クレチン症
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甲状腺機能低下症 |
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
E03.9 |
ICD-9 |
244.9 |
DiseasesDB |
6558 |
eMedicine |
med/1145 |
MeSH |
D007037 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
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甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)は甲状腺ホルモンの分泌量(活性)が不十分となる疾患である。代謝内分泌疾患の一つ。先天性、あるいは幼少時発症のものは発達上の障害が大きな問題となるため特にクレチン症という。
目次
- 1 病態
- 2 分類
- 3 原因
- 4 統計
- 5 症状
- 6 検査
- 7 診断
- 8 治療
- 9 脚注
- 10 関連項目
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病態
甲状腺ホルモンは全身のエネルギー利用を促すホルモンである。エネルギー需要に応じて甲状腺から分泌されるが、本症ではこれが不足するので全身でエネルギーを利用できず、神経系、心臓、代謝など各器官の働きが低下する。
分類
甲状腺ホルモンの不足する状況としては、分泌調節の段階から次のように分類できる。
- 原発性 : 甲状腺自体の問題のため分泌ができない場合を原発性甲状腺機能低下症と言う。
- 二次性 : 甲状腺刺激ホルモン(以下TSH)が低下しているために甲状腺ホルモンを分泌できない場合を二次性甲状腺機能低下症と言う。
- 三次性 : 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(以下TRH)が低下しているためにTSH、甲状腺ホルモンとも分泌できない場合を三次性甲状腺ホルモン低下症と言う。
- さらに、ホルモン分泌量は十分でありながら、受容体の異常によって利用できていない状態(ホルモン不応性)もありうる。
次性を°、甲状腺ホルモンをT、上昇を↑、低下を↓、因果関係を(原因)→(結果)、と略記すると、以上の分類は以下のように略記できる。
- °: T↓
- °: TSH↓→T↓
- °: TRH↓→TSH↓→T↓
原因
自己免疫障害によって甲状腺が攻撃される橋本病では、甲状腺が慢性炎症を起こして機能が低下する。これは原発性に分類される。発展途上国では甲状腺ホルモンの材料であるヨウ素の摂取不足により甲状腺ホルモン自体を合成できないことも原因になる。このほか、手術により甲状腺を摘出したり、放射線療法により甲状腺機能を廃絶させた場合に医源性の甲状腺機能低下症となる。
統計
もっとも多いのが橋本病である。二次性、三次性のものは脳腫瘍が原因となることが多い。
症状
全身がエネルギーを利用できなくなるため、症状は非常に多彩である。 主な症状は無力感、皮膚の乾燥、発汗減少、便秘、体重増加などである。 全身の活動が低下して無力感を持ったり低体温になる。皮膚も活動が低下して、低体温とあわせて発汗が減少し乾燥する。代謝が低下して皮下に粘液状の物質が沈着して浮腫む。この浮腫みは粘液状物質でできているので粘液水腫と言う。この場合見られる浮腫みは、指で押しても全く圧根を残さない。この浮腫(ふしゅ)はnon-pitting edemaのひとつである。腸管も活動が低下して便秘になる。活力の低下により精神活動も緩慢となり、偽痴呆を呈することがある。心臓も活動が低下して徐脈になる。心臓への粘液状物質の沈着も見られ、不整脈の原因となる。
本症で問題となる症状は早老による動脈硬化などである。 また子供のクレチン症の場合は生育に必要な甲状腺ホルモンが欠如するので、発育障害や知的障害にいたる場合がある。
甲状腺機能低下症の症状としては、うつ症状、鼻閉、便秘/腸閉塞、多関節炎が非定型的で見逃されやすく、注意を要する。[1]
検査
本症は血液検査で血中の甲状腺ホルモンを測定することで診断できる。
診断
