- 英
- ovarian hyperstimulation syndrome、OHSS
定義
疫学
病態
参考1
- OHSSは、多数の卵胞が成熟し黄体となる過程で放出されるいくつかの血管作動性物質の過剰な放出が引き金となり、毛細血管の透過性が増加することによると思われる。
- 卵胞由来の血管内皮成長因子(VEGF)(これだけではないと思うが)がOHSSの引き金となる。
- 血管内皮成長因子(VEGF)には2つの作用がある;(1)血管新生の強力なpromoter、(2)(多分)(部分的にNOを介して)血管透過性の亢進作用(→機能的な血管床の整合性/完全性(integrity)が損なわれる)、(3)細胞のアクチン線維を変化させて、接着結合を弱める(かもしれない)。
- 血液中の血管内皮成長因子はOHSSの発症と重症度と正の相関関係にある。
発症までの流れ
- 1. 多数の二次卵胞(antral follicle)が発育を始め、ついには排卵を迎える
- 2. 発育した多くの卵胞から過量の血管内皮成長因子(VEGF)が産生される。
- 3. 卵胞周囲の透過性の亢進した血管新生がおきる。
- 4. 多量のVEGFを含んだ濾胞液(follicular fluid)や濾胞周囲の血管が腹腔に流れ込み、VEGFなどが全身の血管床に吸収される。
- 5. 全身の血管の機能が異常となり、血管内の水分が多量に細胞間質(third space)に移動する
- 6. 循環血液量減少と共に、浮腫、腹水、胸水、心嚢液貯留をきたす。
- 7. 心機能、腎機能、肺、肝機能が悪化する
参考5改変
- ゴナドトロピン製剤の投与により主席卵胞の発育と同時に小卵胞の閉鎖化が抑制され、多数の卵胞発育が起こる。この結果、多数の卵胞からエストラジオールが分泌され、また内因性黄体化ホルモン(LH)の分泌が亢進する。(排卵を誘発するために?)hCGを投与すると、内因性のLHとあいまって黄体細胞から血管透過性を亢進させる物質が過剰に分泌される。
身体所見
検査
- 超音波検査:多数の卵胞・黄体濾胞、胸水、腹水
- 血液検査:(血液濃縮の所見)、低蛋白血症、凝固能亢進
症状
- G9M.88
治療
- G9M.88
参考
- 1. [charged] Pathogenesis of ovarian hyperstimulation syndrome - uptodate [1]
- 2. [charged] Classification and treatment of ovarian hyperstimulation syndrome - uptodate [2]
- 3. 〔産科合併症とその対策〕OHSS の発生原因とその管理 - 日産婦誌50巻6号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/50/5006-135.pdf
- 4. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 卵巣過剰刺激症候群(OHSS) -
- http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm1104011.pdf
- 5. 〔各種専門委員会コーナー〕卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク因子と対策 - 日産婦誌52巻5号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/52/5205-097.pdf
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/09/28 13:04:03」(JST)
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卵巣過剰刺激症候群 |
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
N98.1 |
ICD-9 |
xxx |
DiseasesDB |
32038 |
MedlinePlus |
007294 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
テンプレートを表示 |
卵巣過剰刺激症候群(らんそうかじょうしげきしょうこうぐん、英: Ovarian hyperstimulation syndrome)(OHSS)とは、排卵誘発剤に伴い多数の卵胞が発育することにより、卵巣腫大、下腹部痛などの症状を呈する症候群のこと[1] [2]。
症状
