アルツハイマー型認知症 | ピック病 | |
病気部位 | 側頭葉、頭頂葉 | 前頭葉、側頭葉 |
症状 | 「記憶の障害」 | 「行動の障害」 |
昼食を摂ったことを忘れるなど | 同じことを同じ時間に繰り返すなど | |
診断治療 | 100年ほど前に発見され、原因の究明や治療の開発が不十分ながらも進んでいる | 100年ほど前に発見されるが、世界共通の診断基準すらなく、発生頻度も不明 |
発病年齢 | 高齢になるほど増える | 40代以降65歳頃までに発病することが多い |
性差 | 女性にやや多い | 性差なし |
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/07/01 19:47:51」(JST)
Pick's disease | |
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分類及び外部参照情報 | |
Brain MRI in Pick's disease
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ICD-10 | G31.0, F02.0 |
ICD-9 | 331.11 |
OMIM | 172700 |
DiseasesDB | 10034 |
MedlinePlus | 000744 |
eMedicine | neuro/311 |
MeSH | D020774 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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ピック病(ピックびょう、Pick's disease、PiD)は、前頭側頭型認知症(FTD)の一種であり、特有の人格変化、行動異常、言語機能障害を示す初老期の神経変性疾患である。運動ニューロン疾患症状も時に示すことがある。
1892年にチェコのプラハ・カレル大学のArnold Pickが「老化性脳萎縮と失語症との関連」と題した剖検例で前頭葉と側頭葉の著明な萎縮を呈する精神疾患として報告した。1906年までにピックは同様の報告をし、一連の疾患はPickの限局性脳萎縮症として知られるようになった。病理形態面では1911年にドイツのミュンヘン大学のアロイス・アルツハイマーが「嗜銀性神経細胞内封入体(Pick小体)」と「腫大細胞(Pick細胞)」を報告した。1926年に旧満洲医科大学の大成潔とドイツのミュンヘン大学のHugo Spatzが病理学的特徴をまとめ「Pick病」と命名した。
1996年にスウェーデンのルンド大学とイギリスのマンチェスター大学のグループ(Lund and Manchester Groups)によって前頭側頭葉変性症(FTLD)という概念の提唱があり、ピック病はその下位概念に位置づけられた。
ピック病の病理診断の必要十分条件はピック球があるということである。ピック球の定義は抗3リピートタウ抗体で染まる事である。一方、前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia、FTD)においてピック球の伴わないピック病という概念があったため定義が混乱した。後にピック球の伴わないピック病はユビキチン陽性タウ陰性封入体が認められFTLD-Uとなった。FTLD-Uおよびその後明らかになったFTLD-TDPなどが分離された結果、ピック病はタウオパチーの一つと再定義された。Pick細胞はballooned neuronとも言われる。
ピック病は前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia、FTD)のプロトタイプであるためピック病と前頭側頭葉型認知症の症状は同様である。人格変化と行動障害が目立つ。
病初期より病識が乏しくなっている。自身の変化に全く気づいておらず、自らの障害に対する関心もない。
常同行動は病初期から高頻度に認められる。日常生活では同じコースを歩きまわる常同的周遊が目立つことが多い。見当識や視空間認知が保たれていることもあり進行期にならない限り道に迷わず帰宅できる。
礼節や社会通念、他の人からどう思われるかなどを全く気にしなくなり、本能の赴くままの我が道を行く行動が特徴的となる。悪気なく万引きなどを行い周囲とトラブルを起こすこともある[1]。注意や指導に対しても全く気にすることもなくあっけらかんとしている。脱抑制の結果衝動的な行動にはしることもある。自発性の低下が進むと目立たなくなることが多い。
すぐに気がそれてしまい、ひとつの行為を持続して続けることができない。注意障害、運動維持困難との関連性が考えられる。必ずしも外界の刺激に対して過剰に反応するだけではなく、外界の刺激がなくても落ち着かない。何の断りもなく突然部屋を出て行ってしまう立ち去り行動もしばしば観察される。
外的刺激に対して熟考することなく反射的に処理、反応してしまう症候である。他人の模倣行為や目に入る文字を読み上げるといった行為にあわわれる。
質問に対してよく考えずに返答したり、無視したりする症状は考え無精という。考え無精があると「知らない」、「忘れた」と即答するため記憶の障害と誤解されることもある。神経心理検査も結果が実態を反映しなくなる。
