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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/01/31 16:41:15」(JST)
もやもや病のデータ | |
ICD-10 | I675 |
統計 | 出典:WHO |
世界の患者数 | |
日本の患者数 | 3,900人 (1994年) |
○○学会 | |
日本 | 日本脳神経外科学会 |
世界 | アジア脳神経外科学会 |
この記事はウィキプロジェクトの雛形を用いています |
もやもや病 | |
---|---|
分類及び外部参照情報 | |
ICD-10 | I67.5 |
ICD-9 | 437.5 |
OMIM | 252350 |
DiseasesDB | 8384 |
eMedicine | neuro/616 |
MeSH | D009072 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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もやもや病(もやもやびょう、英称:moyamoya disease)は、脳底部に異常血管網がみられる脳血管障害。脳血管造影の画像において、異常血管網が煙草の煙のようにモヤモヤして見えることから、日本人研究者の鈴木二郎と高久晃の研究論文 Cerebrovascular "Moyamoya" Disease: Disease Showing Abnormal Net-Like Vessels in Base of Brain: Jiro Suzuki, Akira Takaku; Arch Neurol. 1969; 20(3): 288-299. により「もやもや病」と命名された。
これまで、厚生労働省の正式な疾患呼称は、ウィリス動脈輪閉塞症(ウィリスどうみゃくりんへいそくしょう)であったが、2003年から厚生省難病研究班の正式名称ももやもや病となり、もやもや病という病名が正式なものとして認証された。
もやもや病の本質的な病態は、内頸動脈終末部の進行性狭窄・閉塞である。もやもや血管は主幹動脈の閉塞により代償的に穿通枝などが異常に拡張した側副血行路である。診断基準によれば脳血管造影で以下の所見を呈するものをいう。
脳の動脈に狭窄があると、当該血管支配領域の脳は血液不足(虚血)に陥る。そこで代償的に新たな血管(もやもや血管)が構築される。しかしこれらの血管は細く、脳虚血・または脳出血に起因する種々の発作の原因となる。
虚血の発作は過換気が原因で起こる。過換気状態になると血液中の二酸化炭素分圧が低下する。二酸化炭素は血管を拡張させる働きがあるので、これが減少すると血管が収縮する。すると、元々細い異常血管網(もやもや血管)はさらに収縮を起こして脳に送るべき酸素の供給が不足する状態になる。こうして失神や脱力発作が起こる。典型的な過換気状態は、熱い蕎麦やラーメンなどを冷ます「吹き冷まし」行為や、啼泣、リコーダーやピアニカなどの吹奏楽器演奏時など、必要以上の呼吸を伴う動作で発生するため、注意を要する。また、成人発症例では動脈硬化が関与して狭窄を引き起こすものと考えられている。
一方出血の発作は、脳の血液需要に応じるための大量の血液を送る血管(もやもや血管)が細いために破綻するものと考えられている。成人発症例に多い。
出血箇所が悪い場合、致命傷となる。 また、成人に近い成長期に出血すると脳全体に脳浮腫(加速的な腫れ)を発症し、多くの場合、助からない。 最も留意すべきは補助的に作られた即席・もやもや血管は壁が薄く破れやすい所にある。
本疾患は原則両側性に起こるが、その程度は様々である。一方の内頸動脈の狭窄は重度であるがもう一方は極めて軽度であるということもある。
以下に小児と成人の初発症状で多いものを示す。
小児例では知能障害、成人例では脳出血
原因となる感受性遺伝子はRNF213遺伝子の多型p.R4810Kである。
(感受性遺伝子とは疾患への感受性を高める遺伝子をいい、遺伝子異常だけで起こる原因遺伝子とは区別される。)
RNF213をクローニングしたゲノムは591-kDaの細胞質に存在するタンパクをコードしており、ゼブラフィッシュによって発達期にこの遺伝子の発現を抑制すると、頭蓋内の眼動脈や脊椎動脈の分岐の異常が出ることから、血管形成に重要な新たな遺伝子であることも分かった。
また、この遺伝子を持っている人が全て発症するわけでなく、環境要因の関与も疑われている。さらにp.R4810Kは推定1万5千年の中国、韓国、日本共通の祖先にまでにさかのぼることも分かり、東アジアの歴史の中で広がっていった遺伝子であることも分かった。
(特定までの流れ)
2008年 15家系を用いた研究で、17番染色体の長腕の終末部領域に100個以上の遺伝子が存在することを見出し報告された。
2010年 17番染色体の長腕の終末部領域の遺伝子「Raptor」を道しるべとして原因遺伝子が検索できることが報告された。
2011年 17番染色体の候補領域にあるRNF213という遺伝子の4810番目のアルギニンがリジンに代わる多型(p.R4810K)が機能異常に結びつく多型と結論づけられた。
(出典:京都大学 もやもや病感受性遺伝子の特定とその機能についての発見[1])
年間発症率は10万人あたり0.35-0.5人と推定されている。日本では年間約400-500人程度の新患の登録があり、常に約4000人の患者がいる。男女比は1:1.7、好発年齢は5歳と30~40歳の2峰性を示す。小児では脳虚血症状が多いのに対して成人では出血発症が多い。約15%に家族歴があるとされている。
