出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/02/25 18:40:51」(JST)
腰痛(ようつう)とは、腰に痛み、炎症などを感じる状態を指す一般的な語句。
国・地域によって、特に行政・学会の方針・生活習慣が異なる場合は顕著に、腰痛の罹患率は異なる。
腰痛の原因は姿勢にあるとの1976年のナッケムソンの指摘以降、欧州では就労中・家事労働中などの予防策が進み、腰痛患者が激減している。
米国における腰痛患者の多くが原因が特定されていないとされている点について、ナッケムソンは明確に学会の責任を指摘している。
日本は腰痛が有訴率第一位(もっとも多い症状)であり、日本人の8割以上が生涯において腰痛を経験している腰痛大国である。しかし多くの人々は腰痛を訴えているが、画像診断に異常が見られない患者は疾患として認めらず健常者という扱いとなる。病院では医学とはあまり関わりのない一般的な説明や医師独自の解釈による説明などがなされるものの、実際には腰痛患者の8割は原因が特定されておらず、多くの患者はそのまま放置されている。
主な病名 | 状態 | 症状 | 検査 | 主な原因 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
腰 | 脚 | 他 | MRI | レントゲン | 他 | ||||
急性腰痛症 ぎっくり腰 |
筋肉痛、腰椎捻挫 | 腰痛 | 確定できない | 作業姿勢 重量物を運搬 |
|||||
腰部椎間板症 | 椎間板の変形 | 長時間立つとつらい | 必要 | ||||||
椎間板ヘルニア | 椎間板が変形により 突出 |
痛みの増大 | 痛み しびれ |
排泄障害 (重度の場合) |
確定 | ||||
腰部脊柱管狭窄症 | 椎間板突出による 脊椎・脊柱管の変形 |
起床時も痛い | 痛み しびれ |
排泄障害 (重度の場合) |
確定 | ||||
変形性脊椎症 | 骨の変形 | 骨の変形 | |||||||
骨粗鬆症 | 骨量測定 | 高齢、閉経 | |||||||
感染性脊椎炎 | 感染 | 発熱 | 体温測定 | 免疫低下、手術 糖尿病、高齢 |
|||||
心因性脊椎症 | ストレス | ||||||||
腫瘍 | 良性腫瘍、悪性腫瘍 (早期の専門医受診が必要) |
痛みの増大 安静時も痛み |
痛み しびれ |
手の麻痺 (重度の場合) |
腫瘍 |
痛みには、筋肉由来の緊張性腰痛と、鈍い痛みを伴う慢性の腰痛がある。
筋肉などに過度なストレスが掛かることで、筋肉が緊張することで引き起こされる腰痛である。過度なストレスを強いられると、交感神経は常に優勢になり活発化し緊張を強いられ、余計な他の筋肉などにも力が入る。すると崩れたバランスを調節しようと腰の筋肉に負担が大きくなり、腰痛が発生する。
3ヶ月以上、腰に継続した鈍い痛みがあるものを慢性型とする。ストレスなどの心因性因子の関与が大きい。
緊急性の高い腰痛としては、致死性の高い腹部大動脈瘤&大動脈解離、場合によっては致死性になる腎梗塞、急性膵炎、排尿&排便が困難になることもある馬尾症候群などが挙げられる。
注意を要する腰痛としては、化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎、硬膜外膿瘍、椎間板炎などの脊椎感染症や、多発性骨髄腫やがんの骨転移などの悪性腫瘍の骨病変などがある。
欧州におけるガイドライン[1]によれば、腰痛の原因は、疾患ではなく、腰部に負担のかかる動作による脊椎・腰椎・神経などの障害、腫瘍などの慢性疾患からの症状、の2つである。
1976年3月、整形外科医ナッケムソンは、腰痛の原因を腰部に負担のかかる動作と解明した[2]。
1999年、Wilkeらは、更に細かく約30通りの動作について数値を計測、ナッケムソンの研究を補足する形で追認した[3]。
姿勢 | !第3/第4腰椎の間の負荷 (ナッケムソンによる[2][4]) |
!第4/第5腰椎の間の負荷 (Wilkeらによる[3]) |
備考 | |
---|---|---|---|---|
寝ている | あお向け | 25 | 20 | 20分程横になると軽減する 毎日8時間横になると軽減する |
横向き | 75 | 25 | ||
