- 英
- intratracheal intubation
- 関
- 気管切開術、気道確保
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気管挿管(きかんそうかん、英: Intubation)は、気管に口または鼻から喉頭を経由して「気管内チューブ」を挿入を行う気道確保方法。
目次
- 1 適用
- 2 挿管器具
- 3 挿管操作
- 4 合併症
- 5 法整備
- 6 問題
- 7 関連項目
- 8 関連図書・メディア
- 9 外部リンク
適用
気管挿管は「確実な気道確保」と「誤嚥の防止」のため施行される。一般に以下の場合に行う。
- 昏睡状態、特に心肺停止患者における気道確保に行われる。
- 全身麻酔にて、特に人工呼吸管理を施行する場合に行われる。
- 気管支鏡検査にても行うこともある。また、レーザー治療や気管支へのステント留置における処置の際に行われる。
挿管器具
一般に以下が必要とされる。その他手術時は必要に応じて薬剤等も使用される。
- 気管内チューブ(Endotracheal tube)
- 用いられるチューブは「気管チューブ」もしくは「挿管チューブ」とも呼ばれる。頭頚部手術時には金属コイル入りでチューブが変形しないタイプが用いられる。肺手術など片肺を脱気する必要がある手術時は片肺換気(分離肺換気)も可能なタイプが用いられる。
- 気管内チューブの中に設置する金属棒で、挿管時にチューブの形状を保つために使用される。経鼻挿管では使用できない。
- 喉頭展開時に使用される。現在では光ファイバーで喉頭部をディスプレイで確認できるタイプも存在する。マッキントッシュ型がもっとも一般的である。大きさにより,1~4号まである。
- 挿管困難時にチューブの先端を把持し誘導するために使われる鉗子。主に経鼻挿管の時に使用される。うっかりカフをつかむと,カフが破れてしまうので,注意が必要である。
挿管操作
挿入経路は大別して経口挿管、経鼻挿管があるが、一般的に経口が多い。口腔内手術の際等に経鼻挿管が行われる。
- 気管内チューブの先端バルーンにシリンジで空気送り、漏れがないか確認する。必要に応じてスタイレットを挿入し形状を整えておく。
- 吸引器を準備しておく。
- バッグバルブマスク(Bag valve mask)に酸素を送気し十分な換気を行う。特に食後等で胃に内容物があるような患者に施行する場合はマスクによる換気は行わず、別の介助者に輪状軟骨圧迫(cricoid pressure)を行ってもらい食道閉鎖を行ってもらう。
注)ガイドライン2010では、輪状軟骨圧迫は行わないこととされている。
- 開口させ、口腔内に異物等がないことを確認し、あれば取り除く。
- 左手で喉頭鏡を用いて喉頭を展開し、声門を目視にて確認し、気管内チューブを挿管する。
- 挿管したら直ちにスタイレットを抜去し、先端バルーンにシリンジで空気送り固定する。
- 聴診器にて両肺・胃を聴診し換気音を確認する。
- 挿入長を調整し、テープにて口角に固定する。
合併症
- 最も起こりやすい合併症の一つ。主に前歯に多い。挿管の際に喉頭鏡によって損傷する。最悪の場合は折れた歯が気管または食道内に迷入することである。
- 最も起こりやすい合併症の一つ。喉頭を目視出来ない場合の挿管に起こりやすい。誤挿管した場合は即座に抜去する。通常聴診器にて肺の換気音が確認出来ないことや排気のCO2をモニターすることで確認できる。気付かないままの場合は死に至る。
- よくある合併症の一つ。気管内チューブを奥に挿入し過ぎることで、先端が片方の気管支に挿入されることで片側の肺のみの換気になってしまうこと。通常聴診器にて両肺の換気音の聴取にて確認する。
法整備
日本では「気管挿管」は医療行為とされ、医師や歯科医師以外には気管挿管の施行が許されなかった。しかし、2004年7月1日から救急救命活動中の心肺停止状態の患者に対する気道確保の方法のひとつとして、所定の講習と実習を受けた救急救命士にも認められることになった。この場合、救急救命士は病院で手術を受ける患者の同意を得て気管挿管の実習を行うことになる。
