- 英
- azathioprine, AZP, AZA, AZ
- ラ
- azathioprinum
- 商
- イムラン Imuran、アザニン
- 関
作用機序
薬理作用
副作用
- 発熱、悪心、軽度の白血球減少症、血小板減少症
- (まれ)再生不良貧血
- 肝細胞壊死、胆汁分泌停止
適応
- 臓器移植、SLE、関節リウマチ、クローン病、全身性炎症
使用方法
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/07/28 08:31:37」(JST)
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アザチオプリン
|
IUPAC命名法による物質名 |
6-[(1-methyl-4-nitro-1H-imidazol-5-yl)sulfanyl]-7H-purine |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
D |
法的規制 |
要処方箋 |
投与方法 |
経口 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
Well absorbed |
代謝 |
By xanthine oxidase |
半減期 |
3 hours |
排泄 |
Renal, minimally |
識別 |
CAS登録番号 |
446-86-6 |
ATCコード |
L04AX01 |
PubChem |
CID 2265 |
DrugBank |
APRD00811 |
ChemSpider |
2178 |
KEGG |
D00238 |
化学的データ |
化学式 |
C9H7N7O2S |
分子量 |
277.263 g/mol |
SMILES
- O=[N+]([O-])c3ncn(C)c3Sc2ncnc1ncnc12
|
アザチオプリン(英: azathioprine)とは免疫抑制薬の1つ。アザチオプリンはプロドラッグであり、グルタチオンなどと反応して、メルカプトプリンを生成する。メルカプトプリンはプリンヌクレオチドの合成を阻害するため、結果としてDNA合成を抑制する。
日本での製品名はイムラン(グラクソ・スミスクライン)、アザニン(田辺三菱製薬)。
目次
- 1 適応症
- 2 副作用
- 3 関連項目
- 4 参考文献
- 5 引用・参照
適応症
- 移植片拒絶反応の抑制 (心移植、肺移植、肝移植、腎移植)
- クローン病、潰瘍性大腸炎
- 治療抵抗性の下記リウマチ性疾患
- 全身性血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、結節性多発動脈炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、高安病等)
- 全身性エリテマトーデス
- 多発性筋炎、皮膚筋炎
- 全身性強皮症
- 混合性結合組織病
- ANCA関連血管炎(血管炎症候群のひとつ)ではミコフェノール酸モフェチルよりも寛解維持に優れていた。[1]
副作用
骨髄抑制、肝毒性、間質性肺炎など。
関連項目
- シクロスポリン
- タクロリムス
- シクロフォスファミド
- リツキシマブ
- 副腎皮質ホルモン
- 金チオグルコース
参考文献
- 伊藤勝昭ほか編集 『新獣医薬理学 第二版』 近代出版 2004年 ISBN 4874021018
- 膠原病診療ノート―症例の分析 文献の考察 実践への手引き 2006年 ISBN 4784953434
引用・参照
- ^ Hiemstra TF et al. Mycophenolate Mofetil vs Azathioprine for Remission Maintenance in Antineutrophil Cytoplasmic Antibody–Associated Vasculitis: A Randomized Controlled Trial. JAMA. 2010;304(21):2381-2388
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Related Links
- アザチオプリン(英: azathioprine)とは免疫抑制薬の1つ。アザチオプリンはプロ ドラッグであり、グルタチオンなどと反応して、メルカプトプリンを生成する。メル カプトプリンはプリンヌクレオチドの合成を阻害するため、結果としてDNA合成を抑制 する。 ...
- イムラン,アザニンとは?アザチオプリンの効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も 調べられる(おくすり110番:薬事典版)
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
アザニン錠50mg
組成
成分・含量(1錠中)
添加物
- ステアリン酸マグネシウム、デキストリン、トウモロコシデンプン、乳糖水和物
効能または効果
腎移植、肝移植、心移植、肺移植
- ステロイド依存性のクローン病の緩解導入及び緩解維持並びにステロイド依存性の潰瘍性大腸炎の緩解維持
- 本剤を臓器移植における拒絶反応の抑制を目的として投与する場合は、副腎皮質ステロイドや他の免疫抑制剤との併用で用いること。
- 本剤をステロイド依存性のクローン病及びステロイド依存性の潰瘍性大腸炎を有する患者に投与する場合は、他の標準的な治療法では十分に効果が得られない患者に限ること。なお、本剤をステロイド依存性のクローン病における緩解導入を目的として投与する場合は、副腎皮質ステロイドとの併用で用いること。
移植の場合
- 通常、成人及び小児において、下記量を1日量として経口投与する。しかし、本剤の耐薬量及び有効量は患者によって異なるので、最適の治療効果を得るために用量の注意深い増減が必要である。
腎移植の場合
維持量としてアザチオプリン0.5?1mg/kg相当量
肝、心及び肺移植の場合
維持量としてアザチオプリン1?2mg/kg相当量
ステロイド依存性のクローン病の緩解導入及び緩解維持並びにステロイド依存性の潰瘍性大腸炎の緩解維持の場合
- 通常、成人及び小児には、1日量としてアザチオプリン1?2mg/kg相当量(通常、成人には50?100mg)を経口投与する。
- 肝機能障害又は腎不全のある患者では、投与量を通常投与量の下限とすることが望ましい。臨床検査値(血液検査、肝機能、腎機能検査等)を慎重に観察し、異常を認めた場合さらに減量を考慮すること。〔「慎重投与」及び「重要な基本的注意」の項参照〕
