- 英
- clouding of consciousness, consciousness clouding
- 関
- 意識、意識障害、明識困難状態
意識混濁
- BET 130改変
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意識障害(いしきしょうがい、disturbance of consciousness)とは、物事を正しく理解することや、周囲の刺激に対する適切な反応が損なわれている状態である。 意識の構成には「清明度」、「広がり」、「質的」の三つの要素が存在するが、このうち一般的に意識障害というと「清明度」の低下についてを指す。[要出典]「広がり」の低下(意識の狭窄)は催眠、昏睡、半昏睡、昏迷、失神であり、「質的」の変化(意識変容)はせん妄やもうろう等を指す。
意識障害は、意識混濁と意識変容に分けられ、前者は重さの順に、昏睡・嗜眠・傾眠・昏蒙・明識困難状態の事である。この症状の判断を緊急医療の現場では3-3-9度方式(またはJapan Coma Scale、略称:JCS)にて行う。後者は、興奮、徘徊、異常な言動が病的に表れた状態(せん妄状態)の事である[1]。
目次
- 1 意識障害のメカニズム
- 2 意識障害のマネジメント
- 3 カーペンターの分類
- 4 評価基準
- 5 特殊な意識障害
- 6 注意すべき意識障害
- 7 脚注
- 8 参考文献
- 9 関連項目
- 10 外部リンク
意識障害のメカニズム
現在、意識とは何かという問いかけに対して明確な解答は得られていない。古くから哲学の分野で様々な研究がなされているが大きな謎のままである。いわゆる精神病といわれる分野を除き、意識障害を起こすメカニズムとしては意識の構成のうち覚醒(清明度)と認知(質的、内容)の障害の2種類に関してはよく研究されている。
覚醒の主座は脳幹網様体調節系にあるとされている。これは脳幹にある上行性網様体賦活系と視床下部調節系からなると考えられている。上行性網様体賦活系にはあらゆる感覚刺激に対しての入力が存在する。即ち、痛み刺激や呼びかけ刺激は上行性網様体賦活系を介して、覚醒度をあげると考えられている。もうひとつ認知に関しては大脳皮質全体に存在すると言われている。基本的に意識障害がある場合はこのどちらか、あるいは両方が障害されていると考えられる。但し、脳自体に器質性の疾患がなくとも全身性疾患ならば両方を障害することは可能である。即ち、基本的に意識障害の人間を見た場合は脳幹、大脳皮質、全身性疾患の3つを考えればよい。
意識障害のマネジメント
意識障害の患者をみたとき、最も重要なのは診断をすることではなく、救命することである。これはBLSやACLSを参照すればよい。
気をつけるべきことは低血糖の否定を必ず行うことである。低血糖の検査は瞬時に実施でき、治療(意識障害下ではブドウ糖液の経静脈投与)によりすばやい回復が期待でき、また適切に治療しなければ死に至る危険性があるからである。低血糖発作でも眼球偏位や片麻痺を起こすことはあり、誤った治療を行う恐れがある。
またヒステリーによるものも否定した方が良い。ヒステリーによるものは患者の様子から診断するべきだが、迷った時はarm drop testを行う。手を落とすと顔にぶつかるような位置でこのテストを行うとヒステリーの患者は無意識に顔を避けるように落下させることが多い。
また病歴も診断の助けとなる。薬瓶が手元に落ちていたら過量服薬を疑う。
これら基本的な情報収集とBLSといった救命措置ができたのなら、次に考えるのは脳幹障害があるかである。これは脳幹には呼吸中枢があるため、脳幹障害があると呼吸できない即ち、気管挿管の必要があるからである。脳幹障害を判断するには眼球頭反射などを用いるとよい。これは人形の目徴候ともいわれるものである。首を横に振っても眼球が一点を注視せず頭部が振り向いた方向を注視する場合(眼球頭反射陰性)は、脳幹障害と考える、これは脳死の判定基準にも含まれている。注意するべきことは脳幹障害は身体診察で判定するべきであり、CT、MRIといった画像診断で判定してはいけない。CTで脳幹部の圧迫や出血がみられていても、眼球頭反射などがみられ脳幹機能が保たれていれば、その時点では脳幹障害は存在しない。
気管挿管の必要性を判断したら、テント上病変(認知障害)かテント下病変(覚醒障害)か、あるいは全身性病変かの診断となる。外傷の検査も同様に行うことも重要である。バイタルサインでクッシング徴候(高血圧で徐脈)が見られれば、脳圧亢進を疑えるし(逆に低血圧では全身性病変の方が疑わしい)、外傷があり低血圧ならば、神経原性ショックのほかに骨盤骨折による出血や胸腔内、腹腔内出血なども検索する。また薬物による場合も多く、ベンゾジアゼピン、有機リンの中毒は必ず念頭におかなければならない。小児、高齢者は誤薬や過量服薬をしやすいし、麻薬、犯罪目的の薬物投与も少数ながらみられる。血中の薬物濃度や尿中トライエージ[2]も必要ならば行うべきである。
