副甲状腺
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副甲状腺(ふくこうじょうせん)、上皮小体(じょうひしょうたい)とも言い、甲状腺に隣接してヒトでは2対計4個が存在する(動物種によっては3対や4対有することもある)、内分泌腺の1種である。
概要
ヒトの甲状腺と副甲状腺の位置関係。Parathyroid glandと書かれた部分が副甲状腺。なお、正面から見ると副甲状腺は甲状腺の裏側に存在している。
副甲状腺は、第三咽頭嚢由来の外上皮小体および第四咽頭嚢由来の内上皮小体に分けられる。ロンドン動物園のインドサイで最初に副甲状腺は発見され、1877年スエーデンのウプサラ大学の学生Ivar Sandström(イヴァル・サンドストロム)が人で副甲状腺を発見し世界で最初の論文を書いたとされる。甲状腺との直接的関係はない。副甲状腺ホルモン(上皮小体ホルモン、パラソルモンとも言う。英: parathyroid hormone, parathormone; PTH)を分泌し、カルシウムおよびリン酸の調節を司る。発生学的には魚類の鰓に対応すると考えられている。
カルシウムの調節
血中カルシウムの濃度の調節は副甲状腺ホルモンパラソルモン、ビタミンD、カルシトニンが関わっている。
- パラソルモン
- パラトルモンとも書かれる。PTHと略されることもある。パラソルモンの標的臓器は骨と腎臓である。骨においてはパラソルモンは破骨細胞を活性化、骨芽細胞を抑制することにより、骨吸収を促進し、その結果骨からカルシウムとリン酸が血漿に供給される。腎臓においてはパラソルモンは尿細管に作用し、ビタミンDの活性化を促進する。さらにパラソルモンは遠位尿細管に作用してカルシウムの再吸収を促進し、近位尿細管に対する効果によってリン酸の再吸収を抑制する。パラソルモンは血液中のカルシウム濃度によってその分泌が調節される。すなわち、カルシウム濃度の減少はパラソルモンの分泌を促進し、カルシウム濃度の増加はパラソルモンの分泌を抑制する。
- ビタミンD
- ビタミンDの標的臓器は腸管と骨である。ビタミンDは腸管におけるカルシウムの吸収を促進する。また骨においてはパラソルモンと同様に骨吸収を促進する。
- カルシトニン
- 甲状腺に存在する傍濾胞細胞によって産生されるホルモンであり、カルシウムプールから細胞外液へのカルシウムの移動を減少させ、破骨細胞に働き骨吸収を減少させる。また破骨細胞の形成そのものも抑制する。カルシトニンの調節はカルシウムが関わり、血中カルシウム濃度が増加すると分泌が増加する。
原則として、
- パラソルモンとビタミンDの両方がなければ血清カルシウムは正常範囲まで上昇しない。
- ビタミンDはパラソルモンの作用が無ければ産出されない。
関連項目
内分泌器:ホルモン(ペプチドホルモン、ステロイドホルモン) |
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視床下部 - 脳下垂体 |
視床下部
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GnRH - TRH - ドーパミン - CRH - GHRH - ソマトスタチン - ORX - MCH - MRH - MIH
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脳下垂体後葉
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バソプレッシン - OXT
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脳下垂体中葉
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MSH(インテルメジン)
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脳下垂体前葉
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αサブユニット糖タンパク質ホルモン(FSH - LH - TSH) - GH - PRL - POMC(ACTH - エンドルフィン - リポトロピン)
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副腎 |
副腎髄質
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副腎髄質ホルモン(アドレナリン - ノルアドレナリン - ドーパミン)
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副腎皮質
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副腎皮質ホルモン(アルドステロン - コルチゾール - DHEA)
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甲状腺 |
甲状腺
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甲状腺ホルモン(T3 - T4 - カルシトニン)
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副甲状腺
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PTH
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生殖腺 |
精巣
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テストステロン - AMH - インヒビン
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卵巣
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エストラジオール - プロゲステロン - インヒビン/アクチビン - リラキシン(妊娠時)
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その他の内分泌器 |
膵臓
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グルカゴン - インスリン - ソマトスタチン
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松果体
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メラトニン
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内分泌器でない器官 |
