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ウサギ亜科 | |||||||||||||||||||||
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生息年代: 53–0 Ma
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アナウサギ Oryctolagus cuniculus
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Leporinae Trouessart, 1880[1] | |||||||||||||||||||||
タイプ属 | |||||||||||||||||||||
Lepus | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ウサギ(兎) | |||||||||||||||||||||
属 | |||||||||||||||||||||
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ウサギ(兎、兔)は、最も広義にはウサギ目[2][3]、狭義にはウサギ科[4][5][2]、さらに狭義にはウサギ亜科もしくはノウサギ亜科 Leporinae[2][6]の総称である。
ここでは主にウサギ亜科について記述する(ウサギ目・ウサギ科についてはそれぞれを参照)。現在の分類では、ウサギ亜科には全ての現生ウサギ科を含めるが、かつては一部を含めない分類もあった。ウサギ目はウサギ科以外に、ナキウサギ科と絶滅したプロラグスなどを含む。
全身が柔らかい体毛で覆われている小型獣である。最大種はヤブノウサギで体長 50–76 cm。毛色は品種改良もあって色も長さも多彩である。多くの種の体毛の色彩は、背面は褐色・灰色・黒・白・茶色・赤茶色・ぶち模様などで、腹面は淡褐色や白。
他の獣と比しての特徴としては、耳介が大型なことが挙げられる。ウサギ目内では耳介があまり発達していない種でも、他の哺乳綱の分類群との比較においては耳介比率が大きいといえる。音や風のするほうへ耳の正面が向くよう、耳介を動かすことができる。また、毛細血管が透けて見えるこの大きな耳介を風にあてることで体温調節に役立てるともいう[誰?]。
眼は頭部の上部側面にあり広い視野を確保することができ、夜間や薄明薄暮時の活動に適している。鼻には縦に割れ目があり、上部の皮膚を可動させることで鼻孔を開閉することができる。門歯は発達し、一生伸びつづける。かつてはこの門歯の特徴をもってネズミと同じ齧歯目の中に位置づけられていた。しかし、上顎の門歯の裏側に楔形の門歯があるものをウサギ目として独立した目分類がなされるようになった(齧歯目と近縁の仲間ではある)。歯列は (順に 門歯・切歯・小臼歯・大臼歯、上下は上下顎)で、計28本の歯を持つ。
かつてネズミの仲間と分類されていたように、肉食であるネコやイヌとは異なる点が多く、ウサギの足の裏には肉球はなく、厚く柔らかい体毛が生えている(ただし肉球のある種もある)。前肢よりも後肢が長く、跳躍走に適している。前肢の指は5本、後肢の趾は4本で、指趾には爪が発達する。体全体は丸みを帯び、尻尾は短い。
盲腸は長い。ストレスには非常に弱く、絶えず周囲を警戒している。
草原や半砂漠地帯、雪原、森林、湿原などに生息する。 アナウサギは地中に複雑な巣穴を掘って集団で生活する。縄張り意識は比較的強く、顎下の臭腺をこすりつける事で臭いをつけてテリトリーを主張する。 ノウサギは穴での生活はしない。
食性は植物食で、草や木の葉、樹皮、果実などを食べる。一部の野生種は昆虫なども食べるという。カイウサギであれば、屋外のアリなども舐めながら食す。
