- 49歳の男性。獣医師。乾性の咳嗽と息切れとを主訴に来院した。3か月前から乾性の咳嗽が出現し、1か月前から階段を昇ると息切れを感じるようになった。喫煙歴はない。意識は清明。身長172cm、体重65kg。体温36.4℃。脈拍72/分、整。血圧 128/80mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。血液所見:白血球 5,300(桿状核好中球 3%、分葉核好中球 48%、好酸球 4%、好塩基球 1%、単球 6%、リンパ球 38%)。血液生化学所見:総蛋白 7.2g/dl、アルブミン 3.7g/dl、総コレステロール 198mg/dl、トリグリセリド 110mg/dl、総ビリルビン 1.0mg/dl、AST 24IU/l、ALT 22IU/l、LD <LDH> 356IU/l(基準176~353)、ALP 182IU/l(基準115~359)。CRP 0.2mg/dl、β-D-グルカン 12pg/ml(基準 20以下)。ツベルクリン反応陰性。
- 原因の同定に有用なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [103A048]←[国試_103]→[103A050]
★リンクテーブル★
[★]
- 60歳の男性。腎機能の低下について他科からのコンサルテーションを受けた。5年前から年に数回胸痛を訴えており、最近頻度が増加したので、1週前に精査のため入院した。6日前に心臓カテーテル検査で1枝病変が確認された。3日前から血清クレアチニンの上昇が認められ、徐々に悪化している。昨日から第2趾先端部に疼痛を伴う紫色の変色が認められた。30歳から高血圧で降圧薬の投与を受けている。40歳から糖尿病で経口糖尿病薬の投与を受けている。喫煙は30本/日を30年間。飲酒はビール大瓶2本/日を25年間。意識は清明。身長170cm、体重95kg。体温37.2℃。脈拍72/分、整。血圧 160/90mmHg。尿所見:蛋白1+、糖1+、潜血3+。血液所見:赤血球420万、Hb 14g/dl、Ht 42%、白血球 7,000、血小板 14万。血液生化学所見:血糖 180mg/dl、HbA1C 7.5%、総蛋白 7.0g/dl、アルブミン 4.5g/dl、尿素窒素 70mg/dl、クレアチニン5.2mg/dl、尿酸 8.0mg/dl、総コレステロール 310mg/dl、トリグリセリド 220mg/dl、総ビリルビン 1.0mg/dl、直接ビリルビン 0.5mg/dl、AST 32IU/l、ALT 25IU/l、LD <LDH> 480IU/l(基準176~353)、ALP 250IU/l(基準115~359)、Na 141mEq/l、K 5.2mEq/l、Cl 102mEq/l、Ca 9.0mg/dl、P 5.1mg/dl。CRP 1.2mg/dl。
[正答]
※国試ナビ4※ [103A049]←[国試_103]→[103A051]
[★]
- 14歳の女子。呼吸困難のため搬入された。母親と口論した後に胸内苦悶を訴え、次第に呼吸が荒くなった。不安様顔貌を示している。両手足のしびれを訴え、両手の手指は硬直している。
- この患者でみられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [103A047]←[国試_103]→[103A049]
[★]
[★]
- pneumonitis
- 英
- hypersensitivity pneumonitis, HP
- 同
- 過敏性肺炎、外因性アレルギー性肺胞炎 extrinsic allergic alveolitis
- 関
- セコイア症、夏型過敏性肺炎
[show details]
概念