TSH、TRHの反応から二次性、三次性が鑑別できる。
治療
治療は甲状腺ホルモンの投与を行うが、軽度であれば経過観察のみとすることもある。レボチロキシンの投与は、現在は朝一回投与で多くは処方されているが、就寝前投与がより有効であるとの報告がある[2]。
- 潜在性甲状腺機能低下症であっても, TSH > 10 mU/Lであれば症状を伴わなくとも治療すべきという意見もある。また潜在性甲状腺機能低下症のうち33-55%の患者は、その後臨床的な甲状腺機能低下症に進行するといわれている。[3]
脚注
- ^ 岡田 定 編, 「最速!聖路加診断術」 pp 189-192
- ^ Arch Intern Med. 2010 Dec 13;170(22):1996-2003.Effects of Evening vs Morning Levothyroxine Intake: A Randomized Double-blind Crossover Trial. Bolk N. and others
- ^ 日本医事新報 2011; 4548: 35-38
関連項目
- 甲状腺機能亢進症
- 新生児マススクリーニング
- ガラクトース血症
- フェニルケトン尿症
- ホモシスチン尿症
- メープルシロップ尿症(楓糖尿症)
- 先天性副腎皮質過形成
- 内分泌器
- 内分泌学
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 内分泌学の発展--人とその業績(2)甲状腺腫とクレチン病--甲状腺機能との関係
- 佐々木 文章,高田 尚幸,大川 由美,高橋 弘昌,秦 温信,内野 純一,藤枝 憲二
- 日本小児外科学会雑誌 30(2), 273-278, 1994-04-20
- … .対象は当科で治療した15歳以下の甲状腺腫瘍患者のうち病理学的検査で良性と判定された19例で,男児3例,女児16例.年齢は6歳から15歳,平均12.5歳.病理組織診断は腺腫様甲状腺腫11例,濾胞腺腫8例.合併症としてクレチン病1例,甲状腺機能亢進症2例あり.手術術式は,核手術6例,葉切10例,全摘1例,不明2例.全摘が行われた例は,甲状腺全体の腺腫様甲状腺腫例であった.再発は1例にみられた.多発腺腫と診断され,葉切が行われたが6年 …
- NAID 110002105134
- 実験的甲状腺機能低下症(クレチン病)の小脳の微細構造学的変化
Related Links
- 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)。先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)とはどんな病気か 生まれつき甲状腺のはたらきが弱い病気で、重症から軽症まで症状の出方はさまざまです。発生頻度は出生児3000〜5000人に ...
- クレチン症①主な原因と症状 - 甲状腺機能低下症 先天的に起こる甲状腺機能低下症 「クレチン症」という病気があります。誕生の前後に、甲状腺ホルモンの作用が十分でない場合に、発症することがあるものです。母親が甲状腺機能 ...
- クレチン‐びょう〔‐ビヤウ〕【クレチン病】 《〈ドイツ〉 Kretinismus 》生まれつき甲状腺がないか、甲状腺ホルモンをつくる機能が弱い病気。身体的・精神的発達は著しく不良で、特殊な顔つきと手足の短い異常体形を呈する。
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★リンクテーブル★
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[★]
- 英
- hypothyroidism
- 同
- 甲状腺機能不全症
- 関
- 粘液水腫、甲状腺ホルモン、甲状腺
- 甲状腺機能亢進症
概念
- 甲状腺ホルモンの合成、分泌が低下し、血液中の甲状腺ホルモンが不足している状態である。
病因
病態
- 参考1
- → 代謝の低下
- → 多くの組織の組織間隙にグリコサミノグリカンが蓄積
症候
- 全身:全身倦怠感、易疲労感、体重増加、低体温、嗄声、
貧血(EPO↓)、滲出液貯留(心膜液貯留(約30%の症例で見られる)、胸水貯留 ←血管透過性の亢進による)
- 消化器:絶肥大、便秘、食欲低下
- 循環器:粘液水腫心、心拍出量の低下?