日本においては薬物中毒による意識障害はそこまで多くないが、アメリカなどでは非常に多いため昏睡カクテルというものを用いる場合がある。昏睡カクテルとは塩酸チアミン(ビタミンB1、商品名メタボリンなど、50mg/1ml/A)を2A、即ち100mgと50%ブドウ糖液20mlを2A(40ml)と塩酸ナロキソン(0.2mg/1ml/A)を2A(0.4mg)静注することである。チアミンはウェルニッケ脳症を予防するために投与する。はじめにブドウ糖を投与するとウェルニッケ脳症がある場合には増悪するので注意が必要である。麻薬中毒は縮瞳や注射跡があるときに積極的に疑う。ベンゾジアゼピン系の拮抗薬フルマゼニル(商品名アネキセートなど)は必ずしも投与しない。これはてんかん歴のある患者や、複数の睡眠薬を服薬している患者が痙攣を起こすリスクがあるからである。
グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)が8点以下の場合は原則として気管挿管、あるいは気道確保の適応がある。但し、急性アルコール中毒のように速やかに意識の回復が見込める場合はこの限りではない。挿管困難例では下顎挙上やマスク換気を行う。意識障害と嘔吐がみられるばあいは制吐剤を投与するが、改善が見られなければ気管挿管の適応となる。
カーペンターの分類
救急医学において意識障害の鑑別疾患としてaeioutipsという覚え方が有名である。これはどちらかというと原因不明の意識障害で診断がつかなかったときにしらみつぶしとして一つずつ精査していくためのものである。日本ではアイウエオチップスと覚えている人もいる。
- A: alcoholism:急性アルコール中毒
- E: endocrine:内分泌
- I: insulin:インスリン
- O: oxygen, opiate:低酸素血症、麻薬
- U: uremia:尿毒症
- T: trauma, temperature:外傷、体温異常
- I: infection:感染症
- P: psychiatric, porphyria:精神疾患、ポルフィリア
- S: syncope, stroke, SAH:失神、脳卒中、くも膜下出血
評価基準
定性的な尺度
メイヨークリニックの分類や昏睡、昏迷、傾眠という尺度がある。
定量的な尺度
外傷など意図されない意識障害の尺度としてはJCSやGCSがある。麻酔、人工呼吸器使用中など意図的に意識障害を作り出した場合はRamsay scaleやSASといった尺度がある。
- Japan Coma Scale (JCS)
- 主に日本で用いられる評価基準。3-3-9度方式とも呼ばれる。簡便であるが、中毒患者や精神疾患など意識の内容の変化や意識変容に対して正確な評価ができないという弱点がある。
-
Ⅰ(刺激しないでも覚醒している状態) |
Ⅱ(刺激すると覚醒している状態) |
Ⅲ(刺激をしても覚醒しない状態) |
0、清明 |
|
|
1、意識清明とはいえない |
10、普通の呼びかけで容易に開眼する |
100、痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする |
2、見当識障害がある |
20、大きな声またはからだを揺さぶることで開眼する |
200、痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる |
3、自分の名前、生年月日が言えない |
30、痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する |
300、痛み刺激に全く反応しない |
-
- Glasgow Coma Scale (GCS)
- 世界で広く一般的に用いられている評価基準。
- 「開眼機能E(eye opening)」「言語機能V(verbal response)」「運動機能M(motor response)」のそれぞれの点数の合計によって表示する。
-
開眼機能E |
言語機能V |
運動機能M |
4、自然に開眼 |
5、見当識がある |
6、命令通りにできる |
3、命令すると開眼 |
4、意味のない会話をする |
5、痛み刺激の部位がわかる |
2、痛みに対し開眼 |
3、意味のない単語を発する |
4、手足を引っ込める |
1、開眼しない |
2、意味のならない発声のみ |
3、病的屈曲 |
|
1、反応なし |
2、伸展反応 |