- ステロイド依存性のクローン病及びステロイド依存性の潰瘍性大腸炎の患者では、2年程度を目安に本剤の投与継続の要否を検討すること。なお、臨床的な治療効果は3?4ヵ月の投与ではあらわれない場合がある。
慎重投与
- 骨髄機能抑制のある患者〔骨髄機能を更に抑制するおそれがある。〕
- 感染症を合併している患者〔免疫能を低下させ、感染症が悪化するおそれがある。〕
- 出血性素因のある患者〔骨髄機能を抑制し、出血傾向を増強させるおそれがある。〕
- 肝機能障害又は肝炎の病歴のある患者〔肝機能障害の発現・増悪又は骨髄機能抑制があらわれるおそれがある。「重要な基本的注意」の項参照〕
- 腎不全のある患者〔骨髄機能抑制があらわれるおそれがある。「重要な基本的注意」の項参照〕
- 水痘患者〔致命的な全身症状があらわれるおそれがある。〕
- アロプリノール投与中の患者〔「相互作用」の項参照〕
重大な副作用
- 次のような症状があらわれることがあるので、投与初期は1?2週間ごとを目安に、その後も頻回に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量又は投与を中止し、症状に応じて適切な処置を行うこと。
血液障害
- 再生不良性貧血、汎血球減少、貧血、巨赤芽球性貧血、赤血球形成不全、無顆粒球症、血小板減少、出血(いずれも頻度不明)
- ショック様症状(悪寒、戦慄、血圧降下等)7)(いずれも頻度不明)
- 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
- 悪性新生物(悪性リンパ腫、皮膚癌、肉腫、子宮頸癌、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群等)(いずれも頻度不明)
*感染症(頻度不明)
- 肺炎、敗血症があらわれることがある。また、B型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎やC型肝炎の悪化があらわれることがある。投与初期は1?2週間ごとを目安に、その後も頻回に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量又は投与中止し、症状に応じて適切な処置を行うこと。
- 次のような症状があらわれた場合に投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤投与等の適切な処置を行うこと。
- 間質性肺炎(発熱、咳嗽、呼吸困難、捻髪音、胸部X線異常、動脈血酸素分圧低下等を伴う)(いずれも頻度不明)
重度の下痢(頻度不明)
- クローン病又は潰瘍性大腸炎患者への本剤の再投与により重度の下痢が再発し、本剤との関連性が疑われた報告がある。本剤投与中に下痢があらわれた場合には本剤との関連性も考慮に入れ、必要に応じ投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
*進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)
- 進行性多巣性白質脳症(PML)があらわれることがあるので、本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
薬理作用
- アザチオプリンは生体内で6-メルカプトプリン(6-MP)に変換されて作用するが、マウスにおけるアザチオプリンの抗体産生抑制作用の強さは、6-MPの約4倍である。21)
アカゲザル腎移植モデルを用いた検討において、シクロスポリン(10mg/kg/日又は25mg/kg/日)にアザチオプリン(2mg/kg/日)及びプレドニゾロン(1mg/kg)の併用投与群はシクロスポリン(10mg/kg/日又は25mg/kg/日)の単独投与群に比し、移植腎の生着期間は同程度以上であり、腎毒性或いは易感染性の徴候は観察されなかった。22)
イヌ同種肺移植モデルにアザチオプリン(2mg/kg/日)及びシクロスポリン(17mg/kg/日)をそれぞれ14日間及び35日間経口投与し、その後シクロスポリンを漸減したところ、5頭の内2頭はそれぞれ13ヵ月及び6ヵ月生存し、正常な肺機能を維持すると共に明確な拒絶反応を示さず、3頭は拒絶反応を示したもののメチルプレドニゾロンのパルス療法により回復し、5ヵ月以上生存した。23)
作用機序15,21)
- 生体内で6-MPに分解され、核酸合成を阻害することにより免疫抑制作用をあらわす。細胞内に取り込まれた6-MPは、チオイノシン酸から6-TGNに変換され、DNAへ取り込まれて細胞障害作用を発揮すると考えられている。また、チオイノシン酸及びそのメチル化体は、5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸(PRPP)から5-ホスホリボシルアミンへの形成反応等プリンヌクレオチド合成に不可欠な反応を阻害する。
有効成分に関する理化学的知見
○分子式
○分子量
○性状
- ・ 淡黄色の結晶又は結晶性の粉末で、においはない。
- ・ ピリジン又はN ,N -ジメチルホルムアミドにやや溶けにくく、水又はエタノール(99.5)に極めて溶けにくく、ジエチルエーテル又はクロロホルムにほとんど溶けない。
- ・ 水酸化ナトリウム試液又はアンモニア試液に溶ける。
- ・ 光によって徐々に着色する。
- ・ 融点:約240℃(分解)
★リンクテーブル★
[★]
- 30歳の女性。発熱、全身倦怠感と悪心を主訴に来院した。15歳時に全身性エリテマトーデス(SLE)とループス腎炎 WHO分類Ⅳ型を発症し、数度の再燃を繰り返していた。3週間前の定期受診時には、症状、身体所見および検査上に異常を認めず、プレドニゾロン 5mg/日、アザチオプリン 100mg/日の内服継続を指示された。5日前に発熱、悪心および左腰背部痛が出現し、自宅近くの医療機関を受診した。尿所見:蛋白 1+、潜血 1+、白血球 3+、細菌 3+。血液所見:白血球 12,000。CRP 8.8mg/dL。尿路感染症と診断され、レボフロキサシンを内服し、2日後に解熱した。しかし、昨日から全身痛と悪心が出現したため受診した。最終月経は10日前から5日間。意識は清明。体温 37.6℃。脈拍 92/分、整。血圧 88/50mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 99%(room air)。皮膚粘膜疹を認めない。Jolt accentuationを認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。関節腫脹や可動域制限を認めない。肋骨脊柱角の叩打痛を認めない。尿所見:蛋白 (-)、白血球 1~4/HPF、赤血球 1~4/HPF、細菌 (-)。血液所見:白血球 4,500。血液生化学検査:尿素窒素 14mg/dL、クレアチニン 0.6mg/dL、血糖 77mg/dL、Na 124mEq/L、K 5.1mEq/L、Cl 92mEq/L、TSH 1.2μU/mL(基準 0.5~5.0)、FT4 1.0ng/dL(基準 0.9~1.7)。CRP 3.1mg/dL。自宅近くの医療機関での血液培養の結果は2セット陰性であった。生理食塩液の輸液を開始した。
