副甲状腺ホルモン
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パラトルモン(parathormone)とは副甲状腺(上皮小体)から分泌される84アミノ酸から構成されるポリペプチドホルモンである。 副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone, PTH)、上皮小体ホルモンとも呼ばれる。パラトルモンは、血液のカルシウムの濃度を増加させるように働き、逆に甲状腺から分泌されるカルシトニンはカルシウムを減少させるように働く。パラトルモンは、血中のカルシウム濃度を増加させるが、パラトルモン受容体(PTH受容体)は骨、腸、腎臓の3箇所の臓器に発現が見られる[1]。
目次
- 1 機能
- 1.1 血中カルシウム濃度の上昇
- 1.2 血清リン濃度の制御
- 2 フィードバック機構
- 3 疾患
- 4 副甲状腺ホルモン関連ペプチド
- 5 骨粗鬆症治療への応用
- 6 脚注
機能
血中カルシウム濃度の上昇
器官 |
効果 |
骨 |
カルシウムの放出を増大させる骨は大きなカルシウムの貯蔵器官である[2]。 骨の代謝は主に破骨細胞による古い骨基質の吸収反応と骨芽細胞による新しい骨基質の形成反応からなる。また骨吸収と骨形成は互いに共役しており、骨芽細胞は骨形成を行う一方、破骨細胞分化因子(RANKL;RANKリガンド)の発現等によって破骨細胞分化の支持細胞としても働く。PTHは破骨細胞を間接的に刺激して骨吸収を促進するが、破骨細胞にはPTH受容体がなく、PTHの直接的な標的細胞はむしろ骨形成を行う骨芽細胞である。PTHは骨芽細胞の細胞膜上に発現するPTH受容体と結合し、骨芽細胞を刺激してRANKLを発現させる。破骨細胞前駆細胞は破骨細胞分化因子受容体(RANK;RANKLに対する受容体)を発現しており、RANKLの刺激を受けて分化・細胞融合し、多核の破骨細胞を形成する。その結果、PTHにより破骨細胞形成が促進され、骨吸収が促進される。 |
腎臓 |
遠位尿細管[3]とヘンレ係蹄上行脚でカルシウムおよびマグネシウムの再吸収を亢進する。一方、無機リン酸(以下、リン)に関してはPTHの骨吸収促進作用によってカルシウムとともに骨より放出されるが、腎臓では近位尿細管におけるリンの再吸収を抑制して排泄させるため、結果的にリンの血中濃度は低下する。 |
腸 |
ビタミンDの生成促進、25-ヒドロキシビタミンD3の1-αヒドロキシル化酵素の発現誘導により、腎臓における1,25-ジヒドロキシビタミンD(活性型ビタミンD)への変換を促進することで、小腸においてカルビンジン(ビタミンD依存性カルシウム結合タンパク質)によるカルシウムイオンを吸収させ、結果的に腸のカルシウムの吸収を促進させる。 |
血清リン濃度の制御
パラトルモンは腎臓の尿細管でリンの吸収を抑制する[3]。これはより多くのリンが尿から排出されることを意味する。またパラトルモンは腸管および骨より血中へのリンの取り込み・放出を亢進する。骨では骨吸収によってリンはカルシウムとともに放出されるが、比率としてはややカルシウムの方が多い。腸管では、活性型ビタミンD3の増加により、リンおよびカルシウムはそれぞれ異なる機構によって吸収が亢進する。
フィードバック機構
血液中のカルシウム濃度が増加すると、副甲状腺の細胞上にカルシウム受容体が反応し、パラトルモンの分泌が抑制される[4]。
疾患
- 副甲状腺機能亢進症 - パラトルモンの過剰によって起こる。
- 原因が副甲状腺腺にあるなら、原発性副甲状腺機能亢進症と呼ばれる。原因は、副甲状腺腺腫または副甲状腺過形成そして、副甲状腺癌である。
- 副甲状腺が原因でない場合、二次性副甲状腺機能亢進症と呼ばれる。これは慢性腎不全で起こることが知られている。
- 副甲状腺機能低下症 - パラトルモンの欠乏によって起こる。
副甲状腺ホルモン関連ペプチド
パラトルモンに類似した物質に副甲状腺ホルモン関連ペプチド(Parathyroid hormone-related peptide, PTHrP)がある。これは141個のアミノ酸からなる蛋白質であるが、アミノ末端の13残基中6個がパラトルモンと同一であるために生物作用がパラトルモンときわめて類似する。生体内にもある程度は存在するが、悪性腫瘍によって大量に産生されると副甲状腺機能亢進症と類似した症状をきたす。悪性腫瘍による高カルシウム血症の80%以上がPTHrPが原因となる。
骨粗鬆症治療への応用
PTH(全長84aa)のN末34アミノ酸(1-34)は、骨粗鬆症治療薬テリパラチド(teriparatide)として臨床応用されている。上記のとおりPTHには骨吸収促進作用があり、副甲状腺機能亢進症で見られるように持続的なPTH投与は骨密度を低下させるが、間欠的投与では逆に骨形成を促進し、骨折リスクを低下させる。ビスホスホネート等、以前の骨粗鬆症治療薬は破骨細胞による骨吸収の抑制を主たる薬理作用とするものがほとんどであるが、本剤は骨芽細胞に作用して骨形成を促進するという特徴的な薬理作用をもつ。1日1回、または週1回、静注または皮下注で使用される。
脚注
- ^ Physiology at MCG 5/5ch6/s5ch6_11
- ^ Poole K, Reeve J (2005). "Parathyroid hormone - a bone anabolic and catabolic agent.". Curr Opin Pharmacol 5 (6): 612-7.PMID 16181808
- ^ a b http://sprojects.mmi.mcgill.ca/nephrology/presentation/presentation5.htm
- ^ Physiology at MCG 5/5ch6/s5ch6_9
内分泌器:ホルモン(ペプチドホルモン、ステロイドホルモン) |
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視床下部 - 脳下垂体 |
視床下部
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GnRH - TRH - ドーパミン - CRH - GHRH - ソマトスタチン - ORX - MCH - MRH - MIH
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脳下垂体後葉
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バソプレッシン - OXT
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脳下垂体中葉
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MSH(インテルメジン)
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脳下垂体前葉
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αサブユニット糖タンパク質ホルモン(FSH - LH - TSH) - GH - PRL - POMC(ACTH - エンドルフィン - リポトロピン)
