アドレナリン
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この項目では、ホルモンのアドレナリンについて記述しています。その他の用法については「アドレナリン (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
(R)-(−)-L-Epinephrine or (R)-(−)-L-adrenaline
|
|
IUPAC命名法による物質名 |
(R)-4-(1-hydroxy-
2-(methylamino)ethyl)benzene-1,2-diol |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
A(AU) C(US) |
法的規制 |
Prescription Only (S4) (AU) POM (UK) ℞-only (US) |
投与方法 |
点滴静脈注射、気管内チューブ |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
Nil (oral) |
代謝 |
シナプス |
半減期 |
2分 |
排泄 |
n/a |
識別 |
CAS登録番号 |
51-43-4 |
ATCコード |
A01AD01 B02BC09
C01CA24 R01AA14 R03AA01 S01EA01
|
PubChem |
CID 838 |
DrugBank |
APRD00450 |
KEGG |
D00095 |
化学的データ |
化学式 |
C9H13NO3 |
分子量 |
183.204 g/mol |
アドレナリン (adrenaline) (英名:アドレナリン、米名:エピネフリン、IUPAC組織名:4-[1-ヒドロキシ-2-(メチルアミノ)エチル]ベンゼン-1,2-ジオール)とは、副腎髄質より分泌されるホルモンであり、また、神経節や脳神経系における神経伝達物質でもある。分子式はC9H13NO3。
ストレス反応の中心的役割を果たし、血中に放出されると心拍数や血圧を上げ、瞳孔を開きブドウ糖の血中濃度(血糖値)を上げる作用などがある。
目次
- 1 構造と生合成
- 2 発見
- 3 エピネフリンという名称
- 4 作用
- 5 医薬品としてのアドレナリン
- 6 アドレナリンと疾患
- 7 関連項目
- 8 脚注
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構造と生合成
アドレナリンはカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリンおよびドパミン)の一つである。L-チロシンからL-ドーパを経て順にドパミン、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、アドレナリン(エピネフリン)と生合成される。
発見
アドレナリンは1895年にナポレオン・キブルスキーによって初めて発見された[1]。彼が動物の副腎から抽出したものには血圧を上げる効果が見られたが、これにはアドレナリンとその他のカテコールアミンも含まれていた。彼はこれらの抽出物を"nadnerczyna"と呼んだ。これとは独立に、ニュージャージーの研究所にいた高峰譲吉と助手の上中啓三は1900年にウシの副腎からアドレナリンを発見し[2][3]、1901年に世界で初めて結晶化に成功した[4]。この時、実際に実験に成功したのは上中であった。同時期、副腎から放出されている血圧を上げる物質の抽出研究は世界中で行われており、ドイツのフェルトはブタから分離した物質に「スプラレニン (suprarenin)」、アメリカ合衆国の研究者ジョン・ジェイコブ・エイベルはヒツジの副腎から分離した物質に「エピネフリン (epinephrine)」と名付けた。アドレナリンは英語、スプラレニンはラテン語、エピネフリンはギリシア語でそれぞれ副腎を意味する語に由来する。 アドレナリンは1904年にフリードリヒ・シュトルツおよびヘンリー・デーキンらによって独立に合成された。[3]
エピネフリンはアドレナリンとは分子式の異なる物質であったが、高峰の死後に、エイベルは高峰の研究は自分の盗作であると主張した。これはアドレナリン発表寸前に高峰がエイベルの研究室を訪問した事実を盾に取った主張であった。それまでの実績が主として発酵学の分野で、こうした分野での実績に乏しい高峰が、研究に大きな役割を果たした上中の功績を強調せず、自己の業績として発表したことも、本当に高峰らの業績だったのかを疑わせる一因であったと指摘する考えもある。しかし、後年、上中の残した実験ノートより反証が示されており、またエイベルの方式では抽出できないことも判明して、高峰と上中のチームが最初のアドレナリンの発見者であったことは確定している。なお、上中が残した実験ノートは兵庫県西宮市の名刹・教行寺に保管されている。
エピネフリンという名称
現在ではアドレナリンもエピネフリンも同じ物質のことを指しているが、ヨーロッパでは高峰らの功績を認めて「アドレナリン」の名称が使われているのに対して、アメリカではエイベルの主張を受けて、副腎髄質ホルモンを「エピネフリン」と呼んでいる。
現在、生物学の教科書・論文では世界共通でアドレナリンと呼んでいるのに対して、医学においては世界共通でエピネフリンと呼ばれている。「生体内で合成される生理活性物質」という捉え方と、「医薬品」という捉え方の違いからだが、日本では医薬品の正式名称を定める日本薬局方が改正され、2006年4月より、一般名がエピネフリンからアドレナリンに変更された。
作用
交感神経が興奮した状態、すなわち「闘争か逃走か (fight-or-flight)」のホルモンと呼ばれる。動物が敵から身を守る、あるいは獲物を捕食する必要にせまられるなどといった状態に相当するストレス応答を、全身の器官に引き起こす。
- 運動器官への血液供給増大を引き起こす反応
- 心筋収縮力の上昇
- 心、肝、骨格筋の血管拡張
- 皮膚、粘膜の血管収縮
- 消化管運動低下
- 呼吸におけるガス交換効率の上昇を引き起こす反応
- 感覚器官の感度を上げる反応
- 痛覚の麻痺
- 勃起不全
興奮すると分泌されるため、例えば喧嘩になった時に分泌され、血まみれや骨折の状態になっても全く痛みを感じないケースもある。
医薬品としてのアドレナリン
アドレナリンは心停止時に用いたり、アナフィラキシーショックや敗血症に対する血管収縮薬や、気管支喘息発作時の気管支拡張薬として用いられる。有害反応には、動悸、心悸亢進、不安、頭痛、振戦、高血圧などがある。
心停止の4つの病態、すなわち心室細動、無脈性心室頻拍、心静止、無脈性電気活動のいずれに対してもアドレナリンは第1選択として長く使用されてきたが、近年ではバソプレシンが救命率、生存退院率が共に上回ることが証明されバソプレシンに第1選択の座を譲りつつある。静脈内投与の場合、初回投与量は1mgである。血中半減期は3分から5分なので、3分から5分おきに1mgを繰り返し投与する。
また局所麻酔剤に10万分の1程度添加して、麻酔時間の延長、局所麻酔剤中毒の予防、手術時出血の抑制を図ることもある。
代謝はまずモノアミン酸化酵素によって酸化(脱アミノ化)され、最終的にはバニリルマンデル酸として尿中に排泄される。
商品名として「エピスタ」「ボスミン」「エピペン」がある。
併用禁忌
- カフェイン(カフェイン飲料・製剤) - 相互に作用を増強させ、心臓に負荷をかける。突然死の原因につながることもある。
- タバコ(喫煙) - 相互に作用を増強、精神活動を賦活、錯乱を招く恐れがある。
- 血管拡張作用のある薬 - 血管収縮作用を減弱させ、相互に効力を弱める。
- ブチロフェノン系、フェノチアジン系薬等(α遮断作用のある薬) - アドレナリンの作用を逆転させ、急激な血圧降下を起こす。
アドレナリンと疾患
褐色細胞腫は副腎腫瘍の一つであり、多量のカテコールアミンが分泌される疾患である。
関連項目
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ウィキメディア・コモンズには、アドレナリンに関連するメディアがあります。 |
脚注
- ^ アドレナリとエピネフリン
- ^ Yamashima T (2003). “Jokichi Takamine (1854–1922), the samurai chemist, and his work on adrenalin”. J Med Biogr 11 (2): 95–102. PMID 12717538.