- 次に行うべき対応はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113D062]←[国試_113]→[113D064]
[★]
- 32歳の男性。関節痛を主訴に来院した。本日未明から突然、右の第1趾に強い疼痛を感じた。数時間様子をみたが、疼痛が増悪したため受診した。半年前、同部位に同様の疼痛があったが、3日で自然に軽快したためそのままにしていた。意識は清明。身長160cm、体重70kg。体温37.0℃。脈拍76/分、整。血圧134/80mmHg。呼吸数12/分。血液所見:赤血球580万、Hb 16.0g/dl、Ht 50%、白血球12,800、血小板38万。血液生化学所見:アルブミン3.8g/dl、尿素窒素28mg/dl、クレアチニン1.2mg/dl、尿酸8.2mg/dl。CRP 5.6mg/dl。足の写真(別冊No.29)を別に示す。
- 現時点の治療薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [107D054]←[国試_107]→[107D056]
[★]
- 65歳の女性。坂道での動悸と息切れとを主訴に来院した。3か月前から家族に顔色不良を指摘されていた。1か月前から主訴を自覚しはじめ、徐々に悪化した。脈拍96/分、整。血圧134/64mmHg。表在リンパ節の腫大はない。左肋骨弓下に脾を2cm触知する。血液所見:赤沈123mm/1時間、赤血球145万、Hb6.6g/dl、Ht17%、網赤血球23%(230%。)、白血球8,900、血小板36万。血清生化学所見:ハプトグロビン10mg/dl以下(基準19~170)、総ビリルビン2.7mg/dl、間接ビリルビン1.9mg/dl、AST50IU/l、ALT32IU/l、LDH650IU/l(基準176~353)。免疫学所見:直接Coombs試験陽性、寒冷凝集反応32倍(基準128以下)。
- 治療法として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G031]←[国試_101]→[101G033]
[★]
- 65歳の女性。坂道での動悸と息切れとを主訴に来院した。3か月前から家族に顔色不良を指摘されていた。1か月前から主訴を自覚しはじめ、徐々に悪化した。脈拍96/分、整。血圧134/64mmHg。表在リンパ節腫大はない。腹部で左肋骨弓下に脾を2cm触知する。血液所見:赤沈123mm/1時間、赤血球145万、Hb 6.6g/dl、Ht20%、MCV 138μm3、網赤血球 230‰、白血球8,900、血小板36万。血清生化学所見:総ビリルビン2.7 mg/dl、間接ビリルビン1.9mg/dl、GOT50単位(基準40以下)、GPT32単位(基準35以下)、LDH650単位(基準175~353)、ハプトグロビン10mg/dl以下(基準19~170)。直接Coombs試験陽性、寒冷凝集反応32倍(基準128以下)。
- 適切な治療法はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [095D031]←[国試_095]→[095D033]
[★]
- 英
- drug-induced liver injury, drug-induced hepatopathy, drug-induced liver disease
- 同
- 薬剤性肝障害
- 関
- 薬物性肝炎 drug-induced hepatitis
[show details]
概念
疫学
分類
- 中毒性肝障害:薬物が肝細胞を障害
- アレルギー性肝障害:IV型アレルギーの機序により肝細胞が障害
原因薬物
- 抗菌薬(21.9%)が最も多く、抗炎症薬(11.86%)がこれに次ぐ。(第32回日本肝臓学会西部会より)
薬物と障害部位
肝細胞傷害型
|
肝壊死型
|
中心帯壊死(zone 3)
|
四塩化炭素,アセトアミノフェン,ハロタン
|
中間帯壊死(zone 2)
|
フロセミド
|
周辺帯壊死(zone 1)
|
リン,硫酸鉄
|
肝炎型
|
イソニアジド,メチルドパ,ケトコナゾール
|
肝線維症型
|
メトトレキサート,塩化ビニル,ビタミンA
|
脂肪肝型
|
小滴性
|
テトラサイクリン,バルプロ酸,リン
|
大滴性
|
エタノール,メトトレキサート
|
リン脂質症
|
アミオダロン,DH剤
|
胆汁うっ滞型
|
hepatocanalicular
|
クロルプロマジン,エリスロマイシンエストレート
|
canalicular
|
C-17アルキル化ステロイド,経口避妊薬,シクロスポリンA
|
ductular
|
ベノキサプロフェン
|
血管障害型
|
肝静脈血栓
|
経口避妊薬,抗腫瘍薬
|
門脈血栓
|
経口避妊薬
|
静脈閉塞性疾患
|
蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,抗腫瘍薬
|
肝紫斑病
|
蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,トロトラスト,アザチオプリン,ファロイジン,塩化ビニル
|
肉芽腫形成型
|
アロプリノール,カルバマゼピン
|
腫瘍形成型
|
限局性結節性過形成
|
経口避妊薬
|
腺腫
|
経口避妊薬,蛋白同化ステロイド
|
癌腫
|
経口避妊薬,蛋白同化ステロイド,トロトラスト,塩化ビニル
|
血管肉腫
|
トロトラスト,塩化ビニル,蛋白同化ステロイド
|
病態
- 投与開始から5-90日の経過で発症し、肝障害に基づく症状・検査値異常をきたす。 ← 長期間服用(例えば2年)している薬物は除外できる。最近服用を始めた薬物の問診が重要
身体所見
症状
検査
治療
薬物性肝障害判定基準
- 参考1
表 DDW-J 2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリング(肝臓 2005; 46: 85-90より引用)
|
|
肝細胞障害型
|
|
胆汁うっ滞または混合型
|
|
スコア
|
1. 発症までの期間
|
初回投与
|
再投与
