出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/09/12 15:46:14」(JST)
尿路感染症(にょうろかんせんしょう、urinary tract infection、UTI)とは、腎臓から尿管、膀胱を通って尿道口にいたる、尿路に病原体が生着して起こる感染症。
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目次
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尿は腎臓の糸球体でまず血液が濾過され、尿細管にて再吸収が行われ、集合管に集められる。集合管が合流して肉眼的に見えるようになった部分が腎杯であり、腎杯のさらに下流には、腎臓の中央に存在する腎盂があり、片側の腎臓で作られた尿のすべてがこの腎盂で合流する。腎盂は腎臓の外に出たところで尿管に移行し、左右の尿管が膀胱に流入する。膀胱の出口は内尿道口と呼ばれ、内尿道口を出ると尿道を経由し、体表に開いている部分が外尿道口である。以上の経路を、尿路と呼ぶ。男性の場合、精巣上体や前立腺も尿路に含む場合がある。
尿路感染症は、上記の尿路に細菌、ウイルス、真菌などが感染することによって起こる感染症である。
尿路感染症は、病原体と感染の部位により分類される。ここでは、感染部位からの分類について述べる。病原体については、「病原体」を参照のこと。
上部尿路感染症とは、膀胱よりも上流の尿路の感染症である。臨床的には、発熱を伴う尿路感染症が上部尿路感染症を疑わせる。
下部尿路感染症とは、膀胱以下の尿路の感染症である。発熱は通常伴わない。
細菌による尿路感染症が頻度が高く、重要である。年齢層によって起炎菌となる細菌は異なってくる。
ウイルス性の尿路感染症の中では、アデノウイルスによる出血性膀胱炎が重要である。
小児の感染症の中では、気道感染症についで頻度が高いが、特異的な症状が出にくいために見逃される危険がある。小児の尿路感染症は「かぜ症状」を伴わない発熱として認識されることが多く、抗菌薬の投与で解熱しやすいため、尿路感染症の診断がなされないまま治癒している例も相当数存在していると考えられる。
10歳以上の年齢では、女性は男性よりも数倍頻度が高い。これは、男性の尿道が女性よりも長く、狭窄部位があるために、細菌が上行しにくいためである。
このため、若年(50歳未満)の男性患者では、尿路感染症になりやすい何らかの原因があることが疑われる。尿路感染症を起こしやすい原因としては、包茎、不特定多数との性的接触、性交後に排尿をしない、HIV陽性などである。
また、一般的に夏場に感染することが多いことが知られている。
尿路感染症のうち、解剖学的あるいは機能的な尿路の異常(先天性・後天性は問わない)を伴うものを複雑型尿路感染症と呼ぶ。複雑型尿路感染症は単純型と比べ、反復しやすい、上部尿路感染症が多い、起炎菌が抗菌薬に耐性となりやすいといった特徴があり、治療・管理上の問題点となる。
尿路の異常の例として、以下のようなものがある。
起炎菌にあった抗菌薬の投与。多くの種類の抗菌薬が腎から尿中に排泄され、濃縮されているために、尿路感染症は抗菌薬投与によって改善しやすい疾患である。しかし、抗菌薬の投与期間が不足していると、簡単に再発する場合もある。抗菌薬の副作用や細菌の薬剤耐性化、菌交代現象を避けるため、抗菌薬の選択は感受性検査に基づいて最適なものを選ぶことが望ましい。
