- 英
- cardiac tamponade (M)
- 関
- 心膜血腫、ベック三徴、閉塞性ショック
- 心膜腔になんらかの液体が充満して心室への血流を制限する状態
病因
- 心膜腔に漿液、血液、ガス、腫瘍が存在することによる
- 急性的に心膜液が100-150ml貯留することで症状を呈する(資料によっては150-200ml)。
病態
- まとめると、「右心不全」と「左心不全の前方不全」による症状が出現する、と考えられる? ← 肺にまつわる症状は出現しない?(そもそも右心系から肺循環にうっ血するほど血液が拍出されないから?)
- 心嚢水の貯留により心臓の低圧部位が圧迫され、虚脱する(心嚢水の貯留により高圧部位の圧力が心嚢水を介して伝わる)。収縮期早期に低圧なchamberは右房、拡張期に低圧なのは右室であり、この部位が虚脱しやすい(出典不明)。
- 右心型 (SUR.401)
- 右心系への還流異常による中心静脈圧上昇 → 頚動脈怒張(クスマウル徴候 ← 顕著には出現しないはずだが?)、肝腫大、右心房圧上昇、下大静脈圧上昇
- 左心系 (SUR.401)
- 心拍出量低下 → 奇脈、脈圧低下、心音減弱、頻脈、呼吸困難、失神 (SUR.401)
症状
- ベック三徴 Beck's triad:静脈圧上昇、血圧低下、心拍動微弱
- 心拍出量低下 → 血圧低下、奇脈
検査
- 胸部単純X線写真:心拡大
- 心エコー:心嚢水貯留。右房、右室の虚脱。
治療
- 心嚢穿刺、開窓術による心嚢内血液除去
- 支持的療法:(軽症例の場合のみ。だたし、循環動態のモニターをしながら)輸液(血液、血漿、デキストラン、生理食塩水) (参考2)
やってはいけない治療
- 静脈還流量を減じる治療 → 利尿薬(サイアザイド系利尿薬、ループ利尿薬)、ニトログリセリン、陽圧換気人工呼吸、カルシウム拮抗薬?
- 血圧を下げる薬物投与 → ヒドララジン
- 105C031
参考
- 1. [charged] 心タンポナーデ - uptodate [1]
- 2. [charged] 心嚢液貯留の診断および治療 - uptodate [2]
国試
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/02/12 04:08:41」(JST)
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心タンポナーデ(しんタンポナーデ、仏: tamponnade péricardique、英: cardiac tamponade、独: Perikardtamponade)とは、心臓と心臓を覆う心外膜の間に液体が大量に貯留することによって心臓の拍動が阻害された状態である。容易に心不全に移行して死に至るため、早期の解除が必須である。
特に外傷や大動脈解離の上行大動脈型等の大血管損傷が原因の場合、急速に死に至る可能性が高く、早期の診断と手術が必須であり、また手術に至った場合も救命率はきわめて低い。 上記以外の原因の場合は、心腔穿刺にて排液を行えば症状は急速に消失する。
目次
- 1 メカニズム
- 2 診断
- 3 治療
- 4 原因となる疾患
メカニズム
心臓は拍動という激しい運動を休みなく続けているが、それによる周囲臓器との摩擦を最小限に抑えるための仕組みが心外膜である。表面平滑なこの膜によって、スムーズな拍動が可能となっている。しかし心外膜腔には通常少量の潤滑油の役割をする液体がわずかに存在するのみで、非常に狭い空間である。そこに大量の液体が何らかの理由で貯留すると、心臓を圧迫し、その運動、特に拡張運動を著しく阻害し、容易に心不全を引き起す。これが心タンポナーデを引き起す原理である。
診断
心エコーにて心外膜腔に明らかな液体の貯留を認めるため診断は容易だが、臨床的には心エコーを実施する判断が重要である。脈圧の低下など、注目しづらい症候を診断の端緒とせねばならないため、診断が遅れることも多い。臨床的には、下記のBeckの三徴が重要とされている。
- 血圧(動脈圧)低下
- 静脈圧上昇
- 心音微弱
また、心電図上ではlow voltageを呈することが多い。
治療
上記のように心腔穿刺にて容易に治療出来るが、大血管損傷が原因の場合は穿刺によって大量の出血を起こしてあっという間に心停止に至る危険性が高い。その疑いが少しでもある場合は、人工心肺や血液回収装置を準備した上で手術室などで慎重に実施すべきである。
原因となる疾患
大動脈解離、鋭的心壁外傷、心外膜炎、悪性心膜中皮腫
心血管疾患 |
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疾患 |
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心疾患
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不整脈
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徐脈性
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洞不全症候群 | 房室ブロック | 脚ブロック(右脚ブロック · 完全右脚ブロック · 左脚ブロック)
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頻脈性
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上室性
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洞性頻脈(en) | 心房細動 | 心房粗動(en) | ブルガダ症候群 | 早期再分極症候群 | QT延長症候群 | WPW症候群
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心室性
|
心室細動 | 心室頻拍
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虚血性疾患
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狭心症 | 心筋梗塞 | 急性冠症候群 | 冠動脈血栓症 | 心室瘤 | 心破裂 | 乳頭筋断裂(en)
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弁膜症
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僧帽弁狭窄症 | 僧帽弁閉鎖不全症 | 三尖弁狭窄症(en) | 三尖弁閉鎖不全症(en) | 大動脈弁狭窄症 | 大動脈弁閉鎖不全症(en)
|
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先天性心疾患
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心房中隔欠損 | 心室中隔欠損 | 心内膜床欠損症 | 動脈管開存症 | ファロー四徴症(極型ファロー四徴症) | 大血管転位(左旋性 · 右旋性) | 総肺静脈還流異常症 | 大動脈縮窄 | 左心低形成症候群 | 両大血管右室起始症 | 三尖弁閉鎖(en) | 単心室
|
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心内膜・心筋
・心膜疾患
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心内膜疾患
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感染性心内膜炎
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心膜疾患
|
心膜炎(急性心膜炎(en) · 慢性収縮性心膜炎) | 心タンポナーデ
|
|
心筋疾患
|
心筋症(虚血性心筋症・拡張型心筋症(en) · 肥大型心筋症(en) · 拘束型心筋症(en) · 特発性心筋症) | 心筋炎
|
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心臓腫瘍(en) | 心臓性喘息 | 肺性心
|
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血管疾患
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大血管
|