|
|
1、反応なし |
-
- Emergency Coma Scale (ECS)
- 主にJCSを原型としGCSの要素を導入して日本で開発された評価基準。
特殊な意識障害
- 除脳硬直と除皮質硬直
- 意識障害では必ず疼痛刺激を与えて意識レベルの判定を行うのだがその際、特有の姿勢反射が誘発されることがある。間脳レベルで障害をうけると上肢が屈曲し、下肢が伸展する。これを除皮質硬直という。中脳赤核 - 橋に病変が及ぶと疼痛刺激に対して四肢が伸展する姿勢反射が誘発されるこれを除脳硬直という。繰り返し意識レベルを判定していると除皮質硬直であった姿勢反射が除脳硬直となることがある。これは病変が間脳から上位脳幹まで及んだ、即ち病変が進行したという意味となる。さらに進行し延髄にまで病変が及ぶと四肢の筋緊張は完全に弛緩性となり、なんら姿勢反射が誘発されなくなる。
- 失外套症候群
- 大脳皮質または白質の広範な障害で無動性無言の状態となり、注視・追視をせず、筋トーヌスの亢進が見られ、除皮質姿勢をとる。
- 無動性無言症
- 世間でいう植物状態である。両側大脳の広範な意識障害で高度の認知障害に陥った状態である。通常の意識障害とは睡眠覚醒パターンがある、開眼して注視する、嚥下があるという点で鑑別できる。頭部外傷で一年間、無酸素脳状態で3か月間この状態が持続すれば不可逆と判定して良いといわれている。脳死との違いを説明するときによく登場する言葉である。
- 閉じ込め症候群
- 意識は清明であるが、橋底部の両側障害で四肢麻痺、仮性球麻痺、両側顔面神経麻痺、外転神経麻痺がおきて意志の伝達が不可能となった状態である。動眼神経は正常なので眼球の上下運動と眼瞼挙上でコミュニケーションが可能である。脳底動脈血栓症で多い。
- 一過性健忘症
-
- ヒステリー発作
- 無意識な情緒葛藤が通常ならば随意神経系によって調節されている身体機能の変化または喪失として表現される精神障害である。器質疾患の除外とhand drop testによってある程度、可能性を考えることができる。通常は自然に回復するので、後日精神科受診を考える。
- 失神
- 意識障害と異なり、すぐに意識が回復する。殆どが循環器障害や自律神経反射によるものである。脳底動脈支配領域の神経症候が主症候となる。脳の上位部から虚血が起こるので後頭葉障害で眼前暗黒感、上位脳幹網様体障害で意識障害、延髄の前庭脊髄路障害で失立となる。反射性に交感神経が刺激され冷感を同時に感じることが多い。
注意すべき意識障害
- 全身疾患に伴う意識障害
- 敗血症、レジオネラ肺炎、脂肪塞栓症があげられる。特にレジオネラ肺炎は髄膜炎と間違いやすい。胸部X線写真にて確認をするのが大切である。
- 肝硬変
- 肝性脳症の疑いがある。浅い意識障害時に上肢を伸展させると律動的な不随意運動がおこる。羽ばたき振戦なども含まれるが、本態はミオクローヌスであり、アリテリキシスともいう。
- 不穏
- 低血糖や脳血流不全が考えられる。
- 変動する意識障害
- 椎骨脳底動脈不全などが考えられる。
- 意識障害にショックが合併する時
- 急性大動脈解離が考えられる。特に内頚動脈の解離が、脳梗塞と間違えやすい。左右の腕の血圧や縦隔拡大、心エコーで心タンポナーデの確認などをする。脳梗塞と誤診し血栓溶解療法を行うと悲惨なこととなる。低血糖で脳梗塞様の症状をきたすこともある。
脚注
- ^ カラー図解 薬理学の基本がわかる事典 p88
- ^ 尿中の薬物反応を迅速に判定する検査キット。国立医薬品食品衛生研究所の解説ページ
参考文献
- 問題解決型 救急初期診療 ISBN 426012255X
- Step By Step! 初期診療アプローチ(第3巻)ISBN 4903331679
- 神経内科ケーススタディ ISBN 4880024252
- Q&Aとイラストで学ぶ神経内科 ISBN 4880024635
- 考える技術 臨床的思考を分析する ISBN 9784822261092
関連項目
- 神経学
- 脳神経外科学
- 精神医学
- 意識
- 脳死
- 遷延性意識障害
- 失神
- 痙攣
- めまい
- 運転免許に関する欠格条項問題
外部リンク
- 意識障害 - 脳科学辞典
- 閉じ込め症候群 - 脳科学辞典
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Japanese Journal
- 骨折や意識混濁も頻発する高齢者クスリ漬けの危険 (特集 病気別 頼れる最新薬リスト&業界のカラクリ 頼れるクスリ) -- (クスリのカラクリ編)
- 症例検討(心身医学講習会:サイコオンコロジー,2012年,第53回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(鹿児島))