|
初回投与
|
再投与
|
|
a.投与中の発症の場合 投与開始からの日数
|
5~90日
|
1~15日
|
5~90日
|
1~90日
|
2
|
<5日、>90日
|
>15日
|
<5日、>90日
|
>90日
|
1
|
b.投与中止後の 発症の場合 投与中止後の日数
|
15日以内
|
15日以内
|
30日以内
|
30日以内
|
1
|
>15日
|
>15日
|
>30日
|
>30日
|
0
|
2. 経過
|
ALTのピーク値と正常上限との差
|
|
ALPのピーク値と正常上限との差
|
|
投与中止後のデータ
|
8日以内に50%以上の減少
|
|
(該当なし)
|
3
|
30日以内に50%以上の減少
|
|
180日以内に50%以上の減少
|
2
|
(該当なし)
|
|
180日以内に50%未満の減少
|
1
|
不明または30日以内に50%未満の減少
|
|
不変、上昇、不明
|
0
|
30日後も50%未満の減少か再上昇
|
|
(該当なし)
|
-2
|
投与続行および不明
|
|
|
0
|
3. 危険因子
|
肝細胞障害型
|
胆汁うっ滞または混合型
|
|
飲酒あり
|
飲酒または妊娠あり
|
1
|
飲酒なし
|
飲酒、妊娠なし
|
0
|
4. 薬物以外の原因の有無2)
|
カテゴリー1、2がすべて除外
|
2
|
カテゴリー1で6項目すべて除外
|
1
|
カテゴリー1で4つか5つが除外
|
0
|
カテゴリー1の除外が3つ以下
|
-2
|
薬物以外の原因が濃厚
|
-3
|
5. 過去の肝障害の報告
|
過去の報告あり、もしくは添付文書に記載
|
1
|
|
なし
|
0
|
6.好酸球増多(6%以上)
|
あり
|
1
|
|
なし
|
0
|
7. DLST
|
陽性
|
2
|
|
擬陽性
|
1
|
|
陰性および未施行
|
0
|
8.偶然の再投与が行われた時の反応
|
肝細胞障害型
|
胆汁うっ滞または混合型
|
|
単独再投与
|
ALT倍増
|
ALP(T.Bil)倍増
|
3
|
初回肝障害時の併用薬と共に再投与
|
ALT倍増
|
ALP(T.Bil)倍増
|
1
|
偶然の再投与なし、または判断不能
|
|
|
0
|
1) 薬物投与前に発症した場合は「関係なし」、発症までの経過が不明の場合は「記載不十分」 と判断して、スコアリングの対象としない。 投与中の発症か、投与中止後の発症化により、a またはb どちらかのスコアを使用する。 2) カテゴリー1:HAV、 HBV、 HCV、 胆道疾患(US)、アルコール、ショック肝 カテゴリー 2:CMV、 EBV. ウイルスはIgM HA 抗体、HBs 抗原、HCV 抗体、IgM CMV 抗体、IgM EB VCA 抗体で判断する。 判定基準:総スコア 2点以下:可能性が低い 3、4点:可能性あり 5点以上:可能性が高い
|
参考
- 1. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性肝障害 平成20年4月 厚生労働省
- http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm0804002.pdf
- 2. 薬物性肝障害スコア計算ソフト 帝京大学医学部内科 滝川一 田辺三菱製薬 提供
- http://www.jsh.or.jp/medical/date/scoresoft.xls
- http://www.jsh.or.jp/medical/date/dil05.pdf
-薬剤性肝障害
[★]
- 英
- acute pancreatitis
- 関
- 膵炎、慢性膵炎
概念
- 種々の原因で膵酵素が膵内で活性化され、組織を自己消化して起こる急性炎症。
- 原因としてはアルコールと胆石が一般的と思われる。
- 突然上腹部痛を呈し、 種々の腹部所見(軽度の圧痛から反跳痛まで)が見られる。
- 症候、身体所見、および検査値異常として、嘔吐、発熱、頻脈、白血球増加、血中・尿中の膵酵素の上昇を見る。
- 重症急性膵炎は特定疾患治療研究事業の対象疾患である(公費対象)
病因
- アルコール
- 胆石症
- 特発性
- 医原性
- 外傷
- 慢性膵炎急性増悪
- 膵・胆道奇形
- 代謝・栄養障害
- SSUR.626
- アルコール、胆石症、ERCP、手術、薬剤、脂質異常症、副甲状腺亢進症
小児の急性膵炎
- YN.B-82
発症機序
- SSUR.626
- 共通管説:胆石性膵炎
- 膵外分泌亢進-膵管閉塞説:アルコール性膵炎:アルコール化量摂取が膵外分泌を亢進させ、乳頭部の浮腫や痙攣を惹起して膵液の相対的流出障害を起こす。
- Oddi括約筋の痙攣、不溶性蛋白栓の沈殿による膵導管の閉塞、および 膵プロテアーゼの活性化が考えられている(ガイドイラン1)。
- 十二指腸液逆流説:小腸閉塞、Billroth II法再建胃切除術後の輸入脚症候群における急性膵炎
分類
障害組織による分類
- 浮腫性膵炎:炎症に伴いびまん性または限局性に膵臓は腫大し、壊死を伴わないもの。造影CTで不染領域をみとめないもの
- 壊死性膵炎:びまん性または限局性に膵実質が壊死に陥ったもの。壊死組織は造影CTで造影不良をみる。膵壊死組織への細菌感染の有無が予後を規定する。
疫学
- 発生頻度は27.7/10 万人/年
- 男女比=2:1
- アルコール性膵炎は男性に多く、胆石性膵炎は女性に多い。
病態
- SSUR.626
- 膵酵素の膵実質障害 → 炎症反応惹起 → (炎症が高度の場合)高サイトカイン血症 → 活性化された顆粒球による多臓器障害
- 膵酵素、エンドトキシン、顆粒球やマクロファージから産生されたホスホリパーゼA2により肺胞が障害される。
- 膵臓からの滲出液の後腹膜腔への貯留 + サイトカイン血症による血管透過性の亢進 → 血液量減少
症状
- 上腹部腹痛から背部痛、悪心嘔吐、腹部膨満感、発熱。
合併症
- 早期合併症:(重症化例で)DIC、ショック、呼吸不全、腎不全、MODS
- 後期合併症:膵仮性嚢胞(2-3%の症例にみられる)、膵膿瘍、腹腔内膿瘍、出血、重症感染症
検査
CT
- (浮腫性膵炎)単純CTで膵臓の浮腫による腫大、炎症の波及による膵周囲脂肪織の濃度上昇。
- (壊死性膵炎)浮腫性膵炎の所見に加え、造影CTで造影不良領域が認められる。
血液一般検査・生化学
- 白血球:増加
- Plt:低下 (なぜ? DICが存在するのであれば、想像できるが)
- Ht:増加(浸出液増加による血液濃縮)
- Ca:↓(重症のサイン。鹸化壊死で消費) ← また、血中グルカゴン上昇により、カルシトニンが甲状腺より遊離されるため(QB.B-349) おかしくない???
