出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/12/29 23:21:55」(JST)
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胆嚢炎 | |
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分類及び外部参照情報 | |
胆嚢炎を患った胆嚢の顕微鏡写真
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ICD-10 | K81 |
ICD-9 | 575.0, 575.1 |
DiseasesDB | 2520 |
eMedicine | med/346 |
MeSH | D002764 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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胆嚢炎(たんのうえん)は、胆石症や細菌感染などが原因で起こる胆嚢の炎症である。急性胆嚢炎、慢性胆嚢炎、無石胆嚢炎、気腫性胆嚢炎と様々な胆嚢炎がある。胆嚢腺筋症を発症した場合は胆嚢癌との区別がつきにくいため手術で胆嚢を摘出することが多い。
急性胆嚢炎の初期症状は、右上腹部の痛みや吸気時の腹痛(Murphy徴候)、右肩甲骨付近や右側腹部の痛みが続くことや、吐き気や嘔吐、発熱などである。高齢者は熱を出さないこともある。持続した炎症が続くと、右腹腔内での癒着が出現することがある。自然治癒することもある。だが、これ以上症状が続く場合は合併症を引き起こした可能性が高い。白血球上昇、胆嚢壊疽、胆嚢穿孔、黄疸、膵炎、イレウス症などの合併症がある。無石胆嚢炎は大腸菌による細菌感染や動脈閉塞、腫瘍などが原因で起こる。症状は腹部の痛みや胆嚢穿孔、胆嚢破裂、壊疽がある。
急性胆嚢炎は約9割が胆石による物である。胆石が胆管に蓄積し、閉塞することによって炎症を起こす。胆石保持者の発症が多い。ほかは膵酵素の逆流などがある。
無石胆嚢炎の場合は細菌感染が主な原因であるが、長年の静脈の栄養補給によって発症することもある。
タバコとの関連性も指摘されている。
科学的根拠に基づいた急性胆管炎、胆嚢炎の診療ガイドラインに基づくと急性胆嚢炎の診断は
AのいずれかならびにBのいずれかを認めるものが疑診であり、疑診に加えCを確認した場合は確診となる。ただし急性肝炎やほかの急性腹症、慢性胆嚢炎は除外できるものとする。急性胆嚢炎の特徴的画像検査所見は以下のようにまとめられている。
sonographic Marphy sign(超音波プローブによる胆嚢圧迫による疼痛)、胆嚢壁肥厚(>4mm)、胆嚢腫大(長軸径>8cm、短軸径>4cm)、頓挫した胆嚢結石、デブリエコー、胆嚢周囲液体貯溜、胆嚢壁sonolucent layer、不整な多層構造を呈する低エコー帯、ドプラシグナル
胆嚢壁肥厚、胆嚢周囲液体貯溜、胆嚢腫大、胆嚢周囲脂肪識内の線状高吸収域
胆嚢結石、pericholecystic high signal、胆嚢腫大、胆嚢壁肥厚
などが知られている。診断した場合は重症度判定基準にあてはめる。
黄疸、重篤な局所合併症(胆汁性腹膜炎、胆嚢周囲膿瘍、肝膿瘍)、胆嚢捻転症、気腫性胆嚢炎、壊疽性胆嚢炎、化膿性胆嚢炎のうちいずれかを認めるものは重症急性胆嚢炎である。黄疸例や全身状態が不良な症例では一時的な胆嚢ドレナージを考慮する。また重篤な局所合併症や胆嚢捻転症、気腫性胆嚢炎、壊疽性胆嚢炎、化膿性胆嚢炎が認められる場合は全身状態の管理を十分におこないつつ緊急胆嚢摘出術を行う。緊急手術、胆道ドレナージおよび重症患者の管理ができない施設では対応可能な施設に速やかに搬送するべきである。
高度の炎症反応(白血球>14000/mm3またはCRP>10mg/dl)、胆嚢周囲液体貯溜、胆嚢壁の高度炎症性変化(胆嚢壁不整像、高度の胆嚢壁肥厚)のいずれかが認められた場合は中等症急性胆嚢炎である。中等症では初期治療とともに迅速に胆嚢摘出術(腹腔鏡下胆嚢摘出術が望ましい)や胆嚢ドレナージの適応を検討する。初期治療を行い、治療に反応しない場合、手術および胆道ドレナージができない施設では対応可能な施設に速やかに搬送するべきである。
中等症、重症の基準を満たさない急性胆嚢炎を軽症急性胆嚢炎とする。軽症でも初期治療に反応しない例では胆嚢摘出術(腹腔鏡下胆嚢摘出術が望ましい)や胆嚢ドレナージの適応を検討する。
