出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/11/20 19:33:53」(JST)
この項目は、医学に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:医学/Portal:医学と医療)。 |
シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease: CMT)は、下腿と足の筋萎縮と感覚障害を特徴とし、進行すると上肢や手にも障害を生じる、神経原性筋萎縮である。遺伝性運動性感覚性ニューロパチー(Hereditary Motor and Sensory Neuropathy: HMSN)、腓骨筋萎縮症(peroneal muscular atrophy)とも呼ばれる。
シャルコー・マリー・トゥース病では、遺伝子異常が存在するため、神経が正常に機能するために必要な物質が発現しなくなる。そのため、神経の軸索もしくは髄鞘(ミエリン鞘)に異常が生じ、症状が現れるのだと考えられている。
主に、初期に脱髄型のニューロパチーを示す群(CMT1, CMT3, and CMT4: HMSN type1)と、初期に軸索障害型のニューロパチーを示す群 (CMT2: HMSN type2)とに大別されることが多い。しかし最近の研究によると、髄鞘形成に重要な役割を果たすシュワン細胞と神経細胞との間には密接な相互作用があり、しばしば脱髄・軸索障害の両者とが混在した病理所見を示すものがあることが判明している。
神経の分子構造は、神経細胞・シュワン細胞・線維芽細胞の相互作用により決定されており、特に神経細胞とシュワン細胞は相互にシグナルをやり取りし、神経細胞の生存と分化とに関与している。シャルコー・マリー・トゥース病では、この神経細胞とシュワン細胞間の相互作用が阻害されていることが知られている。
神経細胞と脱髄をおこしたシュワン細胞とが相互作用することにより、軸索の構造や機能にまで異常が生じることはわかっている。しかし、その結果なぜシャルコー・マリー・トゥース病が生じるのかは、未だに不明である。軸索の変性によって、または脱髄に伴う軸索の機能障害のために、筋力低下や感覚障害が生じている可能性はある。
脱髄型ニューロパチーを示す患者では、神経伝導速度(nerve conduction velocity: NCV)の低下が特徴的である。対して、軸索障害型ニューロパチーを示す患者では、複合筋活動電位(compound muscle action potential: CMAP)の低下が見られ、神経伝導速度は正常もしくはやや低下する程度である。
シャルコー・マリー・トゥース病は1867年、シャルコー(Jean-Martin Charcot(1825-1893))とその弟子であるマリー(Pierre Marie(1853-1940))およびトゥース(Howard Henry Tooth(1856-1925))によって報告された。
遺伝子異常の種類によって異なるが、一般に発症年齢は10代~20代、腓骨神経が障害されて下腿の逆シャンペンボトル形状で発症することが多い。特徴的な下腿の筋萎縮が生じる。病勢の進行に伴い、多くの患者では手指や前腕の筋萎縮も生じる。
その他、症状とその経過は多岐に及ぶ。
運動障害主体の疾患だが、軽度の感覚障害を伴うことがある。呼吸、視覚、聴覚や首・肩の筋肉にも障害がおこりうる。しばしば側弯症が見られる。咀嚼、嚥下に障害が見られ、構音障害も生じうる。筋萎縮に伴い、振戦の増強が見られる。妊娠や喫煙、極度の緊張は症状を悪化させる要因だとされている。
一般に症状の進行は緩徐であることが多く、生命予後は比較的良い。
確定診断は筋電図検査と神経生検による。筋電図では振幅の低下と刺激潜時の延長が特徴である。遺伝疾患であり、家族歴は診断の一助となりうる。遺伝子診断が行われることもあるが、現状では全ての責任遺伝子が判明しているわけではない。
シャルコー・マリー・トゥース病の中で最も頻度が高いタイプである。常染色体優性遺伝。脱髄を伴い、神経伝導速度の著名な低下が見られる。以下のサブタイプは皆同様な臨床症状を示す。
常染色体優性遺伝。軸索変性を主体とし、神経伝導速度は正常よりはやや低下するが38m/sを下回らない。
KIF 1B(廣川信隆らのグループによって発見された)が原因遺伝子である。またミトフシン2(mitofusion 2)蛋白をコードするMFN2(1p36.2)も原因遺伝子とされる。軸索障害が主体のため、神経伝導速度は低下しない。