- 骨格筋:こむらがえり、アキレス腱反射の子癇層の遅延(Lamberts徴候)、筋力低下(骨格筋ミオパチー)、筋肥大(Hoffmann症候群)、筋痛
- 皮膚 :四肢・顔面の粘液水腫、発汗減少、皮膚乾燥、頭皮脱毛、眉毛外1/3の脱毛、皮膚の黄染
- 神経 :末梢神経と中枢神経のいずれも影響が生じる。 (参考1)
- 橋本脳症:疾患概念についてはcontroversial
- 粘液水腫性昏睡(ICU.762)(低体温、浮腫性皮膚、意識レベル低下)
- 手根管症候群:よく見られる合併症。ホルモン療法により軽快。 ← 組織間質にグリコサミノグリカンが蓄積して手根管を狭窄せしめるのか
- 精神 :記銘力低下、計算力低下、言語緩慢、活動性低下
- 生殖系:月経不順(月経過多、無月経)。不妊、流産。 ← 初期に月経過多、後期に無月経を起こす(出典不明)。
- その他:乳汁分泌(三次性以外。TRH↑)、難聴、貧血。 ← 甲状腺ホルモンがエリスロポエチンの分泌を亢進させるので
生殖系の異常
月経前の婦人集団
|
集団サイズ(人)
|
患者全体に占める割合(%)
|
月経周期正常
|
無月経・希発月経
|
過多月経
|
甲状腺機能低下症
|
171
|
77
|
16
|
7
|
健常者
|
214
|
92
|
7
|
1
|
検査
胸部単純X線写真
心電図
血液検査
- AST,LDH,CKなど筋酵素が増加
- (1)心拍出量の低下 → 頚動脈圧受容器 → ADH分泌 (時に尿Na濃度が低下せず、SIADHの基準を満たす例がある)
- (2)GFR低下((1)の影響?) → ヘンレループの上行脚(diluting segment)に至る尿量減少 → 排泄できる自由水減少
診断基準
- a)かつb)を満たすもの
- 無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、寒がり、体重増加、動作緩慢、嗜眠、記憶力低下、便秘、嗄声等いずれかの症状
治療
参考
- 1. [charged] 甲状腺機能低下症の臨床症状 - uptodate [1]
- 2. [charged] 甲状腺機能低下症における低ナトリウム血症 - uptodate [2]
- 3. [charged] 甲状腺機能低下症の治療 - uptodate [3]
- 4. [charged] 甲状腺機能低下性ミオパチー - uptodate [4]
- 5. 甲状腺機能低下症 - 甲状腺疾患診断ガイドライン
- http://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html#teika
[★]
- 英
- cretinism
- 同
- 新生児甲状腺機能低下症 hypothyroidism of the newborn neonatal hyperthyroidism, hypothyroidism of the newborn
- 先天性甲状腺機能低下症 congenital hypothyroidism
- クレチン病
- 関
- 甲状腺機能低下症、新生児マススクリーニング。成長#ホルモン(乳児期の成長にはインスリンと甲状腺ホルモンが必要)
概念
- 新生児マススクリーニングで見いだされる最も頻度の高い疾患であり、知能障害、発育障害、クレチン顔貌(鞍鼻など)、徐脈が特徴的である。
疫学
病因
- 甲状腺特異的な転写因子、tyroid transcription factor 1(TTF1), TTF2, PAX8
- YN.D-37
症候
身体所見
検査
治療
参考
uptodate
- 1. [charged] 先天性甲状腺機能低下症の臨床的特徴および検出 - uptodate [5]
- 2. [charged] 先天性甲状腺機能低下症の治療および予後 - uptodate [6]
国試
[★]
- 英
- primary hypothyroidism
- 関
- 甲状腺機能低下症
概念
- 甲状腺自体(組織の異常や障害)が原因となって生じる甲状腺機能低下症。
- TSH高値、fT4低値、fT3低値
病因
血液検査
- AST,LDH,CKなど筋酵素が増加
治療
[★]
- 英
- disease、sickness
- 関
- 疾病、不調、病害、病気、疾患