- 12歳の女児。5日前からの38~39℃の発熱と咽頭痛とを主訴に来院した。咽頭は発赤し、扁桃は腫大し白苔の付着を認める。両側頸部に示指頭大から母指頭大のリンパ節を数個触知する。右肋骨弓下に肝を2cm、左肋骨弓下に脾を2cm触知する。血液所見:赤血球502万、Hb12.6g/dl、Ht43%、白血球14,000(桿状核好中球3%、分葉核好中球20%、単球3%、リンパ球57%、異型リンパ球17%)、血小板21万。血清生化学所見:総ビリルビン0.8mg/dl、AST120IU/l、ALT140IU/l、LDH480IU/l(基準176~353)。CRP2.3mg/dl。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G032]←[国試_101]→[101G034]
★リンクテーブル★
[★]
- 53歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。6か月前の健康診断で白血球増加を指摘されたが放置していた。1か月前から倦怠感を感じるようになり、上腹部違和感も出現した。意識は清明。体温36.5℃。脈拍84/分、整。血圧136/76mmHg。表在リンパ節の腫大はない。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。左上腹部は軽度膨隆し、左肋骨弓下に脾を6cm触知する。血液所見:赤血球380万、Hb10.8g/dl、Ht33%、白血球56,000、血小板47万。血清生化学所見:総蛋白7.2g/dl、アルブミン4.0g/dl、尿素窒素16mg/dl、クレアチニン1.0mg/dl、尿酸8.6mg/dl、総コレステロール156mg/dl、総ビリルビン1.0mg/dl、AST48IU/l、ALT32IU/l、LDH380IU/l(基準176~353)、Na140mEq/l、K4.8mEq/l。CRP0.8mg/dl。末梢血塗抹May-Giemsa染色標本を以下に示す。
- 診断に有用な検査はどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G033]←[国試_101]→[101G035]
[★]
- 65歳の女性。坂道での動悸と息切れとを主訴に来院した。3か月前から家族に顔色不良を指摘されていた。1か月前から主訴を自覚しはじめ、徐々に悪化した。脈拍96/分、整。血圧134/64mmHg。表在リンパ節の腫大はない。左肋骨弓下に脾を2cm触知する。血液所見:赤沈123mm/1時間、赤血球145万、Hb6.6g/dl、Ht17%、網赤血球23%(230%。)、白血球8,900、血小板36万。血清生化学所見:ハプトグロビン10mg/dl以下(基準19~170)、総ビリルビン2.7mg/dl、間接ビリルビン1.9mg/dl、AST50IU/l、ALT32IU/l、LDH650IU/l(基準176~353)。免疫学所見:直接Coombs試験陽性、寒冷凝集反応32倍(基準128以下)。
- 治療法として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G031]←[国試_101]→[101G033]
[★]
- 英
- infectious mononucleosis
- 同
- キス病 kissing disease、伝染性単核症、EBウイルス感染症 Epstein-Barr virus infection、腺熱 glandular fever
- 関
- 単核球症、EBウイルス
概念
疫学
- 多く(90%以上)は幼児期に初感染し、無症状(不顕性感染)か軽症である。
- 学童期から青年期(14-18歳)に多い。成人になってからの初感染では症状が出る。 → 肝炎様症状
- 日本では成人の80%が既感染者。健常者咽頭粘液:10-20%陽性
潜伏期間
- 4-6週(YN.H-75, ウイルス感染症 - 日本内科学会雑誌106巻11号)
病原体
感染経路
病態
- 飛沫感染 → 咽頭粘膜上皮細胞やリンパ組織で増殖 → Bリンパ球を介して全身に散布 → 増殖能を獲得したBリンパ球によるIgの産生(ポール・バンネル反応、ペニシリンアレルギーと関連)・腫瘍化したBリンパ球対して活性化した細胞障害性T細胞(異型リンパ球)の増加
- EBウイルスがB細胞に感染して癌化させる。ガン化にはEBウイルスが産生する核内抗原(EBNA)と表面抗原(LMA)が重要な役割りを果たす。ガン化したB細胞に対する傷害性T細胞が異型リンパ球として観察される。
経過
- その後、EBウイルスは持続感染する
症候
- 発熱、全身性リンパ節腫脹、絶対的リンパ球増加(10%以上の異型リンパ球)
- 発熱(1-2週間持続,90%)、扁桃炎・咽頭炎(咽頭痛・嚥下困難、発赤・腫脹)、全身性リンパ節腫脹(圧痛)、肝脾腫(10-50%)、結膜の充血、麻疹様・風疹様の発疹(10-40%)
- 扁桃炎・咽頭炎は溶連菌による扁桃炎に似て発赤が強く膿苔を伴うことが多い (SPE.340) → 扁桃白苔とも表現される(滲出性扁桃炎の所見)
- リンパ節腫脹:
- 年齢と共に咽頭、頸部リンパ節腫脹の所見は低下する。40歳以下で頸部リンパ節腫脹94%, 扁桃腺腫大84%, 40歳以上では頸部リンパ節腫脹47%, 扁桃腫大43%
- 後頸部リンパ節腫脹(陽性尤度比 3.1 95%CI 1.6~5.9)
検査
血算
- 末梢血白血球↑、
単核球↑?:白血球分画のリンパ球・単核球?が60%以上となる。 ← Bリンパ球で増殖するため減少、Tリンパ球は反応性に増殖
- 末梢血異型リンパ球(~50%)
- IMにおける異型リンパ球の陽性尤度比
異型リンパ球
|
陽性尤度比
|
95% CI
|
≧10%
|
11.4
|
2.7~35
|
≧20%
|
26
|
9.6~68
|
≧40%
|
50
|
38~64
|
- まれ:溶血性貧血、血小板減少症、再生不良性貧血、TTP、HUS、DIC (QB.H-196 参考1) ← 時に見られる造血系の異常は、EBウイルスにたいする抗体との交差反応によるもの、らしい(参考1)
免疫血清検査
- 1. ペア血清:VCA-IgM↑、VCA-IgG↑ ← VCA-IgMは一過性上昇 ← 急性期に上昇
- VCAとはウイルスキャプシド抗原(virus capsid antigen)
- 陽性→潜伏感染
- EBNA抗原はゆっくりと上昇し3ヶ月後に陽転する。3-6週後に陽転(ウイルス感染症 - 日本内科学会雑誌106巻11号)
肝臓酵素
- 肝逸脱酵素↑:AST、ALT、ALP、γ-GTP。ビリルビンも上昇する。
- 肝障害は80-90%の例にみられる。
診断
- 若年者の場合はCMVとEBVの両方を考慮して血清学的検査(VCA-IgG, VCA-IgM, EBNA, CMV-IgG, CMV-IgM)を提出する。
- トランスアミナーゼ上昇が認められているので、肝胆膵をスクリーニングするために腹部エコーを行うと良いのかもしれない。
鑑別診断
治療
- 特異的治療法無し
- 対症療法:解熱薬や肝庇護薬の投与、輸液など
合併症
注意
- ペニシリン系・セフェム系薬物の投与は禁忌:発疹などのアレルギー反応が起こる
- ペニシリン系抗菌薬では30-100%の割合で皮疹が生じるが、その際にはセフェム系抗菌薬を使う方がよいとされている(ウイルス感染症 - 日本内科学会雑誌106巻11号)
予防
予後
参考
- 1. [charged] Infectious mononucleosis in adults and adolescents - uptodate [1]
国試