急性胆嚢炎と鑑別を要する疾患としては、右上腹部の炎症性疾患である胃十二指腸潰瘍、結腸憩室炎、急性膵炎などがあげられる。消化器疾患以外では心疾患やFitz-Hugh-Curtis症候群、胆嚢癌の合併などが考えられる。
胆嚢炎を起こした場合は血液検査、画像診断が行われる。白血球数、CRPの上昇によって炎症であることがわかる。超音波検査、CTでは胆石の発見、胆嚢壁の肥厚によって炎症を起こしていることが診断される。
急性胆嚢炎では原則として胆嚢摘出術(腹腔鏡下胆嚢摘出術が望ましい)を前提とした初期治療による全身状態の改善を行う。48時間以内に手術を行ったほうが待機手術よりも良好であることが報告されている。[1]初期治療では絶飲食のうえ、電解質と水分を体に点滴し、抗生物質を投与する。黄疸例や全身状態が不良な例では一時的な胆嚢ドレナージも考慮される。急性期に胆嚢摘出術を行わなかった症例でも胆嚢結石合併例では再発防止のため炎症消退後に胆嚢摘出術を行うことが望ましい。急性胆嚢炎と診断された後に急性増悪した場合は胆嚢捻転症、気腫性胆嚢炎、急性胆管炎の合併、壊疽性胆嚢炎、胆嚢穿孔などが考えられる。用いられる抗菌薬は同じ胆道感染症である胆管炎とほぼ同様であり、代表的なempric therapyを示すが2005年度ガイドラインでも十分に言及されていない。
物質名 | 投与方法 |
---|---|
セフメタゾール | 2gを6~8時間ごと |
アンピシリン/スルバクタム | 3gを6時間ごと |
ピペラシリン/タゾバクタム | 4.5gを6~8時間ごと |
またESBL産出菌やAmpC過剰産出菌のカバーが必要な場合は
物質名 | 投与方法 |
---|---|
メロペネム | 1gを8時間ごと |
イミペネム/シラスタチン | 1gを6~8時間ごと |
現在は、腹部に5mmから10mmの小さな穴を3箇所から4箇所開けて、腹腔鏡で患者の体内を確認しながら行う腹腔鏡下胆嚢摘出術が主流である。開腹手術と比較して日常生活への復帰が早く、患者への負担も少ないのが利点である。胆嚢炎の進行具合やその他の病状によっては、腹腔鏡での手術が行えない状況もある。事前の検査で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施せると診断されても手術を開始して初めて判明する病状があるため、5%の確率で手術中に開腹手術へ変更する可能性がある。
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E
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A
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CD
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B
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B
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B
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A
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中枢性刺激 | 化学受容器引金帯刺激 | 薬物 | アポモルヒネ、モルヒネ、ジギタリス、抗菌薬、抗癌薬、降圧薬、アミノフイリン、コルヒチン、アルコール |
毒物 | 重金属、ガス | ||
放射線 | 各種癌治療後 | ||
感染症 | 細菌毒素 | ||
内分泌疾患 | 肝性脳症、糖尿病性ケトアシドーシス/高血糖高浸透圧症候群、尿毒症、妊娠悪阻、妊娠高血圧症候群 | ||
代謝疾患 | 甲状腺クリーゼ、副腎不全、Addison病 | ||
直接刺激 | 脳圧亢進 | 頭部外傷、脳腫瘍、脳出血、くも膜下出血、髄膜炎、脳への放射線療法後 | |
脳循環障害 | ショック、低酸素脳症、脳梗塞、片頭痛、脳炎、髄膜炎 | ||
上位中枢刺激 | 神経性食思不振症、不快感、てんかん、ヒステリー、抑うつ状態、うつ病、過度の嫌悪感、不快感、拘禁反応による恐怖、ストレス、視覚・嗅覚・味覚的刺激 | ||
末梢性刺激 | 消化管疾患 | 舌咽頭疾患 | アデノイド、咽頭炎 |
食道疾患 | 胃食道逆流症、食道裂孔ヘルニア、食道癌 | ||
