見
- 1. 発症数日程度の左前下行枝領域の急性前壁梗塞
- 2. 心室瘤を伴う陳旧性心筋梗塞
- ・胸部X線単純写真
- 心陰影拡大著明 → 心肥大?心拡張?心膜液貯留 →(状況証拠から)心不全による心拡張が疑わしい
- butterfly shadow → 肺水腫
- ====
- a. 陰影が認められるが、ここまでの情報で適当じゃない。
- b. 心筋梗塞だってば
- c. ○
- d. 他に原因の求められない原因不明の心室収縮障害 ← 心エコーで異常な心室壁運動。血液生化学正常だろう。胸部Xpで心拡大、ECG異常は認められる。
- e. 左心不全の後方障害が説明できない。ECG、心エコーで否定。高血圧の病歴、移動する突然の胸痛、来院時の高血圧。
- ====
- ax 高浸透圧性非ケトン性昏睡とかだったら補液で脱水の改善してからインスリン打つんだがな
- b 利尿薬。血管拡張薬(ニトログリセリン(静脈を拡張させる)など)もよい
- cx 抗不整脈薬(Naチャネルブロック。心室性不整脈。class Ib(APD短縮))、局所麻酔薬
- dx カルシウム拮抗薬は血管拡張薬(動脈系に強く作用する)。心不全の治療に用いられるが、本症例では血圧が高くなく適応にならない。
- ex 末梢血管を収縮させて血圧を上げる。うっ血性心不全の治療にならない。
- ====
- AMIかなと、考えて
- 上昇してくる時間
- AST 6-12時間
- LDH やんわりと出てくる。
- CK (CK-MBの場合) 3-4時間
[正答]
※国試ナビ4※ [100D038]←[国試_100]→[100D040]
[★]
- 70歳の男性。労作時の息切れを主訴に来院した。
- 現病歴:4年前に縦隔腫瘍に対し摘出手術が施行され、病理検査で軟部肉腫と診断された。2年前に肺転移に対して2か月間アドリアマイシンが投与され、その後病変の増大はない。1か月前から倦怠感があり、数日前から労作時の息切れを自覚するようになった。ここ3か月で3kgの体重増加がある。
- 既往歴:45歳から高血圧症で内服加療。
- 生活歴:喫煙は20歳から33歳まで20本/日。飲酒は機会飲酒。
- 家族歴:母親は肺癌で死亡。
- 現症:意識は清明。身長 172cm、体重 63kg。体温 36.5℃。脈拍 80/分、整。血圧 164/78mmHg。呼吸数 18/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒脹を認めない。胸骨正中切開の手術瘢痕を認める。Ⅲ音を聴取し、心雑音を認めない。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢末梢に冷感を認めない。両側下腿に浮腫を認める。
- 検査所見:血液所見:赤血球 399万、Hb 11.6g/dL、Ht 38%、白血球 4,000、血小板 16万。血液生化学所見:総蛋白 6.2g/dL、アルブミン 3.6g/dL、AST 62U/L、ALT 81U/L、LD 251U/L(基準 176~353)、尿素窒素 14mg/dL、クレアチニン 0.6mg/dL、血糖 97mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 108mEq/L、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP) 696pg/mL(基準 18.4以下)、心筋トロポニンT 0.14(基準 0.01以下)、CK-MB 5U/L(基準 20以下)。CRP 0.3mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.4、PaCO2 38Torr、PaO2 83Torr、HCO3- 24mEq/L。胸部エックス線写真で心胸郭比は3か月前に53%、受診時58%。心電図で高電位とV5、V6の軽度ST低下を認める。1年前の心エコー検査は正常である。今回の来院時の心エコー検査で左室はびまん性に壁運動が低下しており、左室駆出率は35%。
- 症状の原因として最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113F073]←[国試_113]→[113F075]
[★]
- 48歳の女性。食欲低下と倦怠感を主訴に来院した。5日前から感冒様症状と食欲低下があり、市販薬を内服して寝込んでいた。昨日から倦怠感が強くなり、さらに今朝になって呼吸困難やふらつきも生じたため受診した。既往歴、生活歴および家族歴に特記すべきことはない。身長 160cm、体重 50kg。脈拍 116/分、整。血圧 86/50mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 93%(room air)。心音は奔馬調律。両下胸部にcracklesを聴取する。血液所見:赤血球 495万、Hb 14.6g/dL、白血球 11,000、血小板 17万。血液生化学所見:AST 2,324U/L、ALT 2,532U/L、LD 3,292U/L(基準 120~245)、CK 6,064U/L(基準 30~140)、尿素窒素 47mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、総ビリルビン 1.4mg/dL。CRP 2.3mg/dL。来院時の心電図(別冊No.9A)を別に示す。心エコー検査で左室拡張末期径50mm、左室駆出率は20%。その後、完全房室ブロックが出現し、一時的ペースメーカー留置とともに冠動脈造影を行った。冠動脈造影像(別冊No.9B)を別に示す。