救急救命士は消防学校や救急救命士養成所等で気管挿管に関する講習を受講した後、都道府県のメディカルコントロール協議会(以下、「MC」)によって認証された医療機関で全身麻酔の症例を30例以上成功実施し、病院実習修了証の交付を実習病院より受け取り、MCより認定を受けることができる。MCより認定を受けた救急救命士を「気管挿管認定救急救命士」という。
問題
救急救命士に気管挿管の実施が認められるようになった契機として、2001年10月に秋田市消防本部において、組織的・地域ぐるみで違法との認識がありながら、救急救命士の気管挿管を容認されていたことが挙げられる。これは医師法違反であることが指摘されたが、このようなケースは秋田市以外でも認められ、大きな社会問題となった。その後、比較的同情的な世論の高まりを受ける形で法律が整備され、メディカルコントロール体制(医師が救急救命士の医療行為を含む病院前の救急活動の質を管理・監督する体制)を構築した上で、2004年7月から所定の講習・実習を受けた救急救命士が気管挿管が可能となっている。
救急救命士の気管挿管解禁後の問題として、2007年5月と6月には愛知県と福岡県において救急救命士による誤挿管(食道挿管)事故が起きている。いずれのケースも誤挿管との因果関係は不明とされているが、患者は死亡しており、有効性と安全性に向けた更なる検証が求められる。
2007年5月に愛知県名古屋市において生じた事例では全国的にニュースとなり、心筋梗塞の女性患者に対し、救急救命士によって気管挿管が施行されたが、単純に患者宅と受入れ先の病院まで車での所要時間は7分程度であったが、現場で対応した名古屋市消防局の救急救命士が気管挿管の施行に手間取り、結果的に搬送時間が30分以上もかかってしまった。結局患者は死亡に至り、後の報告で食道挿管であったことも確認された。この事例に対し「気管挿管に拘らず早期に病院へ搬送すべきであった」との意見が多く出された。
関連項目
関連図書・メディア
- 『気道確保のすべて 麻酔科診療プラクティス』高崎真弓・稲田英一・弓削孟文・岩崎寛(編集) 文光堂 ISBN 4830628170(2003/12)
- 『必ずうまくいく!気管挿管―カラー写真とイラストでわかる手技とコツ ビジュアル基本手技』青山和義(著) ISBN 4897063302 2004/06発行 (目次)
- 『映像で学ぶ救急救命士のための気管挿管』CD-ROM(2枚組)島崎修次・山本保博・田中秀治(監修)、NECメディアプロダクツ(制作)、へるす出版[1]
外部リンク
- 救急・災害医療ホ-ムペ-ジ
- 救急救命士の救命活動について
- 救急救命士による気管挿管の業務プロトコル(Q&A付き)
- 秋田市の救急救命士による気管挿管に関する4学会合同調査報告書(日本救急医学会、日本麻酔科学会、日本臨床救急医学会、日本蘇生学会)
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 佐野 昌彦,金谷 泰尚,衛藤 憲人,田所 裕之,山崎 清之,大島 浩,金井 直明,漆畑 義彦,金井 玉奈
- 東海大学紀要. 開発工学部 20, 189-193, 2011-03-31
- … 気管内挿管とは,病気や事故で心肺停止状態の患者に対し,気道を確保して最も確実に空気を送り込む手段である.その手順は,喉頭鏡で口を開けて喉頭蓋を確認し,気管にチューブを入れて気道を確保する.しかし,本来喉頭蓋を目視することは極めて非生理的な措置であり,気管内挿管の手技を難しくしている主因となっている.また,食道への誤挿入や口腔・気管損傷などの危険性も伴うものである.このよ …
- NAID 110008148704
- 鼻咽腔閉鎖機能不全による摂食・嚥下障害を伴った第1第2鰓弓症候群の1例
- 玄 景華,橋本 岳英,片川 吉尚,安田 順一
- 岐阜歯科学会雑誌 37(3), 188-194, 2011-02-20
- … 1カ月間気管内挿管するも喉頭軟化症のため呼吸困難が持続し、経鼻経管栄養の状態であった。 … 【考察】本症例はウイルス感染により長期間にわたる気管内挿管が持続したことにより、軟口蓋の運動低下が生じた結果の鼻咽腔閉鎖機能不全と考える。 …
