- 英
- hemorrhagic cerebral infarction
- 関
- 出血性梗塞
国試
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/06/03 00:49:20」(JST)
[Wiki ja表示]
出血性梗塞(しゅっけつせいこうそく)とは、脳梗塞の合併症の一つである。
血栓性脳梗塞や心原性塞栓性脳梗塞において塞栓子が融解や遠位側へ移動することによって壊死組織に血流が再開通することがある。壊死組織では血管壁の透過性が上昇しているため、再開通を機に血管性浮腫が増悪したり、あるいは梗塞により脆くなった血管壁があると、そこから出血がおこることがある。これを再潅流障害という。出血が起こった場合を出血性梗塞という。
出血性梗塞は急性期の再灌流傷害時(目安として2~5日)と発症2週間後以降の側副血行路により血液供給が行われる時期や、血管が新しく作られる際に起りやすいとされている。発症直後の出血性梗塞は虚血強度が強く、再開通しやすい塞栓性梗塞と頻度が高い。出血量も大量なことが多く、神経症状を増悪させ脳梗塞の予後不良因子の一つである。発症第一日で出血性梗塞が発症することは稀であり、病歴の聴取が非常に重要となる。また、再開通後に高血圧が続いたり、心原性脳塞栓症で抗凝固薬を投与していたりしているような場合には、大出血を起こすおそれがある。
亜急性期には梗塞巣内部や大脳皮質、脳回表面に小さな出血を認めることがある。T2*で低信号で検出される。ラクナ梗塞では抗血小板薬使用の際に判断基準となる重要な所見である。
中大脳動脈水平部(M1)の塞栓性閉塞再開通後に合併する外側線条体動脈領域の出血性梗塞では高血圧性の被殻出血と鑑別になる。特に、皮質枝領域が梗塞に陥らなかった場合は鑑別が難しくなる。
目次
- 1 分類
- 2 脳ヘルニア
- 2.1 テント上に病変がある場合
- 2.2 テント下に病変がある場合
- 3 出血性梗塞の対応
- 4 参考文献
分類
分類 |
内容 |
出血性梗塞タイプ1(HI1) |
梗塞辺縁部に沿った小さな点状出血 |
出血性梗塞タイプ2(HI2) |
梗塞領域内にありmass effectはない融合性点状出血 |
実質性出血タイプ1(PH1) |
軽度のmass effectを伴う。梗塞領域の30%以内の血腫 |
実質性出血タイプ2(PH2) |
明らかなmass effectを伴う。梗塞領域の30%を超える、もしくは梗塞巣から外れる血腫。 |
PH2は早期神経学的悪化のリスクおよび3カ月以内の死亡リスクが著名に増加することが知られている。
脳ヘルニア
詳細は「脳ヘルニア」を参照
テント上に病変がある場合とテント下に病変がある場合で異なる。
テント上に病変がある場合
テント切痕ヘルニアと帯状回ヘルニアが知られている。テント切痕ヘルニアには鉤ヘルニアと中心型ヘルニアがある、
- 中心型ヘルニア(テント切痕ヘルニア)
テント上病変が両側性であったり、中心部に近いところにある場合にみられる。両側性に大脳半球や基底核から下方への力が働くことで視床や中脳が下方に偏倚し、両側側頭葉内側部がテント切痕でヘルニアを起こして中脳が圧迫される。
病期 |
瞳孔 |
対光反射 |
呼吸 |
間脳期 |
両側縮瞳 |
保たれる |
チェーンストークス呼吸 |
中脳期 |
両側中等大 |
消失 |
過換気呼吸 |
橋期 |
両側強度縮小(この時期がないこともある) |
消失 |
浅く速い呼吸の持続 |
延髄期 |
両側散大(瞳孔不同あることも多い) |
消失 |
失調性呼吸 |
- 鉤ヘルニア(テント切痕ヘルニア)
鉤ヘルニアはテント上病変が片側性の時に、病変側の鉤回や海馬回がテント切痕部から下方にヘルニアを起こす。このヘルニアによって病変側の動眼神経と大脳脚が圧迫されさらにテント切痕部で病変側の後大脳動脈が圧迫され、後頭葉に梗塞が生じる。初期には動眼神経の圧迫で病変側の散大と対光反射の減弱から始まる。中脳の圧迫が生じると意識障害、病変側の瞳孔散大、反対側の除脳硬直肢位という鉤ヘルニアの3徴が認められる。さらにヘルニアがすすむと瞳孔は両側散大する。その後の経過は中心型ヘルニアと同様である。