胎生。ネコなどと同じく、交尾により排卵が誘発される交尾排卵動物。妊娠期間は最長がユキウサギの約50日で、多くの種は30–40日。一度の出産で1–6羽(ないしそれ以上)を出産する。
アナウサギは周年繁殖動物(繁殖期を持たない動物)に分類され、年中繁殖することが可能であり[7][8]、多産で繁殖力が高い動物である。 ノウサギは春先から秋まで、長期的なゆるい繁殖期を持っている。
天敵はキツネをはじめ小〜中型の肉食獣、猛禽類。
種類にもよるが、時速60-80kmで走ることができるという。
声帯を持たないため滅多に鳴く事はないが、代わりに非言語コミュニケーションを用いる。代表的なものは発達した後脚を地面に強く打ち付けるスタンピングで、天敵が接近した時にスタンピングをする事で仲間に警戒を促すのが主であるが、いらいらや不安など不快な感情を持つ時にもこの行動をとる事がある。
デリケートな生き物でもあり、ペット飼育されているウサギにはストレスを感じた時に稀に自分の体毛を毟り取る行動が見られるが、ほかのペット動物でもありうる事である。
うさぎの唾液には、衛生状態を保つ成分が含まれている。顔を前脚で覆うように撫でたり耳を撫でる仕草をみかけるが、前脚に予め付着させておいた自らの唾液を目的の部位全体に行き渡らせる事で衛生状態を保っているのである。
特徴的な長い耳に代表されるように秀でた聴力を持つ一方で、視力には劣り、食物を食す時に安全性を確認する場合も、視覚より嗅覚を駆使する。
捕食される側である草食動物のため、家飼いする場合もその本能が残存しており、部屋の目立った場所に出ず、カーテンの裏側、机の下、部屋の隅っこなどに陣取る事が多い。
前歯が伸び続ける事も手伝い、家飼いする時、屋内のコードというコードを片っ端からかじってしまうことも多い。畳、木材家具に至ってはそのものを食べてしまうこともある。特に家電製品のコード類は感電の恐れもあるので、なるべく手の届かないところに設置すべきである。
排泄場所は、決まったところにする習性があるため、きちっとしつければ、特定の場所で排泄を行うようになる。その場合、少しフンなどを置いておくと、臭いなどで目印となりやすい。
時折、背を丸めて直接肛門に口を持っていき、口をモグモグとする行動を観察できるが、これは「食糞行動」といい、未消化になった植物繊維等を含んだ糞を再度食して消化と栄養の再吸収を促す行為であり、異常行動ではない。
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南極大陸や一部の離島を除く世界中の陸地に分布している。ペットとして持ち込まれたものも多く、オーストラリア大陸やマダガスカル島には元々は生息していなかった。
日本では、各地の縄文時代の貝塚からウサギの骨が出土することや、古事記の「因幡の白兎」などに登場することなどから、そのころには既にかなりの数が棲息していたものと考えられる。灰色や褐色等の毛色を有し、積雪地帯では冬には白毛に生え変わる在来種ニホンノウサギは、日本の固有種として知られている。また、絶滅危惧種であり国の特別天然記念物アマミノクロウサギは、世界でも奄美群島の一部のみに生息する。
現生属のうち3属、アマミノクロウサギ属 Pentalagus・アカウサギ属 Pronolagus・メキシコウサギ属 Romerolagus を、ムカシウサギ属に含める説があった[2]。しかしこれは、Lee R. Dice (1929) や G. G. Simpson (1945) の古い定義にもとづく措置で、M. R. Dawson (1958) や C. W. Hibbard (1963) からは異なる定義が使われており、その新しい定義ではウサギ亜科に含まれる[9]。実際、この3属は分子系統の中でまとまった系統位置にない[10]。
野ウサギは昔から食料や毛皮、遊興などの目的で狩猟の対象とされている。特に欧米では、ウサギのハンティングは文化的なスポーツとして扱われている。