- 最も疑われる疾患はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114D025]←[国試_114]→[114D027]
[★]
- 31歳の男性。呼吸困難を主訴に来院した。3か月前から全身倦怠感があったが、最近1か月で症状が増悪し、昨日から呼吸困難が出現するようになったため受診した。意識は清明。身長 175cm、体重 62kg。体温 36.5℃。脈拍 84/分、整。血圧 124/74mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96%(room air)。胸部の聴診でⅢ音とⅣ音とを聴取する。両側の胸部でwheezesを聴取する。両側の脛骨前面に圧痕を残す浮腫を認める。血液所見と血液生化学所見とに異常を認めない。心電図は心拍数 82/分の洞調律で、その他に異常所見を認めない。胸部エックス線写真では心胸郭比 60%で肺うっ血を認める。心エコー図(別冊No. 14A、B)を別に示す。
- 最も考えられる疾患はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [110I049]←[国試_110]→[110I051]
[★]
- 19歳の女性。以前から心疾患のため外来に通院していた。日常の動作はできるが階段や坂を上ると息苦しくなった。2年前に少量の喀痰があった。1か月前に受診したときの現症は、身長157cm、体重42kg。軽度のチアノーゼとばち指とを認めた。II音の亢進を認めたが、心雑音は聴取しなかった。呼吸音に異常を認めなかった。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しなかった。浮腫を認めなかった。この時の心電図と胸部エックス線写真とを以下に示す。今朝、起床して洗顔をしている途中に倒れ 心肺停止状態で搬入された。蘇生術が行われたが死亡が確認された。
- 診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [102G049]←[国試_102]→[102G051]
[★]
- 51歳の男性。息切れを主訴に来院した。3か月前から階段昇降時の息切れを自覚し、徐々に増悪してきたという。父方の家系に心疾患が多い。意敵は清明。身長172cm、体重62kg。呼吸数24/分。脈拍84/分、整。血圧104/64mmHg。III音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。心エコー図(別冊No.24A、B.C)を別に示す。
- 治療薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [105I073]←[国試_105]→[105I075]
[★]
- 36歳の男性。息切れと疲労感とを主訴に来院した。2年前から労作時の息切れを自覚していた。意識は清明。脈拍84/分、整。血圧112/72 mmHg。胸部聴診でIII音を聴取するが、心雑音は聴取しない。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。浮腫を認めない。胸部エックス線写真での心胸郭比66%。心エコー図を以下に示す。
- この患者の予後を改善するのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [103D039]←[国試_103]→[103D041]
[★]
- 55歳の男性。夜間、突然の呼吸困難のため搬入された。5年前に拡張型心筋症の診断を受けている。喘鳴が著明でピンク色の泡沫状喀痰排出があった。マスクで酸素投与(6l/分)を開始した。呼吸数24/分。脈拍124/分、整。血圧98/78mmHg。動脈血ガス分析(自発呼吸):pH 7.28、Pa O2 68 Torr、Pa CO2 52 Torr。胸部エックス線写真は両側肺門部を中心に蝶形陰影を呈する。
[正答]
※国試ナビ4※ [103C024]←[国試_103]→[103C026]
[★]
- 糖尿病の合併症について正しいのはどれか。 2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [106I027]←[国試_106]→[106I029]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [105B024]←[国試_105]→[105B026]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [106G022]←[国試_106]→[106G024]
