- 英
- acute encephalopathy
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/04 23:53:08」(JST)
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脳症(のうしょう、Encephalopathy)とは、発熱、頭痛、意識障害、麻痺などの脳炎の急性症状を示すにもかかわらず、脳実質内に炎症が認められず浮腫が認められる状態のことである。
目次
- 1 急性脳症の分類
- 2 代表疾患
- 3 関連項目
- 4 参考文献
急性脳症の分類
- 急性壊死性脳症(ANE)
急性壊死性脳症(ANE)はインフルエンザなど発熱を伴う感染症の経過中に発症する急性脳症である。肝臓、膵臓、心血管系、血液系など全身諸臓器の障害を伴いやすく、致死率は33%におよぶ。MRIでは視床など特定の脳領域に両側対称性病変を有する。NSAIDsの一部が増悪因子となる。急性期の神経病理は血管性脳浮腫(血管透過性亢進)、白質のミエリン染色性低下、灰白質の点状出血と神経、グリア細胞の壊死を示す。炎症性サイトカインの産出と作用が全身的かつ高度に亢進し、脳血管と神経グリア細胞がその標的となり障害される。
- HSE(hemorrhage shock and encephalopathy syndrome)
1983年にLevinらが発熱、ショック、脳症、水溶性下痢、DICに基づく著しい出血性傾向および肝、腎障害をきたし予後不良な症候群としてHSESの概念を提唱した。1989年に診断基準が発表されこれをもとにHSEの報告がされている。
- 痙攣重積型急性脳症(AEFCSE)または二相性経過と遅発性拡散低下病変を伴う脳症(AESD)
日本の小児急性脳症では最も多いパターンである。発熱を伴うけいれん重積状態を発症し、その後の意識回復中途(第4病日付近)において意識障害の悪化と群発痙攣(遅発けいれん)を認めるという二相性の経過が典型的である。遅発けいれん時期にMRIでは皮質下白質に拡散強調画像で高信号を認める。前頭葉を主体とする分布であることが多い。
- 脳梁膨大部に拡散低下を伴う脳炎・脳症(MERS)
発熱(38度以上)後1週間以内に異常言動、行動、意識障害、けいれんなどで発症し多くは神経症状発症後10日以内に後遺症なく回復する。MRIでは急性期に脳梁膨大部一過性病変(おおくは拡散強調画像)を認め、多くは1週間以内で消失する。臨床予後は良好である。
- その他
可逆性後頭葉白質脳症(PRES、RPLS)、溶血性尿毒症症候群脳症、サルモネラ脳症、セレウス嘔吐毒脳症、Reye症候群、急性肝不全、糖尿病性ケトアシドーシス、副腎不全、甲状腺機能異常症、ウェルニッケ脳症、先天性代謝異常症(MELASやLeigh脳症含む)、熱中症、低酸素脳症、敗血症に伴う脳症。
代表疾患
- インフルエンザ脳症
- 肝性脳症
- 牛海綿状脳症
- 伝達性海綿状脳症
- ウェルニッケ脳症
- ウイルス性急性脳症
- 進行性多巣性白質脳症
- 伝達性ミンク脳症
関連項目
参考文献
- 小児科臨床ピクシス 急性脳炎・脳症 ISBN 9784521733159
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 小児急性脳症とバイオマーカー (特集 最新の疾患バイオマーカー研究) -- (特論)
- 臨床研究・症例報告 Carnitine palmitoyltransferase?(CPT?)の熱不安定性遺伝子多型を持った急性脳症の1例
Related Links
- 急性脳症。急性脳症とはどんな病気か 脳機能障害の症状である意識障害やけいれんを起こして、髄液(ずいえき)検査で炎症所見(細胞増加など)がないものです。炎症所見がある時は急性脳炎として区別します。乳幼児が多くを占 goo ...
- 副作用の判別基準(判別方法) 急性脳症の診断においては、頭部画像検査(CT、MRIなど)、血液検査(血液学、生化学、免疫学)、尿検査、脳脊髄液検査、生理学検査(脳波、聴性脳幹反応など)も重要である。このうち脳波 ...