- 山田 祐
- 心身医学 53(5), 397-403, 2013-05-01
- … せん妄は,軽度から中程度の意識混濁に幻覚,妄想,またさまざまな認知機能障害など多彩な精神症状を伴う特殊な意識障害であり,サイコオンコロジーの領域ではポピュラーな疾患の一つである.幻覚や精神運動興奮など通常の心療内科の臨床では取り扱わない精神症状が主訴となるケースも多く,専門的なトレーニングを受けていない心療内科医がせん妄を積極的に診断・治療することは少なかった.しかし,せん妄の診断・ …
- NAID 110009603903
- FOLFOX療法施行中に高アンモニア血症を呈した1例
- 正村 裕紀,中野 詩朗,稲垣 光裕,柳田 尚之,工藤 岳秋,折茂 達也,及川 太,米谷 理沙
- 日本大腸肛門病学会雑誌 64(7), 467-470, 2011-07-01
- … 症例は30歳代女性.虫垂癌(H1P3)にてFOLFOX療法を開始.5クール施行中意識混濁が出現し,血液検査で高アンモニア血症を認めた.分岐鎖アミノ酸製剤の投与と補液で意識障害は改善し,神経症状も認めなかった. …
- NAID 10029578765
- ローヤルゼリー入りクラッシュゼリー状サプリメントの摂取後に生じたアナフィラキシーの1例
- 鈴木 慎太郎,松浦 崇行,木村 輝明 [他],福田 充,本間 哲也,松倉 聡,黒川 真嗣,足立 満
- 昭和医学会雑誌 71(4), 416-421, 2011
- … 症例は18歳,男性.既往に喘息がある.中距離走の直後に喘鳴,呼吸困難,顔面浮腫,意識混濁を認めた.運動の直前にクラッシュゼリー状サプリメントを摂取しており,それにはローヤルゼリーが含まれていた.アナフィラキシーの原因として疑い生ローヤルゼリーの経口負荷試験を施行したところ,喘鳴と呼気ピークフロー値の低下を認めた.運動負荷のみでは症状は再現されなかった.ローヤルゼリーによるアナ …
- NAID 130002150050
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- 膵(すい)がんを公表し、抗がん剤の治療を続けている沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事(67)が意識混濁の状態になっている、と謝花喜一郎(じゃはなきいちろう)副知事が8日記者会見し、発表した。7日か…
- ヘルスケアPOCKET【医師・薬剤師監修 病気の症状・原因・治療法を解説】 TOP 体の病気 意識混濁とはどんな状態か【原因や段階別症状など詳しく解説】
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[★]
- 次の文を読み、37、38の問いに答えよ。
- 18歳の男子。昨夜から喘鳴を伴う呼吸困難があり、今朝から意識混濁が出現したため救急車で搬入された。
- 現症 : 意識JCS20。体温37.6℃。呼吸数30/分。脈拍140/分、整。血圧130/92mmHg。努力性胸式呼吸で呼気の延長が著明である。口唇と爪床とにチアノーゼを認める。貧血と黄疸とはない。肺野は呼気時に喘鳴がある。心音は肺動脈領域でⅡ音の亢進が認められる。腹部は平坦、軟で圧痛はない。
- 検査所見 : 血液所見:赤血球518万、Hb16.3g/dl、Ht49%、白血球13,600、血小板33万。血清生化学所見:血糖138mg/dl、総蛋白7.5g/dl、クレアチニン1.0mg/dl、総ビリルビン1.0mg/dl、AST〈GOT〉35単位(基準40以下)、ALT〈GPT〉31単位(基準35以下)、LDH183単位(基準176~353)、CK70単位(基準10~40)。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.00、PaO2 37Torr、PaCO2 67Torr、HCO3- 17mEq/l、BE -7.7mEq/。胸部エックス線写真で心拡大はない。
[正答]
※国試ナビ4※ [096F037]←[国試_096]→[096F039]
[★]
- 次の文を読み、30、31の問いに答えよ。
- 27歳の経産婦。分娩後の出血と意識レベルの低下とのため搬入された。
- 現病歴:妊娠38週時に陣痛が発来し、分娩のため近医に入院した。陣痛が増強し、入院18時間後、吸引分娩によって3,040gの男児を娩出した。胎盤娩出直後から凝血塊を混じる出血とともに呼吸困難と気分不良とを訴え、次第に意識レベルが低下した。
- 妊娠・分娩歴:1経妊、1経産。25歳時、妊娠39週で回旋異常のため、帝王切開によって3,200gの男児を分娩した。