大動脈瘤(胸部・腹部(en)・胸腹部) | 大動脈解離 | 大動脈炎症候群
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動脈
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閉塞性動脈硬化症 | 閉塞性血栓性血管炎 | 動静脈瘻 | 動脈硬化 | レイノー病
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静脈
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静脈瘤 | 血栓性静脈炎 | 静脈血栓塞栓症 | 脂肪塞栓症
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病態・症候 |
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心不全
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左心不全 | 右心不全 | 両心不全(en)
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血圧異常
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高血圧
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本態性高血圧症(en) | 二次性高血圧(en) | 高血圧性緊急症(en)
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低血圧
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心臓発作 | 心臓肥大 | 心停止 | 心肺停止
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所見・検査 |
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血圧計 | 聴診 | 心雑音 | 心電図 | 心電図モニタ | 心臓超音波検査 | 胸部X線写真 | 胸部X線CT | 心臓MRI | 心臓カテーテル検査(肺動脈カテーテル) | 心臓核医学検査 | 脈波伝播速度検査
|
|
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治療 |
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外科的治療
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冠動脈バイパス術(CABG)
|
CABG | off-pump CAB(OPCAB) | MIDCAB(en) | TECAB(en)
|
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弁膜症手術
|
弁置換術(en) | 弁形成術(en) | 弁輪形成術 | 交連切開術(en)
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小児心臓外科
|
動脈管結紮術 | BTシャント | 肺動脈絞扼術(en) | ノーウッド手術 | グレン手術 | フォンタン手術 | ジャテン手術 | ラステリ手術 | ロス手術
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心不全外科
|
心移植術 | 補助人工心臓装着術 | 左室形成術(Dor・SAVE・Overlapping)
|
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不整脈外科
|
メイズ手術(en) | ペースメーカー | 植え込み型除細動器
|
|
大動脈手術
|
大動脈人工血管置換術 | 大動脈基部置換術 (Bentall, David) | ステントグラフト内挿術(en)
|
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末梢血管手術
|
末梢動脈血行再建術 | 末梢静脈血行再建術 | 静脈抜去術(en) | 静脈血栓摘除術(en) | 内シャント作成術 | 肢切断
|
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内科的治療
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循環作動薬
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抗不整脈薬
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Ia群: プロカインアミド, キニジン
Ib群: リドカイン, フェニトイン
Ic群: フレカイニド(en), プロパフェノン(en)
II群: 交感神経β受容体遮断薬(プロプラノロールなど)
III群: アミオダロン, ソタロール(en)
IV群: カルシウム拮抗剤(ベラパミル, ジルチアゼムなど)
|
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心不全治療薬(en)
|
利尿薬 | 血管拡張薬 | 強心配糖体 | 強心剤 | PDEⅢ阻害薬
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狭心症治療薬
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交感神経β受容体遮断薬 | 硝酸薬
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高血圧治療薬
|
利尿薬 | 交感神経β受容体遮断薬 | レニン-アンジオテンシン系 (ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、レニン阻害薬(en)) | カルシウム拮抗剤 | アドレナリン作動薬 | 脂質降下薬
|
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血管内治療
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経皮的冠動脈形成術
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循環器系の正常構造・生理 |
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- 1. 心タンポナーデ cardiac tamponade
- 2. 心嚢液貯留の診断および治療 diagnosis and treatment of pericardial effusion
- 3. 悪性腫瘍関連心膜疾患 pericardial disease associated with malignancy
- 4. 収縮性心膜炎 constrictive pericarditis
- 5. 小児における急性呼吸困難の原因 causes of acute respiratory compromise in children
Japanese Journal
- 心穿刺・心切開 (特集 研修医のためのER診療マニュアル(2)基本手技・検査編) -- (胸部)
- 心・大血管外傷 (特集 外傷診療における最新のエビデンス)
- 症例 心タンポナーデ,右心不全で発症し,化学療法および手術による集学的治療により全身状態の改善が得られた右房原発血管肉腫の1例
- 診断のテクニックが必ずアップする心エコー講座(第6回)心タンポナーデと収縮性心膜炎の診断
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- KOMPASは慶應義塾大学病院の医師、スタッフが作成したオリジナルの医療・健康情報です。患者さんとそのご家族の皆さんへ、病気、検査、栄養、くすりなど、広く医療と健康に関わる情報を提供しております。
- 心タンポナーデ 心タンポナーデ1 概念:何らかの原因で心膜腔の内圧が上昇し、心室の拡張期充満が障害され、心拍出量が低下した状態。心膜腔の内圧上昇は大部分が血液の貯留であるが、稀に空気であることもある。 病因 ...