- ^ a b Bennett M (1999). “One hundred years of adrenaline: the discovery of autoreceptors”. Clin Auton Res 9 (3): 145–59. doi:10.1007/BF02281628. PMID 10454061.
- ^ Takamine J (1901). The isolation of the active principle of the suprarenal gland. Great Britain: Cambridge University Press. pp. xxix-xxx. http://books.google.com/?id=xVEq06Ym6qcC&pg=RA1-PR29#PRA1-PR29,M1.
内分泌器:ホルモン(ペプチドホルモン、ステロイドホルモン) |
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視床下部 - 脳下垂体 |
視床下部
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GnRH - TRH - ドーパミン - CRH - GHRH - ソマトスタチン - ORX - MCH - MRH - MIH
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脳下垂体後葉
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バソプレッシン - OXT
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脳下垂体中葉
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インテルメジン
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脳下垂体前葉
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αサブユニット糖タンパク質ホルモン(FSH - LH - TSH) - GH - PRL - POMC(ACTH - MSH - エンドルフィン - リポトロピン)
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副腎 |
副腎髄質
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副腎髄質ホルモン(アドレナリン - ノルアドレナリン - ドーパミン)
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副腎皮質
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副腎皮質ホルモン(アルドステロン - コルチゾール - DHEA)
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甲状腺 |
甲状腺
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甲状腺ホルモン(T3 - T4 - カルシトニン)
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副甲状腺
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PTH
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生殖腺 |
精巣
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テストステロン - AMH - インヒビン
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卵巣
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エストラジオール - プロゲステロン - インヒビン/アクチビン - リラキシン(妊娠時)
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その他の内分泌器 |
膵臓
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グルカゴン - インスリン - ソマトスタチン
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松果体
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メラトニン
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内分泌器でない器官 |
胎盤:hCG - HPL - エストロゲン - プロゲステロン - 腎臓:レニン - EPO - カルシトリオール - プロスタグランジン - 心臓:ANP - BNP - ET - 胃:ガストリン - グレリン - 十二指腸:CCK - GIP - セクレチン - モチリン - VIP - 回腸:エンテログルカゴン - 脂肪組織:レプチン - アディポネクチン - レジスチン - 胸腺:サイモシン - サイモポイエチン - サイムリン - STF - THF - 肝臓:IGFs(IGF-1 - IGF-2) - 耳下腺:バロチン - 末梢神経系:CGRP - P物質
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誘導タンパク質 |
NGF - BDNF - NT-3
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 様々な期間の寒冷暴露がラット視床下部背内側核における脳内モノアミン濃度に及ぼす影響
- 齊藤 武比斗
- 共栄大学研究論集 9, 55-59, 2011-03-31
- … 本研究においては、様々な期間の寒冷暴露が視床下部背内側核(DMH)の脳内モノアミン類(ノルエピネフリン、セロトニン、ドーパミン)濃度にどのように影響するか検討することを目的とした。 … サンプル中のモノアミン濃度は高速液体クロマトグラフィーを用いて定量した結果、28日間の寒冷暴露を行った群においてのみ、コントロール群と比較してノルエピネフリン濃度が有意に低い値を示した。 …
- NAID 110008428292
- 49.牛副腎髄質細胞における非麻薬性鎮痛薬ペンタゾシンのノルエピネフリントランスポーターに及ぼす影響(第28回産業医科大学学会総会学術講演・展示抄録集)
Related Links