RAB7遺伝子(3q21)を原因遺伝子とする。皮膚に潰瘍をきたす。
デジュリーヌ・ソッタス病(Dejerine-Sottas disease)とも呼ばれる。多くが乳児期に発症する。
Refsum病
現状では根本的な治療法は存在しない。足関節拘縮予防のためにストレッチングなどのリハビリテーションを行ったり、垂足に対して下肢装具を用いることがある。一般に筋力トレーニングは症状の進行を遅らせる効果はないとされている。神経保護作用を期待し、ビタミンB12の投与が行われることが多いが、有効性は疑問である。
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
国試過去問 | 「109E050」「108D030」「110I008」「110I015」「080B053」 |
リンク元 | 「筋力低下」「歩行」「針筋電図」「シャルコー・マリー・トゥース病」「筋萎縮」 |
関連記事 | 「病」「tooth」 |
E
※国試ナビ4※ [109E049]←[国試_109]→[109E051]
B
※国試ナビ4※ [108D029]←[国試_108]→[108D031]
C
※国試ナビ4※ [110I007]←[国試_110]→[110I009]
B
※国試ナビ4※ [110I014]←[国試_110]→[110I016]
muscle weakness : 約 4,720,000 件 muscular weakness : 約 725,000 件
症候・検査 | 障害部位 | |||
上位運動ニューロン | 下位運動ニューロン | 神経筋接合部 | 筋 | |
筋力低下 | + | + | + | + |
筋萎縮 | - | + | - | +*** |
筋線維束攣縮 | - | + | - | - |
筋卜ーヌス | ↑ | ↓ | → | ↓ |
腱反射 | ↑ | ↓~- | → | ↓~- |
病的反射 | + | - | - | - |
異常連合運動 | + | - | - | - |
血清CK | → | →(ときに→↑) | → | ↑ |
針筋電図 | → | 神経原性変化 | →** | 筋原性変化 |
神経伝導速度 | → | → (脱髄性の ニューロバ シー*で↓) |
→ | → |
筋生検 | → | 神経原性変化 | → | 筋原性変化、 各疾患に特徴的な変化 |
代表的疾患 | 脳梗塞、出血、脳腫癌など による片麻痺、脊髄障害 による対麻痺、運動ニューロン疾患、頚椎症、多発性硬化症 | 運動ニューロン疾患、頚椎症 *ニューロパシー (Charcot-Marie-Tooth病、Guillain-Barre症候群など) |
(a)重症筋無力症 (b)筋無力症候群 **誘発筋電図で、 (a)waningあるいは (b)waxingがみられる |
筋ジストロフィー、筋 炎、代謝.内分泌性ミオパシー、ミトコンドリア脳筋症 ***周期性四肢麻痺では 筋萎縮はほとんどない |
+:存在する、-:なし・消失、↑:亢進・上昇、↓:低下・減少、→:正常ないし著変なし、 →↑:軽度上昇 |
末梢神経領域の筋脱力 | 単神経障害 | ||
非対称性 | 一側上下肢 | 脳神経障害あり | 大脳、脳幹障害(脳血管障害、脳腫瘍など) |
脳神経障害なし | 頚椎症、脊髄腫瘍、脊髄空洞症 | ||
両側遠位優位 | 筋萎縮あり、感覚障害なし | 運動ニューロン疾患、筋緊張性ジストロフィー | |
急性に両下肢末梢から始まり. 感冒様症状が前駆 | Guillain-Barre症候群 | ||
対称性 | 両下肢 | 筋萎縮なし‥膀胱直腸障害レベルを有する感覚障害あり | 変形性脊椎症、脊髄腫瘍、MS、脊髄炎 |
筋萎縮なし‥感覚障害なし . | ヒ卜T細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)関連ミエロパシー(HAM)、亜急性連合性脊髄変性症 | ||
両側近位優位 | 易疲労性 | MG、Eaton-Lambert症候群 | |
急性2-3日で自然軽快 | 周期性四肢麻痺、低K性ミオパシー | ||
亜急性 | PM、DM | ||
慢性 : 神経原性 | Kugelberg-Welander病(脊髄性筋萎縮症3型) | ||
慢性 : 甲状腺機能異常 | 粘液水腫、甲状腺中毒性ミオパシー | ||
慢性 : ステロイド使用 | ステロイドミオパシー |
痙性片麻痺歩行 | hemiplegic gait | 錐体路障害 | 脳血管障害 変形頚椎症 多発性硬化症 頸髄ミエロパチー | |