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- 次の文を読み、30、31の問いに答えよ。
- 95歳の男性。呼吸困難のため搬入された。
- 現病歴 咳嗽が続くため2か月前に自宅近くの診療所を受診した。胸部エックス線写真にて肺野に異常陰影を認めたため、近くの病院を紹介され、精査の結果、肺腺癌、肺内転移、骨転移および心膜転移と診療された。患者本人や家族と相談の結果、積極的治療は行わない方針となり、診療所の医師が主治医となって自宅で療養していた。昨日から呼吸困難が出現し、今朝になって増強したため、主治医に相談した上で、救急車を要請した。
- 既往歴 7年前に心筋梗塞。
- 生活歴 息子夫婦、孫2人との5人暮らし。喫煙は20本/日を20歳から50年間継続した後、禁煙している。飲酒は機会飲酒。
- 家族歴 特記すべきことはない。
- 現症 意識は清明。身長160cm、体重52kg。体温37.5℃。呼吸数32/分、努力様。脈拍120/分、整。血圧72/40mmHg。経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)88%。頚静脈の怒張を認める。心音に異常を認めない。両側肺底部にcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側下腿に浮腫を認める。
- 検査所見 血液所見:赤血球 385万、Hb 11.0g/dl、Ht 36%、白血球 9,500、血小板 22万。血液生化学所見:血糖 86mg/dl、総蛋白 5.4g/dl、アルブミン 2.6g/dl、尿素窒素 24mg/dl、クレアチニン 1.1mg/dl、AST 24IU/l、ALT 40IU/l、LD 322IU/l(基準176-353)、ALP 158IU/l(基準115-359)、Na 142mEq/l、K 4.2mEq/l、Cl 101mEq/l。CRP 1.2mg/dl。胸部エックス線写真では原発巣の増大、心陰影の拡大および胸水の貯留を認める。心電図では洞性頻脈と低電位とを認める。
[正答]
※国試ナビ4※ [105C030]←[国試_105]→[105C032]
[★]
- 次の文を読み、69~71の問いに答えよ。
- 66歳の男性。胸背部痛と左上下肢の筋力低下のため救急車で搬入された。
- 現病歴:本日午前11時、デスクワーク中に本棚上段から書類を取ろうと手を伸ばしたところ、激烈な胸背部痛が突然出現した。その後すぐに左片麻痺が出現し、さらに重苦しい胸痛と冷汗が出現したため、発症から30分後に救急車を要請した。
- 既往歴:2年前から高血圧症で通院治療中。
- 生活歴:妻と2人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
- 家族歴:父親は脳出血のため86歳で死亡。母は胃癌のため88歳で死亡。
- 現症:意識は清明。身長 162cm、体重 80kg。血圧 78/62mmHgで明らかな左右差を認めない。脈拍 108/分(微弱)、整。呼吸数 18/分。SpO2 99%(room air)。頸静脈の怒張を認める。眼瞼結膜に貧血を認めない。心音はⅠ音Ⅱ音とも減弱しており、胸骨左縁第3肋間を最強とするⅡ/Ⅵの拡張期灌水様雑音を認める。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。左上下肢に不全片麻痺を認め、Babinski徴候は陽性である。
- 検査所見:心電図は、心拍数 108/分の洞調律で、肢誘導および胸部誘導ともに低電位で、Ⅱ、Ⅲ、aVfにST上昇を認めた。ポータブル撮影機による仰臥位の胸部エックス線写真(別冊No.16A)及び6か月前に撮影された立位の胸部エックス線写真(別冊No.16B)を別に示す。胸部エックス線写真を見比べながら、研修医が指導医に所見や解釈を報告した。
[正答]
※国試ナビ4※ [114C069]←[国試_114]→[114C071]
[★]
- 次の文を読み、37、38の問いに答えよ。
- 68歳の女性。交通事故のため搬入された。
- 現病歴:夫の運転する乗用車の助手席に座っていた。黄信号で交差点に進入したところ、右折してきた対向車と衝突した。シートベルトは着用していなかった。右胸部痛を訴えている。搬送中に静脈路が確保された。
- 既往歴:特記すべきことはない。
- 現 症:意識は清明。脈拍 112/分、整。血圧 90/60mmHg。眼球結膜に異常を認めない。頚静脈怒張と冷汗とを認める。心音は微弱。右肺野で呼吸音を聴取しない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
- 検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球 380万、Hb 10.0g/dl、Ht 35%、白血球 8,500、血小板 30万。血液生化学所見:血糖 82mg/dl、総蛋白 6.2g/dl アルブミン 3.4g/dl、尿素窒素 12mg/dl、クレアチニン 1.1mg/dl、AST 35IU/l, ALT 18IU/l、LD 176IU/l(基準176-353)、ALP 233IU/l(基準115-359)、Na 138mEq/l、K 4.3mEq/l、Cl 99mEq/l。胸部エックス線写真(別冊No.6)を別に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [104H036]←[国試_104]→[104H038]
[★]