[★]
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [098G074]←[国試_098]→[098G076]
[★]
- a. 心筋細胞の錯綜配列
- b. 心室壁肥厚と内腔の狭小化
- c. 左心室壁の局所的運動低下
- d. 大動脈弁の収縮中期半閉鎖
- e. Mモード心エコー図での僧帽弁B-B'ステップ
[正答]
※国試ナビ4※ [097H026]←[国試_097]→[097H028]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [107I006]←[国試_107]→[107I008]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [109A004]←[国試_109]→[109A006]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [112D008]←[国試_112]→[112D010]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [096B032]←[国試_096]→[096B034]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [096G112]←[国試_096]→[096G114]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [101B106]←[国試_101]→[101B108]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [098H029]←[国試_098]→[098H031]
[★]
- 英
- aminoethylsulfonic acid
- 同
- 2-アミノエタンスルホン酸 2-aminoethane sulfonic acid、タウリン taurine
- 関
- [[]]
テンプレート:Infobox 有機化合物
概念
- タウリン(Taurine)は生体内で重要な働きを示す含硫アミンの一種
- H2N-CH2-CH2-SO3H
- 分子量125.15
- ネコはタウリンを合成する酵素を持っていないため、ネコにとっての重要な栄養素といえる。このためキャットフードにはタウリンの含有量を明記したものが多い。ネコではタウリンの欠乏により拡張型心筋症が生じる。ただし、ヒト、トリ、ネズミなどは体内で合成できる。ヒトの生体内ではアミノ酸のシステインから合成される。
- 有機合成化学ではシスタミンの酸化、システアミンの酸化のほか、ブロモエタンスルホン酸とアンモニアなどから誘導される。構造式は、NH2CH2CH2SO2OH。分子量125.15。IUPAC名は2-アミノエタンスルホン酸。無色の結晶であり、約300℃で分解する。水溶性だが有機溶媒には溶けない。CAS登録番号は107-35-7。
タウリンの代謝
タウリンはカルボキシル基を持たないので、アミノ酸ではない。また、タンパク質の構成成分になることもない。したがって、ネコにおいてはタウリンは必須アミノ酸ではなく、ビタミンの一種である。しかし、アミノ基を持つ酸であることもあって、古くからアミノ酸として混同されている。合成経路においてはまず、タンパク質の構成成分にもなる含硫アミノ酸であるシステインからシステイン・ジオキゲナーゼによりシステイン酸が合成される。タウリンはシステインスルフィン酸デカルボキシラーゼ(スルフィノアラニン・デカルボキシラーゼ)によりこのシステイン酸から合成される。ヒトはこの合成経路の両酵素をもつため、タンパク質を摂取していれば、タウリンの形での積極的摂取は不要である。胆汁酸と縮合したタウロコール酸はコリル・コエンザイムAとタウリンから合成される。タウリンは尿中に一日約200mgが排泄される。
[★]
- 英
- restrictive cardiomyopathy, RCM
- 同
- 拘束性心筋症
- 関
- 心筋症、難病
定義
- (1)硬い左心室、(2)左室拡大や肥大の欠如、(3)正常または正常に近い左室収縮機能、(4)原因不明を満たす疾患
- 難病
病因
-
疫学
- 拡張型心筋症:14.0/10万人対
- 肥大型心筋症:17.3/10万人対
- 拘束型心筋症:0.2人/10万人対
病態
- 左心室拡張障害によるうっ血性心不全
- 左室内腔の拡大(×DCM)や壁肥厚はない(×HCM)。
- 収縮能は正常。
- 左房径は増大 ← 左心房は拡張(LAもrigitになる気がするけど、それでもやっぱり心房の方がコンプライアンスが高いから?そもそも、心室に血液を送り込めないから拡張せざるを得ないのだろう?)