- NAID 110008138685
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★リンクテーブル★
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- 次の文を読み、22~24の問いに答えよ。
- 30歳前後の男性。人工呼吸下に救急車で搬入された。
- 現病歴 : 公園で倒れているのを通行人に発見された。救急隊到着時、意識は混濁し、自発呼吸は微弱であった。呼気に芳香臭があり、発見現場から不凍液(エチレングリコール)の空容器と三環系抗うつ薬アミトリプチリンの空包装とが見つかった。
- 既往歴 : 不明。
- 現 症 : 体格栄養中等度。体温36.5℃。脈拍100/分、整。血圧90/60mmHg。痛み刺激を与えても開眼せず、言語反応はない。運動反応を認めない。舌根は沈下し、自発呼吸を認めない。瞳孔径は4mmで左右差を認めないが、対光反射が消失している。眼瞼結膜に貧血なく、眼球結膜に黄染を認めない。心雑音を聴取しない。腹部は平坦で、腸雑音が減弱している。下腿に浮腫はなく、人工呼吸下にチアノーゼを認めない。深部反射は保たれている。
- 検査所見 : 血液所見:赤血球497万、Hb14.9g/dl、Ht42%、白血球9,800、血小板35万。
- 血清生化学所見:血糖197mg/dl、総蛋白7.2g/dl、アルブミン4.9g/dl、尿素窒素16mg/dl、クレアチニン1.0mg/dl、総ビリルビン0.8 mg/dl、AST28単位(基準40以下)、ALT25単位(基準35以下)、LDH298単位(基準176~353)、アルカリホスファターゼ220単位(基準260以下)、γーGTP48単位(基準8~50)、アミラーゼ120単位(基準37~160)、CK28単位(基準10~40)、Na138 mEq/l、K3.4mEq/l、Cl101mEq/l。
- 動脈血ガス分析(人工呼吸、酸素投与下):pH7.54、PaO2 305Torr、PaCO2 24Torr、HCO3 -15mEq/l、血漿浸透圧:実測値は345mOsm/kg H2O (基準285~295)で、Na、血糖および尿素窒素の血中濃度からの計算値293mOsmL/kg H2O(基準285~295)との間に浸透圧ギャップを認める。
- a. 胃洗浄
- b. 気管内挿管
- c. 活性炭投与
- d. カテコラミン投与
- e. 乳酸加リンゲル液大量輸液
[正答]
※国試ナビ4※ [098C022]←[国試_098]→[098C024]
[★]
- 次の文を読み、37、38の問いに答えよ。
- 18歳の男子。昨夜から喘鳴を伴う呼吸困難があり、今朝から意識混濁が出現したため救急車で搬入された。
- 現症 : 意識JCS20。体温37.6℃。呼吸数30/分。脈拍140/分、整。血圧130/92mmHg。努力性胸式呼吸で呼気の延長が著明である。口唇と爪床とにチアノーゼを認める。貧血と黄疸とはない。肺野は呼気時に喘鳴がある。心音は肺動脈領域でⅡ音の亢進が認められる。腹部は平坦、軟で圧痛はない。
- 検査所見 : 血液所見:赤血球518万、Hb16.3g/dl、Ht49%、白血球13,600、血小板33万。血清生化学所見:血糖138mg/dl、総蛋白7.5g/dl、クレアチニン1.0mg/dl、総ビリルビン1.0mg/dl、AST〈GOT〉35単位(基準40以下)、ALT〈GPT〉31単位(基準35以下)、LDH183単位(基準176~353)、CK70単位(基準10~40)。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.00、PaO2 37Torr、PaCO2 67Torr、HCO3- 17mEq/l、BE -7.7mEq/。胸部エックス線写真で心拡大はない。
[正答]
※国試ナビ4※ [096F037]←[国試_096]→[096F039]