- 血糖:上昇(ランゲルハンス島の破壊)
- BUN:上昇(腎機能障害)
- LDH:上昇(重症例で。組織破壊)
- TG?:血中リパーゼ濃度が上昇し、脂肪が分解されるため、らしい。
逸脱酵素
- 血清アミラーゼ:高値。発症数時間で上昇。3日程度で正常化。尿中アミラーゼは持続日数が長い。鑑別:高アミラーゼ血症
- 血清トリプシン:高値。特異性高い。
- 血清リパーゼ:高値。特異性高い。
- 血清エラスターゼ-I:高値。特異性高い。高値が持続する。膵臓に特異的らしい。アミラーゼ、リパーゼに比べ正常化が遅れるため、経過を見るのに適す(YN.B-80)。
肝機能・胆道系酵素
画像検査
診断
重症度
- 重症度は血清カルシウム、血糖値、BUNで判定できる。血清アミラーゼは参考にならない。
ガイドライン1
- 予後因子3点と造影CT Grade 2以上の場合に重症と判定される。
予後因子(各1点)
- 1. Base Excess≦-3 mEq/L, またはショック(収縮期血圧≦80 mmHg) 代謝性アシドーシス
- 2. PaO2≦60 mmHg (roomair), または呼吸不全(人工呼吸管理が必要) 換気機能低下
- 3. BUN≧40 mg/dL (or Cr≧2 mg/dL), または乏尿(輸液後も1 日尿量が400 mL 以下) 腎機能低下
- 4. LDH≧基準値上限の2 倍 組織障害
- 5. 血小数≦10 万/mm3 血小板の消費
- 6. 総Ca≦7.5 mg/dL 脂肪壊死
- 7. CRP≧15 mg/dL 炎症
- 8. SIRS 診断基準における陽性項目数≧3 全身性の炎症
- 9. 年齢≧70 歳 ストレスに対する適応能力低下
- SIRS診断基準項目:(1)体温>38℃または<36℃,(2)脈拍>90 回/分,(3)呼吸数>20 回/分またはPaCO2<32 torr,(4)白血球数>12,000/mm3か<4,000 mm3または10%幼若球出現
造影CT Grade
- 前腎傍腔 0点
- 結腸間膜根部 1点
- 腎下極以遠 2点
- 膵を便宜的に3 つの区域(膵頭部, 膵体部, 膵尾部) に分け判定する。
- 各区域に限局している場合,または膵の周辺のみの場合 0点
- 2つの区域にかかる場合 1点
- 2つの区域全体を占める,またはそれ以上の場合 2点
- 1点以下 Grade 1
- 2点 Grade 2
- 3点以上 Grade 3
治療
- SSUR.627
- 血液量減少:急速輸液
- 膵臓を休ませる?:高カロリー輸液
- 感染防止:抗菌薬
- 組織障害抑制:膵酵素阻害薬
- 多臓器不全:人工呼吸、血漿交換、腹膜透析、血液透析
- (胆石性膵炎では)膵炎の治療の前に内視鏡的乳頭切開術による胆石除去を行う
- 手術療法:壊死膵組織が感染して膵膿瘍、敗血症となった場合に限り適応。膵壊死部摘除術、膵切除術、open drainageを行い、壊死巣を除去する。
手術適応
- B.352
- 緊急手術を要する疾患と鑑別が困難な場合(穿孔性腹膜炎など)
- 保存治療が奏功しない場合
- 胆道疾患が合併するとき
- 合併症が存在するとき(膿瘍、血腫、仮性嚢胞、慢性膵炎)
ガイドライン
- 1. 日本膵臓学会 - 急性膵炎診療ガイドライン2010
- http://www.suizou.org/APCGL2010/APCGL2010.pdf
- 2. 急性膵炎GL2010改訂出版委員会編/医療・GL(10年)/ガイドライン
- http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0011/1/0011_G0000243_GL.html
参考
- 1. 急性膵炎の重症度判定基準 - 日本メディカルセンター
- http://www.nmckk.jp/pdf.php?mode=puball&category=CLGA&vol=23&no=10&d1=2&d2=0&d3=0
- http://www.jslm.org/books/guideline/19.pdf
- 3. 難病情報センター | 重症急性膵炎(公費対象)
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/271
国試
- 英
- acute pancreatitis
- 同
- acute pancreatitis
[★]
- ☆case34 てんかん発作
- ■症例
- 23歳 アフリカ-カリブ系 女性 銀行の店員
- 主訴:てんかん発作
- 現病歴:強直間代発作を2回起こしたところを母親が目撃していた。娘の行動は次第におかしくなり、また娘は自分のことを話している声が聞こえていた(幻聴)。最近、頭痛を訴えていた。体重が減少し、脱毛があった。盗汗と主に足と手の小関節に及ぶflitting 関節痛を訴えていた。服用薬なし。タバコ1日5-10本、アルコール10 unit/week(缶ビール(350ml)6本弱)
- 既往歴:特記なし(medical or psychiatric history)
- 家族歴:
- 生活歴:
- ・身体診断
- 意識:眠そうだが痛みに反応。頚部硬直:なし。頭髪:薄く斑状。体温38.5℃。リンパ節:たくさんの部位で触知。
- 心拍:104/分、整。血圧:164/102 mmHg。心血管系、呼吸器系、腹部:異常なし。
- 神経所見:focal anormalityなし(局所性異常)。乳頭浮腫:認めず。
- ・検査