身体所見
症状
検査
- 左室圧におけるa波が増大し、LVEDPが上昇。
- 左室圧波形:dip and plateau (square root sign)
診断
治療
鑑別疾患
収縮性心膜炎との鑑別
|
収縮性心膜炎
|
拘束型心筋症
|
contrictive endocarditis
|
restricted cardiomyopathy
|
心カテーテル検査
|
両親室の拡張末期圧同じ
|
左室拡張末期圧 - 右室拡張末期圧 > 5mmHg
|
右室拡張末期圧 > 右室収縮末期圧/3
|
右室収縮期圧 > 50mmHg
|
右室経静脈的心内膜心筋生検
|
|
線維化や浸潤(アミロイド、鉄、転移性腫瘍などの浸潤)がみられる。
|
CT
|
肥厚した心内膜が観察される。石灰化があれば白く見える
|
|
MRI
|
肥厚した心内膜が観察される
|
|
- LVとRVの壁厚を考慮すると、ある病因によるコンプライアンスの低下がLVでより顕著になると考えればよい?なんでだろう?
参考
- http://www.nanbyou.or.jp/upload_files/036_s.pdf
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/259
[★]
- 英
- third heart sound, S3 heart sound S3
- 関
- 心音、過剰心音、IV音
タイミング
- I-II-III
部位
- left-sided:apex
- right-sided:sternal border
音
- dull, pitch:low. bell of the stethoscope
- left-sided S3:the left lateral decubitus positionの時に心尖で大きく聞こえる
病態生理
- 簡単に言えば、「容量負荷」
- 1. 腱索が、血液が急に充満し心室が拡張するときに張力で緊張した(引っ張られた)結果起こるように見える(PHD.37)
- 2. 急速流入期の血流による衝撃を心室壁の伸展によって逃がすことができず、衝突音が生じる(手技見え p.105)
- 3. 急速流入期における心房から心室への流入血液量の異常な増加あるいは心筋緊張度の低下、心室収縮終期容量の増加に伴って起こる心室内の振動の増加(IMD.95)
III音を生じる病態
病的
生理的
- 子供、若年者(20-30歳)、妊婦:正常(生理的III音)
- 成人:うつ血心不全など起因する容量負荷。うっ血性心不全・MR・DCM(手技見え p.105)。 ← これは生理的ではない
QB.C-15
- 拡張期流入血液増加:MR,AS
- 心室コンプライアンス低下:DCM, MI後のcardiomegaly, heart failure
III音の増強
[★]
- 英
- Chagas disease, Chagas' disease
- 同
- Chagas病
- 関
- アメリカトリパノソーマ病 アメリカ・トリパノソーマ症 American trypanosomiasis、スキゾトリパノソーマ症 schizotrypanosomiasis、ブラジル・トリパノソーマ症 Brazilian trypanosomiasis、シャーガス-クルース病 Chagas-Cruz disease
- トリパノソーマ属、原虫
特徴
ウイルス学
病原体
疫学
潜伏期間
感染経路
症状
- 原虫侵入部の腫脹と領域リンパ節の腫脹
- (眼の結膜)ロマニャ徴候
- 乳児では脳炎、心筋炎が重症化しやすい
- 脳:脳炎
- 心臓:不整脈、拡張型心筋症
- 筋肉:心筋炎
合併症
経過
- 無症状期:10-20年の無症状期
- 発症 :抗体陽性者の半数以上が心症状(拡張型心筋症)、消化器症状(巨大食道、巨大結腸)を呈する
治療
検査
予防
-Chagas病
[★]
- 英
- ischemic cardiomyopathy
- 関
- 心筋症、拡張型心筋症
治療
- 参考1
- 二次予防:アスピリンやスタチンの服用、高血圧と糖尿病の管理、禁煙、運動療法
- 薬物療法:(禁忌でない限り全ての患者に行う)ACE阻害薬、βブロッカー、ループ利尿薬
- デバイス療法:適応がある患者で薬物療法に加えて実施
- 埋め込み式除細動器
- 両心室ペーシングによる心臓細動器療法。