胃腸疾患 | 急性胃炎、急性胃十二指腸粘膜病変、急性腸炎、急性虫垂炎、消化性潰瘍、食中毒、消化管腫瘍、寄生虫、食中毒、Mallory-Weiss症候群 | ||
消化管通過障害 | 腸閉塞、胃幽門部狭窄、輸入脚症候群 | ||
腹膜疾患 | 腹膜炎 | ||
胆膵疾患 | 急性胆嚢炎、急性胆管炎、急性膵炎、膵癌、胆管癌 | ||
肝疾患 | 急性肝炎 | ||
循環器疾患 | うっ血性心不全、狭心症、急性心筋梗塞 | ||
泌尿器科疾患 | 尿路結石、腎結石、急性腎炎、腎盂腎炎、腎不全 | ||
耳鼻咽喉科疾患 | 中耳炎、Meniere病、乗り物酔い | ||
眼科疾患 | 緑内障 | ||
呼吸器科疾患 | 肺結核、胸膜炎、肺癌、咳嗽発作 | ||
婦人科疾患 | 子宮付属器炎、月経前症候群、更年期障害 | ||
脊髄疾患 | 脊髄癆、多発性硬化症 | ||
膠原病 | 結節性多発動脈炎、強皮症、側頭動脈炎 |
新生児 | 乳児 | 幼児~学童 | |
消化器疾患以外で見・落とさないよう注意する疾患 | 敗血症・髄膜炎・水頭症・脳奇形・尿路感染症 | 髄膜炎・脳炎・脳症・虐待児・尿路感染症・呼吸器感染症・心疾患・薬物中毒・誤嚥 | 脳炎・脳症・脳腫瘍・肺炎・中耳炎・頭部外傷・薬物中毒・心筋炎・不整脈 |
よくある消化器疾患 | 溢乳・空気嚥下・哺乳過誤・初期嘔吐・胃食道逆流現象・胃腸軸捻転・腸管感染症・壊死性腸炎 | 食事過誤・空気嚥下・便秘・腸管感染症・幽門狭窄症・腸重積症・胃食道逆流現象・胃長軸捻転・食事アレルギー | 腸管感染症・急性虫垂炎・肝・腹部外傷・肝炎・胆嚢炎・膵炎・腹部外傷・食事アレルギー・好酸球性胃腸症 |
主な代謝性疾患 | 先天性副腎過形成・ガラク卜ース血症 | 先天性副腎過形成・Reye症候群 | アセトン血性嘔吐症・ケトン性低血糖症・糖尿病性ケトアシドーシス・Reye症候群 |
その他 | 起立性調節障害・神経性食思不振症 | ||
外科的疾患 | 食道閉鎖・狭窄症・胃軸捻転・十二指腸閉鎖・狭窄症・腸回転異常・捻転・小腸閉鎖症・Hirschsprung病・胎便性イレウス・稀に腸重積・肥厚性幽門狭窄・特発性腸管偽性閉鎖症 | 肥厚性幽門狭窄症・腸重積・腸回転異常・捻転・Hirschsprung病・虫垂炎 | 虫垂炎・腸重積・腸回転異常・捻転・上腸間膜動脈症候群・腫瘍・嚢胞 |
心窩部 | 食道潰瘍 | 胸焼け、嚥下困難 |
急性胃炎 | 悪心、嘔吐を伴う | |
消化性潰瘍 | 空腹時悪化傾向 | |
胃癌 | 進行しないと痛まず | |
虫垂炎初期 | 回盲部に圧痛 | |
急性膵炎 | 激烈な腹痛、背部痛、膵酵素の上昇 | |
慢性膵炎 | 不定の上腹部症状で神経症的にみえる | |
膵臓癌 | 浸潤すると疼痛強し | |
右季肋部 | 胆石症 | 右肩に放散、発作間は痛みほとんどなし |
急性胆嚢炎 | 発熱、圧痛著明、肝胆道系酵素上昇 | |
急性肝炎 | 肝腫大、鈍痛、黄疸-肝酵素著明に上昇 | |
肝膿瘍 | 激しい発熱、叩打痛は肋骨弓部付近など | |
肝癌 | 鈍痛、破裂すると激しい痛み | |
左右側腹部 | 尿管結石 | 肋骨脊椎角の叩打痛、血尿、超音波検査で水腎症 |
腎盂腎炎 | 急激な発熱と叩打痛、膿尿 | |
腎梗塞 | 時に一過性の激しい痛み、血尿 | |
回盲部 | 虫垂炎 | 他疾患除外の目的で、超音波検査が有用 |
右側結腸憩室炎 | 虫垂炎との鑑別困難 | |
回腸末端炎 | 虫垂炎との鑑別が必要 | |
クローン病 | 回盲部潰瘍をきたしやすい | |
大腸癌 | 右側結腸癌は腫癌を触知することが多い | |
左腸骨窩部 | 虚血性大腸炎 | 急激な腹痛と下血 |
S状結腸憩室炎 | 腹痛、圧痛、発熱 | |
急性大腸炎 | 下痢、嬬動の元進 | |
S状結腸軸捻転 | 便秘老人、鼓腸強い、内視鏡的修復 | |
下腹部 | 子宮付属器炎 | 発熱、圧痛 |
卵巣嚢腫茎捻転 | ショックに陥ることもあり、超音波検査が有用 | |
子宮外妊娠破裂 | 急激に貧血が進行、ショックなど | |
生理痛 | 内膜症がある場合は強い | |
全体 | 腹膜炎 | 原発性、結核性、癌性など症状が微妙に異なる |
潰瘍穿孔 | 腹壁防御、板状硬、緊急手術 | |
腸間膜血栓症 | 鼓腸、腸麻痺、ショック、最も重篤 |
-Murphy徴候
-Murphy sign
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
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