- (血液生化学)
- 上昇:erythrocyte sedimentation rate、urea、creatinine
- 低下:hemoglobin、white cell count、platelet
- 正常:mean corpuscular volume、sodium、potassium、glucose
- (腰椎穿刺)
- 上昇:leukocytes、CSF protein
- 正常:CSF glucose
- (尿検査)
- 蛋白:+++。血尿:+++。赤血球:++。赤血球円柱:あり。
- (その他)
- 胸部X線:異常なし。ECG:洞性頻脈。頭部CT:正常。CSFグラム染色:陰性(光顕レベルで細菌なし)
- ■glossary
- fall out (毛髪などが)抜ける
- night sweat 盗汗、寝汗
- tonic-clonic generalized seizure 全般性強直間代発作
- flit vi (鳥・蝶など)すいすい/ひらひら飛ぶ、飛び回る、飛翔する。(人が)軽やかに通る、行き交う。(時が)(飛ぶように)すぎる。(幻想など)去来する、よぎる、(表情が)かすめる
- drowsy adj. 眠い。眠そうな。眠気を誘う。ものうい。眠ったような
- stiffness n. 堅いこと、堅ぐるしさ、がんこさ
- delirium tremens 振戦譫妄
- hypertensive encephalopathy 高血圧性脳症
- alopecia 脱毛症
- African-Caribbean アフリカ-カリブ系
- fit n. (病気の)発作。引きつけ、痙攣。(感情の)激発、一時的興奮、気まぐれ
- chorea n. 舞踏病
- recreational drug 耽溺性があり乱用される脱法薬物
- urgent adj. (物・事が)急を要する、緊急の、背拍質(pressing)。(~を)緊急に必要とする(in)。(S is ~ (with O1) for [in] O2)(人が)(O1(人)に)O2(物・事)をしつこく求める。(人に/~するように)催促する(for/to do)。(要求などが)執拗な。
- □てんかん発作
- ・新規発生したてんかん発作の原因(ICU.805-806)
- ・薬物中毒(テオフィリンなど)
- ・薬物からの離脱(アルコールなど)
- ・感染症(髄膜炎、膿瘍など)
- ・頭部外傷
- ・虚血障害(虚血あるいはびまん性)
- ・占拠性病変(腫瘍あるいは血腫)
- ・代謝性障害(肝性脳症、尿毒症性脳症、敗血症、低血糖、低ナトリウム血症、低カルシウム血症など)
- ・合併症(ICU.805-806)
- ・全身性てんかん発作の場合:高血圧、乳酸アシドーシス、高体温、呼吸障害、誤嚥、肺水腫、横紋筋融解、自傷、不可逆性の神経学的障害(30分間以上てんかん発作が持続した場合)
- ■可能性の高い診断
- 全身性エリテマトーデス systemic lupus erythematosus(SLE)
- ■鑑別診断のポイント
- 自己免疫疾患は多彩な症状を示す。そのため、個々の症状に着目して鑑別診断をあげるのではなく、症状や検査値の異常を総合的に見て判断する必要がある。
- ■解答
- (第1パラグラフ)SLEの病態
- 精神症状:(SLEは脳で血管炎を呈することで生じる)うつ(depression)、統合失調症様の精神病、痙攣(fits)、舞踏病(chorea)、脳梗塞/脊髄梗塞
- 脳脊髄液:白血球増多(leukopenia)、蛋白増加
- 血液:自己免疫性溶血貧血(Coombs'-positive hemolytic anemia)がありうる。白血球減少と血小板減少症は普通にみられる。
- 腎症状:ループス腎炎は普通に見られ、顕微鏡的血尿・タンパク尿、ネフローゼ、あるいは腎不全が現れるかもしれない。
- 関節症状:変形を伴わない関節痛(PIP関節(近位指節間関節)、MP関節(中手指節関節)、手関節)
- (第2パラグラフ)SLEの確定診断のための検査・治療
- ・すぐにすべきことは降圧薬、抗痙攣薬の投与
- ・確定診断のために次の検査を行っていく(もっとも、症例の提示された所見で(日本の?)SLEの診断基準を満たすけど)
- ・検疫血清検査:抗DNA抗体、C3、C4
- ・腎生検:ループス腎炎の程度を把握
- ・治療:活動性の感染がないことを確認 ← 薬物療法ではステロイドや免疫抑制薬を使うため
- ・ステロイド静脈内投与、あるいはシクロホスファミドなどの細胞毒性薬(cytotoxic agents)の投与
- ・重症、治療抵抗性だったら血漿交換を行う。
- ■鑑別診断 頭痛/精神病的様態(psychiatric features)/痙攣
- ・髄膜炎、脳炎
- ・レクリエーショナルドラッグの中毒(例えばコカイン)
- ・脳腫瘍
- ・急性のアルコール禁断症状:振戦譫妄
- ・高血圧脳症
- ■KEYPOINT
- ・SLEは特に若いアフリカ系-カリブ系に普通に一般的
- ・SLEでは主に神経症状と精神症状をを伴って現れることがある
- ・白血球低下と血小板の低下はしばしばSLEを示唆する
- □tonic-clonic seizure 強直間代発作
- 意識消失とともに全身の随意筋に強直痙攣が生じ(強直痙攣期tonic convulsion)、次いで全身の筋の強直と弛緩とが律動的に繰り返される時期(間代痙攣期clonic convulsion)を経て、発作後もうろう状態を呈する一連の発作。