- 種々の有機性粉塵を感受性のあるヒトが反復吸入した結果、粉塵中の抗原成分によって惹起される呼吸困難、発熱などをきたす疾患群。
- 非乾酪性の類上皮細胞性肉芽腫の形成を伴う間質性肺炎である。
- 肺の炎症性疾患であり、肺胞壁や終末の気道も侵される。
- 本態はIII型アレルギーおよびIV型アレルギー(慢性期。Th1サイトカインによる肉芽腫形成)である。
- 外因性アレルギー性胞隔炎extrinsic allergic alveolitisとも呼ばれる。
病型
病因
- 抗原に感作された人に対する抗原の再暴露により生じる
- 抗原は種々ある。
病因による分類
- 夏型過敏性肺臓炎
- 加湿器肺
- 空調病
- 農夫肺
- 砂糖キビ肺症
- 鳥飼病
- ハト飼病
- 木屑病
- 草屋病
- キノコ栽培者肺病
- 毛皮商人肺
- コーヒー労働者肺症
- チーズ洗い病
- 楓皮病
- コルク肺
- 麦芽労働者肺
- 痘苗病
- 養蚕従事者肺
- たたみ職人肺
- 空洞病
- 加湿器肺
疫学
- IMD
- 夏型過敏性肺炎:80%。屋内のカビ。日本では8-9月に多い。
- 農夫肺:8.1%。干草中の真菌。
- 換気装置肺炎:4.3%
- 鳥飼病:4.1%
病態
- IMD
III型アレルギーの関与
- 抗原曝露後約4-6時間で発症。抗原除去により6-8時間後に自然消退。
- 皮内反応:アルサス型
- BALF・血清中に抗原特異的IgG・IgAの出現
- 急性期のBALFには好中球が増加
IV型アレルギーの関与
- 肺生検において、肉芽腫形成。間質性肺炎(マクロファージ・リンパ球の浸潤)。
- BALFにおいて、リンパ球の増加がみられる
病理
- 病理組織学的には、肺胞壁のリンパ球を主体とした細胞浸潤、肺胞壁とそれに隣接した細気管支領域にみられる類上皮細胞肉芽腫病変が主要所見である。 → 肉芽腫性間質性肺炎
身体所見
症状
- HIM.1607
- 急性型:(抗原暴露後6-8時間より)咳、発熱、悪寒、全身倦怠感、呼吸困難
- 亜急性型:(数週間かけて潜行性に発症)咳、呼吸困難-(次第に悪化)→チアノーゼ、重度の呼吸困難。急性型の病型で、抗原が除去されない場合に亜急性に移行することがある。急性・亜急性型はいずれも抗原除去により数日~数週間~数ヶ月の経過で症状が消失。
- 慢性型:臨床的に肺線維症と区別できない。不可逆的。
検査
- IMD. YN.I-111
- 原因抗原を確定するために血清中の沈降抗体の証明や、気管支肺胞洗浄液リンパ球の抗原刺激試験が必要
- 血液検査:(総じて炎症所見)白血球増加、ESR上昇、CRP上昇、リウマチ因子陽性、アンジオテンシン転換酵素(ACE)上昇(類上皮肉芽腫のせい)、γグロブリン上昇、(間質の障害を伴うので)KL-6上昇
- 好酸球は不変、補体不変
- 急性・亜急性型:(間質性肺炎の像)両側中下肺野を中心にびまん性にすりガラス様陰影や小粒状陰影
- 慢性型:(肺線維症の像)肺の萎縮、線状影や輪状影。20-30%の症例で上肺野優位。
- 急性・亜急性型:肺野濃度の上昇、2-4mm大の境界不鮮明な小円形の粒状影が小葉中心性にびまん性に認められる。
- 慢性型:辺縁不整な線状影、輪状影
- BALF:抗原曝露後24時間以内には多核白血球、以降はリンパ球の増加が認められる。
- 急性型:非乾酪性類上皮性肉芽腫、胞隔炎(リンパ球・マクロファージ)。肺胞内のMasson体
- 慢性型:肉芽腫病変は稀。
- 吸入誘発試験:抗原の吸入により咳・呼吸困難を認め、検査上、炎症所見、低酸素血症が認められる。急性・亜急性型で有用。
診断基準
急性過敏性肺炎
- (参考1)
- 臨床症状・所見1) ~4) のうちいずれか2つ以上と、検査所見1) ~4) のうち1) を含む2つ以上の項目を同時に満足するもの