- 79歳の男性。呼吸困難のため搬入された。10年前から高血圧症、脂質異常症および2型糖尿病で加療中である。1年6か月前に急性心筋梗塞を発症し、左前下行枝の完全閉塞に対しカテーテル治療を施行された。その後、抗血小板薬、利尿薬およびβ遮断薬を投与され、日常生活で心不全の症状を認めなかった。数日前から労作時の息切れを自覚し、数時間前から安静時にも強い呼吸困難を生じたため救急搬送された。意識は清明。脈拍 104/分、整。血圧 154/102mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 100%(リザーバー付マスク10L/分酸素投与下)。心尖部を最強点とするIV/VIの収縮期雑音を聴取する。両側の胸部にcoarse cracklesとwheezesとを聴取する。血液生化学所見:AST 22IU/L、ALT 19IU/L、LD 218IU/L(基準 176~353)、CK 52IU/L(基準 30~140)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP) 952pg/mL(基準 18.4以下)。胸部エックス線写真(別冊No. 5A)と心エコー図(別冊No. 5B)とを別に示す。
- 呼吸困難の原因として考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109B047]←[国試_109]→[109B049]
[★]
- 58歳の男性。ショッピングセンターの駐車場でエンジンがかかったまま停車している自家用車を不審に思った買い物客により、運転席で死亡しているのを発見された。救急隊が現場に到着した時には既に硬直がみられたため病院には搬送されず、死因等究明のため司法解剖された。身長 170cm、体重 90kg。背面に死斑が高度に発現し、硬直は全身の諸関節で強い。外表に創傷はない。脳は1,750gで浮腫状である。胸郭・脊椎に骨折はなく、左右胸膜腔に液体貯留はほとんどない。心嚢に破裂はない。心重量は610gで冠状動脈に内膜肥厚・血栓はなく、心筋には異状を認めない。大動脈はValsalva洞から左鎖骨下動脈起始部の下15cmの高さにかけて、内外膜間が解離し、両端部の内膜および中膜に亀裂がある。肺と肝臓はうっ血しているが、臓器表面に異状はない。死後解剖前に撮影した胸部CT(別冊No. 5A)及び解剖時に心嚢を切開した際に撮影した写真(別冊No.5B)を別に示す。
- 最も考えられる病態はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114C035]←[国試_114]→[114C037]
[★]
- 75歳の男性。重症肺炎で入院中である。
- 現病歴: 2週前に肺炎と低酸素血症のため搬入された。救急室で気管挿管を施行され、集中治療室に入院となった。
- 既往歴: 53歳から糖尿病で内服加療中。 60歳から高血圧症で内服加療中。
- 生活歴:長男夫婦と同居。妻が5年前に脳梗塞のため死亡。
- 家族歴 :父親が糖尿病。
- 入院後、人工呼吸器管理が長期にわたったため、本日気管切開術を行い、引き続き人工呼吸器管理を行った。 1時間後にアラームが鳴ったため駆けつけると、人工呼吸器のモニターで気道内圧が上昇しており、患者の頸静脈は怒張していた。
[正答]
※国試ナビ4※ [106G064]←[国試_106]→[106G066]
[★]
- 65歳の男性。1時間前からの胸内苦悶を主訴に来院した。10年前から脂質異常症を指摘され内服治療中である。意識は清明。呼吸数20/分。脈拍60/分、整。血圧108/72mmHg。12誘導心電図でII、III、aVF誘導でST上昇を認めた。直ちに緊急冠動脈造影を行ったところ、右冠動脈に99%の狭窄を認めたため、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した。再潜流直後に脈拍が120/分に上昇しショック状態となり、意識レベルが低下した。
- この患者に発生した可能性が高いのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105E043]←[国試_105]→[105E045]
[★]
- 75歳の女性。2時間持続する激しい前胸部痛を主訴に来院した。意識は清明。脈拍88/分、整。血圧104/88mmHg。呼吸数16/分。心音と呼吸音とに異常を認めなかった。心電図のV1-V5誘導でST上昇を認めたため、緊急入院し、治療を行った。入院後3日、突然の呼吸困難を自覚した。脈拍104/分、整。血圧90/70mmHg。呼吸数24/分。心音の聴取で、入院時に認めなかった全収縮期雑音を認める。
- この時点の病態として考えられるのはどれか。 2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [106I078]←[国試_106]→[106I080]
[★]
- 22歳の男性。バイク走行中にトラックと衝突し全身を強打した。呼吸困難を訴え救急車で搬入された。意識JCS10。呼吸数24/分。脈拍104/分、微弱。血圧74/34mmHg。瞳孔径に左右差なく、対光反射は両眼で正常である。眼瞼結膜に貧血はなく、眼球結膜に黄疸はない。外頚静脈は怒張している。心音は減弱し、呼吸音に異常はない。腹部は平坦、軟である。四肢に運動障害はない。
- 血圧低下の原因として最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [097I034]←[国試_097]→[097I036]
[★]