下部尿路感染症では、ほとんどの場合経口抗菌薬での治療が可能である。上部尿路感染症では、全身状態が悪い場合には静脈内投与を要する。乳幼児の上部尿路感染症では、原則として入院し、抗菌薬の静脈内投与を行う。
(2007年現在)日本では、淋菌はキノロン系抗菌薬に対して薬剤耐性を獲得していることが多いため、キノロン系抗菌薬(特にレボフロキサシン)は用いず、セフトリアキソン1g静脈投与が標準治療となっている。
起炎菌が同定されていない場合は、ST合剤(バクタ®など)やミノサイクリン(ミノマイシン®など)を用いることも多い(ST合剤は副作用が多く、レボフロキサシンを用いざるを得ないこともある)。
また、水分を十分に摂取し(できない場合は点滴して)、尿流を鬱滞させず、排尿を促すことも必要である。
複雑型尿路感染症の場合、再発予防のため、急性期を過ぎた後も少量の抗菌薬を予防内服することもある。
上部尿路感染症を反復している場合、腎に瘢痕を残すことによって腎機能の低下を招くことが懸念される。
上部尿路感染症は敗血症の原因として頻度が高く、ひとたび敗血症となると播種性血管内凝固症候群や多臓器不全に陥る危険性もあるため、高齢者や免疫不全患者の上部尿路感染症には特に注意しなければならない。結石性腎盂腎炎、いわゆる膿腎症では閉塞機転のため典型的症状を来たさないことがあり、注意を要する(膿尿はなく、水腎症を来たすなど)。
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年齢 | 原因 |
乳児(生後3ヶ月未満) | 敗血症、細菌性髄膜炎、尿路感染症、肺炎、B群溶連菌感染、グラム陰性桿菌 |
乳児(生後3ヶ月以降) | ウィルス感染(突発性発疹などの発疹性疾患)、中耳炎、尿路感染症、消化器・呼吸器疾患、川崎病 |
幼児、学童期 | 溶連菌感染症、伝染性単核球症、膠原病、factitious fever(詐病)、学校での感染症の流行 |
see also step beyond resident 2 救急で必ず出会う疾患編 p.20
実熱 | 虚熱 | |
発病 | 急速に発病 | 緩徐に発病 |
症状 | 悪寒、高熱 顔面紅潮 苦痛あり、四肢運動多 声大きく明瞭 口渇強い 便秘 色調濃い尿 |
軽度悪寒、熱覚 顔面蒼白 苦痛少なく、静かに臥床 声小さい 口渇少ない 軟便、下痢 薄い色調の尿 |
脈 | 早く大きく、緊張 | 小さく早く、緊張なし |
舌苔 | 厚くて乾燥、白~黄~褐色 | 薄くて白い、無苔、鏡面舌 |
その他 | 頭痛、関節痛、無汗~発汗 | 倦怠感、眩暈感、盗汗 |
実熱 | 麻黄湯 | 悪寒、発熱、頭痛、関節痛 |
葛根湯 | 悪寒、発熱、頭痛、肩背部のこり | |
小柴胡湯 | 午後からの発熱、食欲不振、口の苦み | |
柴胡桂枝湯 | 詳細孤島の症状、関節痛、腹痛 | |
大柴胡湯 | 胆嚢炎、便秘 | |
柴陥湯 | 詳細孤島の症状、咳嗽、胸痛 | |
黄芩湯 | 発熱、腹痛、下痢 | |
虚熱 | 桂枝湯 | 発熱、軽度の頭痛、発汗 |
桂麻各半湯 | 発熱、発疹 | |
参蘇飲 | 発熱、食欲不振、咳嗽、あつがる | |
柴胡桂枝乾姜湯 | 微熱、上半身の自汗、盗汗、食欲不振、背部の冷汗 | |
竹じょ温胆湯 | 発熱、咳嗽、不眠 | |
補中益気湯 | 微熱、倦怠感、食欲不振、盗汗 | |
滋陰降火湯 | 微熱、下半身の脱力感、盗汗、咳嗽 | |
滋陰至宝湯 | 微熱、倦怠感、食欲不振、精神不安定状態 | |
真武湯 | 陰病、微熱、食欲不振、倦怠感、いつも寝ている | |
麻黄細辛附子湯 | 陰病、微熱、寒がる |