狩猟の際にウサギを追いかけるときは必ず斜面の上から追いかけると有利、逆に斜面を登る形で追いかけると不利とされている。なぜならウサギの身体的特徴として後ろ足が長く前足が短いため、ウサギは上り坂では体の傾き具合が水平になるため坂を上るのに強く、下り坂では前かがみのようになってしまうため坂を下るのは苦手だからである。
上野公園にある西郷隆盛像(高村光雲作)は、お気に入りの薩摩犬の雌犬「ツン」(後藤貞行作)をつれて趣味の兎狩りをしているときの姿である。
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狩猟や養殖によって得られたウサギの肉は、食用として利用されてきた。古代、マンモスなどの大型の獲物が少なくなるにつれ、ウサギを始めとする小型ですばしっこい動物は、人類にとって重要な獲物となっていった。ネアンデルタール人は、このような小さな獲物を狩るための適応が出来なかったため、滅んだとの説もある[12]。
ウサギは柔らかい食肉となる。ウサギのフィレ・ステーキという料理もあるが、1羽のフィレ部分はホタテ貝の貝柱程度の寸法しかなく数頭分のフィレ肉を使うことになる。挽肉にすると粘着性が高いので、ソーセージやプレスハムに結着剤として使われることがある。
日本でも、古来より狩猟対象であり、食用とされてきた。縄文時代の貝塚から骨が見つかることはそれを示唆するものであると考えられ、江戸時代徳川将軍家では、正月の三が日にウサギ汁を食べる風習があったという。秋田県の一部地域では「日の丸肉」と呼ばれ、旅館料理として出されることがある。この日の丸肉という名称は、一説によると、明治期に日本で品種改良されて定着した白毛に赤目のウサギが、あたかも日の丸の色彩を具現化したような動物であったことによるともいわれる。 明治期に入り、兎の輸入が始まる。兎の種類は肉用(ベルジアン、バタゴニアン)、毛用(アンゴラ)、毛皮用(ヒマラヤン、シベリヤン)、愛玩用(ロップイヤー、ポーリッシュ、ダッチ)がある。 ロップイヤーの平均体重は九斤(約五キロ)である。 持ち方は、普通は両耳を持つことになっているが、注射用の供するもの(=実験動物)や愛玩用のものは耳に故障があるのを嫌がるので、耳に傷害がないよう首と背の毛皮を掴む方がよい。 ウサギが病気になる原因は、まず食物が第一で、次に管理不行届きといってよいのである。(『兎の飼い方』河南休男)
欧州各地でも古来より食用とされ、フランス料理では、伝統的に一般的な料理に使用するラパン(養殖ウサギ)とジビエに使用できるリエーブル(野ウサギ)という区別で食肉として愛好されてきた。養殖ウサギはアナウサギを家禽化したもので、鶏などと同様に家禽類として扱われる。背肉から腿肉までが主要部位で、内臓肉としては腎臓、レバーなどを食べる[13]。現代では牛、豚、羊など大型獣の食肉が広く一般に普及するにつれ、伝統的な料理に使われる程度になってきている。
北米では、ウサギ肉はフライ用(fryer)、ロースト用(roaster)、内臓(giblets)の3等級に分類されている。生後9週まで、体重4.5-5ポンドの肉はフライ用。体重5-8ポンド、月齢8ヵ月までの肉をロースト用と定めている。ロースト用はフライ用よりも肉が硬いとされている。肝臓や心臓なども食用にする。
ユダヤ教では、ウサギは清くない動物すなわちカーシェール(כָּשֵׁר, Kasher)ではないとされ、食べてはならない動物に定められている。
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狩猟や養殖によって得られたウサギの毛皮は、服飾品としても利用されてきた。
防寒用として世界各地でその毛皮が用いられてきたほか、一種の装飾用としても用いられる。