- 60歳の女性。子宮頸癌のため入院し、広汎子宮全摘術を受けた。術後3日目に初めて歩行を開始したところ、突然呼吸困難を訴え、間もなく意識を消失しチアノーゼが出現した。すぐに酸素吸入を開始した。身長154cm、体重65kg。呼吸数38/分。脈拍140/分、整。血圧60/40mmHg。胸部聴診で心雑音はなく、呼吸音は正常である。動脈血ガス分析(自発呼吸、マスクO2 3l/分):PaO2 70Torr、PaC02 28Torr。最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [098B010]←[国試_098]→[098B012]
[★]
- 53歳の女性。突然の強い胸腹部痛を主訴に救急車で来院した。10年前から高血圧の治療を受けている。来院時の脈拍92/分、整。上肢の血圧180/92mmHg。下肢は冷感を伴い、脈拍動は微弱,血液所見:赤血球360万、Hb10.2g/dl、Ht31%。胸部造影CTを以下に示す。
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [096A021]←[国試_096]→[096A023]
[★]
- 70歳の女性。突然の呼吸困難のため搬入された。足が不自由で家で寝ていることが多い。意識は清明。身長152cm、体重60kg。体温36.5℃。呼吸数40/分。脈拍140/分、整。血圧90/60mmHg。心音でII音亢進。腹部は平坦で、圧痛や抵抗を認めない。肝・脾を触知しない。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH7.46、PaO2 68Torr、PaCO2 36Torr。
- 心電図でII、III、aVFのST上昇、V1-3のST変化を認めた。
- 考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [103G045]←[国試_103]→[103G047]
[★]
- 56歳の女性。突然の強い胸背部痛のため救急車で搬送された。10年前から高血圧の治療を受けている。脈拍92/分、整。上肢の血圧180/92mmHg。下肢は冷たく、脈拍は微弱である。血液所見:赤血球360万、Hb10.2g/dl、Ht31%。胸部造影CTを以下に示す。この疾患に合併するのはどれか。
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [099G022]←[国試_099]→[099G024]
[★]
- 65歳の男性。スクーターで走行中に対向車と正面衝突して受傷したため救急車で搬入された。腹部から腰部の痛みを訴えている。意識はほぼ清明。体温 35.8℃。心拍数 140/分、整。血圧 80/50mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 100%(リザーバー付マスク10L/分酸素投与下)。頸静脈の怒張を認めない。迅速簡易超音波検査(FAST)で異常所見を認めなかった。
- ショックの原因として最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112C047]←[国試_112]→[112C049]
[★]
- 76歳の男性。呼吸困難を主訴に救急車で来院した。4日前に強い前胸部圧迫感が数時間持続した。今朝、急に呼吸困難が出現した。呼吸数26/分。脈拍116/分、整。血圧80/50mmHg。胸部で心尖部に最強点を有する汎収縮期雑音を聴取する。四肢末梢の冷感が著明である。Swan-Ganzカテーテル検査での肺動脈楔入圧(PCWP)を以下に示す。診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [098B011]←[国試_098]→[098B013]
[★]
- 74歳の女性。前胸部痛で緊急入院した。
- 前胸部痛は4日前に起こり、徐々に改善したが、悪心を伴う胸部圧迫感が持続している。
- 20年来高血圧の治療を受けている。
- 入院翌日、突然胸部苦悶感が出現し、血圧72/40mmHgまで低下した。前胸部に全収縮期雑音を新たに聴取する。
- 心電図と心エコー図とを以下に示す。
- 診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [100F025]←[国試_100]→[100F027]
[★]
- 35歳の男性。乗用車を運転中にトレーラーに追突しハンドルで胸部を強く打撲し搬入された。意識は混濁。呼吸数40/分。脈拍120/分、整。血圧66/46mmHg。皮膚蒼白、発汗、四肢末梢冷感および頸静脈の怒張を認める。心音は微弱である。呼吸音に異常を認めない。心エコー図を以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [101H025]←[国試_101]→[101H027]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [099D069]←[国試_099]→[099D071]
[★]
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [098G074]←[国試_098]→[098G076]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [113B006]←[国試_113]→[113B008]
[★]
- 英
- pulmonary thromboembolism, PTE
- 同
- エコノミークラス症候群
- 関
- 肺塞栓症、肺動脈血栓症
概念
- 肺動脈内腔に1次性に形成された血栓により閉塞された病態を肺血栓症、静脈系から肺動脈へ流入した物質により肺動脈が閉塞された病態を肺塞栓症という。
- 両者をまとめて肺血栓塞栓症と呼ぶが、臨床的には肺塞栓症が大半である。