- 左室形成術:左室の奇異運動、無運動に対して行われる。虚血心筋症患者にCABG単独群とCABG+左室形成術を行った群では予後に差がなかったというRCTがある(参考1)。
- 血行再建:休眠心筋細胞のreactivation
- 幹細胞/自己筋細胞移植
参考
- 1. [charged] Diagnosis and management of ischemic cardiomyopathy - uptodate [1]
[★]
- 同
- ischemic dilated cardiomyopathy, ICM
[★]
- 同
- idiopathic dilated cardiomyopathy, DCM
[★]
- 英
- cardiac muscle (K), heart muscle, myocard cardiac muscle, myocardium
- 関
- 心筋の活動電位、横紋筋、筋肉
- 筋小胞体が発達していない
心筋の酸素消費量 (SPC.226)
- (tension-time index)=左心室内圧曲線収縮期相の面積(mmHg/s)×心拍数
- (doble product)∝(tension-time index)
- 1. 骨格筋細胞と違い心筋細胞は介在板を有しており、介在板近傍に存在するギャップ結合によって活動電位が伝播する。
- 2. ギャップジャンクションを通じて活動電位が伝播すると、心筋細胞膜上の電位依存性Na+チャネルが開き、脱分極が筋細胞全体に広がる。
- 3. 脱分極はT細管(横行管)に伝わり、T細管に存在する電位依存性のタンパク質の構造を変化させ、筋小胞体上のCa2+放出チャネルを開く。
- 4. さらに少し遅れてCa2+/Na+チャネルが長時間開口し、細胞内に多量のCa2+/Na+を取り込む。
- 5. 心筋細胞のT細管は細胞外部に開口しており、Ca2+の取り込みが容易になっている。
- 6. このようにして、細胞外と筋小胞体中のCa2+が細胞質に拡散する。
- 7. ここで、筋収縮に関わるアクチンフィラメントにトロポミオシンとトロポニンが結合し、収縮開始を妨げているが、Ca2+がトロポニンに結合すると、トロポミオシンがアクチンフィラメント上で場所を変える。
- 8. この結果、トロポミオシンが覆い隠していたアクチンフィラメントのミオシン結合部位が露出する。
- 9. ミオシンはATPの加水分解のエネルギーを使って、アクチンフィラメントに結合できる構造をとり、アクチンに結合する。
- 10. ミオシンがアクチンフィラメントで首振り運動をすることで筋収縮が起こる。
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
[★]
- 英
- cardiomyopathy CM
- 関
心筋症比較
- HIM.1482
YN
|
C-132
|
C-134
|
C-136
|
HIM
|
1481
|
1484
|
1485
|
|
拡張型心筋症
|
肥大型心筋症
|
拘束型心筋症
|
DCM
|
HCM
|
RCM
|
胸部単純X線写真
|
中等度~重度心陰影拡大
|
中等度~重度心陰影拡大
|
軽度心陰影拡大
|
肺静脈拡張
|
|
|
心電図
|
ST領域、T波の異常
|
ST領域、T波の異常
|
低電位
|
|
左室肥大
|
伝導障害
|
|
異常Q波
|
|
心エコー
|
左心室拡張・機能不全
|
非対称性中隔肥大
|
左心室壁肥厚
|
|
収縮期僧帽弁前方運動
|
収縮能:正常~軽度減少
|
核医学検査
|
左心室拡張・機能不全
|
収縮能亢進
|
収縮能:正常~軽度減少
|
|
血液還流異常(201Tl/Tc-MIBI)
|
|
心カテーテル検査
|
左心室拡張・機能不全
|
収縮能亢進
|
収縮能:正常~軽度減少
|
左室・(右室)充満圧上昇
|
左室・右室充満圧上昇
|
左室・右室充満圧上昇
|
心拍出量減少
|
左室流出路狭窄
|
|
[★]
- 英
- dilation、dilatation、enlargement、extension、dilate、distend、enlarge、extend、dilated
- 関
- 延ばす、延長、及ぶ、拡大、散大、伸長、伸展、増大、怒張、伸びる、広がる、膨張、拡張型、伸び、伸張
[★]
- 英
- sis, pathy
[★]
- 英
- dilated
- 関
- 拡張