立つ | 直立 | 100(基準値) | 100(基準値) | |
腰から前屈 | 150 | 220 | この姿勢での長時間の作業は避けるべき | |
座る | 背もたれにリラックスして座る | 50 | 安楽椅子・リクライニング椅子で軽減する | |
直立 | 140 | 90 | ||
腰から前屈 | 180 | 160 | ||
立って20kgの物を持つ | 直立し、ひざを伸ばす | 220(*1) | この姿勢での長時間の作業は避けるべき | |
腰から前屈し、ひざを曲げる | 340 | |||
腰から前屈し、ひざを伸ばす | 375(*2) | 460(*3) | ||
(腰部にかかる負荷の例) | 立って20kgの物を持つ | 265kg(*2) | 172(*1)~316kg(*3) | 体重・装備など重量計40kgの場合 |
360kg(*2) | 236(*1)~428kg(*3) | 体重・装備など重量計60kgの場合 | ||
455kg(*2) | 300(*1)~540kg(*3) | 体重・装備など重量計80kgの場合 |
ナッケムソンは、2つの残された課題に警鐘を鳴らした。
腫瘍の場合、ヘルニアなどの腫瘍化などの可能性が一部にある。
安静・投薬・コルセット等の対症療法が一般的である。また、鍼灸[5]や柔道整復も治療法として一般に広く認知されている。
例 | 備考 | |
---|---|---|
運動療法 | 体操、水泳、ジョギング、散歩 | 痛みが激しい時は運動してはいけない |
装具療法 | 腰痛ベルト、コルセットなど | 常時使用し続けると、筋肉が弱まり悪化するので、必要な時のみ |
薬物療法 | 消炎鎮痛剤 | 痛み止めは長期間服用し続けると効果が薄まるので、必要な時のみ |
理学療法 | 温熱療法など | 理学療法士が個々の疾病にあわせて治療を行う |
マッサージ療法 | 指圧など | 整骨院などでも受けられる(要あんまマッサージ指圧師資格) |
手術 | レーザー手術など | 手術しても、数年程度で再発し再手術となる人も |
鍼治療によるエビデンスを参照
脊椎脊髄専門医の早期受診が望ましい。長期間放置すると、手遅れとなり回復困難となることもある。
上記で書いたように筋肉が原因の緊張製腰痛に対しては、腰の筋肉である腹筋と背筋を鍛えることにより予防を見込める。 長時間同じ姿勢で過ごす事の多い人は、運動や体操で腰痛予防を心掛けることが望ましい。 運動不足(腹筋が弱すぎ、腹筋に比べて背筋が弱い)、過度の運動(腰椎分離症になる恐れ)は回避する。
腰痛予防となる生活習慣の例 | 腰痛の起きやすい生活習慣の例 | ||
---|---|---|---|
姿勢に注意 | 前かがみを避ける | 作業姿勢を工夫 | 前かがみ、中腰、前傾姿勢 |
同じ姿勢を長く続けない | 屈伸などその場でできる軽い運動をする | 毎日2~3時間車を運転するなど、同じ姿勢を長く続ける | |
良い姿勢 | 両足を揃えて椅子に座る(椅子の高さを足がつく高さにする、背もたれに座布団やクッションを置く)、いつも同じ側でかばんを持たない | 脚を組んで椅子に座るなど、姿勢が悪い | |
疲れをためない | 規則正しい生活 | 定時退社、家へまっすぐ帰る | 残業などで、疲れをためる |
朝食はしっかり | 暖かいものを栄養バランス良く | 朝食抜き、朝食が少ない、油もの・生野菜・果物 | |
運動は適度に | 軽い運動 | 激しい運動などで、疲れをためる | |
靴 | 適切な大きさの靴 | 足に合わない靴を無理をして履いている | |
寝具 | 敷布団は固すぎず、やわらかすぎないもの | 腰が沈み込む寝具 | |
十分な睡眠 | 規則正しい睡眠 | 睡眠不足 | |
体を冷やさない | 空気を冷やさない | 適度な空調 | きつすぎる冷房 |
暖かい食事 | 暖かいものを栄養バランス良く | 油もの・生野菜・果物 | |
太陽光 | 日光浴 | ||
入浴 | 風呂に肩まで入ってゆっくり体を温める | 半身浴 | |
寝具(冬) | 湯たんぽ | 電器毛布をつけたまま寝る | |
衣類(冬) | 吸湿発熱性のある新素材、ウール。マフラー、ハイネック、ズボン | スカート、きつい肌着 |
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
