出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/02/20 12:17:47」(JST)
変形性膝関節症 | |
---|---|
分類及び外部参照情報 | |
ICD-10 | M15.-M19., M47. |
ICD-9 | 715 |
OMIM | 165720 |
DiseasesDB | 9313 |
MedlinePlus | 000423 |
eMedicine | med/1682 orthoped/427 pmr/93 radio/492 |
MeSH | D010003 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
テンプレートを表示 |
変形性膝関節症(へんけいせい しつかんせつしょう、英: osteoarthritis)は、筋力低下、加齢、肥満などのきっかけにより膝関節の機能が低下して、膝軟骨や半月板のかみ合わせが緩んだり変形や断裂を起こし、多くが炎症による関節液の過剰滞留があり、痛みを伴う病気である。
膝関節のクッションの役目を果たす膝軟骨や半月板が長期間に少しずつすり減り変形することで起こるもの(一次性)と、関節リウマチや膝のケガなどの他の原因によって引き起こされるもの(二次性)の2種類がある。
日本国内に限っても患者数は約700万人というありふれた疾患であり、年だからとあきらめたり、我慢しているケースが多いのもこの病気の特徴で、行動が制限されがちになるため、適切なケアが望まれる。
通常、膝関節の表面は軟骨で覆われており、この軟骨と膝関節間隙の後ろ側に挟まった半月板とが外的衝撃を和らげ、関節の動きを滑らかにする働きをしている。 また、ヒアルロン酸を含み関節間を満たした関節液が潤滑と栄養補給の役割を果たしている。靱帯は関節の骨と骨をつないで安定化させている。初期には関節軟骨のみが障害を受ける場合が多く、やがて障害範囲が関節軟骨の磨耗、半月板の断裂、靱帯の障害などを含んだものへと進行することによって、関節炎が起こり、過剰な関節液が溜まる「膝関節水症」を引き起こす。これによって関節内のヒアルロン酸濃度は低下して滑らかさをさらに失う事にもなる。
症状は人によって差異が見られるが、一般的には初期段階で、階段の昇降時や歩き始めに痛んだり、正座やしゃがむ姿勢がつらくなる。病気の進行とともに、起床時の膝のこわばりや、関節が炎症を起こす、「水がたまる」と表現される膝関節液の過剰滞留などの症状が出やすくなる。さらに進行すると、大腿骨と脛骨が直接こすれることで激しい痛みが生じ、歩行が困難になり、最悪の場合では膝の痛みがとれないようになる。
40歳以上の男女の6割が罹患しているというデータもある。また、どの年代でも女性が男性に比べて1.5-2倍多く、高齢者では男性の4倍といわれている。O脚の関連も指摘されている。加齢とともに発症しやすく、中高年の女性に多くみられる。
問診、視診、触診、関節液検査、X線検査、血液検査などにより判断する。MRIではさらに詳しい診断が可能である。
問診、視診、触診は他の疾病での診察時と同様に重要であるが、特に関節液検査とX線検査は変形性膝関節症の診断に重要な要素となる。関節液を注射器で患部より抜き取り、正常な場合は少し黄色味を帯びたほぼ透明な色が、感染やリウマチでは濁ることがあり、変形性膝関節症ではさらに黄色味を帯びる。化膿していれば膿のようになる。粘りを調べる「指間検査法」では親指と人差し指の間に1滴を落としてその粘り具合を確認する。糸を引くほど粘れば変形性膝関節症の可能性が高まる。関節液を光にかざして浮遊する無数の脂肪滴があれば骨折があると診断できる。
X線検査は変形性膝関節症の診断にとって欠かせず、骨の形状を細かに見ることで膝の骨の状態を確認し、直接写らないが骨に付随する軟骨組織や筋肉、腱などの状態を推測する。骨の病気が疑われる場合にはCTによって骨内部のより細かな映像を撮ることもある。X線だけでは変形性膝関節症等での含む骨以外の組織の状態を画像で見られないため、詳しい診断にはMRIが活用されることが多い。
問診、視診、触診の過程では患者の姿勢を変え、足の角度を変えながら痛み等の反応や触診を行なう「外反ストレステスト」や「前方引き出しテスト」「後方引き出しテスト」といった「徒手検査」を行なうが、専門の医師でなければ危険が伴う。
血液検査によって血糖値が高ければ、糖尿病や神経障害性関節症(シャルコー関節)が疑われる。
