- 2歳の男児。白血球増多と血小板減少の精査のため入院した。4日前から38℃以上の発熱と下痢のため近医で治療を受けていた。症状は改善傾向にあった。意識は清明で活気がある。身長 83cm、体重 11.8kg。体温 37.2 ℃。脈拍 124/分、整。血圧 100/56 mmHg。頸部に径1cmのリンパ節を数個触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。右肋骨弓下に肝を4cm、左肋骨弓下に脾を3cm触知する。血液所見:赤血球 443万、Hb 11.6g/dl、Ht 34%、白血球 21,300、血小板 9.6万。血液生化学所見:総蛋白5.8 g/dl、アルブミン 3.2 g/dl、尿素窒素 3.0 mg/dl、クレアチニン 0.2 mg/dl、尿酸4.1 mg/dl、総ビリルビン0.4 mg/dl、AST 423 IU/l、ALT 586 IU/l、LD<LDH> 1,059 IU/l(基準260~530)。CRP 0.9 mg/dl。末梢血塗抹May-Giemsa染色標本を以下に示す。
- 病原体として考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [103I071]←[国試_103]→[103I073]
★リンクテーブル★
[★]
- 27歳の初妊婦。妊娠35週。妊婦健康診査時に異常を指摘され入院した。
- 双胎妊娠であったが、経過中の胎児発育は順調で両児間に体重差を認めず、子宮頸管長は35mm前後であった。母体血圧は120~130/68~84 mmHgで推移していた。入院当日の尿所見:尿蛋白1+。血液所見:赤血球340万、Hb 8.6 g/dl、Ht 28 %、白血球8,600、血小板8.2万。軽度の上腹部痛と10~15分間隔の不規則な子宮収縮とを認めた。入院後の血圧は148/92 mmHg。尿所見:尿蛋白1+、沈渣で赤血球多数。内診で子宮口は1cm開大で胎児先進部は児頭である。超音波検査で胎児推定体重は第1子2,360g、第2子2,300gでいずれも頭位である。
[正答]
※国試ナビ4※ [103I070]←[国試_103]→[103I072]
[★]
- 43歳の男性。めまいのため搬入された。6日前から微熱がありのどが痛く、風邪だと思ったが放置していた。今朝、目が覚めたら天井が回る感じがして、立ち上がると倒れそうになった。寝ていてもめまいが強く、吐き気があり、動けない状態になった。意識は清明。体温36.8℃。脈拍76/分、整。血圧 140/84mmHg。難聴はなく、眼振を認める。眼球運動に異常を認めない。頭部単純CTで異常を認めない。
[正答]
※国試ナビ4※ [103I072]←[国試_103]→[103I074]
[★]
[★]
- 英
- infectious mononucleosis
- 同
- キス病 kissing disease、伝染性単核症、EBウイルス感染症 Epstein-Barr virus infection、腺熱 glandular fever
- 関
- 単核球症、EBウイルス
概念
疫学
- 多く(90%以上)は幼児期に初感染し、無症状(不顕性感染)か軽症である。
- 学童期から青年期(14-18歳)に多い。成人になってからの初感染では症状が出る。 → 肝炎様症状
- 日本では成人の80%が既感染者。健常者咽頭粘液:10-20%陽性
潜伏期間
- 4-6週(YN.H-75, ウイルス感染症 - 日本内科学会雑誌106巻11号)
病原体
感染経路
病態
- 飛沫感染 → 咽頭粘膜上皮細胞やリンパ組織で増殖 → Bリンパ球を介して全身に散布 → 増殖能を獲得したBリンパ球によるIgの産生(ポール・バンネル反応、ペニシリンアレルギーと関連)・腫瘍化したBリンパ球対して活性化した細胞障害性T細胞(異型リンパ球)の増加
- EBウイルスがB細胞に感染して癌化させる。ガン化にはEBウイルスが産生する核内抗原(EBNA)と表面抗原(LMA)が重要な役割りを果たす。ガン化したB細胞に対する傷害性T細胞が異型リンパ球として観察される。
経過
- その後、EBウイルスは持続感染する
症候
- 発熱、全身性リンパ節腫脹、絶対的リンパ球増加(10%以上の異型リンパ球)
- 発熱(1-2週間持続,90%)、扁桃炎・咽頭炎(咽頭痛・嚥下困難、発赤・腫脹)、全身性リンパ節腫脹(圧痛)、肝脾腫(10-50%)、結膜の充血、麻疹様・風疹様の発疹(10-40%)
- 扁桃炎・咽頭炎は溶連菌による扁桃炎に似て発赤が強く膿苔を伴うことが多い (SPE.340) → 扁桃白苔とも表現される(滲出性扁桃炎の所見)
- リンパ節腫脹:
- 年齢と共に咽頭、頸部リンパ節腫脹の所見は低下する。40歳以下で頸部リンパ節腫脹94%, 扁桃腺腫大84%, 40歳以上では頸部リンパ節腫脹47%, 扁桃腫大43%
- 後頸部リンパ節腫脹(陽性尤度比 3.1 95%CI 1.6~5.9)
検査
血算
- 末梢血白血球↑、
単核球↑?:白血球分画のリンパ球・単核球?が60%以上となる。 ← Bリンパ球で増殖するため減少、Tリンパ球は反応性に増殖
- 末梢血異型リンパ球(~50%)
- IMにおける異型リンパ球の陽性尤度比
異型リンパ球
|
陽性尤度比
|
95% CI
|
≧10%
|
11.4
|
2.7~35
|
≧20%
|
26
|
9.6~68
|
≧40%
|
50
|
38~64
|
- まれ:溶血性貧血、血小板減少症、再生不良性貧血、TTP、HUS、DIC (QB.H-196 参考1) ← 時に見られる造血系の異常は、EBウイルスにたいする抗体との交差反応によるもの、らしい(参考1)
免疫血清検査
- 1. ペア血清:VCA-IgM↑、VCA-IgG↑ ← VCA-IgMは一過性上昇 ← 急性期に上昇
- VCAとはウイルスキャプシド抗原(virus capsid antigen)
- 陽性→潜伏感染
- EBNA抗原はゆっくりと上昇し3ヶ月後に陽転する。3-6週後に陽転(ウイルス感染症 - 日本内科学会雑誌106巻11号)
肝臓酵素
- 肝逸脱酵素↑:AST、ALT、ALP、γ-GTP。ビリルビンも上昇する。
- 肝障害は80-90%の例にみられる。
診断
- 若年者の場合はCMVとEBVの両方を考慮して血清学的検査(VCA-IgG, VCA-IgM, EBNA, CMV-IgG, CMV-IgM)を提出する。
- トランスアミナーゼ上昇が認められているので、肝胆膵をスクリーニングするために腹部エコーを行うと良いのかもしれない。
鑑別診断
治療
- 特異的治療法無し
- 対症療法:解熱薬や肝庇護薬の投与、輸液など
合併症
注意
- ペニシリン系・セフェム系薬物の投与は禁忌:発疹などのアレルギー反応が起こる
- ペニシリン系抗菌薬では30-100%の割合で皮疹が生じるが、その際にはセフェム系抗菌薬を使う方がよいとされている(ウイルス感染症 - 日本内科学会雑誌106巻11号)
予防
予後
参考
- 1. [charged] Infectious mononucleosis in adults and adolescents - uptodate [1]
国試