出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/01/28 02:35:36」(JST)
低ナトリウム血症 | |
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分類及び外部参照情報 | |
ナトリウム
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ICD-10 | E87.1 |
ICD-9 | 276.1 |
DiseasesDB | 6483 |
eMedicine | emerg/275 med/1130 ped/1124 |
Patient UK | 低ナトリウム血症 |
MeSH | D007010 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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低ナトリウム血症(ていナトリウムけっしょう、英: Hyponatremia)とは血中ナトリウム濃度が135mEq/l以下になることをいう。血清Naの基準値は135~145mEq/lであり、尿中Na量は4~8g/日である。Naの摂取経路は経口および輸液であり、排出はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系による調節と心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) によって決定されている。
体液の調節機構はCV系とVQ系とVV系という3つを想定するとわかりやすい。重要なことは体内ナトリウム量が細胞外液量を規定し、血清ナトリウム濃度が血漿浸透圧を規定するということである。
血清ナトリウム濃度Cをとらえて体液量Vを調節する系である。Cを感知するセンサーは視床下部にある浸透圧受容体細胞である。脳細胞は一般的に血液脳関門(BBB)によって守られており、体液の変化を直接感知することはあまりないのだが、この部分はBBBの発達が悪く、血漿浸透圧を感知できると考えられている。血漿浸透圧が285~290mOsm/kgH2Oから2% 程上昇すると浸透圧受容体細胞が感知し、口渇中枢を刺激し、飲水を促し、また抗利尿ホルモンであるADHの分泌を促進する。ADHのわずかな上昇で、尿の濃縮は最大に達してしまうのが特徴である。逆に2%ほど血漿浸透圧が低下すると、ADHの作用はほぼ抑制されてしまう。ADHは集合管における水の再吸収にかかわっており、ADHが分泌されればナトリウムと独立に水の再吸収がおこり、濃縮尿が排出される。ADHの作用が抑制されれば、Na依存性の再吸収しか起こらない。GFRが100ml/minほどあればADHが抑制されれば20ml/minの自由水が排出できることが知られている。即ち、明らかな腎障害がなければ、人は1時間に1200mlの水を24時間摂取し続けてもADHの作用を抑制するだけでその水分を排出することができ、低ナトリウム血症には至らない。
体液量Vをとらえて、溶質量Qを調節する系である。具体的にはレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系のことである。
これは体液量Vをとらえて体液量Vを調節する系であり、HANPやBNPが相当する。また、左房圧の低下はADHの分泌を亢進させ、水分の再吸収を亢進させることも知られている。左房圧低下でのADHの分泌はあまり鋭敏ではないが極めて強力である。
上述のCV系の働きにより通常ならば低ナトリウム血症は滅多な事では起こりえない。それが起こるにはそれなりの理由が必要である。血漿浸透圧が低下するのも関わらず、自由水が排出できない、即ち尿が低浸透圧にならない病態があるのである。そのようになるものは2つほど知られている。ひとつは自由水を作っているヘンレの上行脚に十分量の尿量が到達しない、もうひとつは血漿浸透圧が低下しているにも関わらずADHがの分泌が亢進しており集合管で水の再吸収が起こっている場合である。
真っ先に考えられることは急性腎不全や慢性腎不全で糸球体濾過量(GFR)が低下し、乏尿となっているのに水負荷をしたときである。またGFRが低下していなくとも有効動脈血流量が低下した病態では近位尿細管での尿再吸収が亢進した結果ヘンレの上行脚に十分量の尿量が到達しなくなる。こういった病態は心不全、肝不全、ネフローゼ症候群で知られている。
まっさきに考えられるのはVV系による修飾、即ち有効循環血漿量が低下しているときである。それ以外に薬剤、ストレス(疼痛)、糖質コルチコイドの欠乏などがあげられる。またSIADHという病態も重要である。ADHが作用しすぎた場合は低ナトリウム血症の症状が出るのにも関わらず、ADHが作用しない尿崩症では高ナトリウム血症で発症することは少ない。これは尿崩症の場合は多飲で代償するからであると考えられている。多飲出来ない環境ならば高ナトリウム血症となりえる病態である。
臨床上は以下の4つのタイプが観測されている。