- 現在ではアドレナリンもエピネフリンも同じ物質のことを指しているが、ヨーロッパでは 高峰らの功績を認めて「アドレナリン」の名称が使われているのに対して、アメリカでは エイベルの主張を受けて、副腎髄質ホルモン ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
デンタカインカートリッジ
組成
成分・分量 1容器 (1.8mL) 中
- 塩酸リドカイン 36mg
酒石酸水素エピネフリン 0.045mg
添加物
- ピロ亜硫酸ナトリウム 0.9mg
pH調整剤、等張化剤
禁忌
- 本剤の成分又はアミド型局所麻酔薬に対し過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
- 歯科領域における浸潤麻酔又は伝達麻酔
- 浸潤麻酔又は伝達麻酔には、通常成人0.3?1.8mLを使用する。口腔外科領域の麻酔には、3?5mLを使用する。
なお、年齢、麻酔領域、部位、組織、症状、体質により適宜増減するが、増量する場合には注意すること。
慎重投与
- 高齢者又は全身状態が不良な患者[生理機能の低下により麻酔に対する忍容性が低下していることがある。] (「高齢者への投与」及び「重要な基本的注意」の項参照)
- 心刺激伝導障害のある患者[症状を悪化させることがある。]
- 重症の肝機能障害又は腎機能障害のある患者[中毒症状が発現しやすくなる。]
重大な副作用
ショック
(頻度不明)
- 徐脈、不整脈、血圧低下、呼吸抑制、チアノーゼ、意識障害等を生じ、まれに心停止を来すことがある。また、まれにアナフィラキシーショックを起こしたとの報告があるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には、適切な処置を行うこと。
意識障害、振戦、痙攣
(頻度不明)
- 意識障害、振戦、痙攣等の中毒症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。(「過量投与」の項参照)
異常感覚、知覚・運動障害
(頻度不明)
- 注射針の留置時に神経に触れることにより一過性の異常感覚が発現することがある。また、神経が注射針や薬剤あるいは虚血によって障害を受けると、まれに持続的な異常感覚、疼痛、知覚障害、運動障害等の神経学的疾患があらわれることがある。
悪性高熱
(頻度不明)
- まれに原因不明の頻脈・不整脈・血圧変動、急激な体温上昇、筋強直、血液の暗赤色化(チアノーゼ)、過呼吸、発汗、アシドーシス、高カリウム血症、ミオグロビン尿(ポートワイン色尿)等を伴う重篤な悪性高熱があらわれることがある。本剤を投与中、悪性高熱に伴うこれらの症状を認めた場合は、直ちに投与を中止し、ダントロレンナトリウム水和物の静注、全身冷却、純酸素での過換気、酸塩基平衡の是正等、適切な処置を行うこと。また、本症は腎不全を続発することがあるので、尿量の維持を図ること。
薬効薬理
作用機序
- リドカインは一次感覚神経の無髄 (C) 神経線維、細い有髄 (Aδ) 神経線維のNa+チャネル内の特異的結合部位に結合してイオンの細胞内への流入を阻止し、活動電位の発生を抑制 (神経伝導を遮断) することにより局所麻酔作用を発現する。プロカインより作用の発現が速やか、局所刺激作用が弱い、麻酔効果が強い、作用持続が長い。1)
アドレナリンを静脈内に投与すると、投与部位の血管が収縮して局所麻酔薬の吸収がおくれるため、作用の持続が長くなると共に、全身作用による毒性を軽減することができる。1)
局所麻酔作用
- デンタカインカートリッジと標準製剤 (麻酔剤、50μL) をモルモットの下顎切歯間歯肉へ投与して刺激針による下顎切歯間歯肉への刺激に対する反射の有無を測定し、比較した。その結果、両剤ともに局所麻酔作用を示し、両製剤の間に有意な差は認められなかった。2)
有効成分に関する理化学的知見
●塩酸リドカイン
一般名:
化学名:
- 2-Diethylamino-N -(2,6-dimethylphenyl) acetamide hydrochloride monohydrate
分子式:
分子量:
性状:
本品は水又はエタノール(95)に極めて溶けやすく、クロロホルムに溶けやすく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
融点:
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、25~27の問いに答えよ。
- 55歳の男性。激しい胸痛のため救急車で搬入された。
- 現病歴:1週前から階段を昇るときに前胸部痛を自覚したが安静にて消失するため放置していた。今朝から激しい前胸部痛が出現し持続している。
- 既往歴:48歳から高脂血症で加療中である。
- 現症:意識は清明。顔面は苦悶様である。体温36.6℃。呼吸数25/分。脈拍64/分、整。血圧144/96mmHg。貧血と黄疸とを認めない。皮膚は冷汗をかき湿潤である。心雑音はない。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦。下腿に浮腫を認めない。
- 検査所見:尿所見:比重1.018、蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)、沈渣に異常を認めない。血液所見:赤血球520万、Hb16.7g/dl、Ht50%、白血球10,400、血小板26万。血清生化学所見:尿素窒素28mg/dl、クレアチニン1.1mg/dl、AST55単位、ALT20単位、LDH350単位(基準176~353)、CK680単位(基準10~40)、Na144mEq/l、K4.2mEq/l、Cl106mEq/l。心電図を以下に示す。
- ST上昇:II.III.aVF。(軽度)V5,V6 →下壁梗塞 + 側壁梗塞
- ST低下:(reciprocal change)I,aVL,V1-V4
[show details]
血液生化学
心筋梗塞#血液検査
心電図
- 発症から数時間と考えられる。
- ST上昇:II, III, aVF. (軽度)V5,V6
- 血管 :RCA(右冠状動脈)→後下行枝(左心室下壁分布)
下壁梗塞に伴う心ブロック
- 1. 房室結節枝への血流途絶
- 2. 副交感神経の興奮
- acute coronary syndrome refers to any constellation of clinical symptoms that are compatible with acute myocardial ischemia and encompasses acute myocardial infarction as well as unstable angina. (washington manuall 32th ed p.131)
不安定狭心症の定義
最近3週間以内に狭心症が増悪した場合(発作の誘因、強さ、持続時間、硝酸薬の有効性)と、新たに発症した狭心症
- 急性心筋梗塞の診断と治療
- ・主訴:激しい胸痛
- ・問診(S)
- 1週前から階段を昇るときに前胸部痛を自覚したが安静にて消失 → 労作時狭心症?。不安定狭心症?
- 今朝から激しい前胸部痛が出現、持続 → 急性心筋梗塞?