- 塞栓物質として静脈系血栓、腫瘍、脂肪、羊水、空気、造影剤などが挙げられるが、頻度として下肢および骨盤の深部静脈血栓が80%と圧倒的に多い(深部静脈血栓症 DVT)。
- 肺動脈の閉塞により末梢肺組織が出血性壊死に陥ったものを特に肺梗塞と呼ぶ。
疫学
- 発症率は人口 10万人に対して 2.8人(1996年統計)。
- 男女比は1:1.3。あらゆる年齢層に発症するが、60-70歳代がピーク。
- 死亡率は14%。心原性ショックを呈した症例では30%(うち血栓溶解療法を施行された症例では20%、施行されなかった症例では50%)、心原性ショックを呈さなかった症例では6%である。
産婦人科
産科
- 産褥期、特に帝王切開術を経た患者に多い。(G10M.318)
症状
急性肺血栓塞栓症
- 参考1
症状
|
長谷川ら (n=224)
|
肺塞栓症研究会 (n=579)
|
呼吸困難
|
171(76%)
|
399/551(72%)
|
胸痛
|
107(48%)
|
233/536(43%)
|
発熱
|
50(22%)
|
55/531(10%)
|
失神
|
43(19%)
|
120/538(22%)
|
咳嗽
|
35(16%)
|
59/529(11%)
|
喘鳴
|
32(14%)
|
記載なし
|
冷汗
|
19(8%)
|
130/527(25%)
|
血痰
|
記載なし
|
30/529(6%)
|
動悸
|
記載なし
|
113/525(22%)
|
症状と病態との関係
- 1. 頻度の高い症状:急に発症する呼吸困難(約70-80%)、胸痛(約40-50%)。
- 2. 広範な塞栓の場合にみられる症状:不整脈(約30%)、狭心症様の胸部重苦感(約10%)、失神(約10%)、右心不全によるショック(10%以下)。
- 3. 肺梗塞・肺水腫を伴う場合に多い症状:胸膜炎様胸痛(約30%)、咳嗽(約10-40%)、発熱(約10-50%)、血痰(約5-10%)。
- 4. 特徴的発症状況:安静解除直後の最初の歩行時、排便・排尿時、体位変換時。
検査
- 参考1
-
- 胸部単純X線写真
- 心電図(右側胸部誘導の陰性T波、洞性頻脈、SⅠQⅢTⅢ、右脚ブロック、ST低下、肺性P、時計方向回転)
- SⅠQⅢTⅢ:Iでs waveがあり、IIIでQ waveがあり、なおかつT waveが陰転
- 肺動脈造影
- 肺シンチグラフィ(換気, 血流)
- CT
- MRA
- 経食道心エコー
診断
- 頻呼吸、頻脈、低酸素血症、胸痛など肺血栓塞栓症が疑われる症状があれば、酸素投与、ルート確保、血液検査(動脈血液ガス検査)、胸部XP、胸部CT、12誘導心電図を速やかに施行する。
- 可能であれば、ベットサイドエコーで右心不全徴候、特に右室が左室を圧排していないかどうか確認する。
- Dダイマーが高値であれば、PTEの尤度を上げることができる。
- 下肢のcompression testが陽性であれば、有無を言わさず胸部造影CTをやるしかない。
- 速やかに検査が可能であり、確定診断が可能なのは胸部造影CTである。
鑑別診断
- 胸痛や呼吸困難を来す疾患が鑑別となる。
合併症
治療
- 方針:呼吸管理(酸素投与)、循環管理(昇圧薬(ドパミン、ドブタミン、ノルエピネフリン))
- 抗凝固療法:ヘパリンから始め、ワルファリンの内服を開始。
- 抗血栓溶解療法:右心不全例(抗凝固療法に加えてウロキナーゼやtPA(モンテプラーゼ)を投与)
- (急性循環不全)カテーテルインターベンション、外科的血栓摘除術
- 経皮的心肺補助装置:循環が保てなくなった場合
ガイドライン
参考
- 1. 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_andoh_h.pdf
- 2. 学際領域の診療 Interdisciplinary Practice 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症 - 日産婦誌
- http://www.jsog.or.jp/PDF/56/5610-382.pdf
- 3. E.婦人科疾患の診断・治療・管理 10.10)深部静脈血栓症・肺塞栓症 - 日産婦誌61巻11号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/61/6111-591.pdf
- 4. LITFL ≫ ECG Library ≫ ECG Basics ≫ T wave
- http://lifeinthefastlane.com/ecg-library/basics/t-wave/
国試
[★]
- 英
- aortic dissection
- 関
- 解離性大動脈瘤
大動脈解離の病態
ガイドライン
- 1. 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2006年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_takamoto_h.pdf
文献
- 腹部大動脈瘤の血管内手術と開腹手術、長期死亡率に差なし
- 腹部大動脈瘤(AAA)の修復を血管内手術または開腹手術によって受けた患者の転帰を8年間にわたって調べた試験(EVER1)で、両者の全死因死亡率、動脈瘤関連死亡率に差はないことが明らかになった。また、開腹手術が適用にならないAAA患者を対象に、血管内手術を受けた患者と介入なしの患者の長期的な転帰を比較した試験(EVER2)では、両者の全死因死亡率にも差はないことが明らかになった。
- Endovascular repair of aortic aneurysm in patients physically ineligible for open repair.