これらを鑑別するには身体診察やバイタルサインによることが多い。細胞外液量が低下しているときは皮膚、粘膜の乾燥、脈拍増加、血圧低下(特に起立性低血圧)などで判断する。逆に浮腫があれば細胞外液は増加していると考える。こういった所見がなく、明らかな病歴がなければ細胞外液量は正常とみなして考えていくのが一般的である。そして尿中のナトリウム濃度を調べる。細胞外液や有効循環血漿量や血圧が低下した時は、細胞外液を維持するため腎臓はナトリウムを再吸収しようとするので腎臓が適切に働いていれば、尿中ナトリウム濃度は10mEq位と低値になっているはずである。
治療法がわかってこそ、診断には意味がある。まずは血漿浸透圧、尿浸透圧を測定する。次に病歴から急性か慢性かを診断する。急性であったら治療に緊急性が生じてくる。次に原因の詮索をする。
以下のような表が有名である。
血清ナトリウム濃度 | 症状 |
---|---|
130mEq/l以上 | 一般的には無症状 |
120~130mEq/l | 軽度の虚脱感や疲労感が出現 |
110~120mEq/l | 精神錯乱、頭痛、悪心、食思不振 |
110mEq/l以下 | 痙攣、昏睡 |
しかし、臨床的には実際の濃度より進行速度とよく相関することが知られている。とはいえ急変時の重症度をみるには濃度が進行速度と比例するため有効である。
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国試過去問 | 「110A036」 |
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水 | Na | 体液 | 摂取と排出はどうなのか? | 脱水所見 | ||||
IN →○ |
OUT ○→ | |||||||
希釈性低ナトリウム血症 | 過剰 | - | 多い | [3] | ⇒○→ | [3] | →○→ | 無し |
心因性多飲症、低張輸液過多 | SIADH | |||||||
ナトリウム欠乏性低ナトリウム血症 | - | 過少 | 少ない | →○→ | [2] | →○⇒ | 有り | |
摂食不能 | 腎性(Addison病、塩類喪失性腎炎、利尿薬の使用) 腎外性(下痢・嘔吐、熱傷、腸閉塞) | |||||||
大過剰 | 過剰 | [1] | 無し | |||||
うっ血性心不全 肝硬変 ネフローゼ |
低ナトリウム血症のメカニズム | 障害の原因 | 障害の例 | |
effective osmole(Na, K)の欠乏 | 長期間のの下痢・嘔吐・絶食 | ||
浸透圧利尿 | |||
水分過剰 | 口渇感の異常 (多飲) |
尿自由水排泄能力を超えた量の飲水 | 心因性多飲 |
マラソン中の多量飲水 | |||
尿希釈能の低下 (水排泄障害) |
尿細管での 自由水生成障害 |
有効循環血漿量低下 (心不全、肝不全、脱水) | |
極度の低栄養・偏食 | |||
腎障害 | |||
不適切な抗利尿ホルモン作用 | SIADH | ||
有効循環血漿量低下 | |||
甲状腺機能低下 | |||
糖質コルチコイド欠乏 |
脱水 | 水 | Na | 体液 | 病態生理 | 尿中Na | 尿浸透圧 | ADH | 治療 | 原疾患 | ||||
[1] | なし | hyponatremia with hypervolemia |
大過剰 | 過剰 | 細胞外液量増加 | (>20mEq/L) | 分泌される | ・ループ利尿薬+水,Na制限 ・(不十分)サイアザイド追加 ・低Kや体腔液貯留が強い場合スピロノラクトン追加 |
末期腎不全 | ||||
(<20mEq/L) | うっ血性心不全、肝硬変 | ||||||||||||
[2] | あり | hyponatremia with hypovolemia |
ナトリウム喪失型 ナトリウム欠乏性低ナトリウム血症 |
- | 過少 | 細胞外液量減少 | Na OUT →○⇒ |
↑ 80mEq/L (>20mEq/L) |
・Naの補給+等張液輸液(生食,乳酸リンゲル) ・Na排泄率をモニターしIN>OUTを確認 |
腎性:利尿薬の過剰投与、Addison病、尿細管傷害 | |||
↓ 20mEq/L (<20mEq/L) |
腎外性:消化管からの喪失(下痢、嘔吐、腸閉塞)、熱傷、 | ||||||||||||
Na IN →○→ |
↓ 20mEq/L | 経口摂取不能 | |||||||||||
[3] | なし | hyponatremia with normovolemia |
水過剰型 希釈性低ナトリウム血症 |
過剰 | - | 細胞外液量正常 | 水 OUT →○→ |
→ 40mEq/L | ADH excess >320 mOsm/kg (>100mOsm/L) |
分泌抑制不可能 | ・水制限 ・ループ利尿薬+生理食塩水 |
SIADHなど | |
水IN ⇒○→ |
↓ 20mEq/L | <100 mOsm/kg (<100mOsm/L) |
分泌抑制を上回るwater intake | 低張輸液過多、水中毒(心因性多飲) | |||||||||
[4] | 偽性低Na血症 | 高浸透圧性 | 高血糖、マンニトール投与 | ||||||||||
正浸透圧性 | 脂質異常症(高脂血症)、高蛋白血症 |
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