- 高脂血症(48歳~。加療中) → 冠状動脈疾患のリスク因子
- ・診察(O)
- 顔面は苦悶様
- 頻呼吸(25/分) →
- 高血圧(144/96mmHg)
- 皮膚冷汗・湿潤
- ・検査結果(O)
- 白血球 10,400/mm3 → 心筋梗塞に伴って上昇することがある。
- 尿素窒素 28mg/dl → 腎機能低下
- クレアチニン 1.1mg/dl → 腎機能低下
- AST 55単位 → 心筋逸脱酵素
- LDH 350単位(基準176~353) → 心筋逸脱酵素
- CK 680単位(基準10~40) → 心筋逸脱酵素
- ECG ST上昇 → 虚血性心疾患
- ・診断と治療
- 1. 気道確保、酸素投与、静脈路確保
- 2. 心電図装着、パスルオキシメータ装着
- 3. 胸部単純X線写真
- 4. 心エコー → 壁運動。解離性大動脈瘤の否定
- 5. 心カテーテルによる造影検査
- 6. 心カテーテルによる経皮的冠動脈形成術
- ・心電図:発症から数時間と考えられる。
- 下壁梗塞
- ST上昇:II, III, aVF. (軽度)V5,V6
- 血管 :RCA(右冠状動脈)→後下行枝(左心室下壁分布)
- 下壁梗塞に伴う心ブロック
- 1. 房室結節枝への血流途絶
- 2. 副交感神経の興奮
- 下壁には副交感神経が豊富に分布しており、心筋梗塞による神経終末の刺激で副交感神経が興奮し低血圧、嘔吐、徐脈、さらに洞徐脈、洞停止、房室ブロックを起こす(ベツォルド-ヤーリッシュ反射 Bezold-Jarisch反射)。
- ====
- a. SpO2の値が記されていないが、酸素飽和度95%以上に保つことが大切みたい。
- 交感神経が緊張しているから末梢の血管が締まっているのですね。そうしないと心拍出量を保てないほど心機能が低下しているのかもしれません。左心不全の後方症状はまだで前方症状が現れる前の段階でしょうか。末梢組織の酸素化を助けるために、酸素投与が良いかもしれません。頻呼吸でもある。あげておいて悪いことはないし、大抵QQできた患者さんには大抵つけられている。
- b. 輸液を入れられる準備をしておくのが良いでしょう。酸素投与と静脈路確保は救急の基本でしょう
- c. 肺うっ血とか肺水腫所見がないからいらない。むしろ、血圧が低下して、駆出できる血液量が減少して良いことがないのでは?
- d 末梢循環を回復させるにはいい手段。心臓の駆出量も確保される。
- e ありえない。使うのはVFかpulseless VTだけ。
- ====
- ・心電図
- 完全房室ブロックが起きました。
- 徐脈の治療
- アトロピンの投与。無効であれば、緊急ペーシング(体外式のペーシング)
- a. 強心配糖体。今では専ら「心房細動」(を伴う心不全)の治療で用いられる。つまり、房室結節の伝導抑制のために用いる。
- b. βブロッカー。β1受容体に拮抗して心拍数↓、心収縮力↓、心伝導速度↓、、、
- c. 冠血管拡張、静脈系の血管拡張で、、、狭心症の治療をしたいわけじゃない。
- d. よし
- e. 大動脈内バルーンパンピング, intraaortic balloon pumping, IABP
- 適応
- 急性心筋梗塞、不安定狭心症、心原性ショックで、冠循環の改善と心臓のポンプ機能を補助したい場合
- 禁忌
- 大動脈弁閉鎖不全、大動脈解離、腎機能不全、胸部大動脈の人工血管置換術後(12ヶ月以内)(ICU.233)
- 大動脈弁閉鎖不全症、大動脈の高度な硬化性病変の合併
- ====
- a. 解像度が悪い、最近良くなったけどね。時間がかかるらしく、緊急には不向き。
- b. 大動脈解離の可能性があれば造影CT。胸部単純CTで冠状動脈の評価とか多分できないだろうし、あまり診断治療に有用でない
- c. 心電図装着。放射線を出すタリウムを静脈投与。平面像またはSPECTにより断層像を撮影。一定時間後に再度撮影。
- 心筋の血流を確認することができる。心筋が生きているのかどうか、心筋が虚血なのかどうか。これにより狭心症の詳細な評価が可能(心筋に虚血が起こっているのかどうか、もし起こっていれば、それはどこか?)
- d. 狭心症の診断に用いる。当然、急性心筋梗塞の急性期は禁忌。 運動負荷心電図#禁忌 LAB.1519
- e. 診断と治療を行うことができる。
[正答]
※国試ナビ4※ [100C024]←[国試_100]→[100C026]
[★]
- 次の文を読み、37、38の問いに答えよ。
- 18歳の男子。昨夜から喘鳴を伴う呼吸困難があり、今朝から意識混濁が出現したため救急車で搬入された。
- 現症 : 意識JCS20。体温37.6℃。呼吸数30/分。脈拍140/分、整。血圧130/92mmHg。努力性胸式呼吸で呼気の延長が著明である。口唇と爪床とにチアノーゼを認める。貧血と黄疸とはない。肺野は呼気時に喘鳴がある。心音は肺動脈領域でⅡ音の亢進が認められる。腹部は平坦、軟で圧痛はない。
- 検査所見 : 血液所見:赤血球518万、Hb16.3g/dl、Ht49%、白血球13,600、血小板33万。血清生化学所見:血糖138mg/dl、総蛋白7.5g/dl、クレアチニン1.0mg/dl、総ビリルビン1.0mg/dl、AST〈GOT〉35単位(基準40以下)、ALT〈GPT〉31単位(基準35以下)、LDH183単位(基準176~353)、CK70単位(基準10~40)。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.00、PaO2 37Torr、PaCO2 67Torr、HCO3- 17mEq/l、BE -7.7mEq/。胸部エックス線写真で心拡大はない。
[正答]
※国試ナビ4※ [096F037]←[国試_096]→[096F039]
[★]
- 60歳くらいの男性。山林横の道路で意識を消失し、呼吸困難の状態で発見され救急車で搬入された。
- 呼びかけに応答しない。顔面苦悶状。上半身に蕁麻疹と後頸部に径3cmの発赤腫脹とがある。結膜は充血している。対光反射はある。呼吸数28/分、不整。脈拍128/分、整。血圧70/40mmHg。胸部全体にwheezesを聴取する。喉頭浮腫を認める。
