バルビツール酸系
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バルビツール酸系(Barbiturate、バルビツレート)は、鎮静剤、静脈麻酔薬、抗痙攣薬などとして中枢神経系抑制作用を持つ薬剤である。バルビツール酸系の薬は治療指数が低く、過量服薬の危険性を考慮すると使用は推奨されない[1]。
構造は、尿素と脂肪族ジカルボン酸とが結合した環状の化合物である。
目次
- 1 概要
- 2 作用機序
- 3 副作用
- 4 適応
- 5 関連項目
- 6 脚注
概要[編集]
バルビツール酸系は、その化学的構造の違いによって、作用発現時間や持続時間、催眠作用の強度が異なり、短時間型、中間型、長時間型などのように分類されている。バルビツール酸系は、大量投与によって麻酔作用を有すため、予備的な鎮静の目的に投与されることもある。また、フェノバルビタールは、抗痙攣薬として汎用されている。
作用機序[編集]
中枢神経系では神経伝達物質として、アミノ酸が多く分布している。主な神経作用性のアミノ酸としては興奮アミノ酸であるグルタミン酸、抑制アミノ酸であるγ-アミノ酪酸 (GABA) が有名である。グルタミン酸受容体(ナトリウム、カルシウムイオンチャネル)としてはイオンチャネル型受容体であるAMPA受容体、NMDA受容体、カイニン酸受容体がよく知られており、代謝型グルタミン酸受容体としてはmGluRが知られている。GABA受容体ではイオンチャネル型であるGABAA受容体(クロールイオンチャネル)とGタンパク共役型受容体であるGABAB受容体が知られている。
GABAA受容体にはアゴニストであるGABA結合部位の他にバルビツール酸系結合部位、ベンゾジアゼピン結合部位、糖質コルチコイド結合部位、ペニシリン結合部位、フロセミド結合部位、フルマゼニル結合部位が知られており、GABAとの反応性の調節を行っている。
バルビツレートが神経興奮性を低下させる機序としてはGABAA受容体機能の調節からきていると考えられている。バルビツール酸系はクロールイオンチャネルの開口時間を大幅に延長することによりGABAの薬理効果を増強することであると考えられている。また高濃度になるとGABAA受容体を直接活性化するようになる。また麻酔濃度ではAMPA受容体活性化を抑制したり、電位依存性ナトリウムイオンチャネル活性も低下させるといわれている。
副作用[編集]
活性化ビタミンB6やビタミンB2の吸収や作用を阻害するため、常用することでこれらビタミン欠乏症にみまわれ、結膜炎や皮膚炎を発症する。
依存性が高く、作用量と致死量が近いために、安全性を考慮した処方や利用が推奨される。特にバルビツール酸系過量服薬は致死的になる場合がある。
適応[編集]
ベンゾジアゼピン類が出現するまでは不眠や不安症状に対する治療薬としてよく用いられていた。ベンゾジアゼピンに比べて選択性が低く毒性が強いため2007年現在使用頻度は減少を続けている。麻酔導入に関しても別のGABAA受容体活性薬であるプロポフォールの普及によってとってかわられている。
名称 |
適応 |
作用時間 |
チオペンタール |
麻酔導入と短期維持、てんかん発作の緊急治療 |
超短時間作用型(5〜15分) |
ペントバルビタール |
不眠、術前の鎮静、てんかん発作の緊急治療 |
短時間作用型(3〜8時間) |
アモバルビタール |
不眠、術前の鎮静、てんかん発作の緊急治療 |
短時間作用型(3〜8時間) |
フェノバルビタール |
てんかん発作の治療、てんかん重責 |
長時間作用型(数日) |
作用時間以外にもペントバルビタールといったバルビツール酸系麻酔薬はフェノバルビタールのような抗てんかん薬よりGABAAの直接活性化作用が強いため、深い鎮静をきたす用量を投与しなければ抗てんかん作用を示さないなど違いがあることが知られている。これらの特徴により適応が決定されている。
関連項目[編集]
- 麻酔科学
- バルビツール酸系依存
- バルビツール酸系過量服薬
- ベンゾジアゼピン
脚注[編集]
- ^ “Barbiturates”. The European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction (2011年9月13日). 2013年6月7日閲覧。