また、毛皮としてではなく毛足の長いウサギの毛を羊毛のように刈り取って織物用の繊維として利用することも行われてきた。アジア原産のアンゴラ山羊やアンゴラ兎をつかったモヘヤが知られているが、欧州ではアンゴラウサギ(en)という繊維利用専用の品種も作られた。日本でも、明治から太平洋戦争の時代にかけて軍需毛皮を生産する目的からウサギの飼育が盛んになり、日本アンゴラという種が作られた。
西洋では、ウサギの足や尾は幸運のシンボルとして剥製化されて使用される。
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ウサギの革を煮込んで得られる膠は、テンペラ画の地塗りに用いられてきた。アクリル絵具が発達した21世紀初頭でもなお、古い絵画の修復に欠くことのできない材料である。
家畜化されたアナウサギ(カイウサギ)が、実験動物として広く使われる。
ウサギの一種であるアナウサギを家畜化したものはカイウサギと呼ばれ、広く利用されている。ペットとして人気の高いネザーランド・ドワーフやロップイヤー、毛皮用にも使われるレッキス、日本で実験用によく使われるジャパニーズホワイトなど多くの品種があるが、分類学的にはアナウサギと同種とみなされ、学名も同じOryctolagus cuniculusである。
利用目的は毛用・肉用・愛玩用など多岐にわたる。ペット用に品種改良されたものはしばしばイエウサギと呼ばれ、一般家庭での飼育も可能である。実験動物としては、薬品や化粧品の安全性試験や、医学研究のモデル生物として使われる。
日本の大久野島・前島やニュージーランド、オーストラリアでは逸出したカイウサギの野生化が起こっている。オーストラリアでは、野生化したカイウサギが生態系や農業に与える悪影響が問題視されている。
明治時代、その愛くるしさからウサギを飼う事が大流行し、ウサギの価格が高騰。闇取引することが多く政府が取り締まるほどの一大ムーブメントが起きていた。
ウサギは生息域が広く昼行性で繁殖率も高く人の目にふれやすいため、親しみやすく、擬人化されて童話や説話のモチーフとして使われている。漫画やマスコット等のキャラクターとして登場する。ピーター・ラビットの作者ビアトリクス・ポターは、自らが飼っていたウサギを詳細にデッサン、スケッチして解剖学的にも研究して描いている。
西洋東洋を問わず、子ども向け用品を扱う企業にマスコットやシンボルマークにウサギ使用している[14][15]。
日本には古来より、ウサギが月に棲むという説話が仏教道教説話あるいは民間説話として伝わっている。
たとえば、仏教的説話を多く題材にとる『今昔物語集』第五巻第十三話「三の獣、菩薩の道を行じ、兎身を焼く語」には、次のような捨身慈悲、滅私献身の象徴としてウサギが描かれる。
昔むかし、天竺(現在のインド)にウサギ・キツネ・サルの3匹の獣があり、ともに熱心に仏教の修行に励んでいた。そこに、今にも倒れそうな見るからにみすぼらしい老人が現れ、養ってくれる家族もなく貧しく食べるものもないと3匹に訴えた。そこで、サルは木に登って木の実をとってきたり、里に出て里人の果物や野菜をかすめてきて老人に与え、キツネは川原へ行って魚をとってきたり、墓に供えてあった餅や飯をかすめてきて老人に与えた。サルは枯れ枝を拾い集め、キツネがそれに火をつけて、食事の支度を始める。その一方で、ウサギは野を駆けずりまわり東西南北あちこちを探し求めたが、老人に与えるものは見つけられず、手ぶらで帰ってくるしかなかった。そんなウサギを見て、サルやキツネそして老人までもが、ウサギを嘲笑し、罵った。しかしウサギは言う。「確かに己には食べ物を奪って持ってくる力はなかった。ですから、この身を焼いてお食べください」と。そう言うがはやいか、ウサギは火の中にとびこんだ。この様子を見ていた老人は、たちまちにして本来の帝釈天の姿に戻り、すべての生き物たちにこのウサギの善行の姿を見せるために、月の中にウサギを移した。今でも月には煙のような雲影とウサギの姿があるのはそのためである。すべての人が、月を見るたびにこのウサギの行動を思い起こすように。
