Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/02 05:17:50」(JST)
脳: 黒質 | |
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上丘を通過する冠状断面。 濃い灰色の所が黒質。
ヒト脳の冠状断面。 線条体 (Striatum), 淡蒼球外節 (GPe), 視床下核 (STN), 淡蒼球内節 (GPi), 黒質 (SN)。
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名称 | |
日本語 | 黒質 |
英語 | substantia nigra |
ラテン語 | substantia nigra |
略号 | SN |
関連構造 | |
上位構造 | 中脳、脳幹、大脳基底核 |
構成要素 | 黒質網様部(SNr)、黒質緻密部(SNc) |
画像 | |
Digital Anatomist | 下方 下方 |
関連情報 | |
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MeSH | Substantia+Nigra |
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黒質(こくしつ substantia nigra = ラテン語で「黒い物質」の意)は中脳の一部を占める神経核である。黒質は、緻密部と、網様部(および外側部)とによって、大きく二群に大別されるが、いずれも大脳基底核を構成する中心的な要素である。
黒質緻密部 (こくしつちみつぶ substantia nigra pars compacta)は、ヒトにおいて、ニューロメラニン色素を含有するニューロンが多く存在しているため黒色を帯びているが、加齢と共にニューロメラニンの量が減少する。ニューロメラニンはドーパ(ヒドロキシフェニルアラニン)が重合したもので、ニューロメラニンの色素沈着は、明瞭な黒い斑として脳切片上で認めることができ、黒質という名前の起源となっている。多くのニューロンはドーパミン作動性であり(A9細胞集団[1])、とりわけ太く長い樹状突起をもち、腹側方向へ延びる樹状突起は境界を越えて網様部の中へ深く侵入している。
類似したドーパミン作動性ニューロンが、数はより少ないが、中脳の中を黒質からより内側および後方へ連続的に分布しており、これらの領域は腹側被蓋野(ventral tegmetal area, VTA;A10細胞集団[1])および赤核後部(retrorubral fielad, RRF;A8細胞集団[1])と名付けられている。
黒質緻密部自体も、Ventral Tier(A9v)と、カルビンディン(calbindin)陽性[2]のDorsal Tier(A9d)とに区別される。背側部A9dは、A8やA10と互いに関連が深い[3]。緻密部ドーパミン作動性ニューロンの長い樹状突起はGABA作動性の線条体入力を受ける。緻密部のニューロンはまた網様部のGABA作動性ニューロンの軸索側枝からの抑制性入力を受けている[4]。これらのニューロンは軸索を黒質線条体路に沿って線条体に投射し、神経伝達物質のドーパミンを分泌する。ドーパミン作動性軸索はまたその他の大脳基底核を構成する神経核にも投射しており、それらには淡蒼球[5]、黒質網様部、視床下核[6]などが含まれる。
黒質緻密部ドーパミン作動性ニューロンの機能は複雑である。当初考えられていたように運動制御に直接関わるものではない。すなわち「ドーパミンニューロンは、新規かつ予想外の刺激によって、報酬予測を可能とするような刺激が無い状況では一次報酬によって、また学習中に活性化される」[7]。ドーパミン作動性ニューロンはどのような行動が報酬(たとえば食物やセックスなど)をもたらすのかを予測するための学習に関与すると考えられている。とくに、ドーパミンニューロンは、予測していたよりも報酬が大きいときに発火する(すなわち報酬予測誤差信号を担う)ということが示唆されており、これが強化学習理論におけるTD誤差信号に類似することから、大脳基底核の神経回路において強化学習が実現していると考える仮説の有力な根拠となっている。この報酬予測誤差信号はその行動の期待値を更新するために用いられると考えられ、習慣形成や手続き記憶の形成に関わっていると推測されている。ドーパミン作動性ニューロンの発火は、投射先の線条体でのドーパミン放出を引き起こし、線条体投射ニューロンのD1受容体、D2受容体に作用する。 多くの薬物乱用においては、たとえばコカインなどの薬物がこの報酬反応を刺激するために、薬物中毒を引き起こすと考えられている。
黒質緻密部ニューロンの変性がパーキンソン病の主たる病理であると見なされている。遺伝性のパーキンソン病も少数存在するが、多くの例についてはドーパミン作動性ニューロンが死ぬ理由は明らかになっていない。パーキンソン症状は脳炎のようなウイルス感染や、MPTPなどの化学薬品によっても引き起こされる。ドーパミン作動性ニューロンの病理的変化は統合失調症や、鬱病に時折みられる精神運動遅延にも関わっていると考えられている。
黒質網様部 (こくしつもうようぶ substantia nigra pars reticulata)はGABA作動性ニューロンを高密度に含む神経核であり、淡蒼球内節と同様、大脳基底核の出力核であるとみなされている。高頻度の発火を持続しているのが特徴とされる。線条体からの直接路出力によって黒質網様部の発火が一時的に抑制され、黒質網様部の投射先の活動を脱抑制することが、運動の開始に重要だという見方が一般的である。投射繊維は視床の一部などへ出力する。黒質網様部への主な入力は、線条体からのGABA入力(直接路)、淡蒼球内節からのGABA入力(間接路)、視床下核からのグルタミン酸入力などである。
黒質網様部のニューロンは、緻密部に比較すると、細胞の分布密度が低い。緻密部のドーパミン作動性ニューロンよりも、淡蒼球のニューロンに形態は類似している。網様部ニューロンは線条体または淡蒼球外節からのGABA作動性入力を受けると共に、視床下核からのグルタミン酸入力も受けている。多くの網様部ニューロンはGABA作動性であり、主軸索を運動性の視床核(VA核)へ投射する。VA核ニューロンはグルタミン酸作動性であり、運動性の皮質領野へ軸索を投射している。また、上丘や脚橋被蓋核など脳幹の一部にも出力する。
