出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/12/27 10:22:59」(JST)
この項目では、アミノ酸のグリシンについて説明しています。その他のグリシンについては「グリシン (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
グリシン[1] | |
---|---|
IUPAC名
Glycine |
|
別称
Aminoethanoic acid
Aminoacetic acid |
|
識別情報 | |
略称 | Gly, G |
CAS登録番号 | 56-40-6 |
PubChem | 750 |
ChemSpider | 730 |
UNII | TE7660XO1C |
EINECS番号 | 200-272-2 |
KEGG | C00037 |
ChEMBL | CHEMBL773 |
IUPHARリガンド | 727 |
SMILES
|
|
InChI
|
|
特性 | |
化学式 | C2H5NO2 |
モル質量 | 75.07 g mol−1 |
外観 | 白色の固体 |
密度 | 1.1607 g/cm3 |
融点 |
233 °C (分解) |
水への溶解度 | 25 g/100 mL |
溶解度 | エタノール、ピリジンに可溶。エーテルには不溶。 |
酸解離定数 pKa | 2.34 (カルボキシル基), 9.6 (アミノ基)[2] |
危険性 | |
半数致死量 LD50 | 2600 mg/kg (マウス;経口) |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
グリシン (glycine) とは、アミノ酢酸のことで、タンパク質を構成するアミノ酸の中で最も単純な形を持つ。別名グリココル。糖原性アミノ酸である。 示性式は H2NCH2COOH、不斉炭素を持たないため、生体を構成する α-アミノ酸の中では唯一 D-, L- の立体異性がない。非極性側鎖アミノ酸に分類される。
多くの種類のタンパク質ではグリシンはわずかしか含まれていないが、ゼラチンやエラスチンといった、動物性タンパク質のうちコラーゲンと呼ばれるものに多く(全体の3分の1くらい)含まれる。
1820年にフランス人化学者アンリ・ブラコノーによりゼラチンから単離された。 甘かったことからギリシャ語で甘いを意味する glykys に因んで glycocoll と名付けられ、後に glycine に改名された。
休息に効果があるとされ、健康食品として販売されている。
グリシン開裂系はテトラヒドロ葉酸により以下の反応でグリシンを開裂する[3][要高次出典]。
グリシン開裂系とは別に、グリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)(EC 2.1.2.1)の働きにより、可逆的にグリシンをL-セリンに相互に変換し、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸に変換する反応が触媒される[4][5]。
グリシン開裂系とセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼによる2つの反応を複合すると以下の反応式が示めされる。また、その全容は図の通りである。
グリシンが仮に脱アミノ化を受けるとグリコール酸が生成し、酸化を受けるとグリオキシル酸が生成するが、グリオキシル酸はヒトではエチレングリコールからシュウ酸に代謝される際の中間体で、酸化を受けると有害なシュウ酸が生成されることになる[7][8]。その反応を回避する観点から、グリシンの代謝は重要な意義がある。
グリシンは様々な生体物質の原料として利用されている。一部を以下に示す。
中枢神経系においてグリシンはGABAに次いで重要な抑制性神経伝達物質である。今のところグリシンの受容体として知られているものは全てイオンチャネル型であり、グリシンが結合すると内蔵しているCl−チャネルの透過性が増えてCl−が細胞内に流れ込み抑制性シナプス後電位(IPSP)を発生させる。痙攣誘発剤であるストリキニンはグリシン受容体に対する特異的な阻害薬である。一方で、興奮性神経伝達物質としての役割も知られている。グリシンはNMDA受容体に存在するグリシン結合部位に作用し、チャネルの開口を補助する。グリシン受容体に対しては約100uM, NMDA受容体に対しては約100nM~1uMのED50を示すとされている。
脳や肝臓に存在するグリシン開裂系の酵素の遺伝的な欠損により、体液中や脳にグリシンが大量に蓄積することにより発症する先天性アミノ酸代謝異常症のひとつである高グリシン血症を引き起こす。グリシンは中枢神経系で神経伝達物質として働くため、グリシン蓄積が重篤な神経障害をもたらす[9]。
葉酸の触媒過程の全容において、平衡がテトラヒドロ葉酸側に偏っており、テトラヒドロ葉酸から5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を供給するグリシン開裂系は葉酸系の代謝過程で重要な役割を果たしている。
