- 英
- placenta accreta
原因
頻度
- NGY.459
- 2500-700分娩に1例
- 1/3は前置胎盤に合併
- 1/4は前回帝王切開
- 1/4は子宮内清掃術に合併
分類
治療
- 用手剥離
- 薬物療法:メトトレキセート、エトポシド
- 手術療法:用手剥離が困難で出血のコントロールがつかない場合
参考
- C.産科疾患の診断・治療・管理 - 5.異常分娩の管理と処置 - 日産婦誌54巻6号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/54/5406-139.pdf
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/08/20 08:12:14」(JST)
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癒着胎盤(ゆちゃくたいばん)とは、妊娠・出産の際に発生する合併症の1つであり、胎盤が母体の子宮に癒着して剥離が困難となる疾患である。
目次
- 1 病態
- 2 分類
- 3 頻度
- 4 診断
- 5 臨床上の問題
- 6 関連項目
病態
出産の際に児が娩出された後、正常分娩であれば胎盤が子宮から剥離して娩出されるが、何らかの理由により胎盤の絨毛組織が母体子宮の筋層に侵入していた場合、胎盤が子宮から剥離せず、積極的な医療的介入を行わない限り出産の進行が不可能となる。 類似した疾患として付着胎盤があり、これと癒着胎盤との鑑別は、胎盤と子宮の組織間に床脱落膜が形成されているか否かを組織学的に評価することで行う。床脱落膜が形成されているものが付着胎盤、形成されていないものが癒着胎盤である。
分類
IrvingおよびHertigによる病理組織学的分類では、胎盤が子宮筋層表面に癒着したものを楔入胎盤(せつにゅうたいばん)、筋層深くに侵入したものを陥入胎盤(かんにゅうたいばん)、筋層を貫通して漿膜層に到達したものを穿通胎盤(せんつうたいばん)として分類しており、日本産科婦人科学会でもこの分類に従っている。 癒着の占める割合による分類では、胎盤の全面が癒着している全癒着胎盤、全面ではないが複数の胎盤葉が癒着しているものを部分癒着胎盤、1個の胎盤葉が癒着しているものを焦点癒着胎盤とする。
頻度
癒着胎盤の発生頻度は約0.01%(出産1万件に1件)であり、稀な疾患である。一方、容易には子宮から剥離しないが用手的には剥離可能な付着胎盤は約0.3%(出産1千件に3件)の頻度で存在する。 初産婦と経産婦では経産婦でより多く、癒着胎盤症例の約80%が経産婦である。
診断
本疾患を分娩以前に診断することは不可能である。 分娩後に胎盤の遺残があり、胎盤娩出促進手技を行っても剥離する兆候が見られない場合、臨床的に癒着胎盤が疑われる。確定診断は、摘出した子宮もしくは胎盤の病理的検討のみにより可能である。
臨床上の問題
癒着した胎盤を用手的に剥離する際に大出血を来たし、それに続発する出血性ショックや播種性血管内凝固症候群により、母体死亡の原因となる。稀な疾患ではあるが、母体死亡全体に占める癒着胎盤の割合は約3%(母体死亡33件に1件)と少なくなく、産科的に重要な疾患である。
関連項目
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- P2-11-8 子宮全面にわたり子宮筋層が高度にひ薄化し,癒着胎盤のために子宮摘出を行ったSLE合併妊娠の一例(Group87 合併症妊娠(症例)3,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 小関 剛,山嵜 剛,堀之内 崇士,市原 憲雄,寺田 貴武,蔵本 昭孝,石松 順嗣
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 754, 2011-02-01
- NAID 110008509684
- P1-25-27 癒着胎盤における内腸骨動脈バルーン塞栓術の有効性に関する検討(Group59 胎盤異常(症例),一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 加藤 恵利奈,小林 祐介,林 忠佑,青木 洋一,前林 亜紀,佐々木 重胤,三宅 良明,山本 樹生
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 649, 2011-02-01
- NAID 110008509371
- P1-25-23 前置癒着胎盤症例のCesarean hysterectomyに内腸骨動脈バルーン閉塞を併用した1例(Group59 胎盤異常(症例),一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 斎藤 央,堀口 育代,林 良宣,露木 佳子,川田 清弥,米澤 優
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 648, 2011-02-01
- NAID 110008509367
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- 2010年2月28日 ... なお胎盤が子宮壁に付着しているが、筋層との結合が密ではなく、床脱落膜の欠損を 伴わない真の癒着胎盤ではないものを付着 ... 【頻度】 付着胎盤を含めて約0.3%の 発生率で、癒着胎盤だけでは約0.01%とまれな疾患である。癒着胎盤の ...