- N Engl J Med. 2010 May 20;362(20):1872-80. Epub 2010 Apr 11.
- United Kingdom EVAR Trial Investigators et al.
- PMID 20382982
- Endovascular versus open repair of abdominal aortic aneurysm.
- N Engl J Med. 2010 May 20;362(20):1863-71. Epub 2010 Apr 11.
- United Kingdom EVAR Trial Investigators et al.
- PMID 20382983
- Long-term outcome of open or endovascular repair of abdominal aortic aneurysm.
- N Engl J Med. 2010 May 20;362(20):1881-9.
- De Bruin JL et al.
- PMID 20484396
国試
- 105I059:Stanford A偽腔閉塞型急性大動脈解離。ガイドライン1では内科的治療が良いか外科的治療が良いかはどちらともいえないと記載がある。いずれにせよ、早急な降圧が重要である。
[show details]
[★]
- 英
- chronic renal failure, CRF
- 関
- 腎不全、急性腎不全
概念
- 数ヶ月から数十年に及ぶ緩徐な経過で腎機能障害が進行し、末期腎不全に至る不可逆的疾患。
- 濾過される原尿の量が減少するので、血液中の不要物を排泄したり、電解質・水分の調節能が低下する。
定義 (日本人腎臓学会 CKD診断ガイド)
- 1.-2.のいずれか、または両方が3ヶ月以上持続する。
- 1. 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。特に尿蛋白が存在
- 2. GFR < 60 ml/min/1.73m3
病態
- カリウム↑:GFR低下によりカリウム分泌が不十分となる。
- リン↑:近位尿細管での排泄障害(YN.E-25)?、酸分泌障害?
- カルシウム↓:尿細管機能低下???により、PTHの作用を受けて遠位尿細管で再吸収されるべきカルシウムが排泄される。
- 細胞性免疫能の低下 → 結核のリスク(FSRFでは正常人比10倍)
- 出血傾向 → 尿毒症により凝固系機能低下
- 低カルシウム血症:
- 尿細管での再吸収不全、1,25-dihydroxy-vitamin D3不足により腸管からのCa吸収低下、無機リン増加によりカルシウムの減少([Ca][P]積が一定になるように保たれているらしい)、骨のPTHに対する感受性低下???(なぜ?)
慢性腎不全におけるカルシウムリン代謝
- PRE.355
- 上記の病態と矛盾する点があり。
症状
- 脳 :不眠、意識障害、麻痺
- 眼 :眼底出血、視力低下
- 口 :アンモニア臭
- 心臓:心膜炎、心筋症、心タンポナーデ
- 肺 :呼吸困難、咳、血痰
- 胃腸:嘔気、食欲低下、潰瘍
- 腎臓:
尿量減少? 尿濃縮能障害、等張尿(多尿、夜間尿)
- 血管:高血圧、動脈硬化
- 血液:貧血、高カリウム血症
- 末梢神経:感覚異常
- 皮膚:掻痒感
- 骨:腎性骨異形成症
検査
血液検査
治療
- 炭酸カルシウム製剤などのリン吸着薬。消化管の中で不溶性の塩を形成
国試
[★]
- 英
- heart sound
- 関
- 過剰心音、心雑音、心拍数
心音
open snap
- 三尖弁や肺動脈弁が開く音。三尖弁領域や僧帽弁領域で聴取。高音。僧帽弁狭窄症、三尖弁狭窄症。呼吸で変動しにくい。
- 僧帽弁狭窄症:左胸骨縁~心尖。A2~P2~OSの順に聞こえる。吸気ではS1,,,A2, P2, OS、呼気ではS1,,,S2,OSと聴取される。病状が進行するほどS2~OSは狭くなる(左心房の圧上昇を反映)。
- 左房が固くなった左室に対して強力に収縮するときの音 PHD.37
- まれ
- 高音
- 収縮性心膜炎
- 拡張期早期
- S2の後(S3やOSと混同しやすい。OSより若干遅めで、音が大きい。ventricular gallopよりタイミングは早い)
- 心室への血流充満が急激に止まる(abrupt cessation)ことにより生じる
収縮期早期
- ejection click:大動脈弁や肺動脈弁が開く音。大動脈弁領域・肺動脈弁領域で聴取。高音。大動脈弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症、大動脈の拡張、肺動脈の拡張。
- 大動脈弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症:硬くなった弁が急に開くため?