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関連記事 | 「リシン」 |
分類 | 極性 | 電荷 | 名前 | 1 | 3 | 糖原性 | ケトン原性 | 必須アミノ酸 | 分枝アミノ酸 | pK1 α-COOH |
pK2 α-NH2 |
pKR 側鎖 |
側鎖 | |
疎水性アミノ酸 | 無 | 無 | グリシン | G | Gly | 2.35 | 9.78 | ―H | ||||||
無 | 無 | アラニン | A | Ala | 2.35 | 9.87 | ―CH3 | |||||||
無 | 無 | バリン | V | Val | ○ | ○ | 2.29 | 9.74 | ―CH(CH3)2 | |||||
無 | 無 | フェニルアラニン | F | Phe | ○ | ○ | ○3 | 2.2 | 9.31 | ―○C6H5 | ||||
無 | 無 | プロリン | P | Pro | 1.95 | 10.64 | αCとNH2の間に ―CH2CH2CH2- | |||||||
無 | 無 | メチオニン | M | Met | ○2 | 2.13 | 9.28 | ―CH2CH2-S-CH3 | ||||||
無 | 無 | イソロイシン | I | Ile | ○ | ○ | ○ | ○ | 2.32 | 9.76 | ―CH(CH3)CH2CH3 | |||
無 | 無 | ロイシン | L | Leu | ○ | ○ | ○ | 2.33 | 9.74 | ―CH2CH(CH3)2 | ||||
荷電アミノ酸 | 有 | 酸性 | アスパラギン酸 | D | Asp | 1.99 | 9.9 | 3.9 β-COOH |
―CH2COOH | |||||
有 | 酸性 | グルタミン酸 | E | Glu | 2.1 | 9.47 | 4.07 γ-COOH |
―CH2CH2COOH | ||||||
有 | 塩基性 | リシン | K | Lys | ○ | ○ | 2.16 | 9.06 | 10.54 ε-NH2 |
側鎖のCH2は4つ ―-CH2CH2CH2CH2NH2 | ||||
有 | 塩基性 | アルギニン | R | Arg | ○1 | 1.82 | 8.99 | 12.48 グアニジウム基 |
側鎖のCH2は3つ ―CH2CH2CH2-NH-C-(NH2)NH | |||||
極性アミノ酸 | 有 | 無 | セリン | S | Ser | 2.19 | 9.21 | ―CH2OH | ||||||
有 | 無 | スレオニン | T | Thr | ○ | ○ | ○ | 2.09 | 9.1 | ―CH(CH3)OH | ||||
有 | 無 | チロシン | Y | Tyh | ○ | ○ | 2.2 | 9.21 | 10.46 フェノール |
―CH2-φ | ||||
有 | 塩基性 | ヒスチジン | H | His | ○ | 1.8 | 9.33 | 6.04 イミダゾール基 |
―CH2-C3H3N2 | |||||
有 | 無 | システイン | C | Cys | 1.92 | 10.7 | 8.37 -SH基 |
―CH2-SH | ||||||
有 | 無 | アスパラギン | N | Asn | 2.14 | 8.72 | ―CH2-CO-NH2 | |||||||
有 | 無 | グルタミン | Q | Gln | 2.17 | 9.13 | ―CH2-CH2-CO-NH2 | |||||||
無 | 無 | トリプトファン | W | Trp | ○ | ○ | ○ | 2.46 | 9.41 | ―Indol ring | ||||
1 人体で合成できるが、不十分。 | ||||||||||||||
2 Cysが足らなければ、Metから合成することになる。 |
名称 | 基となるアミノ酸 | ||
修飾されたアミノ酸 | シスチン | システイン | システイン2分子が酸化されて生成する。 |
ヒドロキシプロリン | プロリン | ゼラチン、コラーゲンに含まれる。 | |
ヒドロキシリジン | リジン | ||
チロキシン | チロシン | 甲状腺タンパク質に含まれる。 | |
O-ホスホセリン | カゼインなど、多くのリンタンパク質に含まれる。 | ||
デスモシン | |||
蛋白質の構成要素ではない | オルニチン | アルギニン | ミトコンドリア中でカルバモイルリン酸と反応 |
シトルリン | オルニチン、カルバモイルリン酸 | ||
クレアチン | アルギニン、グリシン | ||
γアミノ酪酸 | アルギニン |
準必須 | ア | アルギニン |
必須 | メ | メチオニン |
フ | フェニルアラニン | |
リ | リジン | |
バ | valine | |
ス | スレオニン | |
ト | トリプトファン | |
ロ | ロイシン | |
イ | イソロイシン | |
準必須 | ヒ | ヒスチジン |