以上が、「今は昔、天竺に兎・狐・猿、三(みつ)の獣ありて、共に誠の心を発(おこ)して菩薩の道(どう)を行ひけり」に始まり、「万(よろづ)の人、月を見むごとに此の兎の事思ひいづべし」で終わる説話のあらすじである。
平安時代末期ごろに原型が成立したとされ江戸時代には広く読まれていた『今昔物語集』に採録されたこの仏教説話は、釈尊の前世エピソードを集めた古いインドの物語ジャータカや中国の『大唐西域記』などの影響をうけているとみられる。この仏教説話がいつごろ日本に伝わり各地に広まったかは定かではないが、奈良時代以前に作られた法隆寺玉虫厨子の台座絵背後の須弥山図では、帝釈天宮の右上に月(中におそらくウサギか蟾蜍(ひきがえる))と、左上に真っ赤な太陽(中に三本脚の烏)がすでに描かれている。また、そのころに作られたとされる中宮寺天寿国繍帳にも、月を意味する円の中に、不老不死の薬壺と月桂樹の枝とともにウサギが刺しゅうされている。なお、中国由来の道教の神仙思想において、月は西王母という仙女が治める世界であり、そこでは永久に枯れない木(月桂樹)のもとで不老不死の薬をウサギが作っているとされ、そこを訪れた美女が蟾蜍に変えられ月にとどめられているという説話がある。
平安時代の『延喜式』には、「三本足の烏、日之精也。白兎、月之精也」という記述がすでにみられ、ウサギは月の象徴として為政者や日本の寺社でも認識されていたことがうかがえる。他にも、「金烏玉兎(きんうぎょくと)」という言葉があるが、日本では江戸時代までは、太陽と月すなわち全宇宙を天皇が統べるという意識のもと、朝廷のハレの儀式のときには日月を表す幟(のぼり)を必ず立てることとしていた。この幟には金烏と玉兎がそれぞれ太陽と月の象徴として描かれていたとされる[16]それから、『続日本紀』天平四(732)年正月の条に「御大極殿受朝。天皇始服冕服。」とある。この年の正月に聖武天皇は大極殿で朝賀を受けたが、天皇が「袞冕(こんべん)」という礼服を着用したのはこの時が初めてであるという内容であるが、以後、天皇の礼服となるこの袞冕(べん)には、赤地の衣の左肩の部分に金糸の円(その中に黒の烏)、右肩の部分に銀糸の円(その中にウサギと蟾蜍)を刺しゅうしてある。中国皇帝が黒地に左肩に月、右肩に太陽の礼服を用いていたことの影響と考えられる。
こうした月の象徴としてのウサギは、仏教道教的背景を持つ意匠にとどまらず、日本の素朴な民間神事にもあらわれている。
日本、中国、インド、アイヌ、東南アジア、アフリカなど各地に伝わる射日神話と呼ばれるものがある。本来ならひとつであるはずの太陽の数が増えすぎて猛暑大旱魃となり、困った人間たちは知恵を絞り、増えすぎた偽の太陽を射落とすというものである。日本でも各地で奉射祭(オビシャ、オコナイなどともいう)と呼ばれる弓神事が民間で行われてきた。現在でも、滋賀県や利根川下流域の茨城南部から千葉県などで広く行われているが、太陽に擬した的と月に擬した的を用意し、太陽に擬した的だけを、弓矢で射抜く行事である。太陽の的には三本足の烏が描かれ、月の的にはウサギが描かれることが多い。
ウサギは月の化身であり神聖なシンボルとして広く用いられてきたのである。
ウサギを山の神と同一視あるいは山の神の使いや乗り物とする伝承も日本各地に広くみられる。
滋賀県高島郡では山の神の祭日には山の神は白いウサギに乗って山を巡る、山の神は白ウサギの姿をしているとされ、京都府愛宕郡では氏神三輪神社境内に祭られる山の神の二月の祭日には白ウサギが稲の種を蒔き、十一月の祭日には白ウサギが稲の落穂を拾うというので、白ウサギは決して獲ってはならないとされている。また、福井県三方郡ではウサギは山の神の使いとされ山の神の祭日に山に入ることの戒めとともに伝わっている。
