出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/02/05 13:05:07」(JST)
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鎮痛剤(ちんつうざい)とは、痛みを和らげたり取り除いたりする医薬品の総称。非常に幅広い種類の医薬品に対して用いられる。 英語ではanalgesic或いはPainkillerと呼び、ギリシャ語で"~無しで"を意味する"an-"と、"痛み"を意味する"-algia"の合成語である。PainKillerは文字通り「苦痛を殺すもの」である。
鎮痛剤は、中枢神経系・末梢神経に様々な効用をもたらす。鎮痛剤の種類は多種多様であるが、主なものに
がある。
鎮痛剤には三環系抗うつ薬や抗痙攣剤など、鎮痛を目的とせず、神経障害を改善するために用いられているものも含まれる。 稀ではあるが、テトロドトキシンなどの一部の毒物にも神経麻痺作用があるため、鎮痛剤として用いられる例もある。
目次
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パラセタモール(アセトアミノフェン)がどのように作用するのかは正確に分かっていない。しかし、中枢神経に働きかけているという事はうかがえる。
アスピリンなどNSAIDは、シクロオキシゲナーゼの作用を阻害し、炎症のメディエーターであるプロスタグランジンの生成量を減少させる。この作用が痛み、更には炎症を抑える(パラセタモールとオピオイドとは対照的)。NSAIDsとして代表的なものはジクロフェナク、ロキソプロフェン、フェルビナク、フルルビプロフェンなどである。
パラセタモールには副作用はほとんど無いが、肝機能障害を引き起こす可能性があるので投与量は制限される。NSAIDは、消化器潰瘍・腎不全・アレルギー反応・聴覚障害を引き起こす要因と成りうる。また、血小板の機能にも影響を与えるので出血の危険性が増す可能性がある。
ウイルス性の病を罹患している16歳以下の子どもに対する正しいNSAIDの投与は、ライ症候群の改善に寄与するものである。
COX-2阻害剤は、1990年代以降注目を集めた医薬で、NSAIDに属する。NSAIDによって阻害されるシクロオキシゲナーゼ酵素には、少なくとも二つの種類、COX-1とCOX-2があることがわかっている。研究によって、NSAIDの副作用のほとんどはCOX-1酵素をブロックする事によって起きており、COX-2酵素は炎症作用にかかわっていることがわかった。NSAIDは、一般的にCOX-1とCOX-2の両方の働きを阻害する。このためCOX-2のみを選択的に阻害する薬剤を創れば、胃痛などの副作用のない優れた消炎鎮痛剤になると考えられた。 ロフェコキシブやセレコキシブなど、これに分類される薬品は、NSAIDと等しい鎮痛効果を持ちながら消化管の出血が起こりにくいとされ、ベストセラーとなった。しかし発売後のデータ分析によって、消化管出血は起こりにくいものの心疾患の確率が上昇することがわかり、ロフェコキシブは市場から回収された。これがロフェコキシブのみのことなのか、COX-2阻害剤全体に共通する副作用であるのか、現在議論されている所である。
モルヒネには、典型的なオピオイドの他、コデイン・オキシコドン・ハイドロコドン(英: Hydrocodone)・ヘロイン・ペチジンなど、様々な副次的な薬品が含まれる。これらは全て、脳のオピオイド・レセプターに似たような影響を及ぼす。 トラマドールとブプレノルフィンはオピオイド・レセプターの部分活性薬であると考えられている。
オピオイドに影響する薬品を飲む事により、錯乱・てんかんの一種のミオクロニー発作・縮瞳を引き起こす事があるため、その服用量は制限されるべきである。しかし、この薬品に耐性のある患者については服用限度が設定される必要はない。
オピオイド剤は、効果的な鎮痛効果をもたらす反面、不快な副作用をもたらす可能性がある。 モルヒネの投与を始めた患者のうちおよそ三人に一人には、吐き気や嘔吐の症状が現れる。これらの症状は一般的には、制吐剤の投与によって改善される。
掻痒症(かゆみ)が発生した場合には、別のオピオイド剤に変更する必要性がある場合がある。 便秘は、オピオイド剤の投与を受けた患者のほぼ全てに起こる症状である。便秘に対しては、ラクツロース・マクロゴール含有剤・co-danthramerなどの薬剤が一様に用いられる。
オピオイド剤は、適切に用いられれば安全で効果的な麻薬鎮痛効果をもたらすし、中毒症状を起こす危険性も高くない。ただ、服用量を段階的に減らす場合には、禁断症状が起こらないように配慮する必要がある。
慢性的もしくは神経障害による痛みをもつ患者には、これらの他に効果的と思われる鎮痛剤が存在する。三環系抗うつ剤、特にもアミトリプチリンは、中枢神経に起因する痛みを改善する事が分かってきている。