原因遺伝子のp.R4810kは、およそ1万5000年前のアジア大陸における祖先においてもやもや病感受性変異が起きたとされ、アジア、特に中国、韓国、日本人に多く確認されている疾患であり、中でも日本が最も患者数が多い。欧米・白人集団では原因となるp.R4810Kが確認されないことから発生頻度が極めて少ない。
DNA型鑑定により早急に手術適応のある症例かどうかを判断する指標(遺伝子マーカー)の有無を調べることが最も有効とされている。
遺伝子マーカーは現在解明されているものでR213遺伝子の多型であるc.14576G>Aがある。この多型を所持する場合のもやもや病発生リスクは通常の259倍である。さらにこの多型はもやもや病の発生時期も予測しうる遺伝子マーカーである。c.14576G>Aがホモ接合体の場合の予測発症時期は3歳前後、ヘテロ接合体の場合は7歳前後、そのどちらでもない野生型の場合は8歳前後となっている。(ホモ接合型:父母由来のそれぞれの遺伝子座の両方に同じ変異がある状態。ヘテロ接合型:父母由来の遺伝子座のどちらか一方にのみ変異がある状態。野生型:正常な(本来の)機能を有するもの。詳しくは対立遺伝子の項目)
(出典:横浜市立大学 学術院医学群の松本教授ら研究グループが、重症型もやもや病の遺伝マーカーを発見![2])
片頭痛や癲癇として見逃されている例が多いため、繰り返す頭痛や痙攣発作がある場合はもやもや病を疑い、MRIやMRAと合わせてDNA型鑑定を受ける。
激しい運動は脳虚血や脳出血を誘発する恐れがあるため、極力避けるようにする。
原則は脳血管撮影で診断するが、MRI並びにMRAできちんと診断基準を満たせば、必ずしも脳血管撮影は必要としない。ただし病期が初期であった場合には、MRAでは確認が難しいことが多いので注意を要する。
小児例での急速進行例では、重篤な知能障害が後遺症として残ることが多い。 成人例では、脳出血を起こした後に再出血し死亡率が高い。
脳神経外科、小児神経科、神経内科
日本人を中心にアジア人に多い疾患であるため、日本での研究が世界をリードしている。
日本で脳神経外科学が発達し始めた1950年代、血管造影において1953年(昭和28年)に選択的血管造影法が創始された。同法は脳の血管造影にも導入され、未知の疾患が様々な日本語や英語の呼称、あるいは、日本の研究者の苗字をとった名称などでも報告された。
それら未知の疾患のうち、いくつもの名称で発表されていた当疾患は、1965年(昭和40年)8月号の「脳と神経」の特集において1つの疾患として整理された[1]。また、原因については奇形説と側副血行路説とが唱えられた[1]。
のちに側副路説が優位となると、同説に基いた「ウィリス動脈輪閉塞症」(脳神経外科学会会長であった工藤達之慶應義塾大学教授が提唱)をこの統一された疾患の標準病名として厚生省が採用するが、その一方で、同説の鈴木二郎東北大学教授が1967年(昭和42年)に命名した「もやもや病」[2]が海外では広く受け入れられ、疾病及び関連保健問題の国際統計分類でも標準病名となってしまった。2001年(平成13年)になり、世界の趨勢に合わせて日本でも厚生労働省が「もやもや病」を標準病名とした。同年、シンガーソングライターの徳永英明が当疾患に罹患したことが報じられた。
なお、各国語での「もやもや病」にあたる病名は、日本語のローマ字表記を用いた“moyamoya”と、病気を表す各国語により表現される。しゃぶしゃぶと並び、日本語の擬態語が外国語に借用された数少ない例であるが、この“moyamoya”という綴りは、英語では「モィヤモィヤ」、フランス語では「モワイヤモワイヤ」、スペイン語では「モヤモヤ」「モジャモジャ」などと発音する綴り方であるため、正しく「もやもや」と発音していない外国人医師も見られる。
京都大学 もやもや病感受性遺伝子の特定とその機能についての発見(2011年7月21日)
横浜市立大学 学術院医学群の松本教授ら研究グループが、重症型もやもや病の遺伝マーカーを発見!(2012年3月2日)
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Grade | Hunt and Hess分類(1968) | Hunt and Kosnik分類(1974) | WFNS分類(1983) | |
GCS score | 主要な局所神経症状(失語あるいは片麻痺) | |||
I | 無症状か、最小限の頭痛および軽度の項部硬直をみる | 15 | なし | |
Ia | ー | 急性の髄膜あるいは脳症状をみないが、固定した神経学的失調のあるもの | ー | ー |
II | 中等度から強度の頭痛、項部硬直をみるが、脳神経麻痺以外の神経学的失調はみられない | 14~13 | なし | |
III | 傾眠状態、錯乱状態、または軽度の巣症状を示すもの | 14~13 | あり | |
IV | 昏迷状態で、中等度から重篤な片麻痺があり、早期除脳硬直および自律神経障害を伴うこともある | 12~7 | 有無は不問 | |
V | 深昏睡状態で除脳硬直を示し、瀕死の様相を示すもの | 6~3 | 有無は不問 | |
重篤な全身性疾患、たとえば 高血圧、糖尿病、著明な動脈硬化、 または慢性肺疾患、 または脳血管造影でみられる頭蓋内血管攣縮が 著明な場合には、重症度を1段階悪いほうに移す。 |
[★] もやもや病、ウィリス動脈輪閉塞症、cerebrovascular moyamoya disease
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