自己に対しても周囲に対しても無関心になり、自発的に入浴しなくなったり、身だしなみに無頓着になる症状は比較的病初期から認められる。何もせずに無為に過ごしていたかと思うと時間がくると毎日散歩にいくなど病初期は常同行動と併存する。自発性の低下が進行すると最終的には無動無言状態となる。
初期には特定の食べ物を食べ続けたり同じメニューの料理を作り続けたりするという常同的な食行動パターンを示すことがある。進行期には手にとるものすべてを口に運ぼうとする口唇傾向も出現する。
前頭側頭葉の萎縮が強く、葉状またはナイフの波状(knife-blade)と形容される。また尾状核の萎縮に伴い側脳室前角の拡大をみとめ、萎縮に左右差があることも多い。後頭葉や頭頂葉の萎縮は目立たない。冠状断では前頭部の凸面、眼窩面、側頭極の萎縮が確認できる。脱抑制は前頭葉眼窩面、無関心は前頭前野外側面の障害で出現する。海馬は比較的よく保たれるが扁桃体の萎縮もあり側脳室下角は拡大する。
脳血流SPECTでは萎縮部位に一致した著明な血流低下を認め、左右差を有する例や線条体の血流も低下している。
認知機能障害に比して末期まで正常を示すことが多い。寝たきりになって初めて徐波の混入が認められる。
前頭葉機能の低下が認められる。
アルツハイマー型認知症との鑑別に有効と言われている。NPIは介護者からの情報で評価する。
ピック球は球形、楕円形、あるいはやや不正形の神経細胞胞体内の封入体である。ボジアン染色で嗜銀性を示す。大脳皮質の第Ⅱ、Ⅴ、Ⅵ層、次いでⅢ層または海馬歯状回の顆粒細胞、海馬錐体細胞に好発する。大脳基底核、脳幹では前障、扁桃核、尾状核、被殻、マイネルト基底核、青斑核によく出現する。免疫組織学的にはリン酸化タウ、リン酸化ニューロフィラメント陽性である。生化学的には3リピートタウが蓄積する。萎縮部位で見つかりやすく、ballooned neuron(かつてはPick細胞と呼んだ)を伴うこともある。
大脳新皮質では前頭葉弯隆面や眼窩面の皮質、下側頭回、中側頭回に中等度以上の変性が認められることが多い。
扁桃核がもっとも高度に高頻度に障害される。尾状核と被殻は中等度の障害が認められる。
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アルツハイマー病 | 脳血管性認知症 | ピック病 | |
認知症 | 全般的認知症 | まだら認知症 | アルツハイマー病に類似。 早期には人格、注意力が障害され、 次第に記憶力も障害される。 |
人格 | 晩期に人格障害 | 保たれる | 早期に人格障害 |
病識 | なし(初期にはあり) | あり | なし |
経過 | 進行性 | 動揺性、階段状に進行性 | 進行性 |
基礎疾患 | 特になし | 高血圧、糖尿病、心疾患 | 特になし |
画像検査 | 対称性の脳溝開大 | 脳実質内に脳梗塞巣 | 側頭葉と前頭葉の萎縮 |
機能画像検査 | 側頭葉、頭頂葉での代謝低下 | 前頭葉を中心とした多発性の脳代謝低下 | 前頭葉、側頭葉での代謝低下 |
相談体制 | 保健所 | 地域保健法が定める事業内容「母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項」による老人精神衛生相談事業 | |
高齢者総合相談センター | 厚労省が都道府県レベルに設置している高齢者に関する相談窓口 | ||
在宅介護支援センター | 老人福祉法により市町村が実施の主体となっている施設であり、在宅の要介護高齢者やその介護者の要望に対応した適切なサービスが円滑に提供されるように市町村や関連機関との連絡・調節などを行っている。 | ||
認知症疾患医療センター | |||
在宅対策 | 介護 | 訪問介護 | ホームヘルプサービス |
通所介護 | デイサービス | ||
短期入所生活介護 | ショートステイ | ||
認知症老人向け毎日通所型デイサービスセンター | |||
認知症対応型老人共同生活介護 | グループホーム | ||
老人認知症疾患デイ・ケア施設 | |||
福祉 | 訪問指導 | ||
施設対策 | 介護 | 介護療養型医療施設 | |
介護老人保健施設 | |||
介護老人福祉施設 | |||
医療 | 老人性認知症疾患治療病棟 | ||
福祉 | 養護老人ホーム | ||
特別養護老人ホーム |
関連疾患 | 細胞 | 物質 | ||
レビー小体 | Lewy body | パーキンソン病 | 神経細胞 (黒質、青斑核、迷走神経背側核、 マイネルト基底核、交感神経節) |
エオシン好性硝子様封入体 |
老人斑 | senile plaque | アルツハイマー病 | - | βアミロイド |
ブニナ小体 | Bunina body | 筋萎縮性側索硬化症 | 前角神経細胞 | 抗酸性の封入体 |
ピック小体 | Pick body | ピック病 | 側頭葉、海馬の錐体細胞 | ユビキチン、タウ、リン酸化神経線維陽性 |
アミロイド小体 | corpola amylacea | ? | 老人の脳、前立腺、肺など | エオシンに染まる、PAS染色陽性 |
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
HBN.930
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