- 既往歴:特記すべきことはない。
- 現症:呼びかけに反応するが意識は混濁している。体温37.3℃。呼吸数38/分、浅。脈拍132/分、整。血圧70/52mmHg。顔面は蒼白。心音と呼吸音とに異常を認めない。子宮底は臍上1cm、軟、自発痛と圧痛とはない。膣鏡診で腹壁と子宮膣部とに異常はなく、外子宮口から流動性に富む血液の流出が続いている。
- 検査所見:尿所見:蛋白(±)、糖(-)。濃縮尿。
[正答]
※国試ナビ4※ [102F029]←[国試_102]→[102F031]
[★]
- 75歳の女性。意識混濁のため搬入された。4か月前から易怒性、興奮および不眠が出現し、健忘が急速に進行した。1か月前から床上生活となり、幻視も出現して意思疎通が困難となった。昨日から意識が混濁し回復しないため救急搬送された。海外渡航歴、輸血歴および手術歴はない。意識レベルはJCSⅠ-3。開瞼しているが眼球は浮動しており、追視せず意思疎通は困難である。身長 155cm、体重 58kg。体温 36.2℃。脈拍 60/分、整。血圧 112/68mmHg。呼吸数 20/分。四肢に筋強剛を認め、両上肢と左下肢とにピクつくような素早い不随意運動を周期性に認める。腱反射は全般に亢進しているが、Babinski徴候は陰性である。尿所見、血液所見および血液生化学所見に異常を認めない。頭部MRIの拡散強調像(別冊No. 25)を別に示す。
- この患者における感染防御で最も注意すべきなのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109I068]←[国試_109]→[109I070]
[★]
- 起床時に左上下肢の力の入りにくさと、ろれつの回りにくさとに気付き、救急車で搬送された。
- 5年前、洞不全症候群のため、ペースメーカー埋込術を施行されている。意識混濁。身長160cm、体重58kg。脈拍60/分、整。血圧110/68mmHg。左片麻痺を認め、左Babinski徴候陽性。右共同偏視がある。
- まず行う検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099F040]←[国試_099]→[099F042]
[★]
- 48歳の女性。意識混濁のため救急車で搬入された。脈拍88/分、整。血圧104/62mmHg、尿所見:pH6.5、蛋白(±)、糖(-)、潜血(±)。血清生化学所見:尿素窒素14mg/dl、クレアチニン0.8mg/dl、Na135mEq/l、K2.0mEq/l、Cl 111mEq/l。動脈血ガス分析(自発呼吸、room air):pH 7.16、PaO2 80Torr、PaCO2 32Torr、HCO3 -12mEq/l。最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [097A038]←[国試_097]→[097A040]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103F004]←[国試_103]→[103F006]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [105G004]←[国試_105]→[105G006]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [103C008]←[国試_103]→[103C010]
[★]
- 譫妄
- 「せん妄」を使うのが普通らしいよ
- 英
- delirium, confusional state
- 同
- せん妄。急性錯乱状態 acute confusional state、急性脳症候群 acute brain syndrome
- 関
- 意識障害。アメンチア ← せん妄の軽度なものとして使われていたが、今日で使われるのは稀らしい。
定義
- 種々の意識混濁があって、時間、空間の見当識障害が見られ、情動不穏、精神運動興奮が見られる状態
概念
- 軽度ないし中等度の意識混濁が基底にあり、認知の障害、精神運動活動の変化を主徴とする急性の器質性精神症候群。
- 急性発症し日内変動を示し、数日ないし1週間くらいで消失する。
症状
- 患者は強い不安、恐怖状態にあり、体動が激しく、錯覚、幻覚も出現する。
- 見当識も障害されており、発症中の記憶はないか不完全である。
疾患との関連
- 手術後、感染症等の身体的疾患、薬物中毒、多発性脳梗塞、痴呆など脳機能が低下しているときに発生しやすい
病因
table 26-2 譫妄の主要な病因 (HIM.160)