また、福島県では吾妻山の斜面の雪解け模様(溶け残った雪が白くある部分)を白いウサギの形に見立て、「雪ウサギ」あるいは「種まきウサギ」と呼んで、これを苗代の種まきの合図とした。福島市には「吾妻小富士の下の残雪がうさぎ形に見られる頃になると晩霜の心配がない」という天気ことわざもあり、また、日照りの際にトンビにさらわれたウサギが山の神となったという説話が伝わっている。
こうしてウサギが各地で山の神と同一視されてきたのは、人間の暮らす里と神や動物のいる山とを身軽に行き来することからの境界を超えるものとしての崇拝、多産で繁殖力に富むことから豊穣をつかさどる意味、そして東日本のノウサギは冬には毛皮が真っ白に変化することから白い動物を神性視する考え方(白鳥などを神性視する古来からの白への信仰)、西日本のノウサギは白くはないのであるが突然変異で白くなった動物を瑞兆とした考え方(白蛇、白鹿、白亀などが朝廷に献上された例などにも見られる希少な白への信仰)などさまざまな背景があると考えられる。
また、月読命(豊産祈願)や大己貴命(大国主命)、御食津神(五穀豊穣)などを祭神とする寺社ではその祭神の性格からウサギを神の使いとするところも多い。『古事記』には大国主命に助けられるウサギの話として「因幡の素兎」の話が伝わっている。
ウサギは道教陰陽思想の影響を受けた十二支の生肖の1つでもあり、「卯(う)」として暦時方角をあらわしてもきた(ただし東南アジアではネコが取って代わる)。
アングロ・サクソンの多産と豊穣をつかさどる春の女神エオストレ(英語版)は、その化身あるいは使いがウサギである。
ウサギは、冬に失われた生命が復活し草木が芽吹き花々が咲く再生の春のシンボルである。卵は宇宙の根源のシンボルであり、宇宙は卵から生まれ、殻の上半分が天になり、下の部分が地になったことをあらわす。絵画等でも女神は必ずといっていいほどウサギを伴った姿で描かれ、このウサギが良い子に卵をもたらすとされる。卵のほうは絵画にはあらわれないが、ウサギと卵の関係について、このウサギは女神が冬に翼の凍ってしまった鳥をウサギに変えたものなので、特別に鳥のように卵を産めるのであるとする話や、ウサギが春色に塗り分けたきれいな卵をプレゼントしたところ女神が大変に喜び、皆にも配るよう命じたという話、ウサギが子どもたちを喜ばせるためにニワトリの卵を庭に隠して探させてみようとしたところ、そのうしろ姿を子どもたちにみられてしまった話などが伝わっている。欧米では現在も春の祭りの日の余興として、子供たちや招かれた客があらかじめ招待主の隠しておいた庭の卵探しをすることがあるという。
同様の話は、オスタラ (Ostera) アスタルテー (Astarte) イシュタル (Ischtar) イナンナ (Inanna) などの女神の名で欧州各地の神話伝説にあり、さかのぼれば、ギリシャのアフロディーテやローマのビーナスなどにも通じ、古代エジプト、ペルシャ、ローマなどでは春の祭りに卵に着色して食べる習慣が既にあったという。のちに、キリスト教が入ってきたときに、キリストの復活と春を祝う女神信仰が「生命への希望」という共通点で結びつき、エオストレ (Eostre) は復活祭 (Easter) の名前の由来となった。
こうした経緯から、キリスト教会で行われる復活祭(イースター)では、生命と復活の象徴を卵とウサギに求めて、イースターエッグやイースターバニーの名で行事にシンボルモチーフとして登場させる。ただし、正教会においてはイースターエッグのみであり、異教の女神と色濃く結びつくイースターバニーのほうは排除されてしまった。
こうした背景の中で、米英を中心とする西欧世界ではイソップ物語や不思議の国のアリスなどに登場するウサギのように、秩序からはずれた存在をあらわす役目をあてがわれ、あわて者、怠け者、異界へ誘う者、トリックスターとして描かれてしまうことも多い。