ぶん回し歩行 | ||||
円弧歩行 | ||||
痙性対麻痺歩行 | spastic paraplegic gait | 両大脳半球・脳幹・脊髄側索における両側錐体路障害 | 家族性痙性対麻痺 脳性小児麻痺(Little病) HTLV-I associated myelopathty | |
はさみ歩行 | scissor gait | |||
パーキンソン歩行 | parkinsonian gait | 錐体外路障害 | パーキンソン病 | |
小刻み歩行 | short-stepped gait | パーキンソン症候群 | ||
失調歩行 | 小脳性運動失調・前庭性運動失調 | 小脳障害 前庭神経障害 |
OPCA LCCA Wernicke脳症 | |
酩酊様歩行 | ||||
脊髄後索性 | 深部感覚障害による空間見当識障害(位置覚・振動覚) | 脊髄癆 亜急性脊髄連合変性症 Friedreich失調症 多発性神経炎 | ||
踵打歩行 | ||||
鶏歩 | steppage gait | 下位運動ニューロン(腓骨神経麻痺で生じる下腿筋の筋力低下) | Charcot-Marie-Tooth病 腓骨神経麻痺 ポリオ 糖尿病 | |
動揺性歩行 | waddling gait | 肢体筋の障害 | Duchenne型筋ジストロフィー 多発筋炎 Kugelberg-Welander病 | |
トレンデレンブルグ歩行 | Trendelenburg gait | |||
アヒル様歩行 | ||||
間欠性跛行 | intermittent claudication | 下肢動脈の血流障害 下肢神経の障害 |
筋電図 | 振幅 | 持続時間 | 波形 | ||
安静時異常 | 線維性電位 | 20-200uV | 1-5msec | 2-3相波 | 筋萎縮性側索硬化症 |
線維束電位 | 2-4mV | 5-20msec | 2-3相波 | 筋萎縮性側索硬化症、脊髄根障害 | |
陽性鋭波 | 100uV-1mV | 10-100msec | |||
随意収縮時 | 神経原性 | 1mV以下 | 2-3msec以下 | 筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症、末梢神経炎、Charcot-marie-Tooth病 | |
筋原性 | 3mV以上 | 10msec以上 | 進行性筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー、多発性筋炎 |
CMTの分類 | 脱髄/軸索型、遺伝形式 |
CMT 1 | 脱髄型、常染色体優性、HMSN 1と同義 |
CMT 2 | 軸索型、遺伝形式を問わない、HMSN 2と同義 |
CMT 3 | Dejerine-Sottas症候群(高度な脱髄、遺伝形式を問わない) |
CMT 4 | 脱髄型、常染色体劣性 |
CMT X | 脱髄または軸索型、X 連鎖性 |
CMT plus | HMSN V-VIIが該当。ニューロパチー以外の身体的特徴を有する |
HMSN 1 | 神経肥厚を呈する脱髄型、常染色体優性。 神経伝導速度:低下。(病理)局所的な脱髄、再髄鞘化、オニオンバルブ形成 |
HMSN 2 | 腓骨筋萎縮を呈する軸索型。神経伝導速度:正常。(病理)運動感覚神経の変性 |
HMSN 3 | Dejerine-Sottas症候群。幼少期発症の重篤な脱髄型、運動発達遅滞、常染色体劣性 |
HMSN 4 | Refsume 病。(phytanic-CoA hydroxylase(phyH)の欠損) |
HMSN 5 | 痙性対麻痺、錐体路兆候を伴うHMSN |
HMSN 6 | 視神経萎縮を伴うHMSN |
HMSN 7 | 網膜色素変性を伴うHMSN |
神経原性 | 筋原性 | |
下位運動ニューロン障害 | ミオパチー | |
筋萎縮 | 遠位筋中心 | 近位筋中心 |
線維束性収縮 | + | - |
原因疾患例 | 筋萎縮性側索硬化症 | 筋ジストロフィー |
Charcot-Marie-Tooth病 | 多発筋炎 | |
多発神経炎 | 内分泌ミオパチー | |
例外 | 近位筋が主に冒される | 遠位筋が主に冒される |
Kugelberg-Welander病 | 筋強直性ジストロフィー | |
Kennedy-Alter-Sung症候群 | 遠位型筋ジストロフィー | |
Werdnig-Hoffmann病 |
.