麻酔: 全身麻酔 (N01A) |
|
バルビツール酸系 |
ヘキソバルビタール · ブレビタール · ナルコバルビタール · チオペンタール
|
|
エーテル |
ジエチルエーテル · デスフルラン · エンフルラン · イソフルラン · メトキシフルラン · メチルプロピルエーテル · セボフルラン · ビニルエーテル
|
|
ハロゲン化アルキル |
クロロホルム · ハロタン · トリクロロエチレン
|
|
オピオイド |
アルフェンタニル · アニレリジン · フェンタニル · フェノペリジン · レミフェンタニル · スフェンタニル
|
|
その他 |
アルファキサロン · ドロペリドール · エスケタミン · エトミデート · ヒドロキシ酪酸 · ケタミン · ミナキソロン · 亜酸化窒素 · プロパニジド · プロポフォール · キセノン
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|
睡眠導入剤と鎮静剤 (N05C) |
|
GABAA受容体 |
バルビツール酸系
|
超短時間作用型
|
Methohexital Thiamylal チオペンタール
|
|
短時間作用型
|
Allobarbital アモバルビタール Aprobarbital Butobarbital ペントバルビタール Secobarbital Talbutal
|
|
長時間作用型
|
バルビタール Mephobarbital フェノバルビタール
|
|
その他
|
Cyclobarbital Ethallobarbital Heptabarbital Hexobarbital Proxibarbal Reposal Vinylbital Vinbarbital
|
|
|
ベンゾジアゼピン
|
超短時間作用型
|
トリアゾラム
|
|
短時間作用型
|
ブロチゾラム Cinolazepam Doxefazepam Loprazolam ミダゾラム
|
|
中時間作用型
|
エスタゾラム フルニトラゼパム ロルメタゼパム ニメタゼパム Temazepam
|
|
長時間作用型
|
フルラゼパム フルトプラゼパム ニトラゼパム クアゼパム
|
|
|
Dialkylphenols
|
Fospropofol プロポフォール チモール
|
|
非ベンゾジアゼピン系
|
CL-218,872 Indiplon Necopidem Pazinaclone ROD-188 Saripidem Suproclone Suriclone SX-3228 U-89843A U-90042 Zaleplon ゾルピデム ゾピクロン エスゾピクロン
|
|
Piperidinediones
|
Glutethimide Methyprylon Pyrithyldione Piperidione
|
|
Quinazolinones
|
Afloqualone Cloroqualone Diproqualone Etaqualone Mebroqualone Mecloqualone Methaqualone Methylmethaqualone
|
|
Neuroactive
steroids
|
Acebrochol Allopregnanolone Alphadolone Alphaxolone Eltanolone Ganaxolone Hydroxydione Minaxolone Org 20599 Org 21465 Tetrahydrodeoxycorticosterone
|
|
|
Alpha-2アドレナリン受容体 |
Alpha-adrenergic agonists
|
4-NEMD クロニジン Dexmedetomidine Lofexidine メデトミジン Romifidine Tizanidine キシラジン
|
|
|
メラトニン受容体 |
メラトニン
|
Agomelatine メラトニン ラメルテオン Tasimelteon
|
|
|
ヒスタミン受容体 &
アセチルコリン受容体 |
抗ヒスタミン薬 &
抗コリン薬
|