中枢性刺激 | 化学受容器引金帯刺激 | 薬物 | アポモルヒネ、モルヒネ、ジギタリス、抗菌薬、抗癌薬、降圧薬、アミノフイリン、コルヒチン、アルコール |
毒物 | 重金属、ガス | ||
放射線 | 各種癌治療後 | ||
感染症 | 細菌毒素 | ||
内分泌疾患 | 肝性脳症、糖尿病性ケトアシドーシス/高血糖高浸透圧症候群、尿毒症、妊娠悪阻、妊娠高血圧症候群 | ||
代謝疾患 | 甲状腺クリーゼ、副腎不全、Addison病 | ||
直接刺激 | 脳圧亢進 | 頭部外傷、脳腫瘍、脳出血、くも膜下出血、髄膜炎、脳への放射線療法後 | |
脳循環障害 | ショック、低酸素脳症、脳梗塞、片頭痛、脳炎、髄膜炎 | ||
上位中枢刺激 | 神経性食思不振症、不快感、てんかん、ヒステリー、抑うつ状態、うつ病、過度の嫌悪感、不快感、拘禁反応による恐怖、ストレス、視覚・嗅覚・味覚的刺激 | ||
末梢性刺激 | 消化管疾患 | 舌咽頭疾患 | アデノイド、咽頭炎 |
食道疾患 | 胃食道逆流症、食道裂孔ヘルニア、食道癌 | ||
胃腸疾患 | 急性胃炎、急性胃十二指腸粘膜病変、急性腸炎、急性虫垂炎、消化性潰瘍、食中毒、消化管腫瘍、寄生虫、食中毒、Mallory-Weiss症候群 | ||
消化管通過障害 | 腸閉塞、胃幽門部狭窄、輸入脚症候群 | ||
腹膜疾患 | 腹膜炎 | ||
胆膵疾患 | 急性胆嚢炎、急性胆管炎、急性膵炎、膵癌、胆管癌 | ||
肝疾患 | 急性肝炎 | ||
循環器疾患 | うっ血性心不全、狭心症、急性心筋梗塞 | ||
泌尿器科疾患 | 尿路結石、腎結石、急性腎炎、腎盂腎炎、腎不全 | ||
耳鼻咽喉科疾患 | 中耳炎、Meniere病、乗り物酔い | ||
眼科疾患 | 緑内障 | ||
呼吸器科疾患 | 肺結核、胸膜炎、肺癌、咳嗽発作 | ||
婦人科疾患 | 子宮付属器炎、月経前症候群、更年期障害 | ||
脊髄疾患 | 脊髄癆、多発性硬化症 | ||
膠原病 | 結節性多発動脈炎、強皮症、側頭動脈炎 |
新生児 | 乳児 | 幼児~学童 | |
消化器疾患以外で見・落とさないよう注意する疾患 | 敗血症・髄膜炎・水頭症・脳奇形・尿路感染症 | 髄膜炎・脳炎・脳症・虐待児・尿路感染症・呼吸器感染症・心疾患・薬物中毒・誤嚥 | 脳炎・脳症・脳腫瘍・肺炎・中耳炎・頭部外傷・薬物中毒・心筋炎・不整脈 |
よくある消化器疾患 | 溢乳・空気嚥下・哺乳過誤・初期嘔吐・胃食道逆流現象・胃腸軸捻転・腸管感染症・壊死性腸炎 | 食事過誤・空気嚥下・便秘・腸管感染症・幽門狭窄症・腸重積症・胃食道逆流現象・胃長軸捻転・食事アレルギー | 腸管感染症・急性虫垂炎・肝・腹部外傷・肝炎・胆嚢炎・膵炎・腹部外傷・食事アレルギー・好酸球性胃腸症 |
主な代謝性疾患 | 先天性副腎過形成・ガラク卜ース血症 | 先天性副腎過形成・Reye症候群 | アセトン血性嘔吐症・ケトン性低血糖症・糖尿病性ケトアシドーシス・Reye症候群 |
その他 | 起立性調節障害・神経性食思不振症 | ||
外科的疾患 | 食道閉鎖・狭窄症・胃軸捻転・十二指腸閉鎖・狭窄症・腸回転異常・捻転・小腸閉鎖症・Hirschsprung病・胎便性イレウス・稀に腸重積・肥厚性幽門狭窄・特発性腸管偽性閉鎖症 | 肥厚性幽門狭窄症・腸重積・腸回転異常・捻転・Hirschsprung病・虫垂炎 | 虫垂炎・腸重積・腸回転異常・捻転・上腸間膜動脈症候群・腫瘍・嚢胞 |
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