- 1) せき、2) 息切れ 3) 発熱、4) 捻髪音ないし小水疱性ラ音
- 1) 胸部X線像にてびまん性散布性粒状陰影(またはスリガラス状)
- 2) 拘束性換気能障害
- 3) 血沈値亢進、好中球増多、CRP陽性のいずれか一つ)
- 4) 低酸素血症(安静時あるいは運動後)
- 1) ~6) のうちいずれか1つを満足するもの
- 1) 夏型過敏性肺炎は夏期(5~10月) に、高温多湿の住宅で起こる
- 2) 鳥飼病は鳥の飼育や羽毛と関連して起こる
- 3) 農夫肺は黴びた枯れ草の取り扱いと関連して起こる
- 4) 空調肺、加湿器肺はこれらの機器の使用と関連して起こる
- 5) 有機塵挨抗原に曝露される環境での生活歴
- 6) 特定の化学物質と関連して起こる
- 注:症状は抗原暴露4~8時間して起こることが多く、環境から離れると自然に軽快する。
- 1) ~3) のうち1つ以上を満足するもの
- 1) 抗原に対する特異抗体陽性(血清あるもいはBAL*1液中)
- 2) 特異抗原によるリンパ球増殖反応陽性(末梢瓜あるいはBALリンパ球)
- 3) BAL所見(リンパ球↑、Tリンパ球↑) *2
- 1) ~2) のうち1つ以上を満足するもの
- 1) 特異抗原吸入にまる臨床像の再現
- 2) 環境暴露による臨床像の再現
- 1) ~3) のうちいずれか2つ以上を満足するもの
- 1) 肉芽腫形成、2) 胞隔炎、3) Masson体
診断
- 確実:a、b、dまたはa、b、c、eを満たすもの
- 強い疑い:aを含む3項目を満たすもの
- 疑い:aを含む2項目を満たすもの
- (*1)bronchoalveolar lavage(気管支肺胞洗浄)
- (*2)一般的にリンパ球比率は35%を超える。抗原回避2日以内では好中球増多を示す。
慢性過敏性肺炎
- (参考2)
- 1. 環境誘発あるいは抗原誘発試験で陽性
- 2. 組織学的の線維化が観察される
- 3. HRCTで線維化所見とhoneycombが観察される
- 4. 肺機能の拘束性障害が1年以上にわたって進行性である
- 5. 過敏性肺炎と関連した症状が6ヶ月以上続く
- 6. 当該抗原に対する抗体か、あるいはリンパ球増殖試験が陽性か、両者が陽性
- 以上1か6、および2か3、および4か5の3項目以上を満足させれば慢性過敏性肺炎と診断する
- 付記
- 1. 環境誘発試験は陰性のこともあるが、抗原誘発試験は陽性となる。この場合、症状の発現は弱くても白血球数、CRP、PaO2、DLCOなどの検査所見だけでも陽性と判定する。
- 2. 病理学的所見では肉芽腫はほとんどみられず、限局性のhoneycomb、リンパ球主体の肺隔炎とリンパ球の集族がみられる
- 3. 症状は抗原吸入を持続しても軽くなることが多い。労作時呼吸困難が主な症状である。
- 4. 抗体が陰性で抗原添加リンパ球増殖試験だけが陽性例もみられる
- 5. KL-6、SP-Dは高値
- 6. 慢性過敏性肺炎の発症環境として、カビの多い住宅や仕事場、羽毛布団使用、隣人の鳩飼育、公園・神社・駅の野鳩、野鳥の集団棲息などがある
治療
- 抗原の隔離
- 薬物療法:ステロイド(呼吸困難例)、ステロイドパスル療法(呼吸困難の重症例、急性増悪例)
- 支持療法:在宅酸素療法
予後
予防
参考
- http://www.naoru.com/kabinseihaien.htm
- http://www.geocities.jp/kokyukika/document/ChronicHP.html
- http://www.ibaraisikai.or.jp/treasure/chisivew/chisi-03.html
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