腰痛は雇用の継続や再就職の困難をもたらす原因となる可能性が高く、収入の途絶など社会生活を営む上での重大な障害となる可能性が高い。また身体障害に関する社会福祉政策の対象として認定されるに至らないケースが大半であり、労働災害保険の認定がこの場合非常に重要となる。
労働災害参照。時効に注意。
障害年金は、退職後も、症状が固まり次第申請可能。時効に注意。
損害賠償請求訴訟の場合、雇用者側の不法行為を裁判において立証する必要がある。判例あり(大阪地方裁判所 昭和49年(ワ)第879号)。時効に注意。
重いものを扱う労働(建築現場・工場・倉庫・空港・港湾・物流関連など)は、腰痛による労働災害が発生する危険性が非常に高い。このため、腰痛を原因とした正社員の休職・退職にかかるコストを回避しようと、期間工・派遣社員・委託社員・パート・アルバイトなどの非正規労働者が重量物をあつかう業務へ投入されることが多い。この場合、安全でない業務の当然の結果として生じた腰痛にかかるコストも削減しようと、確信犯的に労災申請の妨害がされることもあり問題となっているが、このような場合は民事訴訟で業務上の腰痛であるとの認定を受けることで労災が承認される可能性がある。
リストラ目的や労働組合活動への制裁的人事としてこのような重労働を任命された場合、そもそも現業活動には十分な訓練や修練・熟練・肉体的素養・年齢などの条件が求められる事が多いにも関わらず本来必要な業務命令を逸脱した配置転換の場合は、パワーハラスメントや不当労働行為に該当する可能性がある。
労災申請したが労働基準監督署の確認作業に時間がかかる・労災申請したが認定されないなど、生活に困った場合は、居住地からの立ち退きを要求される前に、速やかに管轄の役所にて生活保護申請すべきである。生活保護制度には、治療費・交通費・医療器具代などが支払われる医療扶助制度がある。生活保護申請においては、仕事を探す意欲があることやボランティアが一緒であることなどが、効果的な場合もある。
この項目は、医学に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:医学/Portal:医学と医療)。 |
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
国試過去問 | 「107C031」「107C030」「107D056」「104A033」「106D052」「109D037」「107D046」「105E059」「105I072」「106I069」「107I046」「106E069」「109H006」「104G017」「105I007」 |
リンク元 | 「100Cases 10」「子宮内膜症」「急性腰痛症」「ウィリアムズ体操」「backache」 |
拡張検索 | 「腰痛血尿症候群」「慢性腰痛」「急性腰痛」「慢性腰痛症」 |
関連記事 | 「痛」 |
E
※国試ナビ4※ [107C030]←[国試_107]→[107D001]
D
※国試ナビ4※ [107C029]←[国試_107]→[107C031]
BC
※国試ナビ4※ [107D055]←[国試_107]→[107D057]
BE
※国試ナビ4※ [104A032]←[国試_104]→[104A034]
DE
※国試ナビ4※ [106D051]←[国試_106]→[106D053]
E
※国試ナビ4※ [109D036]←[国試_109]→[109D038]
A
※国試ナビ4※ [107D045]←[国試_107]→[107D047]
ABE
※国試ナビ4※ [105E058]←[国試_105]→[105E060]
AD
※国試ナビ4※ [105I071]←[国試_105]→[105I073]
B
※国試ナビ4※ [106I068]←[国試_106]→[106I070]
E
※国試ナビ4※ [107I045]←[国試_107]→[107I047]
34
※国試ナビ4※ [106E068]←[国試_106]→[106F001]
D
※国試ナビ4※ [109H005]←[国試_109]→[109H007]
B
※国試ナビ4※ [104G016]←[国試_104]→[104G018]
D
※国試ナビ4※ [105I006]←[国試_105]→[105I008]
.