☆case7 悪心と体重減少 ■glossary trouser n. ズボン he has recently noticed his trousers getting tighter. adopt he has been a chef all his working life plethoric adj. 多過ぎる、過多の、大げさな。膨らんだ。多血症の/多血の pitting edema 圧痕性浮腫 swelling of his ankle spider naevi on his trunk クモ状血管腫(vascular spider, spider angioma, spider nevus) distend vt. 広げる。膨張させる。誇張する。 shifting dullness 体位変換現象 fluid thrill urinalysis 尿検査 disguise vt. 返送する、偽装する。偽る、(事実を)おおう、隠蔽する(意図・感情を)隠す effect vt. (変化などを)もたらす。(目的・計画など)果たす、遂げる。実施/施行する postural hypotension 起立性低血圧 fitful adj. 断続的な、発作的な、気まぐれな、変わりやすい macrocytosis 大赤血球症 blood smear, blood film 血液塗抹標本 provisional adj. 仮の、暫定的な、臨時の、緊急の ■症例 45歳、男性 主訴:6ヶ月前より食欲ゲンタイ、体重減少(78kgから71kg) 現病歴:直近の3ヶ月間特に朝に、間欠的に悪心を感じ、何度かは嘔吐した。一ヶ月前、踵の腫脹を認めた。体重減少に関わらず、腹囲が増えている。腹部痛なし。服用薬無し。タバコ1日5-6本、アルコール15-20 unit/week。 既往歴:特記無し 家族歴:知らない。 生活歴:ずっと料理人として働いている。妻は1年前に死亡。 ・身体診断 膨らんだ顔をしている(plethoric features)、踵に圧痕性浮腫。四肢はの重量は減っているが、体幹では増えているようにみえる。体幹上半部に9つのクモ状血管腫。脈:正常、92/min、頚静脈圧上昇せず。血圧:146/84 mmHg。心血管系 呼吸器系正常。腹部:腫脹、腫瘤触知せず、fluid thrillを認める ・検査 hemoglobin ↓ mean corpuscular volume ↑ white cell vount platelet sodium ↓ potassium urea ↓ creatinine calcium phosphate total protein ↓ albumin ↓ bilirubin ↑ alanine transaminase ↑↑ gamma-glutamyl transaminase ↑↑↑ alkaline phosphatase ↑ urinalysis: no protein, no blood ・1. 診断 ・肝不全: ・低蛋白血症→腹水、踵の浮腫 ・クモ状血管腫:3つまでは正常 ・本患者の病態形成にはアルコールが関与している。患者の職歴もリスク増大させている。 ・彼の朝の悪心・嘔吐は典型的であり、これはクッシング様容貌(アルコールはACTHの分泌を亢進させる)と大赤血球症(アルコールは葉酸を消費し、また骨髄への直接的な毒性を有する)の説明となる。 ・仮の診断を提示したところ、15-20units per weekではなく、20年間40-50 units per week摂取しており、昨年、妻が亡くなりこれが飲酒の理由となってさらに飲酒量が増加していた。 ・2. 検査結果の解釈 ・↓Na, ↓urea:慢性的な食塩・蛋白摂取の減少 ・↑bilirubin:黄疸を来すには至らない ・3. 確定診断・治療方針決定のための検査 ・肝炎ウイルスの血清学的検査:陰性 ・超音波検査:肝臓縮小、脾臓の大きさ2-3cm増大。肝細胞癌は否定的。 →これら所見は門脈亢進症を示す ・確定診断のために肝生検を施行:肝硬変 ・4. 管理 ・アルコール離脱の指導:現在の肝臓障害の程度、想定される門脈高血圧、および食道静脈瘤と食道出血のリスクの点から、断酒の必要性とalcohol addiction unitに参加して断酒することを理解してもらう ・食事療法:短期間、蛋白に富む食事に変更。 ・利尿剤:浮腫の治療。慢性のアルコール摂取による肝不全に続発する腹水の治療において、利尿剤の使用による循環血漿量の減少により、起立性低血圧を来すことがある。 ・5. 結末 ■KEY POINTS ・過剰のアルコール摂取している患者では、患者のhistoryにおいてこのことをしばしば隠すだろう ・alcoholic liver diseaseはアルコールの摂取をやめなければ予後は悪い □肝不全 病態(肝機能の低下)で定義される疾患概念。 ・病型と病因 1. 急性肝不全:劇症肝炎(急激に肝予備能が低下。ウイルス性、薬剤性など)など。 2, 慢性肝不全:非代償性肝硬変、末期肝癌など ・症候 1. 全身倦怠感および消化器症状(悪心、嘔吐など) 2. 肝性脳症 意識障害などの精神症状、羽ばたき振戦、肝性口臭など 肝の機能低下および門脈大循環の側副血行路のため、血中に蓄積した物質が脳代謝障害を起こすと考えられる。 血中アンモニア値上昇、フィッシャー比(血中分岐鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸比)の低下、脳波の徐波化と三相波出現がみられる。 3. 黄疸 ビリルビンの代謝障害(抱合や輸送)による血中ビリルビン値の上昇。 4. 腹水 1) 膠質浸透圧低下:↓肝でのアルブミン産生量 → ↓膠質浸透圧 → ↑組織外液 2) 門脈圧亢進 5. 出血性素因(凝固機能低下) 凝固因子産生量低下 □肝硬変 病理で定義される疾患概念:以下の1.2.を満たすもの 1. 肝細胞死が原因で、びまん性の結合組織増生が肝臓全域に見られる 2. 肝実質の結節性再生と小葉構造の改築が認められるもの □起立性低血圧 正常では起立時には圧受容体反射が作動し、交感神経活性が増加し、末梢血管抵抗の増大および心拍出量を増大させて血圧が維持される。 また起立に伴う下肢静脈圧の上昇は皮膚、筋、脂肪組織などへの動脈性血流を抑制し、有効循環血液量を維持することも血圧の維持につながる。 従って自律神経疾患、心疾患、筋疾患、血管障害、循環血液量の減少などの病態において起立性低血圧がみられる。 これらの循環調節系の異常を伴いやすい老年者でも、起立性低血圧を来しやすい。 また、薬剤が原因であることもある。antihypertensives, diuretics, vasodilators(nitrates, hydralazine), alpha-blocking agents, beta-blocking agents, CNS sedatives(barbiturates, opiates), tricyclic antidepressants, phonothiazines □血清ビリルビン(total bilirubin)(HIM.A-4) ・単位変換 1 μmol/L = 0.058 mg/dl ・total bilirubin 正常範囲: 5.1-22μmolL 0.3-1.3 mg/dl (HIM.A-4) 黄疸 :>34.5 μmol/l >2 mg/dl □体位変換現象 大量の腹水の存在を裏付ける身体所見。そのほかの所見として、臍窩の平坦化、波動など。 □臍窩の平坦化 カエル腹(IMD.114)のこと。漏出性腹水では腹壁の緊張を伴わないので、仰臥位では腹部は前方よりも側方に膨隆する。 アルコール性肝障害 IMD.882 pitting edema IMD.522 腹水 IMD.532
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