胎盤:hCG - HPL - エストロゲン - プロゲステロン - 腎臓:レニン - EPO - カルシトリオール - プロスタグランジン - 心臓:ANP - BNP - ET - 胃:ガストリン - グレリン - 十二指腸:CCK - GIP - セクレチン - モチリン - VIP - 回腸:エンテログルカゴン - 脂肪組織:レプチン - アディポネクチン - レジスチン - 胸腺:サイモシン - サイモポイエチン - サイムリン - STF - THF - 肝臓:IGFs(IGF-1 - IGF-2) - 耳下腺:バロチン - 末梢神経系:CGRP - P物質
|
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誘導タンパク質 |
NGF - BDNF - NT-3
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- SF-118-5 頚部手術におけるNIM(神経刺激モニター)の有用性(SF-118 サージカルフォーラム(118)甲状腺・上皮小体,第112回日本外科学会定期学術集会)
- SF-118-4 原発性副甲状腺機能亢進症に対する副甲状腺摘出術が腎機能に及ぼす影響についての検討(SF-118 サージカルフォーラム(118)甲状腺・上皮小体,第112回日本外科学会定期学術集会)
- 山本 貴之,冨永 芳博,岡田 学,松田 佳子,平光 高久,南木 浩二,打田 和治
- 日本外科学会雑誌 113(臨時増刊号_2), 446, 2012-03-05
- NAID 110009548533
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- parathyroid hormone, PTH
- 同
- 上皮小体ホルモン, パラソルモン parathormone
- 関
- 上皮小体、カルシトニン
- 副甲状腺、甲状腺
- カルシウム
- 「血中カルシウムイオンの低下」により分泌され、「血中カルシウムイオン濃度を上げる」ホルモン
分類
性状
産生組織
標的組織
作用
2007年度後期生理学授業プリント
-
- リン酸の再吸収↓ ← ビタミンDはリン酸の再吸収↑
- HCO3-排出↑ → 原発性副甲状腺機能亢進症では代謝性アシドーシスを起こす
- 活性ビタミンD3産生↑ (副甲状腺に対してネガティブフィードバックをかける)
-
- カルシウム再吸収↑
- 活性ビタミンD3存在下で、腸管からのカルシウム取り込み↑
YN.D46
- 1. 遠位尿細管でのCa2+再吸収↑→血中Ca↑
- 2. 近位尿細管でのP再吸収↓→血中P↓
- 3. 近位尿細管でのHCO3-再吸収↓→排泄↑→高Cl性代謝性アシドーシス
- 4. 近位尿細管で1α水酸化酵素活性化→1,25-(OH)2-D産生↑→腸管でのCaとPの吸収↑
- 5. 骨芽細胞に作用は破骨細胞の形成・機能↑→Ca2+遊離→血中Ca2+, P, H+↑
骨の形成と吸収 YN.D46
分泌の調節 (2007年度後期生理学授業プリント)
- 血中カルシウムイオン濃度↓→PTH分泌↑
- 血中カルシウムイオン濃度↑→PTH分泌↓
分泌調節のポイント:カルシトニン ←Ca2+ + protein binding Ca 。 副甲状腺ホルモン ←Ca2+
分子機構
臨床関連
臨床関連
[★]
- 英
- thyroid gland
- ラ
- glandula thyroidea
- 関
- 甲状腺ホルモン、副甲状腺(上皮小体)
- 喉頭
- 図:N.24(全面の筋),25(全面の筋),70(血管),71(血管)
解剖学
部位
性状
- 成人の正常重量15-25g、女性の方が少し重い。妊娠中や性周期で重量が変化する。分泌期初期(early secretary phase排卵後2-5日目)には50%も重量が増加する。
大きさ
- よくわかる甲状腺疾患のすべて 永井書店 (2004/01) ISBN 481591673X
- 単位はmm?
|
n
|
峡部
|
横断厚
|
横径
|
縦経(右)
|
縦経(左)
|
男性
|
34
|
1.8±0.6
|
18±3.0
|
48±4.8
|
49±3.7
|
49±3.8
|
女性
|
16
|
1.3±0.8
|
16±2.2
|
46±3.6
|
45±6.0
|
46±3.0
|
血管
動脈
静脈
神経
- 声帯を支配する神経が甲状腺の裏側を通過 N.71
画像
- (高エコー)筋肉>甲状腺>気道(低エコー) ← 要確認
組織学
- 成人甲状腺全体の0.1%を占める
- カルシトニン産生細胞、HEでは判別困難。
- 銀染色(Glimerius)、免疫組織化学(chromogranin A、synaprophysin, carcitoninなど)により明らかとなる。
- 電顕では、electron dense な顆粒を有する(神経内分泌顆粒)。
機能
発生
神経支配
- 上頚部交感神経節、中頚部交感神経節。交感神経神経線維は濾胞近傍に終末し、分泌に影響を及ぼす。
臨床関連
診察所見と疾患
非腫瘍性疾患
- a) 無形成 Agenesis
- b) 低形成 Hypoplasia
- c) 異所性甲状腺:異残物
- mynocyclineによるblack thyroid:消耗性色素リポフスチンと他の物質(lipid-drug complexによりlysosomeに色素が沈着する)。
- a) 濾胞腺腫 follicular adenoma
- a) 乳頭癌 papillary carcinoma 88%
- b) 濾胞癌 follicular carcinoma 4.2% 甲状腺濾胞癌 thyroid follicular carcinoma
- c) 低分化癌 poorly differentiated carcinoma
- d) 未分化癌 undifferentiated carcinoma 1.5%
- e) 髄様癌(C細胞癌) medullary carcinoma, C-cell carcinoma 1.4%
- f) 悪性リンパ腫 malignant lymphoma 3.5%
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
分類
[★]
- 英
- primary hyperparathyroidism, PHPT
- 同
- 原発性上皮小体機能亢進症
- 関
- 上皮小体、副甲状腺機能亢進症。副甲状腺
概念
- 副甲状腺に腺腫、過形成あるいは癌などが生じて副甲状腺ホルモン(PTH)の産生亢進を来し、PTH高値、高カルシウム血症、低リン血症を来し、消化器症状や骨病変を呈する疾患である。
- 下部副甲状腺に発生する例が最も多く、縦隔内発生例もある。
疫学
- 2500-5000人に1人、1:2で女性に多い、好発年齢は50歳代
病因
- 副甲状腺における腺腫(80-90%)、過形成(10%前後)、癌(1%)の産生が関連している。
- 過形成は多発性内分泌腫瘍(MEN)の部分症の可能性がある。
- MEN1型の約90%に本症がみられ、これが初発である場合が多い.