膝の炎症が疑われる症例では、変形性膝関節症を含む以下の5つの症状のいずれかに分類される。
保存療法と手術療法の2つの方法がある。薬物投与、装具装着、リハビリテーションなどの保存療法で効果がない場合は、手術療法が選択される。 この疾患は生活習慣が起因する場合が多く、適度な運動や食生活の見直し、減量などが効果がある。同時に筋力を維持し、膝への負担を減らすことも効果的であり、それだけで罹患を減少させたり、進行を遅らせる効果がある。疾病からくる制約による行動範囲の狭まりなどに起因するうつ、痴呆等の精神疾患を誘発することもあり注意が必要となる。
手術では関節鏡と呼ばれる4mmほどの太さの棒状器具等を6mm程度切開した2-3箇所の穴から膝内部に入れて行なわれる小規模のものと、膝関節の骨そのものを人工関節に置き換えたり金属プレートやクサビ型の骨を埋め込むなどの大掛かりなものとがある。前者で0-1日ほど、後者で1ヶ月ほどの入院が必要となる。前者では膝の手術そのものは小規模であるが、腰椎麻酔を行うために10人に1人程度は脳脊椎液が腰の硬膜の注射部位から体内に漏れて脳圧が下がり激しい頭痛が起きることがある。
50歳~60歳の6691人の女性を対象とした臨床医師が行った無作為化比較試験の結果では、治療目的でのグルコサミンの内服は、摂取と発症に関し有意な影響は見られず、発症予防の効果は証明されなかった[1]
よくいわれる「水が溜まる」とは関節液や滑液とも呼ばれる体液が関節内外で過剰に分泌されて溜まったもののことで、これは炎症を起こした部位を防ごうとヒトの生体が行なう防御反応の1つであり、それ自身は症状ではあっても病気ではない。もともと適正量は関節包内にあって潤滑の助けとなっている。
関節包の後方に穴が開いて関節液が膝裏に溜まったものを膝窩嚢腫(ベーカー嚢腫)と呼ぶ。関節包に穴が開かなくても、過剰な関節液が関節包を膨らませて関節前方に腫れるものが関節周囲炎や関節関節包炎と呼ばれるものになる。
日本では「水を抜くと癖になるので良くない」と言う患者もいるが、迷信か思い込みであり、関節液の過度の滞留は患者の痛みとなっても体の自然治癒を助けることにはならず、注射前に十分に患部の殺菌処置を行なう必要があるが、注射器で何度も「水」を抜いても「癖になる」訳ではなく、抜く抜かないに関わらず炎症が続けば「水」は溜まり続ける。
日本では、厚生省の大臣官房統計情報部が行なった国民生活基盤調査では患者数が約700万人と推定されている。2005年の東京大学の関節疾患総合研究講座の吉村典子教授らが板橋区と和歌山の日高川町の住人の合わせて約2,200人を対象に行なったX線撮影を含む調査では50歳以上の女性で74.6%、男性で53.5%が変形性膝関節症の患者であるとされた[2]。
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
国試過去問 | 「106G050」「109E059」「102E064」「107E068」「105I040」「098A046」「104C023」「095G047」「099A048」「100B059」「090B078」 |
リンク元 | 「ローゼンバーグ撮影肢位」「人工膝関節置換術」「knee osteoarthritis」「gonarthrosis」「変形性膝関節炎」 |
関連記事 | 「膝関節」「関節」「関節症」「症」「膝関節症」 |
E
※国試ナビ4※ [106G049]←[国試_106]→[106G051]
BCE
※国試ナビ4※ [109E058]←[国試_109]→[109E060]
BE
※国試ナビ4※ [102E063]←[国試_102]→[102E065]
D
※国試ナビ4※ [107E067]←[国試_107]→[107E069]
B
※国試ナビ4※ [105I039]←[国試_105]→[105I041]
D
※国試ナビ4※ [098A045]←[国試_098]→[098A047]
B
※国試ナビ4※ [104C022]←[国試_104]→[104C024]
C
※国試ナビ4※ [095G046]←[国試_095]→[095G048]
D
※国試ナビ4※ [099A047]←[国試_099]→[099A049]
E
※国試ナビ4※ [100B058]←[国試_100]→[100B060]
関節疾患 arthropathy : 約 10,300 件 関節症 arthropathy : 約 30,400 件 関節障害 arthropathy : 74 件
.