天敵の多いアナウサギは生き残りのために発情期をなくして年中生殖行為が可能である。 (一方ノウサギの発情期は春先から秋であり、発情の始まった3月頃のオスのウサギが落ち着かなくなる様を指して「三月ウサギ」というイギリスのことわざが生まれた。)
年中発情している獣はヒトとウサギ(アナウサギ)くらいであるというイメージから、性的誘惑のシンボルとしてウサギが選ばれ、大人の世界のディズニーランドというコンセプトを目指した米国の高級ナイトクラブであるプレイボーイクラブのウェイトレスの正式なコスチュームとして1960年に採用され、カジノやバーなどで女性コスチュームに広く採用されるようになった。成人誌『PLAYBOY』でも、連動して1960年からオスのウサギの頭をデザインした「ラビットヘッド」がキャラクターとして用いられている(ウサギには“快活で、遊び心や茶目っ気がある”というイメージから、「ユーモラスであり、セクシーさの象徴」としてウサギをマスコットに選んだと、マークをデザインしたデザイナーは語っている)。
ラビットフット(兎の足)という魔除けのお守りが、1940-1960年代にアメリカのヒッチハイカーなどの間で局地的に流行したとされる。その起源はケルトの一族が身に付けていた幸運のお守りであり、ウサギの繁殖力を神聖視していた一族が、ウサギの男根を象徴しているウサギの足のミイラを身に付けて繁栄を願ったものであったとされている。
このように古来からウサギは多産豊穣・繁栄のシンボルとして、洋の東西を問わず女性や子どもと関わりの深い動物であり、1960年代ごろから男性成人向けのキャラクターとしても用いられるようになった。
今日の日本では、卯月が四月の春であること、月見をするのが現在は秋であることから、イメージとしては春とも秋とも結び付けられている。俳句においては、野兎や雪兔は冬の季語とされている。
動きの速いものの象徴として使われることもままある。
種類によっても違うが、ノウサギは、天敵から逃げ切るために時速60-80キロほどのスピードで走ることができる。人間の場合、100m走の世界記録保持者であっても時速にすれば40キロにも達しないことを考えると、いかにウサギが俊足であるかが分かる(アナウサギの場合には、隠れる穴を用意してあるためそこまで早い速度で逃げる能力が発達しておらず、時速35キロほどいわれている)。
変速機構においてHi-Loの意味でウサギとカメの絵が描かれる例は多く存在する。例えば建設機械の変速機構操作にはJIS規格としてウサギとカメの絵が描かれている[17]ほか、ミシンの速度調節としてもウサギとカメが用いられている。
また日産自動車のブランド「ダットサン」の「ダット」の部分に関して、関係者のイニシャルとともに速く走ることのたとえである「脱兎」が由来になっているとされる。
仏教世界においては献身のシンボルとされる。これは仏教説話集ジャータカ(jātaka)の中に、ウサギが身を火に投じて仙人に布施する物語(ササジャータカ:sasajātaka)があるためである。ちなみに日本におけるモチーフとしてのウサギのところで前述したように、月面の模様をウサギに見立てることも、ここからきている。
縁起の良い動物として、企業や団体のシンボルマークに用いられることも多い。
わらべうたとして「うさぎ うさぎ 何見て跳ねる 十五夜お月様 見て跳ねる」(成立年作詞作曲不詳)と古くから歌われてきたし、ウサギは昔話にもよく登場する身近な動物であった。日本の昔話としては、ウサギが機智を働かせて悪の象徴であるタヌキを懲らしめる「カチカチ山」型の説話がよく知られており、そこではウサギは知恵のあるもの、あるいは悪を懲罰するものとして存在している。
一方、「タヌキとウサギとキツネのぼた餅分け」という民話では、ウサギはタヌキとともに、狡猾なキツネに騙される役柄となっている。
西欧のイソップ物語を原型して明治以降に広められた「ウサギとカメ」の説話では、得意分野で相手を侮って破れた愚か者として描かれる。