- □350ml アルコール5%
- 350x0.05/10=1.75 unit
- □細胞毒性薬
- 免疫抑制薬や抗腫瘍薬として用いられる。
- antimetabolites
- アザチオプリン azathioprine
- メトトレキセート methotrexate
- ミコフェノール酸 mycophenolic acid, ミコフェノール酸モフェチル mycophenolate mofetil
- レフルノミド leflunomide
- alkylating agents
- シクロホスファミド cyclophosphamide
[★]
- 96
- 35歳 女性
- 【主訴】息切れ
- 【現病歴】6ヶ月から次第に増悪する息切れを訴え来院。息切れは進行しており、今では同年代の人に比べ階段を登ったり平地を歩くのがおそい。3ヶ月間空咳が出現してきている。
- 【既往歴】喘息(子供の頃、中等度)
- 【家族歴】父:40歳時に胸部疾患(chest problem)で死亡(と、この患者は思いこんでいる)。
- 【服用薬】パラセタモール。やせ薬は過去に使ったことがある
- 【嗜好歴】タバコ:吸わない。飲酒:週に10 units以下。
- 【職業歴】印刷会社(学校卒業後ずっと)
- 【生活歴】8歳と10歳の子供がいる。ペットとして自宅にネコとウサギを飼育している。
- 【身体所見】
- バチ指、貧血、チアノーゼは認めない。心血管系正常。呼吸器系で、両側性に肺拡張能低下。胸部打診音、および触覚振盪音は正常。聴診上、両肺の肺底部に呼気終期年発音を聴取する。
- 【検査所見】
- 呼吸機能試験
- 測定値 予測値
- FEV1(L) 3.0 3.6-4.2
- FVC(L) 3.6 4.5-5.3
- FER(FEV1/FVC)(%) 83 75-80
- PEF(L/min) 470 450-550
- 胸部単純X線写真
- 胸部単純CT(肺野条件)
- Q1 診断は?Q2 追加の検査と治療法
- (解説)
- ・6ヶ月から次第に増悪する息切れ
- ・本当に6ヶ月から息切れが始まったかは分からない!!実際にはもっと前から存在する可能性を考えよう。
- ・喘息の既往歴 → また喘息か・・・
- ・聴診上笛音 weezingなく、また呼吸機能検査で閉塞性肺障害は認められず否定的
- ・職業性喘息 ← 肺の疾患では職業歴が重要なんだよ、うん。
- ・職業に関連した特定の物質に曝露され引き起こされる気管支喘息。
- ・気管支喘息だと閉塞性換気障害でしょっ。
- ・本症例の病態
- ・拘束性病変(restrictive problem):拡張制限 + ラ音(呼気時に閉鎖していた気道の再開通によるラ音。このラ音は(1)肺が硬い+(2)肺容量低下による起こるんじゃ)
- ・呼吸機能検査の結果
- ・中等度の拘束性換気障害(FEV1とFVCの低下、slightly high ratio)
- → 硬い肺と胸郭を示唆している → 肺コンプライアンス低下じゃな。
- → 拡散能低下が予想される。
- ・胸部単純X線写真
- ・小さい肺野、中肺野~下肺野にかけて結節性網状陰影(nodular and reticular shadowing)を認める ← 教科書的には「線状網状影」
- ・HRCT
- ・胸膜下嚢胞形成(subspleural cyst formationの直訳。教科書的には「胸膜直下の蜂巣肺所見」)を伴う線維化
- これらの所見→diffusing pulmonary fibrosis(fibrosing alveolitis)
- ・肺の線維化病変を見たら限局性かびまん性かを見なさい!マジで?
- ・びまん性:diffuse fine pulmonary fibrosis
- ・原因:膠原病、薬剤性、中毒性、特発性
- ・限局性:例えば肺炎感染後の瘢痕
- ・IPF
- ・まれに家族性の病型有 → 本症例で父がchest problemで無くなっている事と関連があるかもしらん。
- ・IPFの良くある病型:UIP + CT上胸膜下に認められる蜂巣肺
- ・膠原病に合併する場合、NSIPの様に広い範囲に斑状の病変が出現
- ・CT上、ground glass shadowingに見える所はactive cellular alveolitisであり、反応に反応する確率が高いことと関連している。
- ・追加の検査の目的:原因と合併症の検索、肺生検施行の有無を決定
- ・肺生検:経気管支鏡生検は試料が少ないために負荷。VATは良く使用されており、若年の肺組織を得るのに適切な方法。
- ・治療
- ・低用量~中等量の副腎皮質ステロイド ± 免疫抑制薬(アザチオプリン):数ヶ月経過観察し、反応性を観察。
- ・UIP症例でこのレジメンに対する反応性は乏しく、治療による利益より重大な副作用を起こさないことが重要
- ・アセチルシステイン:anti-oxidant
- ・予後を改善するというエビデンス有り
- ・ステロイド+アザチオプリン+アセチルシステインというレジメンで用いられることがある
- ・肺移植
- ・本症例の様にナウでヤングな患者には適応を考慮しても良い
- ・予後
- ・疾患の進展速度は症例により様々
- ・6ヶ月で死亡する急性増悪も起こることがある。
- Progression rates are variable and an acute aggressive form with death in 6 months can occur.