- 血液所見:赤血球450万、Hb15.5g/dl、白血球9,000。
- 血清生化学所見:総蛋白6.2g/dl、尿素窒素18mg/dl、クレアチニン1.1mg/dl、総ビリルビン0.8mg/dl、AST38単位、ALT33単位、ChE 600単位(基準400~800)、アミラーゼ100単位(基準37~160)、CK20単位(基準10~40)、Na140mEq/l、K3.6mEq/l、
- 動脈血ガス分析(自発呼吸、酸素5L/分投与下):pH7.30、PaO2 96Torr、PaCO2 48Torr、HCO3- 23mEq/l。心電図には洞性頻脈の他に異常なく、胸部エックス線写真にも異常を認めない。
- 治療薬で適切でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099F049]←[国試_099]→[099G001]
[★]
- 次の文を読み、37、38の問いに答えよ。
- 64歳の男性。意識障害のため家族に付き添われて救急車で搬入された。
- 現病歴 : 今朝、庭の植木の枝を切っていたところ、小型のハチ数匹に襲われ、手足を数か所刺された。薬をつけようと室内に入ったところで脱力と呼吸困難とを訴えて倒れ意識を失った。搬送中にけいれん発作が2回あった。
- 既往歴 : 2年前、農作業中にハチに刺されたことがある。10年前から高血圧で加療中であるが、その他の疾患の既往はない。
- 現症 : 応答はあるが意識は混濁している。体温36.5℃。脈拍140/分、緊張不良。眼球結膜に充血を認める。全身が発赤し膨疹が多発している。咽頭粘膜の腫脹を認める。心雑音はなく、肺野にwheezes(笛様音)を聴取する。腹部は平坦、軟である。腱反射に左右差はなく、病的反射を認めない。
- 気道と静脈路との確保とともにまず投与するのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [097F037]←[国試_097]→[097F039]
[★]
- 2歳の男児。発熱と呼吸困難のため救急車で搬入された。本日朝、38.8℃の発熱と呼吸困難とに両親が気付き救急車を要請した。来院時の体温 39.8℃。心拍数 120/分、整。呼吸数 28/分。SpO2 96%(リザーバー付マスク5L/分酸素投与下)。毛細血管再充満時間は1秒と正常である。呼吸困難は仰臥位で増悪し、座位でやや軽快する。下顎を上げた姿勢で努力呼吸を認める。嚥下が困難で唾液を飲み込むことができない。心音に異常を認めない。呼吸音では、吸気時に喘鳴と肋間窩の陥入とを認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
- 最も優先すべきなのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112B038]←[国試_112]→[112B040]
[★]
- 58歳の男性。会議で発言中に突然倒れ、救急車で搬入された。同僚が心肺蘇生を施行したが、7分後救急隊到着時には心肺停止状態(心電図では心室細動)であった。救急救命士によって除細動(200ジュール、1回)されたがモニターでは心静止であった。ラリンゲアルマスクで気道確保され、バッグによる人工呼吸と心臓マッサージとを施行され、用手換気で良好な胸郭の動きが確認される。心電図モニターでは心静止である。右前腕静脈に静脈路を確保した。この時点で標準的に用いられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [100D017]←[国試_100]→[100D019]
[★]
- 22歳の男性。耳鼻科で中耳炎と診断され、処方された抗菌薬を服用した。30分後に顔面の腫脹感と全身の掻痒感とを自覚した。自力で来院したが、顔面の紅潮と腫脹、口唇部の腫脹および嗄声が認められ、胸内苦悶を訴えたのち嘔吐した。体温35.8℃。呼吸数24/分。脈拍110/分、整。血圧78/40mmHg。マスクでの酸素投与と静脈路確保とを行った。まず投与すべき薬剤はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [095F001]←[国試_095]→[095F003]
[★]
- 76歳の男性。1か月前から次第に増強する呼吸困難と四肢冷感とのために来院した。
- 6か月前に夜間、激しい前胸部痛があったが、1時間後に軽快したため放置していた。
- 来院時、呼吸数24/分。脈拍96/分、整。血圧98/64mmHg。心雑音は聴取されない。
- 胸部エックス線写真と心電図とを以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [098D020]←[国試_098]→[098D022]
[★]
- 36歳の男性。咽頭痛と38℃台の発熱とを主訴に来院した。解熱薬を服用させたところ、30分後に突然呼吸困難と悪心とを訴えた。脈拍100/分、微弱。血圧60/40mmHg。吸気時喘鳴と全身に蕁麻疹様の皮疹とを認める。
- 最初に投与するのはどれか、
[正答]
※国試ナビ4※ [100I029]←[国試_100]→[100I031]
[★]
- アナフィラキシーショックにまず投与すべき薬はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096E032]←[国試_096]→[096E034]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [100E026]←[国試_100]→[100E028]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- glauc 青みがかった緑 + oma
- 英
- glaucoma ()
- 同
- あおそこひ、いしそこひ
分類 SOP.92
-
- 1. 続発開放隅角緑内障
- 2. 続発閉塞隅角緑内障
- 1. 早発型発達緑内障
- 2. 遅発型発達緑内障
- 3. 他の先天異常を伴う発達緑内障
症状
治療
-
-
-
- 眼房水産生を抑制しぶどう膜強膜流出を増加する ← 交感神経遮断薬と矛盾しない?