アミトリプチリン Dimenhydrinate ドキシラミン Hydroxyzine ジフェンヒドラミン Bromodiphenhydramine Carbinoxamine Doxepin Orphenadrine ミアンセリン ミルタザピン Nefazodone Niaprazine Phenyltoloxamine Propiomazine Pyrilamine スコポラミン トラゾドン
|
|
|
GABAB受容体 /
GHB 受容体 |
GHB Type
|
1,4-ブタンジオール Aceburic acid GABOB γ-ヒドロキシ酪酸 GBL gamma-Valerolactone
|
|
|
オレキシン受容体 |
Orexin antagonists
|
Almorexant SB-334,867 SB-408,124 SB-649,868 TCS-OX2-29
|
|
|
その他受容体/
グループ外 |
アルデヒド
|
Acetylglycinamide chloral hydrate 抱水クロラール Chloralodol Dichloralphenazone Paraldehyde Petrichloral
|
|
アルキン
|
ウレタン Ethchlorvynol Ethinamate Hexapropymate Methylpentynol
|
|
Carbamates
|
Meprobamate Carisoprodol Tybamate メトカルバモール Procymate
|
|
その他
|
2-Methyl-2-butanol Acecarbromal アセトフェノン Apronal 臭化物 ブロムワレリル尿素 Carbromal Chloralose Clomethiazole Embutramide エトミデート Evoxine Fenadiazole Gaboxadol Loreclezole Mephenoxalone Sulfonmethane Trichloroethanol Triclofos セイヨウカノコソウ バルノクタミド
|
|
|
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 軽度脳低温及びバルビツレート療法が有効であった重症硬膜下血腫の一例
- 上田 宣夫,林 勝知,森 茂,三鴨 肇,勝木 竜介,寺島 圭一,種村 衣里子
- 蘇生 29(2), 103-106, 2010-06-25
- NAID 10027716234
- 低体温療法と頭蓋内圧モニタリングとその管理 (頭蓋内圧のモニタリングと管理)
Related Links
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- inhalation alanesthetic agent, inhaled anesthetic
- 同
- ガス吸入麻酔薬、ガス麻酔薬
- 関
- 薬理学、全身麻酔薬
吸入麻酔薬の身体影響
- YN.M7 SAN.40
- 中枢神経系:意識消失、酸素消費量減少、脳血管拡張、頭蓋内圧上昇、(亜酸化窒素のみ)鎮痛作用
- 呼吸器系:用量依存的にコキュを抑制、一回換気量減少、呼吸回数増加、気管拡張作用、線毛運動抑制、気道分泌抑制、低酸素性肺血管収縮抑制
- 循環器系:用量依存的に血圧低下(血管拡張or心筋抑制)、内臓血流減少、脳・筋肉・皮膚血流増加
- 筋肉:(揮発性吸入麻酔薬のみ)
吸入麻酔薬
- SAN.39
化合物名
|
分子式
|
小さいほど強力
|
小さいほど効きが早い
|
特徴
|
麻酔に必要な条件
|
|
|
|
MAC
|
血液ガス分配係数
|
意識消失
|
鎮痛
|
筋弛緩
|
反射抑制
|
笑気
|
N2O
|
101
|
0.47
|
|
△ 低MAC
|
○
|
×
|
?
|
イソフルラン
|
F3C-CH(Cl)-O-CHF
|
1.15
|
1.48
|
|
○
|
×
|
○
|
?
|
セボフルラン
|
FH2C-O-CH(CF3)2
|
1.71
|
0.63
|
|
○
|
×
|
○
|
?
|
ハロタン
|
F3C-CHClBr
|
0.76
|
2.3
|
- 肝障害(3万例に1例)
- アドレナリン感受性↑(不整脈リスク)
- 生体内分解20%
|
○
|
×
|
△
|
?
