カルボプラチン
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カルボプラチン
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IUPAC命名法による物質名 |
cis-Diammine(1,1-cyclobutanedicarboxylato)-platinum(II) |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
|
投与方法 |
点滴静注 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
- |
血漿タンパク結合 |
非常に低い |
代謝 |
- |
半減期 |
α相:0.16~0.32時間
β相:1.29~1.69時間
γ相:22~32時間 |
排泄 |
尿中 |
識別 |
CAS番号 |
41575-94-4 |
ATCコード |
L01XA02 |
PubChem |
CID 498142 |
KEGG |
D01363 |
化学的データ |
化学式 |
C6H12N2O4Pt |
分子量 |
371.249 |
カルボプラチン(Carboplatin : CBDCA)とは、シスプラチンの抗腫瘍活性を弱めることなく、腎毒性および嘔気・嘔吐などの副作用を軽減することを目的にJohnson Matthey社が合成し、英国の癌研究所、米国の国立癌研究所(NCI)、米国のブリストル・マイヤーズ スクイブ社が開発した抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)。
商品名は、パラプラチン(ブリストル・マイヤーズ)、後発医薬品として、カルボプラチン(沢井製薬など)、カルボメルク(マイラン製薬など)。
カルボプラチンはシスプラチンと同じ白金錯体であるが、シスプラチンに比べて腎毒性が低く、シスプラチン投与時には必要な水分負荷がカルボプラチン投与時には必要ない。またシスプラチンの特徴的な副作用である嘔気・嘔吐もカルボプラチンでは軽減されている。
目次
- 1 効能・効果
- 2 作用機序
- 3 副作用
- 4 関連事項
- 5 外部リンク
- 6 参考資料
効能・効果
- 頭頸部癌、肺小細胞癌、睾丸腫瘍、卵巣癌、子宮頸癌、悪性リンパ腫、非小細胞肺癌
- 以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
- 小児悪性固形腫瘍(神経芽腫、網膜芽腫、肝芽腫、中枢神経系胚細胞腫瘍、再発又は難治性のユーイング肉腫ファミリー腫瘍・腎芽腫)
作用機序
1,1-シクロブタンジカルボン酸配位子の一方がOH2に変換されることにより活性化され、DNAと反応、結合し、次いで、一方が外れた1,1-シクロブタンジカルボン酸基は不安定となり脱離し、その脱離部が同様に活性化され、更にDNAと結合して反応が終了する。DNAへの結合部位はシスプラチンと同様で、DNAの構成塩基であるグアニン、アデニンのN-7位に結合する。
副作用
骨髄抑制、ショック、アナフィラキシー様症状、間質性肺炎、急性腎不全、ファンコニー症候群、肝不全、肝機能障害、黄疸、消化管壊死、消化管穿孔、消化管出血、消化管潰瘍、出血性腸炎、偽膜性大腸炎、麻痺性イレウス、脳梗塞、血栓・塞栓症、心筋梗塞、うっ血性心不全、溶血性尿毒症症候群、急性呼吸窮迫症候群、播種性血管内凝固症候群、急性膵炎、悪心・嘔吐、食欲不振、下痢、口内炎、腹痛、便秘血尿、蛋白尿、蕁麻疹、発疹、末しょう神経障害(しびれ等)、頭痛、ALT (GPT) 上昇、AST (GOT) 上昇、Al-P上昇、ビリルビン上昇、LDH上昇、γ-GTP上昇、電解質代謝異常、脱毛、全身倦怠感、無力症、尿酸上昇、悪寒、脱水、体重減少、アルブミン低下、呼吸困難 、発熱、浮腫など。
また、類薬シスプラチンで聴力低下、難聴、耳鳴、うっ血乳頭、球後視神経炎、皮質盲、溶血性貧血が生じることがある。
関連事項
- 化学療法
- 抗がん剤
- シスプラチン/オキサリプラチン
外部リンク
参考資料
- 『パラプラチン®注射用150mg/注射液50mg, 150mg, 450mg』医薬品インタビューフォーム・第4版(ブリストル・マイヤーズ)
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 卵巣癌に対する化学療法(パクリタキセル/パラプラチン)により短期間で骨髄異形成症候群を発症した一例
- MP-484 再燃前立腺癌に対するタキソール、パラプラチン併用療法の検討(一般演題ポスター,第94回日本泌尿器科学会総会)
- 上田 修史,國枝 太史,宇都宮 紀明,公平 直樹,青山 輝義,井上 幸治,寺井 章人
- 日本泌尿器科學會雜誌 97(2), 487, 2006-03-10
- NAID 110005855740
- 26. 進行非小細胞肺癌に対するweeklyパクリタキセル+パラプラチン療法(TJ)とゲムシタビン+パラプラチン療法(GP)の比較検討(第44回 日本肺癌学会中国四国支部会, 支部活動)
Related Links
- カルボプラチン(プラチナ製剤) 商品名(製造・販売会社) カルボプラチン(サンド) カルボメルク(メルク・ホエイ、日本化薬) パラプラチン(ブリストル・マイヤーズ) シスプラチンとほぼ同じ効果を持ち、かつ毒性を軽減 ...