- 2006年2月19日 ... 癒着胎盤は非常にまれで、事前の予測は不可能なことがほとんどです。正常の妊娠 経過で正常の経膣分娩後であっても、児の娩出後に胎盤が剥がれず大量出血が 始まれば、そこで初めて癒着胎盤を疑い、緊急で子宮摘出手術を実施し ...
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[★]
- 次の文を読み、1~3の問いに答えよ。
- 34歳の初産婦。胎児の異常を指摘され、妊娠31週に近医の紹介で精査のため入院した。
- 現病歴 : 妊娠初期に特記すべきことはなく、妊娠29週ころから軽度の腹部緊満感を訴えていた。妊娠30週の妊婦健康診査で胎児の異常を指摘された。
- 既往歴・家族歴 : 特記すべきことはない。
- 現症 : 意識は清明。身長155cm、体重58㎏。体温36.0℃。脈拍80/分、整。血圧98/64mmHg。下肢に浮腫を認める。触診上、胎児は第1頭位であった。子宮底長32cm。
- 検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)。
- 血液所見:赤血球320万、Hb10.2g/dl、Ht30%、白血球9,800、血小板20万。
- 血清生化学所見:総蛋白6.0g/dl、アルブミン3.1g/dl、クレアチニン0.5mg/dl、AST22単位、ALT20単位、LDH180単位(基準176~353)、アルカリホスファターゼ350単位(基準260以下)。胎児の腹部超音波写真(別冊No.1A)と胎児MRIのT2強調冠状断像(別冊No.1B)とを別に示す。
- 入院後の経過:腹部緊満感が徐々に強くなり、妊娠33週には子宮底長が38cmとなり、軽度の呼吸困難を訴えるようになった。超音波検査で羊水腔の拡大が認められる。胎児心拍数パターンに以上を認めない。
[正答]
※国試ナビ4※ [099H030]←[国試_099]→[099I002]
[★]
- 42歳の初産婦(1妊O産)。陣痛発来のため入院した。既往歴は35歳で腹腔鏡下子宮筋腫核出術、38歳で子宮鏡下子宮内膜ポリープ摘出術を受けた。入院後8時間で3,450gの男児を経腟分娩し、児娩出の5分後に胎盤はスムーズに娩出された。分娩時出血量は100mLであり、会陰裂傷に対して縫合術を行った。産後20分の時点で軽度の意識混濁が出現した。この時点で脈拍 120/分、整。血圧 72/40mmHg。呼吸数 24/分であり、腹部の疹痛を訴えている。外出血(性器出血)は少量で、腟鏡診でも子宮口からのわずかな血液流出を認めるのみである。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114D016]←[国試_114]→[114D018]
[★]
- 35歳の経産婦(3妊2産)。妊娠33週に周産期管理目的で、自宅近くの産科診療所から紹介され受診した。既往歴は、30歳時および32歳時に、それぞれ骨盤位および既往帝王切開の適応で選択的帝王切開。身長 156cm、体重 56kg(妊娠前体重 48kg)。体温 36.8℃。脈拍 84/分、整。血圧 108/76mmHg。現時点で自覚症状はなく、胎児心拍数陣痛図で異常を認めない。骨盤MRIのT2強調像(別冊No. 31)を別に示す。
- 考えられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [113A070]←[国試_113]→[113A072]
[★]
- 33歳の初産婦。妊娠39週。10分周期の陣痛が発来し来院した。妊娠8週の自然流産歴が2回ある。不妊外来での治療後、今回の妊娠が成立した。定期的妊婦健康診査では、特に異常は指摘されていない。入院時の内診所見は子宮ロ2cm開大、展退度60%、下降度SP -2で破水を認めた。入院時と2時間後との胎児心拍数陣痛図を以下に示す。
[正答]
※国試ナビ4※ [096A001]←[国試_096]→[096A003]
[★]
- 30歳の2回経産婦。分娩は2回とも児頭骨盤不均衡(CPD)のため帝王切開を受けた。妊娠30週3日で少量の性器出血があり、近医から紹介され入院した。内診所見では子宮口未開大。超音波断層検査では胎児の推定体重は1,500gである。入院直後の胎児心拍陣痛図とMRIとを以下に示す。考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099H002]←[国試_099]→[099H004]
[★]
- a 臍帯が下降する。
- b 出血量が増加する。
- c 産婦が便意を訴える。
- d 子宮底に与えた振動が臍帯に響く。
- e 恥骨結合上部の圧迫で臍帯が上昇する。
[正答]
※国試ナビ4※ [105E035]←[国試_105]→[105E037]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [104E015]←[国試_104]→[104E017]