病期 |
瞳孔 |
対光反射 |
呼吸 |
初期 |
病変側散大 |
散大瞳孔は減弱 |
初期は正常 |
中脳期 |
両側中等大 |
消失 |
過換気呼吸 |
橋期 |
両側強度縮小(この時期がないこともある) |
消失 |
浅く速い呼吸の持続 |
延髄期 |
両側散大(瞳孔不同あることも多い) |
消失 |
失調性呼吸 |
- 帯状回ヘルニア
左右の大脳半球に圧格差が生じた結果、大脳鎌の下方から帯状回が反対側にヘルニアを起こす
テント下に病変がある場合
後頭蓋窩はテント上に比べると容積が小さいため、それほど大きくない出血や腫瘍でもヘルニアに至ることがあるため注意が必要である。
- 大後頭孔ヘルニア
小脳扁桃が大後頭孔から嵌入して延髄を圧迫し、呼吸障害、意識障害をきたして直ちに死に至る。
- 上向性テント切痕ヘルニア
小脳上部がテント切痕から上方へヘルニアをおこし中脳を圧迫する。致死的である。
出血性梗塞の対応
抗凝固療法中の場合は一週間の抗凝固療法の中止を行う場合が多い。しかし3日の中止後抗凝固療法の開始が可能であるという報告もありコンセンサスは得られていない。
参考文献
- 青木茂樹ほか『よくわかる脳MRI:A key to brain MRI interpretation』新版、秀潤社<Key book>、2004年、ISBN 487962280x
- 峰松一夫ほか『脳卒中レジデントマニュアル』、中外医学社、2010年、ISBN 9784498128729
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 目でみる循環器CPC 人工弁心内膜炎から出血性脳梗塞をきたした僧帽弁置換術後の1例
- 虚血性脳血管障害 (特集 総復習 脳神経疾患 これで新人に聞かれても大丈夫!)
Related Links
- 症状について 出血性塞栓とは、 心原性脳梗塞などで血栓が脳血管に詰まった状態から回復する際に、梗塞を起こしていた血管で出血が発生する という症状です。 大量の血流による血管の破れが原因に 通常、心原性脳梗塞などで脳 ...
- 今度受け持つ患者様の病名が出血性脳梗塞と言われました。脳梗塞なのに出血ってどういうことですか。意味が ... ご質問ありがとうございます。梗塞なのに出血ってわかりにくい病名ですよね。出血性梗塞は、その起こり方から表現 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、59~61の問いに答えよ。
- 62歳の女性。言動の変化を心配した家族に伴われて来院した。
- 現病歴:1週間前に突然頭痛が出現し持続したため、自宅で休んでいた。今朝からぼんやりして話のつじつまが合わないことに家族が気付いた。
- 既往歴:30歳代から高血圧症で降圧薬を服用中である。
- 家族歴:特記すべきことはない。
- 現症:開眼しているが、名前と生年月日とが言えない。身長153cm、体重50kg。体温37.4℃。脈拍72/分、整。血圧148/88mmhg。運動麻痺と感覚障害とを認めない。右眼瞼の挙上は不能である。右瞳孔は散大し、対光反射は消失し、正面視で右眼球は外転位である。
- 検査所見: 尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球290万、Hb9.2g/dl、Ht26%、白血球7,400、血小板17万。血液生化学所見:結党101mg.dl、総蛋白6.1g/dl、アルブミン3.3g/dl、尿素窒素11mg/dl、クレアニチン0.5mg/dl、AST13IU/l、ALT10IU/l、LD(LDH)184IU/l(基準176~353)、Na143mEq/l、K3.3mEq/l,Cl102mEq/l。CRP3.0mg/dl。
- 入院後徐々に意識が低下し左片麻痺が出現した。考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [103G060]←[国試_103]→[103G062]