- ・UIP症例では多くの場合2~3年かけて確実に進行していく。
- ■glossary
- clubbing n. バチ指
- restrictive ventilatory defect 拘束性換気障害
- transfer factor = 拡散能/拡散能力 diffusion capacity
- subpleural bleb 胸膜下嚢胞
- diffuse fine pulmonary fibrosis びまん性微細肺線維症
- warrant vt. (正式)(SVO/doing)S(事)からするとO(事)は「~することは」当然のことである(justify)
- relevant adj. 直接的に関連する、関連性のある(to)
- ground glass すりガラス
- 'ground glass' shadowingすりガラス陰影
[★]
- 英
- idiopathic pulmonary fibrosis, IPF
- 関
- 特発性間質性肺炎
特徴
臨床診断名
|
IPF
|
NSIP
|
BOOP/COP
|
病理組織像
|
UIP
|
OP
|
発症様式
|
慢性
|
慢性/亜急性
|
亜急性
|
BALF所見
|
リンパ球±
|
CD8↑
|
CD8↑
|
予後
|
不良
|
良好(時に不良)
|
良好
|
分布
|
斑状,不均質, 胸膜下・小葉辺縁
|
びまん性,均質
|
小葉中心性
|
時相
|
多様
|
均質
|
均質
|
間質への細胞浸潤
|
少ない
|
通常多い
|
やや多い
|
胞隔の炎症
|
軽度,斑状
|
びまん性,多彩
|
軽度
|
線維芽細胞巣
|
多数
|
まれ
|
なし
|
肺胞内マクロファージ集積
|
巣状
|
巣状
|
なし
|
肺胞腔内線維化
|
まれ
|
しばしば
|
多数
|
顕微鏡的蜂巣肺(肺胞虚説)
|
高頻度
|
通常なし(一部に認める)
|
なし
|
硝子膜
|
なし
|
なし
|
なし
|
概念
- 特発性間質性肺炎の一型で、慢性型の肺線維症。特発性間質性肺炎の中で最も多い。
疫学
- 罹患率:3-4/10万人 (SPU.274)
- 中高年以降に発症。男性に多い。
- 喫煙との関連性なし。
症状
- 労作時呼吸困難で初発し、次第に増強
- 乾性咳嗽:伴うことが多い
身体所見
- (聴診)捻髪音:ほぼ全症例。両側肺底部、吸気後半
- 30%の症例で軽度の配向血圧
- 手指:バチ指(2/3の症例。病変の進展と相関はない(SPU.276))
病因
- 不明
- リスク因子は下記のように上げられているが、IPFの病態を説明できるものはない。おそらく素因のある者において、肺胞上皮のバリヤーと肺の間質がこれらのリスク因子などによる非特異的な損傷を与えることで発症のきっかけとなるのであろう。(参考2)
リスク因子
検査
血液検査
- 赤沈、γグロブリン、RF、抗核抗体は病期と共に高値になる傾向はない(SPU.276)
- LDH:↑
- CRP:↑
- KL-6:↑
- SP-A, SP-D:↑
- 赤沈:軽度~中等度亢進
- γグロブリン:増加
- RF因子:陽性(1/3の症例)
- 抗核抗体:陽性(1/3の症例)
胸部単純X線写真・胸部CT写真
- 両側のびまん性陰影 (SPU.276)
- 下肺野、特に拝呈に始まる線状網状影の増加・拡大、肺野の縮小所見を認めることが多い (SPU.276)
- 胸膜直下の蜂巣肺所見は特徴的 (SPU.276)
BALF所見
- 健常者とかわらない所見が特徴的 (SPU.277)
- 細胞数%↑(見られる場合がある) (SPU.277)
- 好中球、好酸球の若干の増加が見られる事がある (SPU.277)
- リンパ球%の増加のみ見られることは少ない (SPU.277)
肺機能検査
- 拘束性換気障害(%VCの低下):初期から
- 拡散障害(DLCO%低下):初期から
- 低酸素血症:病変のかなり進行した後。初期には労作負荷による動脈血酸素分圧の低下が、IPFを示唆する。
- VC:↓
- RV:↓
- FEV1.0は正常 → 細気管支レベルで閉塞性換気障害があるわけではないから
診断
臨床診断
- 呼吸困難 + 捻髪音 + 胸部X線・CT所見、肺機能検査、BALF所見
確定診断
- 病理組織学的診断による。外科的肺生検により肺の線維化病変、UIPあるいはDIP病変の存在を証明する。(SPU.277)
- 両側びまん性に線維化病変が認められる + 線維化を来す病院物質あるいは線維化の穿孔病変である肉芽腫などの病変が認められない
鑑別診断
- サルコイドーシス、石綿肺、膠原病などの肺野病変先行例
合併症
- 男性の場合、高い頻度(20-25%)で悪性病変が合併(SPU.277)
治療
-
- 安静時の動脈血酸素分圧を改善する効果があり、QOLの改善や肺高血圧症の進展の予防が期待される。
- 適度な運動(筋力低下の予防 → つまり呼吸補助筋の維持とかってこと?)
- 感染症対策:気道感染を起こすと病態的にARDSになって急性増悪しやすいとか。
- 禁煙 → COPDを合併することを防いだり、気管上皮の炎症・障害を予防するために禁煙した方がよいのであろう、か?
予後
- 病変は次第に拡大・進展して呼吸不全に陥り予後不良
- 死因は肺性心を伴う呼吸不全が多い
- 死因:呼吸不全(死亡の1/3)、右心不全(死亡の1/3)、肺癌の合併(死亡の1/3)
- 5年生存率40-50%、10年生存率20~30% (SPU.278)
参考
- http://www.nanbyou.or.jp/pdf/076_s.pdf
- 2. [charged] Pathogenesis of idiopathic pulmonary fibrosis - uptodate [1]
[★]
- 英
- phosphorus P
- 関
- serum phosphorus level
分子量
- 30.973762 u (wikipedia)
- 単体で化合物としてはP4、淡黄色を帯びた半透明の固体、所謂黄リンで毒性が高い。分子量124.08。
基準値
- 血清中のリンおよびリン化合物(リン酸イオンなどとして存在)を無機リン(P)として定量した値。
- (serum)phosphorus, inorganic 2.5–4.3 mg/dL(HIM.Appendix)
- 2.5-4.5 mg/dL (QB)
代謝
- リンは経口的に摂取され、小腸から吸収され、細胞内に取り込まれる。
- 骨形成とともに骨に取り込まれる。
- 腎より排泄される。
尿細管での分泌・再吸収
- 排泄:10%
尿細管における再吸収の調節要素
臨床検査
- 無機リンとして定量される。
基準範囲
血清
- 小児:4-7mg/dL
- 閉経後女性は一般集団より0.3mg/dL高値となる
尿
測定値に影響を与える要因
臨床関連
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3
[★]
- 英
- purine
- 同
- [[7H-イミダゾ[4,5-d]ピリミジン]] [[7H-imidazo[4,5-d]pyrimidine]],プリン塩基 purine base
- 関
- ピリミジン、アデニン、グアニン
- ピリミジン環とイミダゾール環との縮合環からなる複素環式化合物
- プリン核を持つ塩基性化合物がプリン塩基