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サブタイプ | シグナル | 局在 | 機能 | 生体反応 | 選択的作動薬 | 選択的阻害薬 |
5-HT1A | AC↓ | 縫線核 海馬 |
自己受容体 | 8-OH-DPAT tandospirone |
||
5-HT1B | AC↓ | 鉤状回 黒質 |
自己受容体 | |||
5-HT1C | AC↓ | 脳血管 | 血管収縮 | |||
5-HT1D | AC↓ | 皮質 線条体 |
- | sumatriptan | ||
5-HT1E | AC↓ | 脳および末梢 | - | |||
5-HT2A | PLC↑ | 血小板 平滑筋 大脳皮質 |
血小板凝集 収縮 神経興奮 |
α-methtl-5-HT, DOI | スピペロン ketanserin | |
5-HT2B | PLC↑ | 胃底 | 収縮 | α-methtl-5-HT, DOI | ||
5-HT2C | PLC↑ | 脈絡叢 | - | α-methtl-5-HT, DOI | ||
5-HT3 | ion channel | 末梢神経 | 神経興奮 | 2-methyl-5-HT | ondansetron tropisetron | |
腸神経細胞 | 嘔吐 | |||||
最後野 | ||||||
5-HT4 | AC↑ | 胃腸管 | 神経興奮 | renzapride | ||
海馬 | 認知 | |||||
5-HT5A | AC↓ | |||||
5-HT5B | ? | 海馬 | ? | |||
5-HT6 | AC↑ | 線条体 | ? | |||
5-HT7 | AC↑ | 脳下垂体 小腸 |
? |
名称 |
陰部大腿神経大腿枝 |
外側大腿皮神経 |
大腿神経前皮枝 |
閉鎖神経皮枝 |
伏在神経 |
浅腓骨神経 |
深腓骨神経 |
上殿皮神経 |
中殿皮神経 |
下殿皮神経 |
後大腿皮枝の枝 |
後大腿皮神経の終末枝 |
内側腓腹皮神経 |
外側腓腹皮神経 |
腓腹神経 |
外側足背皮神経 |
臓器 | 栄養血管 | 機能血管 | ||
動脈 | 静脈 | 動脈 | 静脈 | |
食道 | ||||
胃 | ||||
小腸 | 上腸間膜動脈 | 上腸間膜静脈→門脈 | ||
大腸 | 上・下腸間膜動脈 | 上・下腸間膜静脈→門脈 | ||
肝臓 | 固有肝動脈 | 肝静脈→下大静脈 | ||
胆嚢 | 胆嚢動脈 | 胆嚢静脈 | ||
膵臓 | ||||
気管 | ||||
肺 | 気管支動脈 | 気管支静脈 | 肺静脈 | 肺動脈幹→肺動脈 |
腎臓 | ||||
尿管 | ||||
膀胱 | ||||
脾臓 | 脾動脈 | 脾静脈 | ||
精巣 | 精巣動脈 | 蔓状静脈叢 | ||
卵巣 | 卵巣動脈 | 蔓状静脈叢→卵巣静脈 |
大脳基底核の障害との関連 | 特徴 | 好発部位 | 代表疾患 | ||
振戦 | tremor | 黒質 | 律動的な振動運動 | 指、手 | Parkinson病 本態性振戦 |
舞踏病様運動 | choreiform movement | 尾状核 | 不規則で、目的のない、非対称性運動 [show details] <youtube>http://www.youtube.com/watch?v=JzAPh2v-SCQ</youtube>
|
顔面、四肢 | Huntington舞踏病 |
バリズム | ballism/ballismus | 視床下核 | 舞踏様病の一種。運動はより急速、粗大、持続性。四肢の抹消よりも体幹に誓い部分に強く起こり、上下肢を投げ出すよう激しい運動 [show details] <youtube>http://www.youtube.com/watch?v=Cn3WSt6omzY</youtube>
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四肢 | 視床下核 Juys体の出血・梗塞 |
アテトーゼ | athetosis | 赤核、被殻、淡蒼球 | 舞踏病よりゆっくりで、持続性のある運動。舞踏病に比べ一定の運動。虫が這うような運動。 [show details] <youtube>http://www.youtube.com/watch?v=I63SobW58J0</youtube>
|
手・指 | 脳性麻痺 CO中毒 レンズ核障害 |
ミオクローヌス | myoclonus | 赤核 | 1つまたは多くの筋の短時間の不随意な収縮。関節や四肢の強い運動を伴わないのが原則 [show details] <youtube v=faiVIKmmi5k></youtube>
|
全身・局所 | Creutzfeldt-Jakob病 Ramsay Hunt症候群 てんかん リピドーシス ミトコンドリア脳筋症 |
痙攣 | cramp/convulsion | 筋肉が不随意に,激しく攣縮する状態 | |||
ジストニー | dystonia | 異常姿勢。筋緊張の亢進で異常な姿勢となり、体幹の捻転、胸郭の傾斜、頚の捻転、肘の過伸展、手首の過屈曲、指の過伸展などを呈する。 [show details] <youtube v=1MQtaMENDV0></youtube>
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体幹・近位筋 | 捻転ジストニー | |
チック | tic | 顔、頚部、肩などに起こる、比較的急激で、繰り返して起こる運動 [show details] <youtube>http://www.youtube.com/watch?v=xIAbmfxIm6I</youtube>
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顔面 | てんかん 緊張 |
<youtube>https://www.youtube.com/watch?v=BPt3pTzbcXc</youtube>
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
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