カルバマゼピン・ガバペンチンの正確なメカニズムは、明確になっていない。しかし、これら抗けいれん薬は、神経障害による痛みを改善するのにいくらか効果がある。
「疼痛」も参照
オルフェナドリン・シクロベンザプリン・スコポラミン・アトロピン・ニュートリンなど、第一世代の抗うつ薬・抗コリン剤・抗けいれん剤は、オピオイドのような、主に働く、鎮痛剤の働きを強化するために多く用いられる。この併用には、副交感神経系に働きかけで神経障害に起因する疼痛の改善・他の鎮痛剤の作用が調整できるなどの利点がある。
デキストロメトルファンは、オピオイドに対する耐性の形成を遅らせて、NMDA受容体に作用する事によって更なる鎮痛効果をもたらす事が知られている。メタドンとケトベミドンと、おそらくピリトラミドのような幾つかの鎮痛剤の組み合わせは固有のNMDA作用をもたらす。
補助鎮痛剤の用法は、ペインコントロールの分野において非常に重要かつ発展している分野であり、ほとんど毎年新しい発見がなされている。
医薬品の副作用を改善し、更なる利点をもたらす薬剤も多くある。 例えば、オルフェナドリンを含む抗ヒスタミン剤は、強い鎮痛剤によって引き起こされるヒスタミンの放出を抑える。 オピオイド・メチルフェニデート・カフェイン・エフェドリン・アンフェタミン・デキストロアンフェタミン(英: Adderall, 英: Dexedrine®)・コカインなどの(広義の)覚せい剤は、極度の鎮静作用を抑え、抗うつ薬と同様、痛みに苦しむ患者の気分を高揚させうる。
THC(テトラヒドロカンナビノール)の明らかな効用の一つは、慢性的な痛みによってオピオイドの投与を受けている患者に対する制吐作用であろう。マリノールカプセル(英: Marinol)・経口・直腸・ハッシュオイル(英: Hash oil)の蒸気吸入は、喫煙によって大麻を吸入するよりも効果的であり、これは多くの医師が大麻の喫煙を止めるように助言を行う事と同じ理由である。
詳細は「医療大麻」を参照
連用により薬物乱用頭痛を引き起こすことがある。
近年アメリカ合衆国では、オキシコドンやハイドロコドンなど、オキシコドン・アセトアミノフェン・パラセタモールを複合的に配合したパーコセットとは対照的な単一成分の処方薬による中毒患者が増えている。単体のハイドロコドンは、ヨーロッパの幾つかの国で錠剤の医薬品として入手ができるのみである。中毒をもたらすどころか、これら多くのコデインを含むパラセタモール・ジヒドロコデイン・ハイドロコドン・オキシコドン剤などアメリカ合衆国内で用いられる薬品は、服用する者に深刻な肝障害の危険性を負わせる。冷水や冷媒によって抽出されるオピオイドは薬物乱用者・自己投薬者・合法的な薬の所持者に、これら問題が発生する可能性を減らす。アメリカ合衆国で販売されているほとんどのハイドロコドン・コデイン・ジヒドロコデインを含む咳止めシロップは、過剰摂取の危険性をはらんでいる。
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分類 | 投与経路 | 薬剤名 | 脳血流 | 脳代謝量 |
麻酔薬 | 静脈 (静脈麻酔薬) |
プロポフォール | ↓↓ | ↓ |
バルビツレート | ↓ | ↓ | ||
ミダゾラム | ↓ | ↓ | ||
ケタミン | ↑↑ | ↑ | ||
吸入 (吸入麻酔薬) |
亜酸化窒素 | ↑ | ↑ | |
セボフルラン | ↑ | ↓ | ||
イソフルラン | ↑ | ↓ | ||
ハロタン | ↑↑ | ↓ | ||
鎮痛薬 | 静脈 | フェンタニル | ↓ | ↓ |
レミフェンタニル | ↓ | ↓ |
分類 | 薬剤名 | 脳血流 | 脳酸素消費量 |
吸入麻酔薬 | 亜酸化窒素 | ↑↑ | ↑ |
ハロタン | ↑↑ | ↑ | |
イソフルラン | ↑ | ↓↓ | |
セボフルラン | →↑ | ↓↓ | |
静脈麻酔薬 | チオペンタール | ↓↓ | ↓↓ |
プロポフォール | ↓↓ | ↓ | |
フェンタニル | → | → | |
ケタミン | ↑↑ | ↑ |
受容体 | μ | δ | κ | |
作用 | μ1 | μ2 | ||
上脊髄性鎮痛 | 幻覚・譫妄 | 脊髄性鎮痛 | ||
呼吸抑制 | 呼吸促進 | 呼吸抑制 | ||
身体依存性 | 不快感 | 鎮静 | ||
徐脈 | 頻脈 | 脈拍不変 | ||
縮瞳 | 散瞳 | 痙攣 | ||
モルヒネ | agonist | - | agonist | |
ペンタゾシン | antagonist | agonist | agonist | |
ブプレノルフィン | partial agonist | - | agonist | |
ブトルファノール | antagonist | - | agonist | |
ナロキソン | antagonist | antagonist | antagonist |
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