- MEN2型での合併は少ない。
病型
症状
- 全身:倦怠感、胃疲労感
- 精神:錯乱、昏迷、うつ気分、精神症状、社会との関わりの低下、認知機能障害
- 消化器系:食欲不振、悪心、悪心、嘔吐、便秘、消化性潰瘍、膵炎
- 腎泌尿器:口渇、多飲、多尿、夜間尿
- 筋肉:易疲労感、脱力、近位筋筋力低下、偽痛風、
- 尿路結石:(反復性、両側性)尿路結石
- 骨 :嚢胞性線維性骨炎 手指骨の骨膜下吸収像、長管骨の骨嚢腫、頭蓋骨のスリガラス様骨萎縮像(頭蓋骨の顆粒状脱灰 salt and pepper appearance)
検査
治療
- 単一の腺腫:腫大腺を摘出
- 過形成:4腺を全摘し1/2腺を自家移植。MEN2型で褐色細胞腫を伴う場合は必ずその摘除術を優先する。
- 癌腫:拡大頚部手術による周囲組織を含めた広範囲の摘除
[★]
- 英
- hypoparathyroidism
- 同
- 上皮小体機能低下症
- 関
- 上皮小体
病態
- →腎:(1)リン酸再吸収↑、(2)カルシウム再吸収↓、(3)HCO3-排泄↓、(4)活性ビタミンD3↓ →
- →骨:破骨細胞機能低下 → (1)カルシウム放出↓、(2)リン酸放出↓ →
- → 低カルシウム血症
症状
- 中枢神経:不穏、易興奮性、うつ状態、知能発育遅延
- 骨格筋:テタニー、強直性痙攣
身体所見
- IMD
検査
- 血清カリウム低値、血清リン高値、尿中カルシウム低下、尿中リン低下
- intact PTH:特発性副甲状腺機能低下症では、偽性副甲状腺機能低下症では高値。
- 血清マグネシウム:正常 ← マグネシウム欠乏によりPTH分泌障害と作用不全を呈する(YN.D-50)
[★]
- 英
- tetany (M)
- 同
- 強縮性収縮 tetanic contraction
- 関
- [[]]
概念
- 上皮小体を除くとカルシウム濃度の低下により、激しい痙攣に襲われる
- 全身の筋痙攣は血液中のカルシウム濃度低下により起こる
原因
- 低カルシウム血症:カルシウムイオンは細胞の興奮性を低下する安定化作用がある(PT.440)
- アルカローシス:アルカローシスからテタニーに至りやすい。pH↑ → アルブミンnegative charge↑ → アルブミン-Ca2+ ↑ → free Ca2+ ↓ ≒ 低カルシウム血症 (SP.774)
- 低マグネシウム血症
<youtube v=uukz0WWZUQQ></youtube>
[★]
- 英
- blood parathyroid hormone
- 関
- 血中副甲状腺ホルモン
[★]
- 英
- serum parathyroid hormone
- 関
- 血清副甲状腺ホルモン
[★]
- 英
- parathyroid disorder
- 関
- 副甲状腺障害
[★]
偽性偽性副甲状腺機能低下症
[★]
- 英
- epithelium, (pl.)epithelia
- 関
- 上皮組織、消化器系#上皮の移行、呼吸器の上皮の移行
上皮の分類
[★]
- 英
- body
- ラ
- corpus、corpora
- 関
- 肉体、身体、本体、コーパス、ボディー