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
麻酔薬と脳に及ぼす影響
- 参考4
参考
- http://www.geocities.co.jp/Colosseum-Acropolis/6786/Inhaled.html
- http://www.med.akita-u.ac.jp/~doubutu/ouu/Inhalation.html
- http://www.shinshu-masui.jp/information/2011/06/22/%E5%90%B8%E5%85%A5%E9%BA%BB%E9%85%94%E8%96%AC%E3%81%AE%E8%96%AC%E7%90%86.pdf
- http://www.shinshu-masui.jp/information/2010/05/26/%E5%90%B8%E5%85%A5%E9%BA%BB%E9%85%94%E8%96%AC.pdf
[★]
- 英
- cerebral blood flow
- 関
- 脳血流量
麻酔薬、鎮痛薬と脳血流
- 吸入麻酔薬では脳血管拡張作用により脳血流が増加
- 静脈麻酔薬の興奮性麻酔薬では脳神経活動亢進、酸素消費量増大など代謝の亢進のために脳血管拡張を来たし、脳血流増加 (SAN.45)
- 静脈麻酔薬の抑制性麻酔薬では脳神経活動低下、酸素消費量低下など代謝の低下のために脳血管収縮を来たし、脳血流低下 (SAN.45)
SAN.291改変
[★]
- 英
- intravenous anesthetics
- 関
- 麻酔薬、吸入麻酔薬
静脈麻酔薬
静脈麻酔薬の中での興奮性麻酔薬と抑制性麻酔薬
- SAN.45
|
興奮性麻酔薬
|
抑制性麻酔薬
|
例
|
ケタミン
|
バルビツレート プロポフォール
|
脳自発的活動
|
↑
|
↓
|
血圧
|
↑
|
↓
|
交感神経活動
|
→↑
|
↓
|
脳酸素消費量
|
↑
|
↓
|
脳血流
|
↑
|
↓
|
頭蓋内圧
|
↑
|
↓
|
鎮痛作用
|
強い
|
弱い
|
半減期
バルビツール酸系薬
麻酔導入が早い、全麻の導入、ごく短時間の痛みの少ない手術、検査
抗麻痺や、脳保護薬としても使われる
鎮痛、筋弛緩作用がないため併用が必要
急性間欠性ポルフィリン症は禁忌
ヘム合成系路の酵素欠損によって起こる
気管支喘息の患者には使用禁忌
サイトカインが出るから
○:強力な催眠作用
×:組織刺激性あり。静脈注射のみ
細胞膜にはGABA依存性のCl-チャネル(GABAA受容体=イオンチャネル共役型受容体)が存在し、バルビツール酸結合部位、ベンゾジアゼピン結合部位、GABA結合部位を有している。
3つの部位が独立に作用がある。相加的に働く。
GABAB受容体は7回膜貫通タンパク質である。
作用は バルビツール酸>ベンゾジアゼピン
[★]
- 英
- activated charcoal、active carbon
- 関
- 木炭
概念
- 炭化水素化合物を焼成して調製した炭素末
- 炭化水素の網目構造に物質を吸着できる ← 炭化水素という物性からしてイオン性、大分子(蛋白と結合した
物質)、水溶性の物質は吸着しづらい、と思われる。
活性炭の吸着に関与する要素
- くり返し投与が有効なのは脂溶性、非イオン性、分布容量 Vdが小さい、蛋白結合率が低い
- 腸管循環する物質、腸溶剤、徐放剤
吸着できる物質
SQ.480
吸着できない物質
- 参考1
- アルカン、アルケン、ハロゲン化アルキル、芳香族炭化水素、アルコール、アセトン、エタノール、エチレングリコール、イソプロパノール、メタノール、
参考
- 1. [charged] Decontamination of poisoned adults - uptodate [1]
- 2. 活性炭 - wiki ja
[★]
- 同
- バルビツール酸誘導体 barbiturate derivative、バルビツレート barbiturate、バルビツール酸塩、バルビタール系薬剤、バルビツール酸系化合物、バルビツール酸誘導体
- 関
- バルビツール酸、チオバルビツレート
作用機序
- イオンチャネル型。5量体。開口によりCl-が流入→電位依存性Ca2+の開口抑制など
- ベンゾジアゼピン系薬物、バルビツール酸系薬物、エタノールが作用
適応
- 静脈麻酔、抗痙攣薬、脳保護薬
- 抗てんかん薬としての適応
禁忌
副作用
- 薬物依存性が高い
- REM睡眠が短縮しやすい
- 過量により急性中毒
バルビツール酸系薬物
- Pentobarbital 短い。麻酔前投与
- Amobarbital
- Phenobarbital 長い。抗てんかん薬。睡眠薬としては適さない
[★]
- 英
- barbiturate intoxication