緑内障が禁忌となっている薬剤
催眠鎮静剤、抗不安剤
アモバン(ゾピクロン)
エバミール、ロラメット(ロルメタゼパム)
エリスパン(フルジアゼパム)
エリミン(ニメタゼパム)
コレミナール(フルタゾラム)
コンスタン、ソラナックス(アルプラゾラム)
セニラン(ブロマゼパム)
セパゾン(クロキサゾラム)
セルシン、ホリゾン(ジアゼパム)
セレナール(オキサゾラム)
ソメリン(ハロキサゾラム)
ダイアップ(ジアゼパム)
ダルメート、ベノジール(フルラゼパム)
ドラール(クアゼパム)
バランス、コントール(クロルジアゼポキシド)
ハルシオン(トリアゾラム)
ベンザリン、ネルボン(ニトラゼパム)
マイスリー(ゾルピデム)
メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)
メレックス(メキサゾラム)
メンドン(クロラゼプ酸)
リスミー(リルマザホン)
ルネスタ(エスゾピクロン)
レキソタン(ブロマゼパム)
レスタス(フルトプラゼパム)
レスミット(メダゼパム)
レンドルミン(ブロチゾラム)
ロヒプノール、サイレース(フルニトラゼパム)
ワイパックス(ロラゼパム)
臭化カリウム(臭化カリウム)
臭化ナトリウム(臭化ナトリウム)
抗てんかん剤
マイスタン(クロバザム)
リボトリール、ランドセン(クロナゼパム)
抗パーキンソン剤
アーテン(トリヘキシフェニジル(錠))
アキネトン、タスモリン(ビペリデン)
コリンホール(メチキセン)
ドパゾール(レボドパ)
ドプス(ドロキシドパ)
トリモール(ピロヘプチン)
ネオドパストン、メネシット(レボドパ,カルビドパ)
パーキン(ヒベンズ酸プロフェナミン)
パーキン(プロフェナミン)
ペントナ(マザチコール)
マドパー、イーシー・ドパール、ネオドパゾール(レボドパ,ベンセラジド)
神経系用剤(含む別用途)
アナフラニール(クロミプラミン)
アモキサン(アモキサピン)
アンプリット(ロフェプラミン)
サインバルタ(デュロキセチン)
ストラテラ(アトモキセチン)
スルモンチール(トリミプラミン)
デパス(エチゾラム)
トフラニール(イミプラミン)
トリプタノール(アミトリプチリン)
ノリトレン(ノルトリプチリン)
プロチアデン(ドスレピン)
ベタナミン(ペモリン)
リーゼ(クロチアゼパム)
リタリン、コンサータ(メチルフェニデート)
ルジオミール(マプロチリン)
総合感冒剤
LL(複合感冒薬)
PL(複合感冒薬)
ピーエイ(複合感冒薬)
ペレックス(複合感冒薬)
小児用ペレックス(複合感冒薬(小児用))
幼児用PL(複合感冒薬)
他の中枢神経系用薬
サノレックス(マジンドール)
骨格筋弛緩剤
ロキシーン(プリジノール)
自律神経剤
エスペラン(オキサピウム)
チアトン(チキジウム)
トランコロン(メペンゾラート)
トランコロンP(メペンゾラート,フェノバルビタール)
プロ・バンサイン(プロパンテリン)
鎮けい剤
コリオパン(ブトロピウム)
セスデン(チメピジウム)
ダイピン(N-メチルスコポラミン)
ダクチル(ピペリドレート)
ファイナリン(メチルベナクチジウム)
ブスコパン(ブチルスコポラミン)
ロートエキス(ロートエキス)
眼科用剤
アトロピン点眼液、リュウアト眼軟膏(アトロピン)
ウブレチド(ジスチグミン)
エピスタ(エピネフリン)
サイプレジン(シクロペントラート)
ネオシネジン(フェニレフリン)
ピバレフリン(ジピベフリン)
ミドリンM(トロピカミド)
ミドリンP(トロピカミド,フェニレフリン)
眼科用プリビナ(ナファゾリン)
臭化水素酸ホマトロピン(ホマトロピン)
耳鼻科用剤
ナーベル(テトラヒドロゾリン)
ナシビン(オキシメタゾリン)
鎮暈剤
トラベルミン(ジフェンヒドラミン,ジプロフィリン)
不整脈用剤
シベノール(シベンゾリン)
ピメノール(ピルメノール)
リスモダン、ノルペース(ジソピラミド)
リスモダンR、ノルペースCR(ジソピラミド)
利尿剤
ダイアモックス(アセタゾラミド)
血管拡張剤
アイトロール(一硝酸イソソルビド)
ニトロール(硝酸イソソルビド)
ニトロール(硝酸イソソルビド)
ニトロール、フランドル(硝酸イソソルビド(持効))
ニトログリセリン錠(ニトログリセリン(舌下))
ニトロペン(ニトログリセリン(舌下))
フランドル、ニトロール(硝酸イソソルビド(外))
ミリステープ、ニトロダーム、ミオコールスプレー(ニトログリセリン(外用))
ミリステープ、ニトロダーム、ミオコールスプレー(ニトログリセリン(外用))
他の循環器官用薬
リズミック(アメジニウム)
鎮咳剤
アストーマ(アストーマ(製))
アストフィリン(アストフィリン(製))
カフコデ(カフコデ(製))
トクレス(ペントキシベリン)
フスコデ(フスコデ(製))
気管支拡張剤・他
アトロベント(イプラトロピウム)
スピリーバ(チオトロピウム)
テルシガン(オキシトロピウム)
フルブロン(フルトロピウム)
消化性潰瘍用剤
コランチル(コランチル(製))
ノバフイリンG(ノバフイリンG(製))
メサフィリン(メサフィリン(散)(製))
複合エピサネートG(エピサネート(製))
健胃消化剤
MP散(複合健胃散)
ベルサン(複合健胃散)
他の消化器官用薬
イリコロンM錠(イリコロンM(製))
副腎ホルモン
セレスタミン(セレスタミン(製))
ボスミン(アドレナリン)
他の泌尿生殖器官、肛門用薬
ウリトス、ステーブラ(イミダフェナシン)
デトルシトール(トルテロジン)
バップフォー(プロピベリン)
ベシケア(ソリフェナシン)
ポラキス(オキシブチニン)
抗ヒスタミン剤
アリメジン(アリメマジン)
ゼスラン、ニポラジン(メキタジン)
タベジール、テルギン(クレマスチン)
ピレチア、ヒベルナ(プロメタジン)
ベネン(トリプロリジン)
ペリアクチン(シプロヘプタジン)
ホモクロミン(ホモクロルシクリジン)
ポララミン(d-クロルフェニラミン)
レスタミン(ジフェンヒドラミン)
参考
- http://www.nichigan.or.jp/member/guideline/glaucoma2.jsp
[★]
- ☆case75 自宅での意識消失
- ■症例
- 21歳 男性
- 主訴:意識消失
- 現病歴:男性のアパートで意識を失っている所を彼女に発見され、午後5時に搬送された。彼女が最後に彼に会ったのは午後8時で、クリスマスの買い物をして帰宅した時であった。翌日午後、彼女が彼に会いに行った所、彼がお風呂の床で意識を失っているのを見つけた。彼女によれば、前日変わった様子(unusal mood)はなかった。彼は心理学の期末試験が1週間に迫っておりこのことを心配していたが、勉強はうまくいっているようだった。また以前の試験に問題はなかった。
- 喫煙歴:なし。
- 飲酒歴:機会飲酒 10 units/week(1週間に350mlビール6本弱)
- 既往歴:なし
- 家族歴:父と2人の兄弟のうち1人が糖尿病
- 服薬歴:以前、エクスタシー錠剤を服用していたが、静脈注射の薬はやったことがない。
- 身体所見 examination
- 顔貌 青白。注射痕は認められない。脈拍 92/分、血圧 114/74 mmHg、呼吸数 22/分。心血管系、呼吸器系に異常を認めず。神経系 命令に従わないが、痛みに反応して適切に手を引っ込める(GCS M4)。腱反射(+)・対称性、足底反射(-)。瞳孔散大、対光反射(+)。眼底 視神経円板腫脹
- ■鑑別診断をあげるためのkeyword(司会者用)
- ・24時間以内に来した意識消失、糖尿病の家族歴、冬、風呂、精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)、顔色、脈拍、血圧、呼吸数、腱反射、病的反射、瞳孔、眼底(司会者用)
- ■keywordからどういう疾患を考えるか?