[★]
- 54歳の女性。言動が不自然であることを心配した家族に伴われて来院した。 1週前に突然、非常に強い頭痛が出現し、自宅で休んでいた。今朝になって、ぼんやりして話のつじつまが合わないことに家族が気付いたという。 35歳時に高血圧症と診断され、降圧薬を服用中である。開眼しているが、名前と生年月日とが言えない。身長151cm、体重47kg。体温37.2℃。脈拍84/分、整。血圧138/86mmHg。呼吸数18/分。右瞳孔は散大し、対光反射は消失している。正面視で右眼球は外転位である。右眼瞼を挙上できない。来院後、徐々に意識レベルが低下し、左片麻痺が出現した。
- 考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106A038]←[国試_106]→[106A040]
[★]
- 70歳の男性。急に右上下肢が勤かなくなったため、発症から1時間後に搬入された。意識レベルはJCS I-2。全失語と右片麻痺とがみられる。脈拍88/分、不整。血圧152/94mmHg。既往歴に高血圧と心房細動とがある。頭部MRIの拡散強調像(別冊No.23A)と頭部MRA(別冊No.23B)とを別に示す。
- 診断はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105A059]←[国試_105]→[105B001]
[★]
- 61歳の男性。昨日、意識障害と右片麻痺とが出現し、今日になって急に悪化したため救急車で搬送された。昏睡状態で自発運動を認めない。頭部単純CTを以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [095G042]←[国試_095]→[095G044]
[★]
- 英
- cerebral hemorrhage
- 関
- 脳内出血
概念
- 頭蓋内の出血は総称して一般的に脳出血または脳溢血と呼ばれる。脳出血は脳内への出血と脳周囲への出血に分類される。医学的には狭義での脳内出血のみを指すことが多い。
疫学
部位別頻度
- 被殻出血:40%、視床出血:30%、大脳皮質下出血:10%、小脳出血:10%、橋出血:10%
リスクファクター
- IMD.1027
分類
部位による
YN.J-87 SQ.518
|
被殻出血
|
視床出血
|
橋出血
|
小脳出血
|
皮質下出血
|
割合(%)
|
40
|
30
|
10
|
10
|
10
|
意識障害
|
{+}
|
{+}
|
{++}
|
{±}
|
|
嘔吐
|
{+}
|
{+}
|
{++}
|
{+++}
|
|
頭痛
|
{±}
|
{±}
|
{-}
|
{+++}
|
|
運動障害
|
対側
|
対側
|
四肢麻痺
|
運動失調
|
|
感覚障害
|
対{+}
|
対{++}
|
{±}
|
{-}
|
|
共同偏視
|
病側
|
内下方
|
正中
|
健側
|
|
瞳孔
|
{±}
|
縮瞳
|
縮瞳
|
{±}
|
|
瞳孔反射
|
○
|
時に×
|
○
|
○
|
|
外科的治療
|
血腫除去術
|
×
|
×
|
血腫除去術
|
血腫除去術
|
症候
- 前駆症状無く、日中の活動時や食事中に突然発症する。
- 頭痛や嘔吐を伴い、半数の症例では意識障害を伴う。
- 脳局所症状は数分から数時間のうちに完成する。
検査
- T1:
- T2:
- 拡散強調画像:(出血直後は多分低信号で、血腫を作れば明らかな)高信号
治療
脳出血に共通
参考
- http://www.jsts.gr.jp/jss08.html
国試
[★]
- 英
- argatroban
- 商
- アルガロン、ガルトバン、スロンノン、スロンノンHI、ノバスタン、ノバスタンHI
- 関
- その他の循環器官用薬
[★]
- 英
- cerebral infarction, brain infarction
- 関