- 大動脈の拡張、肺動脈の拡張 :大動脈・肺動脈基部が急激に緊張するため?
- aortic ejection click :心基部、心尖部聴取。呼吸変動無し
- pulmonic ejection click:心基部のみで聴取 。吸気で減弱
収縮期中期~末期
心音と過剰心音のまとめ QB.C-360
|
音を発する構造
|
聴診部位
|
疾患
|
*I音
|
房室弁
|
心尖部
|
MS
|
*II音
|
肺動脈弁、大動脈弁
|
心基部
|
HT, PH
|
*III音
|
拡張早期に血液が心臓に充満する音
|
|
容量負荷(心不全)、生理的
|
*IV音
|
拡張後期に心房収縮により心室壁が振動する音
|
|
圧負荷(拡張不全)
|
呼吸性変動
- 吸気時:心拍数↑
- 呼気時:心拍数↓
- I音-II音の間隔の変化は小さい。
II音の分裂
まとめ
|
心拍数
|
II音分裂
|
吸気
|
↑
|
A2-P2
|
呼気
|
↓
|
S2
|
記載方法の例
- I音(→) II音(→) III音(-) IV音(-)
- I音亢進減弱無し(=normal intensity) II音normal splitting
[★]
- 英
- constrictive pericarditis, CP
- ラ
- pericarditis constrictiva
- 同
- 収縮性心外膜炎
- 関
- 心膜炎
概念
- 急性心膜炎のちに、心膜に線維性肥厚と癒着、あるいは石灰化を来し、心臓拡張期の血流充満が障害され、拍出量低下と右心系にのうっ滞を生じる
- 肥厚した心膜が線維化・石灰化して慢性的に心臓を覆う状態が心膜癒着
病因
分類
病理
症状
- 脱力感、倦怠感、体重増加、腹囲の増加、腹部不快感、腹部の突出(protuberant abdomen)、浮腫 (HIM.1494)
- (重症の症例)全身性浮腫、筋廃用、cachexia (HIM.1494)
- 労作時呼吸困難。きざ呼吸もあり得るが、重度ではない (HIM.1494)
病態生理と症状
- 静脈圧上昇 :肝うっ血、頚静脈怒張、浮腫
- 肺静脈圧上昇:心不全(呼吸困難、起坐呼吸)
↓
↓
身体所見
- 脈:脈圧:正常 or 低下。1/3の症例で奇脈 (HIM.1494)
- うっ血性肝腫大:腹水(浮腫より顕著)、黄疸 (HIM.1494)
- 心尖拍動減弱、may retract in systole(Broadbent's sign)
- 心膜ノック音 → 半数の症例で聴取?(QB.C-361) → 拡張早期過剰音/拡張早期過剰心音 と表現される
検査
- 心カテーテル検査:右室圧曲線において、拡張期早期の急峻な圧低下とその後のプラトーが特徴的。dip and plateau pattern
治療
- 方針:症状が持続的/増悪傾向にあればpericardiectomyを行う。心膜の拘縮や一時的/可逆的である例も少数ながら存在するため、診断がついた患者であって慢性症状がなく、血行動態が安定していれば、手術を行う前に2-3ヶ月間保存的に経過を観察する。(参考1)
- 心拍数を下げる薬はよくない(カルシウム拮抗薬、β遮断薬)
- In constrictive pericarditis, the negative intrathoracic pressure generated by inspiration is not easily transmitted through the rigid pericardial shell to the right-sided heart chambers; therefore, inspiratory augmentation of RV filling is more limited.
- 収縮性心膜炎では胸腔内圧の陰圧に心臓が影響されにくい。このために静脈還流量の変動は少なく、呼吸によらず頚静脈が怒張する? 左室への血流量も呼吸の影響を受けにくいために奇脈は心タンポナーデと比べて見られる頻度は低い?
参考
- 1. [charged] Constrictive pericarditis - uptodate [3]
[★]
- 英
- heart、mind、cardiac
- 関
- 核心、強心、心臓、心臓性
- 精神、心陰影
- 心虚
漢方医学
機能
- 1. 意識水準を保つ
- 2. 覚醒・睡眠のリズムを調節する
- 3. 血を循環させる
失調症状
- → 心虚
- 焦燥感、不安感、集中力の低下、不眠、嗜眠、情緒不安定、顔面紅潮、舌尖の真紅、動悸、脈の結代、胸内苦悶感、息切れ
[★]
- 英
- tamponade
- 関
- タンポン充填