そのほか、月への民間信仰との関わりもあってか、その愛らしい姿をデザインしたものは古くから安産、女性や子供の守り神として広く受け入れられ、郷土玩具その他さまざまな道具の意匠に用いられてきた。他にも、謡曲(能)で『竹生島(ちくぶじま)』で「月海上に浮かんでは 兎も波を奔るか 面白の島の景色や」と謡われたことなどから、江戸時代には波の上を跳ねるウサギが瑞祥文様として庶民の着物文様や建築意匠に使われている。
ウィクショナリーに兎の項目があります。 |
ウィクショナリーに兔の項目があります。 |
兎の異体字「兔」を表すShift_JISコードは0x995cであり、2バイトめが 0x5c、すなわち1バイト文字における「¥」あるいは「\」に該当する通称「ダメ文字」の一つである。1バイト文字0x5cには、しばしば特殊な機能が割り当てられているため、マルチバイト文字が入力されることを想定していない(または想定していても対応に不備がある)プログラムは、マルチバイト文字に含まれている0x5cを誤認識し適切に動作しない可能性がある。
ウサギの日本語における助数詞は、かつて1羽、2羽と鳥と同様の「羽(わ)」を使用していた。この由来には諸説あるが、おもに以下のようなものがある。
『羽』は哺乳類ではなく鳥類を数えるときの助数詞であり、『頭』は人間よりも大きな動物、『匹』は人間よりも小さな動物に使うという傾向からすれば、うさぎは『匹』と数えるのが自然であり、『NHK放送のことばハンドブック』では、(文学や食肉として扱う場合を除き)生きたウサギは「匹」を用いるのがふさわしいとしている。愛玩用のウサギは日常的には「匹」または「羽」であるが、商取引では「頭」が使われる場合もある。 なお、自然科学の分野では、動物全般について、動物の大きさで区別せず画一的に頭を使用するのが原則であり(鳥類や小さな昆虫でも、一頭二頭と数える)、NHKのニュースにおいても生物学的な話題として報道する場合には、「奄美大島に生息するクロウサギは~現在ではわずか600頭が確認されているに過ぎない」のように表現する場合がある。
ウィキクォートにウサギに関する引用句集があります。 |
ウサギを連想するような、白くて丸い形をした動植物に、ウサギの名前が冠せられることがある。
ウミウサギガイ Ovula ovum(手前)とツマベニヒガイ Volva volva(奥)
ウミウサギガイの生体。黒い部分は外套膜。
たとえば、貝の中でも丸くて白っぽい貝はウミウサギガイ科と名付けられており、ウサギを含んだ名がつけられている。ウミウサギ、マメウサギ、ウサギアシカワボタンガイなど。これらの貝殻はその外観の美しさから海のジュエリーとしてダイバーや貝殻愛好家からの人気も高い。[27]
月兎耳(つきとじ)という植物の名は、白い毛で覆われた長楕円形の葉がウサギの耳を思わせることによる。 ウサギゴケという食虫植物の名は、その白い花が見事に耳をぴんとたてたウサギの形をしていることによる。 バニーカクタスというサボテンの仲間の名は、新芽を出したときにそれが白いウサギのように見えることによる。 ウサギギクの名は、長楕円形の葉がウサギの耳を思わせることによる。
また、兎馬(ウサギウマ)はロバを意味するが、これはロバの大きな耳がウサギを思わせることからきていると考えられる。
動植物の名づけをする際に既知の概念としてウサギが用いられたということは、それだけウサギが親しまれておりその特徴とともによく知られた存在であることの証左である。
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ウィキメディア・コモンズには、ウサギ科に関連するカテゴリがあります。 |
ウィキスピーシーズにウサギ科に関する情報があります。 |
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