- 一過性脳虚血発作 transient ischemic attack TIA
- 関
- 脳塞栓症、脳血栓症
- 神経系 091015II(脳梗塞における血液マーカー),091016III,091016IV
疫学
- 脳卒中に占める割合:アテローム血栓性梗塞24.1%、ラクナ梗塞22.7%、心原性脳塞栓症19.2%、その他の脳梗塞5.1% (ガイドライン1)
分類
- 定義:脳を灌流する頭蓋内外の主幹動脈のアテローム硬化を原因とする梗塞
- 機序:塞栓性、血栓性、血行力学性
- 血栓性:アテロームプラークの破綻→血管内皮下組織への血小板の付着→血小板活性化・凝集→(主に)血小板凝集塊の形成
- 血行力学性:主幹動脈の狭窄や閉塞
- 好発部位:内頚動脈(起始部、サイフォン部)、中大脳動脈(水平部)、後大脳動脈(近位部)、椎骨動脈(起始部、終末部)、脳底動脈
- 危険因子:高血圧、糖尿病、高脂血症
- 定義:心臓内の栓子や心臓を経由する栓子が急激に脳動脈を閉塞する
- 機序:塞栓性
- 塞栓性:血液うっ滞→血液凝固カスケードの活性化→トロンビン生成の亢進→フィブリン形成の進展
- 定義:一本の穿通枝動脈閉塞による直径1.5cm未満の小さな梗塞
- 機序:細小動脈硬化、微小塞栓、血栓・塞栓症、血行力学性
- 細小動脈硬化:高血圧に対抗してリポヒアリノーシス(微小動脈硬化・血管硬化)が起こり血管が狭窄
- 微小塞栓:脳内外の微少な塞栓物質による
- 穿通枝動脈の微小粥腫
- 穿通枝分岐部の分枝粥腫(cf.branch atheromatous disease, BAD)→穿通枝動脈が起始部から閉塞して起こる
- 危険因子:高齢、高血圧
- 好発部位:基底核、比較、橋、支障、内包後脚、側脳室外側の大脳深部白質
比較
- SQ.515
|
アテローム血栓性脳梗塞
|
ラクナ梗塞
|
心原性脳塞栓
|
発症機序
|
血栓性 塞栓性 血行力学性
|
血栓症
|
塞栓性
|
好発年齢
|
高齢者
|
高齢者
|
若年者もあり
|
発症時刻
|
起床時
|
覚醒時
|
日中活動時
|
発症様式
|
緩徐進行
|
比較的緩徐進行
|
突発的
|
意識障害
|
軽度
|
なし
|
しばしば高度
|
大脳皮質症状
|
時にあり
|
なし
|
あり
|
基礎疾患
|
高血圧 糖尿病 高脂血症
|
高血圧
|
心疾患
|
リスクファクター
- 高血圧、心筋梗塞、心房細動、糖尿病、高脂血症、無症候性頚動脈病変
- 血圧:(脳梗塞全般)140/90mmHg以上。(ラクナ梗塞)130/85mmHg以上
生活習慣因子
検査
- 画像検査では超急性期には拡散強調画像が有用。CTではearly CT signを確認する。
CT
early CT sign
MRI
- 拡散強調画像:超急性期で梗塞部が高信号を呈する。
- T1:急性期以降(1日~)に低信号
- T2:6時間以降に高信号を呈する(細胞腫脹)。
治療
予後
- ガイドライン1
- 入院時NIH Stroke Scale(NIHSS)スコアの中央値:ラクナ梗塞4、アテローム血栓性脳梗塞6、心原性脳塞栓症14、その他5
- 退院時のmodified Rankin Scale(mRS)3-5の転帰不良(及び死亡)の割合:ラクナ梗塞22.6%(死亡率1.1%)、アテローム血栓性脳梗塞41.4%(6.9%)、心原性脳塞栓症44.8%(18.6%)、29.8%(10.3%)
- 重症度:心原性脳塞栓症>アテローム血栓性脳梗塞>ラクナ梗塞
国試
ガイドライン
- http://www.jsts.gr.jp/jss08.html
[★]
- 英
- infarct, infarction
- ラ
- infarctus
- 同
- 虚血性壊死
- 関
- 心筋梗塞 myocardial infarction
[★]
- 英
- hemorrhagic、haemorrhagic、hemophilic、haemophilic
- 関
- 易出血性、血友病
[★]
- 英
- hemorrhage, bleeding
- 関
- 出血量