[★]
- 次の文を読み、45、46の問いに答えよ。
- 55歳の男性。呼吸停止状態でマスクによる用手人工呼吸を受けながら救急車で搬入された。
- 現病歴 : 会社で電話中に後頭部に激しい頭痛を訴えて倒れた。同僚がかけつけたときいぴきを伴う大きな呼吸をしていたが、救急車到着時には呼吸停止の状態であった。
- 既往歴 : 高血圧を指摘されたが無治療であった。
- 現症 : 意識は昏睡状態。体温37.0℃。自発呼吸はない。脈拍は微弱。血圧68/40mmHg。左前額部に擦過傷を認める。瞳孔径左右とも3mm、対光反射は左右とも消失。心雑音はない。腹部に異常所見は認めない。
- 救急外来でまず行うべき処置で誤っているのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [097F044]←[国試_097]→[097F046]
[★]
- 24歳の初産婦。妊娠39週2日に陣痛が発来し入院した。陣痛開始後10時間の時点で子宮口開大8cm、展退度80%、先進部は児頭でSP+2cm。陣痛周期3分、発作50秒。このころから産婦の呼吸数が1分間に約60となり、手足のしびれと息苦しさとを訴え、指関節の伸展と母指の内転とがみられた。脈拍100/分、整。血圧122/78mmHg。胎児心拍数陣痛図では異常を認めない。
- 行うべき処置はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099C021]←[国試_099]→[099C023]
[★]
- (1) 肥満はそれだけでリスク要因になる
- (2) 胸郭コンプライアンスは低下する
- (3) 気管内挿管の確認には呼気炭酸ガス濃度モニターが特に有用である
- (4) 意識下気管内挿管は禁忌である
- (5) 覚醒遅延の頻度は減少する
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- (1) 喉頭部に炎症があれば適応とならない
- (2) 第2気管軟骨輪以下の高さで行う
- (3) 小児ではできるだけ避ける
- (4) 給湿が不十分であると無気肺が起こりやすい
- (5) 気管内挿管が3日以上続くときに行う
[★]
[★]
- 英
- orotracheal intubation
- 同
- 経口挿管 oropharyngeal intubation, oral intubation
[★]
- 英
- trachea (Z), tracheal tube
- ラ
- trachea
- 関
- 気管支、気管支の分岐、肺
解剖
- 長さ12cm、直径2cm (HIS.298)。
- C6椎体-T5椎体 / C6椎体の下部より始まりT4-T5椎体で左右の気管支に分かれる。)
- 喉頭の輪状軟骨の直下から始まり主気管支が分岐するところに終わる。 (HIS.298)
粘膜
- a. 杯細胞 goblet cell 30% 粘液物質の分泌 ムチンmucin
- b. 線毛細胞 ciliated cell 30% 核は基底部に存在 線毛と微絨毛
- c. 基底細胞 basal cell 30% 丈の低い細胞、未分化細胞
- d. その他 刷子細胞、漿液細胞、DNES細胞 など
- 2. 粘膜固有層 疎性結合組織 膠原線維、弾性線維、気管腺(混合腺)
- 3. 粘膜下組織 密生結合組織
- 4. 外膜 気管軟骨 馬蹄形(C字軟骨)後方に開いている。10-12個
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
[★]
- 英
- duct、tube、canal、pipe
- ラ
- ductus、vas、meatus
- 関
- 水路、チューブ、導管、道管、卵管、道
[★]
- 英
- intratracheal、endotracheal、intratracheally
[★]
- 英
- interpolation、interpolate
- 関
- 補間
[★]
- 英
- intraductal、intratubular