hMG-hCG療法(ゴナドトロピン療法)によって排卵誘発を行った症例の20~30%に発症する[3]。排卵誘発剤により多数の卵胞が発育し卵巣が腫大し、それにより下腹部痛を生じる[1][2]。また血管透過性も亢進し、それにより腹水、胸水が生じ呼吸困難、乏尿となる[1][2][4]。血液が濃縮されるため、血栓症を生じる[1][2]。
治療
凝固予防にアスピリンやヘパリン、腎血流量を増やすためにドーパミンなどが使用される[1]。循環血減少に対し輸液、膠質浸透圧低下に対し、蛋白製剤(アルブミン)投与が行われる[2][3]。
脚注
- ^ a b c d e 南山堂医学大辞典 第12版 ISBN 978-4525010294
- ^ a b c d e 伊藤正男 、井村裕夫、 高久史麿 『医学書院医学大辞典 第2版』、2009年。ISBN 978-4260005821。
- ^ a b 病気がみえるVol.9 「婦人科・乳腺外科」P88 メディックメディア社発行 ISBN 978-4896324624
- ^ Stedman's Medical Dictionary 28th ISBN 978-0781733908
関連項目
UpToDate Contents
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- 1. 卵巣過剰刺激症候群の分類および治療 classification and treatment of ovarian hyperstimulation syndrome
- 2. 卵巣過剰刺激症候群の病因 pathogenesis of ovarian hyperstimulation syndrome
- 3. 卵巣過剰刺激症候群の予防 prevention of ovarian hyperstimulation syndrome
- 4. 排卵誘発の概要 overview of ovulation induction
- 5. 体外受精(IFV) in vitro fertilization
Japanese Journal
- 症例報告 腹水濾過濃縮再静注法が著効した重症卵巣過剰刺激症候群の1例
- 卵巣刺激を必要としない未成熟卵子を用いた体外受精法の原理と実際 (第1土曜特集 生殖医学・医療の最前線) -- (生殖補助医療(ART)の最前線)
- 採卵 : いかにして安全に良質の卵子を獲得するか (第1土曜特集 生殖医学・医療の最前線) -- (生殖補助医療(ART)の最前線)
Related Links
- 排卵誘発によって、卵巣が膨れ上がり、腹水や、ときに胸水などの合併症状が起こる ことをOHSS(卵巣過剰刺激症候群)と呼びます。
- 女性の卵巣は親指大ほど(3~4cm)の臓器ですが、その中の卵(卵胞)が過剰に刺激 されることによって、卵巣が膨れ上がり、腹水や、ときに胸水などの症状が起こることを OHSS(卵巣過剰刺激症候群)と呼びます。 排卵障害をともなう不妊治療において卵胞を ...
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★リンクテーブル★
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- 22歳の女性。未経妊。無月経と挙児希望とを主訴に来院した。クロミフェンでは排卵が起こらず、ゴナドトロピン療法を行った。両側卵巣が径15cmに腫大し、胸水と大量の腹水との貯留を認める。一日尿量は300ml。血液所見: 赤血球 500万、Hb 16.5g/dl、Ht 55%、白血球 19,000。血液生化学所見: LH 35.8mIU/ml(基準1.8-7.6)、FSH 10.5mIU/ml(基準5.2-14.4)。
- 治療として適切なのはどれか。2つ選べ。
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※国試ナビ4※ [101F050]←[国試_101]→[101F052]
[★]
- 英
- edema
- 関
- 水腫、angioedema、全身性浮腫
分類
- 低アルブミン血症はfast edema と覚えておく
浮腫の原因
- IMD.518
-
- 内分泌性浮腫
- 栄養失調性浮腫・栄養障害性浮腫
- 薬剤性浮腫
- 起立性浮腫
- 特発性浮腫
- 内科診断リファレンス p.4
浮腫を来す疾患
- IMD.519改変
-
- 内科外科マニュアルp.212
- 蜂窩織炎
- 深部静脈血栓症
- 表在静脈瘤(慢性静脈還流不全)
- うっ血性心不全
- ネフローゼ症候群
- 肝硬変
- 甲状腺機能亢進症
- 甲状腺機能低下症
- 薬剤:CCB,ピオグリタゾン,NSAIDs,女性ホルモン,甘草
- 特発性浮腫:女性,夕方増悪する下腿の浮腫:NaCl,炭水化物制限
- 月経前症候群:黄体期に出現し,月経発来と共に消退:当帰芍薬散,加味逍遥散
肝性浮腫と腎性浮腫