- パラプラチン®注射液50mg、パラプラチン®注射液150mg、パラプラチン®注射液450mg ご利用上の注意 このページに掲載されている情報は、 ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社の医療用医薬品をご使用の患者さんに対し、医薬品を ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
パラプラチン注射液50mg
組成
1バイアル中
分量
成分・含有量
禁忌
- 重篤な骨髄抑制のある患者[骨髄抑制は用量規制因子であり,感染症又は出血を伴い,重篤化する可能性がある。]
- 本剤又は他の白金を含む薬剤に対し,重篤な過敏症の既往歴のある患者
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」の項参照)
効能または効果
- **頭頸部癌,肺小細胞癌,睾丸腫瘍,卵巣癌,子宮頸癌,悪性リンパ腫,非小細胞肺癌,乳癌
- 以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
- 小児悪性固形腫瘍(神経芽腫・網膜芽腫・肝芽腫・中枢神経系胚細胞腫瘍,再発又は難治性のユーイング肉腫ファミリー腫瘍・腎芽腫)
**頭頸部癌, 肺小細胞癌, 睾丸腫瘍, 卵巣癌, 子宮頸癌, 悪性リンパ腫, 非小細胞肺癌の場合
- 通常,成人にはカルボプラチンとして,1日1回300〜400mg/m2(体表面積)を投与し,少なくとも4週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。なお,投与量は,年齢,疾患,症状により適宜増減する。
**乳癌の場合
- トラスツズマブ(遺伝子組換え)及びタキサン系抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはカルボプラチンとして,1日1回300〜400mg/m2(体表面積)を投与し,少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。なお,投与量は,患者の状態により適宜減ずる。
小児悪性固形腫瘍(神経芽腫・網膜芽腫・肝芽腫・中枢神経系胚細胞腫瘍,再発又は難治性のユーイング肉腫ファミリー腫瘍・腎芽腫)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合
神経芽腫・肝芽腫・中枢神経系胚細胞腫瘍,再発又は難治性のユーイング肉腫ファミリー腫瘍・腎芽腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合
- イホスファミドとエトポシドとの併用療法において,カルボプラチンの投与量及び投与方法は,カルボプラチンとして635mg/m2(体表面積)を1日間点滴静注又は400mg/m2(体表面積)を2日間点滴静注し,少なくとも3〜4週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
なお,投与量及び投与日数は疾患,症状,併用する他の抗悪性腫瘍剤により適宜減ずる。
また,1歳未満もしくは体重10kg未満の小児に対して,投与量には十分配慮すること。
**網膜芽腫に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合
- ビンクリスチン硫酸塩とエトポシドとの併用療法において,カルボプラチンの投与量及び投与方法は,カルボプラチンとして560mg/m2(体表面積)を1日間点滴静注し,少なくとも3〜4週間休薬する。これを1クールとし,投与を繰り返す。
ただし,36ヵ月齢以下の患児にはカルボプラチンを18.6mg/kgとする。
なお,投与量及び投与日数は疾患,症状,併用する他の抗悪性腫瘍剤により適宜減ずる。
- 本剤投与時,投与量に応じて250mL以上のブドウ糖注射液又は生理食塩液に混和し,30分以上かけて点滴静注する。
- **乳癌患者に本剤を投与する場合,併用する他の抗悪性腫瘍剤の添付文書を熟読すること。
- 小児悪性固形腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法において,腎機能が低下している患者では,骨髄抑制,聴器障害,腎障害の発現に特に注意し,用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。なお,腎機能の指標としてGFR(Glomerular filtration rate:糸球体ろ過値)等を考慮して,投与量を選択することが望ましい。
- 小児悪性固形腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法においては,関連文献(「抗がん剤報告書:カルボプラチン(小児)」等)及び併用薬剤の添付文書を熟読すること。
慎重投与
- 骨髄抑制のある患者[骨髄抑制を増悪させることがある。]
- 腎障害のある患者[腎機能が低下しているので,副作用が強くあらわれることがある。]
- 肝障害のある患者[代謝機能等が低下しているので,副作用が強くあらわれることがある。]
- 感染症を合併している患者[骨髄抑制により,感染症を増悪させることがある。]
- 水痘患者[致命的な全身障害があらわれるおそれがある。]
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
- 小児(「小児等への投与」の項参照)
- 長期間使用している患者[骨髄抑制等が強くあらわれ,遷延性に推移することがある。]
重大な副作用
汎血球減少(0.1%未満)等の骨髄抑制:
- 汎血球減少,貧血(ヘモグロビン減少,赤血球減少,ヘマトクリット値減少),白血球減少,好中球減少,血小板減少,出血等があらわれることがあるので,末梢血液の観察を十分に行い,異常が認められた場合には,減量,休薬,中止等適切な処置を行うこと。
ショック,アナフィラキシー様症状(0.1%未満):