- 処方薬:抗コリン薬、麻薬、ベンゾジアゼピン系薬
- 薬物乱用:アルコール中毒、アルコール離脱、オピオイド系薬、エクスタシ、LSD、γ-ヒドロキシ酪酸(GHB, γ-hydroxybutyrate)、フェンシクリジン(PCP, phencyclidine)
- 全身感染症:尿路感染症、肺炎、皮膚・軟部組織感染症、敗血症
- 中枢神経感染症:髄膜炎、脳炎、脳の右葉
- 全身性低灌流状態(global hypoperfusion states)
- 高血圧性脳症
- 巣状虚血性梗塞や出血:頭頂葉、視床(ただ主要な病変部位ではない)
- 非痙攣性てんかん重積状態
- intermittent seizures with prolonged post-ictal states
[★]
- 英
- akinetic mutism
- 同
- 無動無言症。無動性無言、無動無言、無動性緘黙症
- 関
- 遷延性植物状態
間脳から上部脳幹にかけての網様体や脳梁・帯状回の損傷によるもので、四肢の自発運動はみられず無言であるが、嚥下機能は保たれ、対象を注視したり、追視するなどの眼球運動もみられる。睡眠覚醒のリズムも保たれる。
- Akinetic mutism refers to a partially or fully awake state in which the patient is able to form impressions and think but remains virtually immobile and mute. The condition results from damage in the regions of the medial thalamic nuclei or the frontal lobes (particularly lesions situated deeply or on the orbitofrontal surfaces), or from hydrocephalus. (HIM. chapter 268)
|
失外套症候群
|
無動性無言症
|
閉じ込め症候群
|
障害部位
|
両側大脳半球の広範な障害
|
視床下部・脳幹
|
両側の橋底腹側部・延髄
|
障害の原因
|
変性疾患・無酸素症・一酸化炭素
|
梗塞・腫瘍
|
梗塞(脳底動脈血栓症)・損傷
|
脳波
|
低振幅徐波
|
高電位徐波
|
正常パターン
|
意識障害
|
有
|
有(軽度)
|
無
|
睡眠覚醒リズム
|
有(覚醒時開眼)
|
有
|
有
|
周囲の状況認知
|
不可
|
不可
|
可能
|
意思伝達
|
不可
|
不可
|
眼球運動や開閉眼で可
|
発話
|
不可
|
不可
|
不可
|
[★]
- 英
- somnolence (BET), drowsiness
- 同
- 浅眠
- 関
- 意識障害、意識混濁
定義
- 放置すれば意識が低下し、眠ったようになるが、刺激で覚醒する。病的な場合にのみ用いられる。
- sleepiness; also, unnatural drowsiness. A depressive mental state commonly caused by encephalitis, encephalomalacia, hepatic encephalopathy, hypoxia and some poisonings, e.g. Filix mas, the male fern.
- Saunders Comprehensive Veterinary Dictionary, 3 ed. c 2007 Elsevier, Inc. All rights reserved
- 正常、病的の区別無く眠り込む状態
- a decreased level of consciousness characterized by sleepiness and difficulty in remaining alert but easy arousal by stimuli. It may be caused by a lack of sleep, medications, substance abuse, or a cerebral disorder.
- Mosby's Medical Dictionary, 8th edition. c 2009, Elsevier.
参考
[★]
- 英
- lethargy
- ラ
- lethargia
- 関
- 意識混濁
[★]
- 関
- clouding of consciousness
[★]
- 英
- opacity
- 関
- 乳白度、不透明
[★]
- 英
- consciousness
- 関
- 意識障害