- 肝性浮腫は下肢に、腎性浮腫では眼瞼に浮腫が初発する?(出典不明)
-
- 越婢加朮湯
- 五苓散
-
-
- 当帰芍薬散
- 真武湯
-
- 防已黄耆湯
- 八味地黄丸
参考
[★]
- 英
- lower abdominal pain
- 関
- 下腹痛。腹痛
診療エッセンシャルズ.271 改変
産婦人科疾患
- NGY.138
急性かつ重篤な下腹痛
中等度の下腹痛
- 1. 鎖陰
- 2. 卵巣嚢腫破裂
- 3. 子宮内膜症
- 4. 月経困難症
- 5. 子宮筋腫
- 6. 急性付属器炎、子宮内膜炎:子宮内膜炎は子宮内操作や流産後などに起こり、ほとんどが上行性感染と考えられ、発熱や不正出血などの随伴症状を伴うことが多い。卵管に炎症が波及し付属器炎になると下腹痛も増悪し、骨盤腹膜炎を来すことがある。起因菌はクラミジアの頻度が増加している。(参考1)
- 7. 流産
産婦人科の下腹部痛の鑑別疾患
- 参考1
病みえ産婦人科
- 引用p.212
妊娠の有無による鑑別
参考
- 1. (12)日本産婦人科医会研修プログラム;痛みの診断と治療
3)急性腹症,がん性疼痛への対応 - 日産婦誌58巻9号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/58/5809-395.pdf
[★]
- 英
- gonadotropin therapy
- 同
- ヒト閉経期ゴナドトロピン-ヒト絨毛性ゴナドトロピン療法 human menopausal gonadotropin-human chorionic gonadotropin therapy、hMG-hCG療法 hMG-hCG therapy、FSH-hCG療法 FSH-hCG therapy
- 関
- 排卵誘発法
[★]
- 英
- ovulation induction, induction of ovulation
- 関
- 排卵誘発、排卵誘発療法。体外受精-胚移植
種類
- NGY.522
G9M.38
副作用
参考
- 1. クリニカルカンファレンス3 生殖医療のup-to-date 3)調節卵巣刺激法 - 日産婦誌62巻9号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/62/6209-141.pdf
[★]
心膜水腫
- Intravascular hypovolemia, concomitant with development of edema, ascites, hydrothorax and/or hydropericardium.(uptodate)卵巣過剰刺激症候群の症状として
[★]
- 英
- syndrome, symptom-complex
- 同
- 症状群
- 関
- [[]]
- 成因や病理学的所見からではなく、複数の症候の組み合わせによって診断される診断名あるいは疾患。
内分泌
先天的代謝異常
高プロラクチン血症
- 分娩後の視床下部障害によるプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制のため、高プロラクチン血症を呈する。
- 分娩に関係なくプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制をきたし、高プロラクチン血症を呈する。
性腺機能低下
- 嗅覚の低下・脱出、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
- 肥満、網膜色素変性症、知能低下、低ゴナドトロピン性性器発育不全、多指症、低身長
性早熟
- 思春期早発症、多発性線維性骨異形成症、皮膚色素沈着
- 女性型の肥満、性器の発育障害の2主徴を示し、視床下部に器質的障害をもつ疾患群。
脳神経外科・神経内科
[★]
- 英
- ovary
- ラ
- ovarium
- 関
- 子宮
解剖
卵巣の固定
- 卵巣提索:卵巣の上端と骨盤側壁を結ぶ。卵巣動脈、卵巣静脈、リンパ管、腹大動脈自律神経叢からの自律神経が通る
- 固有卵巣索
卵巣の上皮
- 腹膜には覆われず、胚上皮(表層上皮)に覆われている。
血管
重量
疾患 (NGY.201)
発生 L.307
[★]
- 英
- (刺激そのもの)stimulus、stimuli。(行為)stimulation、、stimulate、irritate、incite、(薬物や抗原で)prime
- 同
- impulse
- 関
- 刺激作用、煽動、抗原刺激、扇動、予備刺激
[★]
- 関
- excess、excessive、excess、supernumerary、surplus、superfluous、excessively、(pref)hyper
[★]
- 英
- group
- 関
- グループ、集団、分類、群れ、基、グループ化