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副腎 |
副腎髄質
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副腎髄質ホルモン(アドレナリン - ノルアドレナリン - ドーパミン)
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副腎皮質
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副腎皮質ホルモン(アルドステロン - コルチゾール - DHEA)
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甲状腺 |
甲状腺
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甲状腺ホルモン(T3 - T4 - カルシトニン)
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副甲状腺
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PTH
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生殖腺 |
精巣
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テストステロン - AMH - インヒビン
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卵巣
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エストラジオール - プロゲステロン - インヒビン/アクチビン - リラキシン(妊娠時)
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その他の内分泌器 |
膵臓
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グルカゴン - インスリン - ソマトスタチン
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松果体
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メラトニン
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内分泌器でない器官 |
胎盤:hCG - HPL - エストロゲン - プロゲステロン - 腎臓:レニン - EPO - カルシトリオール - プロスタグランジン - 心臓:ANP - BNP - ET - 胃:ガストリン - グレリン - 十二指腸:CCK - GIP - セクレチン - モチリン - VIP - 回腸:エンテログルカゴン - 脂肪組織:レプチン - アディポネクチン - レジスチン - 胸腺:サイモシン - サイモポイエチン - サイムリン - STF - THF - 肝臓:IGFs(IGF-1 - IGF-2) - 耳下腺:バロチン - 末梢神経系:CGRP - P物質
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誘導タンパク質 |
NGF - BDNF - NT-3
|
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Japanese Journal
- 分泌機構と解剖学的特徴 上皮小体(副甲状腺) (内分泌腺腫瘍--基礎・臨床研究のアップデート) -- (内分泌腺の解剖学と生理学)
- ラット胎仔下垂体除去後およびTSHならびにGH投与後の甲状腺C細胞の電顕的研究
- 江口 保暢,葺石 米孝,森川 嘉夫(
- 日本獸醫學雜誌 43(1), 27-36, 1981-02-25
- … 胎仔の甲状腺除去(上皮小体除去も含む)は, 低Ca血症をひきおこしたが, これはパラトルモン欠損のためであろう. …
- NAID 110003916861
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- 2011年9月1日 ... ホルモンは種類が多く覚えるのが大変だと思いますが、その働きが相対するものを一緒 に覚えると忘れにくいと思うので、ここで1つ紹介したいと思います。パラトルモン...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- examination、test、testing、assessment、trial、exam、examine
- 関
- アセスメント、計測、検査、検定、試み、査定、試行、調べる、診断、治験、調査、テスト、判定、評価、検討、影響評価、実験デザイン、研究デザイン、データ品質、対応群、スコアリング法
循環器
肝臓異物排泄能
カルシウム
ビタミン
血液
- ショ糖溶血試験:(方法)等張ショ糖液に血液を加える。(検査)溶血の存在。低イオン強度では補体の赤血球に対する結合性が増し、発作性夜間血色素尿症 PNHにおいては溶血をきたす。スクリーニング検査として用いられ、確定診断のためにはハム試験を行う。
- ハム試験 Ham試験:(方法)洗浄赤血球に塩酸を加え、弱酸性(pH6.5-7.0)条件にする。(検査)溶血の存在。発作性夜間血色素尿症 PNHにおいては弱酸性条件で補体に対する感受性が亢進するため
産婦人科
内分泌
視床下部-下垂体-糖質コルチコイド
高血圧
- 立位フロセミド負荷試験:(投与)フロセミド、(検査)血漿レニン濃度:フロセミドでhypovolemicとし歩行負荷で交感神経を興奮させレニンの分泌を促す。原発性アルドステロン症の場合、レニン高値のまま無反応。
膵臓
膵外分泌機能
腎臓
ガストリノーマ
感染症
[★]
- 英
- hypoparathyroidism
- 同
- 上皮小体機能低下症
- 関
- 上皮小体
病態
- →腎:(1)リン酸再吸収↑、(2)カルシウム再吸収↓、(3)HCO3-排泄↓、(4)活性ビタミンD3↓ →
- →骨:破骨細胞機能低下 → (1)カルシウム放出↓、(2)リン酸放出↓ →
- → 低カルシウム血症
症状
- 中枢神経:不穏、易興奮性、うつ状態、知能発育遅延
- 骨格筋:テタニー、強直性痙攣
身体所見
- IMD
検査
- 血清カリウム低値、血清リン高値、尿中カルシウム低下、尿中リン低下
- intact PTH:特発性副甲状腺機能低下症では、偽性副甲状腺機能低下症では高値。
- 血清マグネシウム:正常 ← マグネシウム欠乏によりPTH分泌障害と作用不全を呈する(YN.D-50)
[★]
- 英
- Torr
- 関
- 圧力
1 torr ≒ 1 mmHg
(1) 760 mmHg = 101325.0144354 Pa
(2)
1 torr = 1 atm(1気圧(標準大気圧)) / 760
1 atm = 101325 Pa = 760 torr
∴ (1)と(2)はわずかに異なる。