頭文字 | 特徴 | |
A | Asymmetry | 不規則形 |
B | Borderline irregularity | 境界不鮮明 |
C | Color variegation | 色調多彩 |
D | Diameter enlargement | 拡大傾向(直径6mm以上) |
E | Elevation of surface | 表面隆起 |
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/07/09 07:05:15」(JST)
悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ、メラノーマ、malignant melanoma)とは、皮膚、眼窩内組織、口腔粘膜上皮などに発生するメラノサイト由来の悪性腫瘍である。正確な発生原因は不明であるが、表皮基底層部に存在するメラノサイトの癌化によって生じてくるのではないかと考えられている。皮膚に発生する悪性黒色腫は紫外線曝露と、足底に発生するものは機械的刺激と関連性が深いと考えられている。
1970年代までは、扁平上皮基底層に存在する良性の母斑が、前癌病変である異形成母斑 (dysplastic nevus) を形成し、水平増殖期、垂直増殖期を経て転移を起こすという段階的な悪性化モデルが考えられていた。しかし、現在はメラノーマの大部分は母斑とは無関係に、表皮基底層部に存在するメラノサイトの癌化によって生じてくるのではないかと考えられている(したがって、通常のほくろが長期的な刺激などにより悪性化するとの説は否定されつつある)[1]。
日本人の年間推定発生患者数は1500 - 2000人前後(人口10万人に約1.5 - 2人の割合)[2]とされており、欧米人の「10万人に約15 - 20人[3]」に比べ圧倒的に少ないが、近年は増加傾向にある。
悪性黒色腫はいくつかの型に分類できるが、その中で表在拡大型は紫外線の影響が大きいと考えられている。悪性黒色腫の病型相対頻度を見ると、日本人では表在拡大型は17%[4]であるのに対し、白色人種では58%[5]と有意に発生率が高い。日焼けマシーンの使用者は発症リスクが、1.2倍に上昇する[6]との報告がある。
この悪性黒色腫は人間以外にも発生する病気で、特に芦毛馬の発生率が高い。日本の競走馬ではシービークロス(天皇賞馬タマモクロスの父。1991年に死亡)、ハクタイセイ(皐月賞馬。2013年に死亡)などが悪性黒色腫が元で亡くなっている。
皮膚の悪性黒色腫は見ただけである程度診断できる。特徴は以下のとおりである。
これらを覚えやすく、Asymmetry(非対称)、Border(輪郭)、Color(色)、Diameter(径)から一文字ずつとってABCDと言われる。さらに日本では、ほとんどすべての症例が病変部の隆起 (Elevation) を伴うことから、ABCDEとも言われる。
メラノサイト由来の腫瘍を診断する場合、メラノサイトが産生するメラニン顆粒の存在を証明することが必須となる。組織内のメラニン顆粒を脱色することでメラニン顆粒の存在を証明する漂白法、メラニン顆粒を染め出す染色としてフォンタナ・マッソン法などが存在する。
病変の一部を採取する皮膚生検は、転移を促すため原則禁忌。はじめから拡大切除を行うのが望ましい。しかしながら、鑑別が困難な例では組織診をしなければ診断できないこともあり、#病期にもあるように悪性黒色腫のT分類は腫瘍の厚さであるために、一旦切除して病理検査をしなければわからない。そのため、腫瘍周囲から5mmまでの範囲で全摘生検を行った後に進行度に応じて追加切除を行うことも行われている。
抗ビメンチン抗体に100%陽性。抗サイトケラチン抗体陰性、抗S-100蛋白抗体陽性、抗メラノソーム抗体(HMB-45等)陽性。
TNM分類を基に臨床病期が決定される。Tは腫瘍の厚さによって規定され、上皮内癌をTisとし、1mm、2mm、4mmを境にT1〜T4までの4段階に分けられる。これはさらに潰瘍の有無によってaとbに亜分類される。Nは所属リンパ節への転移の数で規定され、0個でN0、1個でN1、2〜3個でN2、4個以上でN3とされる。Mは遠隔転移で規定され、転移がなければM0、あればM1となる。さらに転移部位とLDH値でa〜cに亜分類される。
これをもとに、N0M0でTisを0期、T1およびT2aをI期、T2bおよびT3、T4をII期、N1〜3M0をIII期、M1をIV期とする。
悪性黒色腫細胞の産生するメラニン顆粒は元来、強すぎる太陽光、特に紫外線から生体を守るために防御反応として産生されるものである。 また、化学療法も、術後補助療法や手術不能例に対しダカルバジン、ニムスチン、ビンクリスチンとインターフェロンβを併用するDAV feron療法などが用いられてはいるものの、奏功率は30%である上に完全寛解は稀で部分寛解がほとんどである。BRAF V600E変異(メラノーマの50%程度)が認められる場合は、BRAF阻害薬の低分子の経口薬のベムラフェニブなどが使用される。ベムラフェニブによる治療もがんの耐性獲得のために腫瘍抑制効果は一時的とされる(継続投与で誘導されるBRAF(V600E)の発現亢進が原因とされ、休期間を適時とることで腫瘍抑制効果を持続できる可能性がある[8])。
第一選択の治療は外科的切除に頼ったものになっている。手術は全摘が原則であり、その際には腫瘍周囲3cm(早期であれば1cmのこともある)の範囲を摘出する。診断のために全摘生検を行っていた場合は、転移を防ぐために生検から2週間以内に根治手術を行うのが望ましい。
また、2014年治療薬として、抗PD-1抗体ニボルマブが世界に先駆け日本で承認され発売された[9][10][11]。
0期やI期であれば5年生存率は90%以上であり、II期でも70 - 80%であるが、III期では50%程度、IV期では10%未満と予後は悪くなる。また、陰部など特殊な部位に発生した悪性黒色腫は他の部位のものと比べ予後は悪い。
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