- 真っ先にあげたいもの
- ・二次的な脳圧亢進
- ・糖尿病
- ・薬物中毒、中毒物質の摂取・吸引
- ・神経疾患(てんかんなど)の発作
- ・24時間以内に来した意識消失
- ・クモ膜下出血:局所神経症状、硝子体下出血(subhyaloid hemorrhage)。
- ・糖尿病の家族歴
- ・低血糖発作
- 低血糖による昏睡は早いが糖尿病の新規症状として起こらない。まれにインスリノーマによる低血糖による昏睡があり得る。
- ・糖尿病性ケトアシドーシス diabetic ketoacidosis DKA
- 極度のインスリン欠乏とコルチゾールやアドレナリンなどインスリン拮抗ホルモンの増加により、(1)高血糖(≧250mg/dl)、(2)高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸の増加)、アシドーシス(pH7.3未満)をきたした状態。(糖尿病治療ガイド 2008-2009 p.66)
- ・高浸透圧性非ケトン性昏睡 nonketotic hyperosmolar coma
- DM type 2
- 50歳以上に好発し、インスリン非依存性糖尿病*患者が腎不全や中枢神経障害、悪性腫瘍、消化器疾患、呼吸器感染などを合併するときに多くみられ、ステロイドや利尿薬の投与、輸液や高カロリー補給、人工透析などの際に医原性に起きやすい。
- 高血糖性の昏睡は発症が早くない。その前に口渇や多尿があるはず。
- → 否定するための検査 → 血糖測定
- ・風呂
- ・脳出血
- ・冬だし、風呂(脱衣所のことか)にガスヒーターがあったら疑わしい。
- ・精神疾患リスク(試験で悩んでいる。薬物の服用歴)
- (最も多いのが)薬物中毒(鎮静薬、アスピリン、アセトアミノフェン)
- (意識障害で運ばれてきたときに考えるべきなのが)一酸化中毒
- 一酸化中毒の場合の顔色は蒼白(cherry-red colorと言われてきたが)。眼底所見:(severe CO中毒で)乳頭浮腫
- ・顔色
- ・脈拍、血圧、呼吸数
- ・腱反射、病的反射
- 腱反射が亢進していたら、上位運動ニューロンの障害を考慮する。腱反射亢進と意識障害が共存していれば、障害部位は脊髄の伝導路ではなくむしろ脳幹・大脳皮質に障害があると考えることができる。
- ・瞳孔
- 瞳孔が散大していれば交感神経興奮、副交感神経の麻痺:フェニレフリン・エピネフリン・コカインなど交感神経刺激、動眼神経麻痺、脳死の徴候
- 瞳孔が縮瞳していれば副交感神経興奮、オピオイド受容体への刺激:麻薬中毒、有機リン中毒、橋出血、脳幹部梗塞(脳底動脈閉塞症など)
- ・眼底 (IMD.71)
- 視神経円板(=視神経乳頭)の腫脹は乳頭浮腫(papilledema, DIF.342)を反映。乳頭浮腫の発生機序は軸索輸送障害や静脈還流うっ滞である。原因として頭蓋内疾患が最も多い。頭蓋外の疾患(高血圧、視神経炎、偽性脳腫瘍)。
- 乳頭浮腫 papilledema DIF.243
- V 動静脈奇形、高血圧による脳血圧脳症・頭蓋内出血、クモ膜下出血、硬膜下血腫
- I 脳膿瘍、慢性経過の髄膜炎(細菌性×)、敗血症による血栓や静脈洞血栓
- N 脳腫瘍
- D -
- C 動静脈奇形、水頭症、頭蓋奇形(尖頭症などによる)、血友病、時にSchilder disease
- A ループス脳炎、動脈周囲炎
- T 急性期の硬膜外血腫や硬膜下血腫ではない。慢性硬膜下血腫ならありうる。
- E 褐色細胞腫による悪性高血圧、偽性脳腫瘍(=特発性頭蓋内圧亢進症)(肥満・無月経・感情障害(emotionally disturbed)をきたした女性に多い)
- ■問題
- 症例だけでは絞れないので、最も疑われる疾患をあげ、鑑別診断を列挙し、検査、治療を考えていくことにします。
- ■一酸化炭素中毒
- ■オチ
- 血中carboxyhemoglobinを測定したところ32%。高レベルの酸素投与でゆっくりだが、48時間で完全に回復。脳浮腫にたいするマンニトールや高圧酸素療法も考慮する。問題は4年間点検されていないガス温水器の不完全燃焼だったとさ。
- ■KEY POINTS
- ・薬物中毒は若い人の意識消失の最も一般的な原因だけど、他の診断もいつも考慮しておく。
- ・一酸化炭素ヘモグロビンレベルは屋内や車内、あるいはよく分からない煙に暴露した意識消失患者で測るべき
- ・一酸化中毒による重度の低酸素血症ではチアノーゼを欠く。
- ■initial plan(救急だからのんびりやってられないだろうけど)
- A.
