- 12歳の男児。心臓カテーテル検査を目的に入院した。1か月健康診査で心雑音を指摘された。乳児期に多呼吸を認めたが、2歳までに改善した。以後、発育と運動耐容能とに問題はなく、半年に1回の経過観察を行っていた。現在中学1年でサッカー部に所属し、日常生活に問題はない。意識は清明。身長162cm、体重51kg。体温36.1℃。脈拍68/分、整。血圧 114/72mmHg。胸骨左縁第2肋間を最強点とする3/6度の粗い全収縮期雑音を聴取するが、拡張期雑音は聴取しない。肺動脈性II音の亢進はない。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。心臓カテーテル検査では、右室流出路、主肺動脈および左右肺動脈で酸素飽和度のステップアップを認め、肺/体血流比は1.1であった。肺動脈圧は22/14(平均圧17)mmHgであった。左室造影写真と大動脈造影写真とを以下に示す。
- 方針として適切なのはどれか。
- a. 心内修復術を行う。
- b. 肺動脈絞扼術を行う。
- c. 激しい運動を制限する。
- d. 3年以内に自然治癒しなければ手術を行う。
- e. このまま定期的に経過観察を行う。
[正答]
※国試ナビ4※ [103I064]←[国試_103]→[103I066]
★リンクテーブル★
[★]
- 58歳の男性。右頸部腫瘤を主訴に来院した。半年前から右頸部の腫瘤を自覚していたが放置していた。3か月前から38℃程度の発熱を認め、頸部腫瘤が増大した。3か月で5kgの体重減少を認めた。右頸部に5×3 cmの硬いリンパ節を触知する以外は身体所見に異常を認めない。血液所見:赤血球 522万、Hb 14.8 g/dl、Ht 48%、白血球 8,800(桿状核好中球 3%、分葉核好中球 53%、好酸球 2%、好塩基球 1%、単球 5%、リンパ球 36%)、血小板 29万。血液生化学所見:総蛋白 7.8 g/dl(Alb 62.4%、α1-グロブリン 2.8%、α2-グロブリン 7.4%、β-グロブリン 9.5%、γ-グロブリン 17.9%)、尿素窒素 19 mg/dl、クレアチニン 1.1 mg/dl、尿酸 7.5 mg/dl、総コレステロール130 mg/dl、AST 24 IU/l、ALT 32 IU/l、LD<LDH> 530 IU/l(基準176~353)。CRP 2.4 mg/dl。頸部リンパ節生検H-E染色標本を以下に示す。
- 治療方針の決定に必要なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [103I065]←[国試_103]→[103I067]
[★]
- 52歳の男性。上腹部の不快感を主訴に来院した。色素散布後の上部消化管内視鏡写真と生検組織のH-E染色標本とを以下に示す。治療として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [103I063]←[国試_103]→[103I065]
[★]
[★]
- 英
- ventricular septal defect, VSD
- 同
- 心室中隔欠損
- 関
- 先天性心疾患、動脈管開存症、心房中隔欠損症
[show details]
概念
- 心室中隔の一部に組織欠損ができ(欠損孔)、左室と右室の間に交通がある先天性心疾患.
- 最も頻度の高い先天性心疾患で、出生児心奇形の約30%を占める。
- 他の奇形を合併することがある。
- 乳幼児期に自然閉鎖する場合がある。
疫学
- 1.5-3.5/1000生産児 (PHD.382)
- 先天性心疾患のうち発症例は最も多いが、自然閉鎖や幼小児期の手術により、成人例の頻度は心房中隔欠損よりも少数であり、約15%である。
病型分類
- Kirklinの分類で分類されているが、新たな分類を加えているものもある。欠損孔と刺激伝導系の位置関係を強調した、Sotoらの分類も知られている。
Kirklinの分類
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型
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欠損部
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疫学
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病態
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I型
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漏斗部欠損
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高位欠損
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日本人に多い。
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大動脈弁逸脱(右冠尖)によるARを合併しうる。自然閉鎖は少ない
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II型
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膜性部欠損
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中間位欠損
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最多。(70%)
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III型
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流入部欠損
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後方欠損
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ダウン症に多い
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左軸偏位
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IV型
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筋性部欠損
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低位欠損
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西洋人に多い。(20%)
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重症度分類
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X線上心拡大
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心電図
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聴診