- ショック,アナフィラキシー様症状を起こすことがあるので,観察を十分に行い,チアノーゼ,呼吸困難,胸内苦悶,血圧低下,気管支痙攣等があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。なお,本剤の投与回数を重ねると,ショック,アナフィラキシー様症状の発現頻度が高くなる傾向もみられる(その他の注意参照)。
間質性肺炎(0.1%):
- 発熱,咳嗽,呼吸困難,胸部X線異常等を伴う間質性肺炎があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
急性腎不全(0.1%未満),ファンコニー症候群(頻度不明):
- 急性腎不全,ファンコニー症候群等があらわれることがあるので,観察を十分に行い,BUN,血清クレアチニン,クレアチニン・クリアランス値等に異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
肝不全,肝機能障害,黄疸(いずれも頻度不明):
- 肝不全,肝機能障害,黄疸があらわれることがあるので,定期的に検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
消化管壊死,消化管穿孔,消化管出血,消化管潰瘍(いずれも頻度不明):
- 消化管壊死,消化管穿孔,消化管出血,消化管潰瘍があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
出血性腸炎,偽膜性大腸炎(頻度不明):
- 出血性腸炎,偽膜性大腸炎等があらわれることがあるので,観察を十分に行い,激しい腹痛・下痢等があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
麻痺性イレウス(0.1%未満):
- 腸管麻痺(食欲不振,悪心・嘔吐,著しい便秘,腹痛,腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等)を来し,麻痺性イレウスに移行することがあるので,腸管麻痺があらわれた場合には投与を中止し,腸管減圧法等の適切な処置を行うこと。
脳梗塞(0.1%未満),肺梗塞(頻度不明):
- 脳梗塞,肺梗塞があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
血栓・塞栓症(頻度不明):
- 血栓・塞栓症(肺塞栓,脳血栓,その他の動脈又は静脈血栓症等)があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
心筋梗塞,うっ血性心不全(頻度不明):
- 心筋梗塞,うっ血性心不全があらわれることがあるので,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
溶血性尿毒症症候群(頻度不明):
- 血小板減少,溶血性貧血,腎不全を主徴とする溶血性尿毒症症候群があらわれることがあるので,定期的に血液検査(血小板,赤血球等)及び腎機能検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
急性呼吸窮迫症候群(頻度不明):
- 急性呼吸窮迫症候群があらわれることがあるので,観察を十分に行い,急速に進行する呼吸困難,低酸素症,両側性びまん性肺浸潤影等の胸部X線異常等が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
播種性血管内凝固症候群(DIC)(頻度不明):
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)があらわれることがあるので,観察を十分に行い,血小板数,血清FDP値,血漿フィブリノゲン濃度等の血液検査に異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
急性膵炎(頻度不明):
- 急性膵炎があらわれることがあるので,観察を十分に行い,血清アミラーゼ値,血清リパーゼ値等に異常が認められた場合には投与を中止すること。
難聴(0.1%未満):
- 難聴,耳鳴等があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止するなど,適切な処置を行うこと。
薬効薬理
抗腫瘍作用21)〜27)
- マウスのL1210白血病,P388白血病,B16メラノーマ,colon26結腸癌,M5076卵巣癌,Lewis肺癌に対して抗腫瘍作用が認められた。シスプラチン耐性卵巣癌細胞株KFr及びTYK-nu(R)細胞に対しカルボプラチンは交叉耐性を示したが,その程度はシスプラチンの1/2又は1/4であった。
作用機序28)〜30)
- 癌細胞内のDNA鎖と結合し,DNA合成及びそれに引き続く癌細胞の分裂を阻害するものと考えられている。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
化学名:
- cis-Diammine(1,1-cyclobutanedicarboxylato)-platinum(II)
- カルボプラチンは白色の結晶又は結晶性の粉末である。水にやや溶けにくく,エタノール(95)に極めて溶けにくく,無水エーテルにはほとんど溶けない。
★リンクテーブル★
[★]
商品
[★]
- 英
- carboplatin
- 同
- シクロブタンジカルボン酸プラチナム cyclobutane dicarboxylate platinum CBDCA
- 商
- パラプラチン Paraplatin
- 関
- 抗腫瘍薬
特徴
作用機序
- DNA鎖内および鎖間架橋の形成によりDNA合成を阻害
適応
- 頭頸部癌、肺小細胞癌、精巣腫瘍、卵巣癌、子宮頸癌、悪性リンパ腫、非小細胞肺癌
- 以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
- 小児悪性固形腫瘍(神経芽腫・網膜芽腫・肝芽腫・中枢神経系胚細胞腫瘍、再発又は難治性のユーイング肉腫・腎芽腫)
副作用
添付文書
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4291403F1026_2_14/
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4291403A1088_1_03/