- 1. 呼吸器系、循環器系の安定を確認
- 2. 血液ガス検査
- 3. 血液生化学(電解質(Na,Ca)、血糖)
- □ビール1本 = 350ml アルコール5%: 350 (ml/本) x 0.05 / 10 (ml/unit) =1.75 (unit/本)
- ■参考文献
- DIF Differential Diagnosis in Primary Care Fourth Edition版 Lippincott Williams & Wilkins
[★]
- 英
- platelet (Z), blood platelet (Z), PLT
- 同
- 栓球 thrombocyte
- 関
- 血小板血栓。血小板数 platelet count PLC
- GOO. 1468(血小板凝集 platelet aggregation)
- 半減期:1週間(異常値の出るメカニズム第2版)。4日 (SP.505)。
- 寿命:10日
- 体積:5-10 fl
- 直径:2-5μm。
- 無核。
基準値
- 15万 - 40万 /μl (2007前期解剖学授業プリント, SP.505)
- 15万 - 35万 /μl (2007前期生理学授業プリント, PT.233)
新生児
- 出典不明
産生組織
- トロンボポエチンにより巨核球の細胞質がちぎれて血流に放出される (SP.505)
貯蔵組織
組織学
- P-セレクチンを膜上に持つ
- フィブリノーゲン、フィブロネクチン、第V因子、第VIII因子、platelet factor 4、PDGF、TGF-α (BPT.89)
- ADP、ATP、Ca2+、ヒスタミン、セロトニン、エピネフリン (BPT.89)
機能 (SAN.236-237)
1.一次止血
- TXA2,セロトニンは血管収縮作用
- ADP, TXA2,セロトニンは血小板凝集
- 血小板のGpIIb/GpIIIa複合体がフィブリノゲンと結合し編み目を形成
2.血液凝固の促進
3.毛細血管機能の維持
- 毛細血管内皮細胞に融合し血管内皮を補強している → 血小板減少により点状出血を来すことになる。
膜タンパク
血小板減少による症状
- 5-10万 :症状なし-やや止血しにくい程度
- 2-3万 :下肢に点状出血 (→皮下出血)
- 1万以下 :粘膜出血→臓器出血の危険あり
検査
- 抗凝固剤としてEDTAを用いた場合、EDTA依存性偽血小板減少をきたすことがある。
臨床関連
数の異常
機能の異常
[★]
- 英
- catecholamine catecholamines CA
- 同
- カテコラミン
- 関
- 副腎髄質ホルモン
Wikipedia
生合成
チロシン tyrosine
(フェニル基の3位にOHを導入) :律速酵素
-チロシン 3-モノオキシゲナーゼ tyrosine 3-monooxygenase, チロシン水酸化酵素 tyrosine hydroxylase
←{H4・biopterin}
→{H2・biopterin}
L-ドーパ L-dopa
(アミノ酸から脱炭酸)
-芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ dopa decarboxylase + {ピリドキサル5-リン酸(VB6)}
→CO2
ドパミン dopamine
(β位の炭素にOHを導入)
-ドーパミン β-モノオキシゲナーゼ dopamine β-monoxygenase, dopamine β-odidase
←O2 + ビタミンC(アスコルビン酸)
→H2O + デヒドロアスコルビン酸
ノルアドレナリン norepinephrine
(アミノ基にメチル基を転移)
-フェニルエタノールアミン N-メチルトランスフェラーゼ phenylethanolamine N-methyl transferase
←S-アデノシルメチオニン S-adenosylmethionine
→S-アデノシルホモシステイン S-adenosylhemocysteine
アドレナリン epinephrine
分解
分解産物
薬理作用
昇圧作用
臨床検査
基準値
カテコールアミン3分画(血漿)(BML)
- アドレナリン:≦0.10 ng/mL
- ノルアドレナリン:0.10~0.50 ng/mL
- ドパミン:≦0.03 ng/mL
[★]
- 英
- neurotransmitter (SP)
- 同
- ニューロトランスミッター、化学的伝達物質 化学伝達物質 chemical transmitter、伝達物質 transmitter
概念
作用の方向で分類
- アセチルコリン
- グルタミン酸
- GABA
- グリシン
部位で分類
物質群別
アミノ酸 (SPC.76-78)
ペプチド (SPC.79)
[★]
- 英
- norepinephrine plasma membrane transport protein
- 関
- ノルエピネフリン輸送体、ノルエピネフリントランス・ーター
[★]
- 英
- norepinephrine transporter、NET
- 関
- 細胞膜ノルエピネフリン輸送体、ノルエピネフリントランス・ーター
[★]
- 英
- epinephrine hydrochloride
- 関
- エピネフリン
[★]
- 英
- phosphorus P
- 関
- serum phosphorus level
分子量
- 30.973762 u (wikipedia)
- 単体で化合物としてはP4、淡黄色を帯びた半透明の固体、所謂黄リンで毒性が高い。分子量124.08。
基準値
- 血清中のリンおよびリン化合物(リン酸イオンなどとして存在)を無機リン(P)として定量した値。
- (serum)phosphorus, inorganic 2.5–4.3 mg/dL(HIM.Appendix)
- 2.5-4.5 mg/dL (QB)
代謝
- リンは経口的に摂取され、小腸から吸収され、細胞内に取り込まれる。
- 骨形成とともに骨に取り込まれる。
- 腎より排泄される。
尿細管での分泌・再吸収
- 排泄:10%
尿細管における再吸収の調節要素
臨床検査
- 無機リンとして定量される。
基準範囲
血清
- 小児:4-7mg/dL
- 閉経後女性は一般集団より0.3mg/dL高値となる
尿
測定値に影響を与える要因
臨床関連
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3
[★]
- 英
- epi
- 関
- 上