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★リンクテーブル★
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- 7か月の乳児。発熱のため母親に連れられて来院した。2日前の昼過ぎから発熱があり就寝前の体温は39.0℃であった。昨日も38.9℃の発熱があったが他に目立った症状はなかった。食欲は良好で、普段より軟らかい便が2回あった。元気に泣いている。体重 6.5kg。体温 39.1℃。脈拍 148/分、整。SpO2 99%(room air)。眼球結膜に充血を認めない。口蓋垂近くの軟口蓋に紅斑を認める。口蓋扁桃に腫脹や白苔を認めない。頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。皮疹を認めない。尿所見に異常を認めない。血液所見:赤血球 466万、Hb 12.9g/dL、Ht 42%、白血球 3,500、血小板 18万。CRP 0.5mg/dL。特に加療することなく経過観察としたところ、受診翌日の体温は36.6℃で腹部に皮疹が出現した。
- この患児で注意すべき合併症はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109I066]←[国試_109]→[109I068]
[★]
- 英
- Reye's syndrome, Reye syndrome
- 同
- Reye症候群
- 関
- インフルエンザ、水痘、アスピリン
概念
- ウイルス感染後に乳幼児期・小児にみられる急性脳症
- 全身の臓器、特に肝の脂肪変性とミトコンドリアの変化ならびに脳浮腫を来す
- 原因となるウイルス感染症は、小児例では水痘、インフルエンザが多く、成人例ではEBウイルス感染が多い。
臨床像
- 発熱・下痢などの上気道炎症状が先行し、回復期の4-7日後に反復性嘔吐を前兆として、傾眠、錯乱、せん妄と言った意識障害とてんかん発作を発症する。
- 急速に発症・進行する脳症で、黄疸を伴わない肝障害、高アンモニア血症を認める。
疫学
- 5-15歳に好発する。
- 80%例は6歳以下の小児であり、成人発症はまれ。
- 乳幼児に発症:かつては5歳以上の小児に多発していた → 解熱剤としてアスピリン服用中止によって患者数が激減。
原因
- 小児のインフルエンザ(特にB型)、水痘、帯状疱疹に対する解熱に、アスピリンなどのNSAIDsを用いると発症することがある
- 小児のウイルス感染症に対しする解熱にはNSAIDsを避けてアセトアミノフェンを使うのが一般的。
病態
- ミトコンドリアの機能不全による
- 蛋白質・脂肪酸の急激な異化亢進 → アシルCoA増加
- (1) カルニチン欠乏(ミトコンドリアへの転送障害、β酸化障害)
- (2)ω酸化の亢進(ジカルボン酸尿)
- (3)糖代謝障害(乳酸、ピルビン酸上昇)
- (4)尿素サイクルの障害(高アンモニア血症)
病理
- 肝臓の脂肪変性:微小脂肪滴が肝小葉全体に沈着、Kupffer細胞の腫大
- 脳浮腫
症状 (GOO.682, SMB.467)
- 発熱、低酸素血症、血圧低下
- 脳症 encephalopathy:嘔吐、意識障害、痙攣、除脳硬直
- 黄疸は伴わない(肝不全は呈するのにビリルビンの上昇は伴わない。)
診断
- 肝生検による脂肪変性・ミトコンドリアの腫大の証明により確定診断となる(確定的ライ症候群)が、肝生検まで行われない場合がありその場合には臨床診断となるが(臨床的ライ症候群)、検査所見が一致しない場合もある(疑似ライ症候群)。
鑑別診断
- 細菌性髄膜炎、ウイルス性脳炎:脳脊髄液検査で除外する。
- 劇症肝炎:ビリルビンは高値となる
- ショック:原因疾患スクリーニング
- 敗血症:原因疾患スクリーニング
- 先天性代謝異常症:幼小児期に明らかとなるはずであるが、成人では明らかとなりうる物に全身性カルニチン血症、グルタル酸尿症、シトルリン血症がある。
- 薬物中毒:アセチルサリチル酸中毒、バルプロ酸中毒
病期
- Clinical staging in Reye syndrome.
- https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4834984
- National Institutes of Health, Bethesda. Diagnosis and Treatment of Reye's syndrome=Consensus conference. lAMA 1981;246:2441-4.
- http://archive.nmji.in/approval/archive/Volume-4/issue-3/review-articles-2.pdf
検査
- 血液検査:低血糖、トランスアミナーゼ上昇、低プロトロンビン血症、高アンモニア血症。血清ビリルビンは不変 (APT.205)
- 血液ガス検査:アシドーシス程度、血糖・乳酸評価。
- 頭部CT:脳血管障害スクリーニング、脳浮腫の有無程度を評価
- 脳脊髄液検査:髄膜炎除外
- 脳波:非特異的徐波
治療
- 脳浮腫による頭蓋内圧亢進の抑制 → マンニトール投与
- 代謝障害の補正:低血糖、低血圧、高アンモニア血症
- 低酸素血症の治療:酸素投与、挿管
- 血液凝固異常の治療:血漿交換
予後
- 死亡率10-20%
- 予後規定因子:意識障害の程度と持続時間が神経後遺症、生命的予後を決定する。*AST、ALT、アンモニア、血糖などでは予後の判定はできないとされる。
参考
uptodate
- 1. [charged] 小児における急性中毒性代謝性脳症 - uptodate [1]
- 2. [charged] アスピリン:リウマチ性疾患における作用機序、主な毒性、および使用 - uptodate [2]
- 3. [charged] 小児および思春期におけるサリチル酸中毒 - uptodate [3]
[★]
- 英
- acute encephalitis
- 関
- 急性脳症
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- 英
- encephalopathy
脳症の一覧
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- 英
- sis, pathy
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- 英
- acute
- 関
- 急性的、鋭い、鋭形、急性型