反応場所 | 酵素 | 補酵素 | 酵素阻害物質 | 酵素の障害による疾患 | ||||||
ミトコンドリア | サクシニルCoA succinyl-CoA |
グリシン glycine |
5-アミノレブリン酸 aminolevulinic acid aminolevulinate ALA |
CoA | CO2 | 5-アミノレブリン酸シンターゼ ALA synthase |
ビタミンB6 | |||
細胞質 | 5-アミノレブリン酸 aminolevulinic acid aminolevulinate ALA |
←2分子 | ポルホビリノゲン porphobilinogen PBG |
2H2O | ALA dehydratase | Pb | ||||
細胞質 | ポルホビリノゲン porphobilinogen PBG |
ヒドロキシメチルビラン | 4NH3 | ウロポルフィリゲノンIシンターゼ uroporphyrinogen I synthase |
急性間欠性ポルフィリン症 acute intermittent porphyria | |||||
細胞質 | ヒドロキシメチルビラン | ウロポルフィリノゲンIII | ウロポルフィリゲノンIIIシンターゼ uroporphyrinogen III synthase |
|||||||
細胞質 | ウロポルフィリノゲンIII | コプロポルフィリノゲンIII | 4CO2 | ウロポルフィリノゲンデカルボキシラーゼ | 晩発性皮膚ポルフィリン症 porphyria cutanea tarda | |||||
ミトコンドリア | コプロポルフィリノゲンIII | プロトポルフィリノゲンIX | 2CO2 | コプロポルフィリノゲンオキシダーゼ | ||||||
ミトコンドリア | プロトポルフィリノゲンIX | プロトポルフィリンIX | プロトポルフィリノゲンオキシダーゼ | |||||||
ミトコンドリア | プロトポルフィリンIX | Fe2+ | ヘム | フェロケラターゼ | Pb |
性状 | ビタミン名 | 化合物名 | 機能 | 補酵素名 | 欠乏症 | 過剰症 | ||
アミノ酸代謝 | 補酵素前駆体 | |||||||
水溶性ビタミン | ビタミンB1 | チアミン | 糖代謝 | ○ | チアミン二リン酸 | 脚気 (多発性神経炎、脚気心による動悸・息切れ) ウェルニッケ脳症 コルサコフ症候群 |
||
ビタミンB2 | リボフラビン | 酸化還元反応 | アミノ酸オキシダーゼ | ○ | フラビンアデニンジヌクレオチド | 口角炎、舌炎、結膜炎、角膜炎、脂漏性皮膚炎 | ||
ビタミンB6 | ピリドキシン | 転移反応、脱炭酸反応、離脱反応、ラセミ化 | 多くのアミノ酸 | ○ | ピリドキサルリン酸 | 末梢神経障害(INHの副作用) | ||
ビタミンB12 | シアノコバラミン | C1転移 | メチオニン、分岐アミノ酸 | ○ | コバルト補酵素 | 巨赤芽球性貧血 | ||
ビタミンC | アスコルビン酸 | 抗酸化 | ○ | 壊血病 易出血性、骨・筋の脆弱化 |
||||
ビタミンB5 | パントテン酸 | CoAの骨格 | ||||||
ビタミンB9 | 葉酸 | C1転移 | グリシン、セリン | ○ | 巨赤芽球性貧血 | |||
ビタミンB3 | ナイアシン ニコチン酸 |
酸化還元反応 | ○ | ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド | ペラグラ (1)光過敏性皮膚炎、(2)下痢、(3)認知症 |
|||
ビタミンB7 | ビオチン | 炭素固定反応 | ○ | ビオチン酵素 | 脂漏性皮膚炎、鱗屑状皮膚炎 | |||
脂溶性ビタミン | ビタミンA | レチノイド | 転写因子、視覚 | 夜盲症 眼球乾燥症・角膜軟化症(Bitot斑)・毛孔性角化症 |
脳圧亢進、四肢疼痛性腫脹、肝性皮膚落屑、悪心・嘔吐、食欲不振、催奇形性 | |||
ビタミンD | コレカルシフェロール等 | 骨形成 | くる病、骨軟化症 |
腎臓・血管壁への石灰沈着、多尿、↑尿Ca、高Ca血症、高P血症 | ||||
ビタミンE | トコフェロール | 抗酸化 | 未熟児の溶血性貧血 | |||||
ビタミンK | フィロキノン、メナキノン等 | 血液凝固因子やオステオカルシンの成熟 | ○ | 出血傾向 | 溶血、核黄疸 |
年齢 | 平均(範囲)ng/mL | |||
血清 | 全血 | |||
新生児 | 24.5 | (3-59) | 315 | (100-960) |
3-4月 | 12.2 | (5-30) | 99 | (20-318) |
6-8月 | 7.7 | (3.5-16) | 77 | (32-176) |
1歳 | 9.3 | (3-35) | 86 | (31-400) |
成人 | 13.1 | (7-20) | 195 | (24-400) |
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