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心不全症状
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小欠損
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-
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正常
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Roger雑音
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-
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中欠損
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+
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左室肥大
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汎収縮期雑音
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-./+
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大欠損
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+
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両心室肥大
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II音亢進
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+(乳児初期)
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病態生理
- PHD.382
- 欠損孔を流れる血液量:(small VSD)欠損孔のサイズに依存。(large VSD)体循環と肺循環の血管抵抗に依存
- 容量負荷:RV, 肺循環, LV, LA
- 容量負荷 → chamber dilation → systolic dysfunction → heart failure
- 2歳でpulmonary vascular diseaseとなる。
- 心室中隔の欠損孔の大きさと肺動脈血管床の状態(左右心室間の圧較差)が病態を決定する。
- 左室から右室への容量負荷は肺血管を介して左心負荷につながり、肺動脈動脈圧が上昇すれば、右心負荷に繋がる。
症状
- PHD.383
- small VSDは無症状
- 10%のVSD患者はlarge defectを持っており、生後早い内から、うっ血心不全を呈する(頻呼吸、摂食不良、成長不良、頻回の下気道感染)
- right-left shuntを起こせばチアノーゼ、呼吸困難
- VSDのサイズに因らず、bacterial endocarditisがおこりうる。
- 乳幼児:生後まもなく心雑音にて発見されることが多い。欠損孔の大きさに応じて左室から右室への血流が増加し、それによる心不全徴候を示す(多呼吸、哺乳低下、体重増加不良)。
- 小欠損孔では自覚症状はない。
- 中欠損孔では反復性気道感染、息切れを認めることがある。
- 大欠損孔では乳児期から心不全、体重増加不良を認める。
身体所見
- PHD.383
- harsh holosystolic murmur at the left sternal border
- murmurの部位に一致してsystolic thrillを認める。
- 拡張中期ランブルを心尖で聴取 → MV経由の血流が増加したため
- pulmonaru vascular diseaseが進行すると、汎収縮期雑音は減弱 → 欠損孔の圧較差が低下してくるから
聴診
- 聴診にて胸骨左縁第 3-4 肋間に最強点(I型では第 2 肋間)を有する粗い汎収縮期雑音を聴取し、しばしば振戦を触知する。
- 左右短絡量が多い症例では、心尖部に III音、拡張中期ランブルを聴取する(僧帽弁口を通過する血流増大を反映)。
- PHD.383
- 左胸骨縁:全収縮期雑音:(harsh holosystolic murmur) ← 欠損孔が小さいほど大きい
- 雑音がする部位:収縮期スリルを触れる
- 心尖部:拡張期中期ランブル音(middiastolic rumble):僧帽弁を通過する血流が増加するため
- 肺高血圧症が進展すると全収縮期雑音は小さくなる。RV heave(拡張した右室の拍動)、II音亢進、チアノーゼを認めるようになる。
検査
胸部単純X線写真
- 小欠損孔:正常
- 中-大欠損孔では肺血管陰影増強、左第4弓の突出がみられる。
- Eisenmenger 化すると左第2弓の著明な突出を認めるが、末梢血管影は減少する。
[show details]
12誘導心電図
- 小欠損孔:正常である。
- 中欠損孔:左室肥大
- 大欠損孔:左室肥大、右室肥大
- Eisenmenger化すると右室肥大のみを呈する。
- III型は左軸偏位を呈する。
心エコー
心臓カテーテル検査
- 手術療法の適応について評価する;短絡率、肺体血流比、肺血管抵抗
診断
- 胸骨左縁の粗い汎収縮期雑音で本症を疑う。心エコー図により欠損孔、短絡血流を証明し、さらに病型、欠損孔の大きさと数、左右短絡量、肺高血圧の有無を診断する。
鑑別診断
- 前胸部に粗い収縮期雑音が聴取される疾患:僧帽弁閉鎖不全症、閉塞性肥大型心筋症、肺動脈弁狭窄、右室二腔症、左室右房交通症。
治療
- 欠損孔が小さい場合(small VSD):心内膜炎の予防以外に特に特別な治療は不要である。しかし、血液培養陽性となる発熱や新規の雑音が聴取されたら専門医による精査を要する。(参考1)
- 肺体血液量比2.0以上は手術適応、1.5-2.0は症状に応じて手術を、1.5以下は手術不要。
- 小欠損:通常手術は不要であるが、大動脈弁逸脱を合併するものは手術が必要である。
- 中欠損:左右短絡率が40%以上で手術適応がある。
- 大欠損:心不全に対し薬物治療を行うとともに全例手術を2~3歳までに行う。
- 肺高血圧が遷延し、肺血管病変を呈した幼小児期以降の例では手術は禁忌である。
- 手術は、体外循環下のパッチ閉鎖が原則である。
自然歴
- 自然閉鎖から小児期に早くから心不全症状を呈し、死亡する例まで多岐にわたる。肺血管閉塞、右室流出路狭窄、大動脈弁閉鎖不全症、感染性心内膜炎などを合併することがある。
参考
- 1. [charged] Management of isolated ventricular septal defects in infants and children - uptodate [1]
国試
- 095G018:小欠損と考えられる。小欠損の場合には特に運動制限をする必要はないが、心内膜炎の予防のために予防接種などを受けることは必要となる。2007 guidelines of the American Heart Association (AHA) recommendによれば、予防的な抗菌薬の服用は推奨されていない。(参考1)
- 105F026、105F027、103I065