[★]
- a. 多産婦に多い。
- b. 癒着胎盤が多い。
- c. 無痛性出血をみる。
- d. 妊娠15週で診断できる。
- e. 人工妊娠中絶術の既往は危険因子である。
[正答]
※国試ナビ4※ [099D120]←[国試_099]→[099E002]
[★]
- 娩出された胎盤の肉眼的観察が診断に重要でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106B013]←[国試_106]→[106B015]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [112B023]←[国試_112]→[112B025]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [101F003]←[国試_101]→[101F005]
[★]
- 英
- placenta previa
- ラ
- placenta praevia
- 関
- 辺縁前置胎盤
概念
- 胎盤の一部または大部分が子宮下部に付着し内子宮口におおう状態
疫学
- 総分娩数の0.5%。初産婦0.2%、多産婦5%。 (NGY.408)
分類
- 全前置胎盤 :組織学的内子宮口を覆う胎盤の辺縁から内子宮口までの最短距離が2cm以上の状態:25%程度
- 部分前置胎盤:組織学的内子宮口を覆う胎盤の辺縁から内子宮口までの最短距離が2cm未満の状態:最多。50%程度
- 辺縁前置胎盤:組織学的内子宮口を覆う胎盤の辺縁から内子宮口までの最短距離がほぼ0cmの状態:25%程度
リスクファクター
- 前回帝王切開、中絶を含む子宮内手術の既往、喫煙、多胎妊娠、多産、母体の高齢
合併症
症状
- 妊娠後期に生じる無痛性の出血
- 妊娠中:無痛性の出血で、妊娠週数を重ねるにつれ出血量が増加する。最初の出血が少量でも、将来の大出血を示唆する(1週間以内の大出血を示唆。1日200g以上の出血をみたら帝王切開する場合がある)。
- 分娩中:陣痛時には出血が増加し、間欠期には減少する。辺縁前置胎盤では分娩中は帰って出血が減少する。
- 分娩後:子宮峡部の弛緩や癒着胎盤により出血が持続しやすい。
検査
管理
- 資料1
- いずれの場合でも、入院後、大量出血に備えて自己貯血を行う。
入院中期以降に出血が無い場合
- 全前置胎盤では、妊娠28週以降、遅くても34週には入院管理とし、出血がない場合には妊娠36週以降に予定帝王切開術を行う。自己貯血は可能であれば用意しておく。
入院中期以降に出血がある場合
- 入院安静とし、子宮の収縮が認められれば子宮収縮抑制薬を投与する。妊娠期間の延長をはかり、妊娠36週になるか出血がコントロールができなくなった場合に帝王切開術を行う。 ← 妊娠37週以降の帝王切開を目標にする(G9M.113)
参考
- http://www.jsog.or.jp/PDF/59/5912-712.pdf
[★]
- 英
- obstetrical shock, obstetric shock
- ラ
- shock obstetricus
- 同
- 分娩時ショック
- 関
- ショック
分類
- G10M.274改変 QB.P316
[★]
- 英
- genital bleeding
- 関
- 不正性器出血。新生女児性器出血
妊娠初期に見られる性器出血
妊娠後期に見られる性器出血
- 前置胎盤:下腹部痛なし
頚管無力症 ← 妊娠の中期以降に性器出血や腹痛を伴わずに頚管が短縮・開大し、胎児が娩出される(NGY.402)。なので性器出血の鑑別に入らないのでは?
- 切迫早産:下腹部痛(+)(←陣痛)、子宮口やや開大
- 常位胎盤早期剥離:下腹部痛(++)。板状硬
分娩後に見られる性器出血
- 弛緩出血
- 子宮破裂:病的収縮輪を認め、激痛を訴える。胎児ジストレス~胎児心拍の消失。母体の突然のショック。
- 子宮内反症:臍帯の用手的牽引による。激痛と出血によるショックに陥ることがある。
- 癒着胎盤
- 産道裂傷(頚管裂傷):
[★]
- 英
- placental separation sign
- 関
- 胎盤、胎盤剥離、癒着胎盤
[★]
- 関
- 分娩時出血
概念
- 分娩時多量出血(分娩後2時間までの出血が500ml以上)の原因としては弛緩出血、頚管裂傷、胎盤遺残、膣裂傷、子宮内反症、子宮破裂、DICがあるが、弛緩出血が最多で、腟・頚管裂傷、胎盤遺残も主要な原因である。(QB.P-316)
NGY.464改変
[★]
- 英
- placenta (Z)
発生
- G10M.30 NGY.287
- 妊娠7週から形成が始まり、妊娠4ヶ月末(妊娠15週末,妊娠前期末)に完成。妊娠10ヶ月末まで増大し続ける。
解剖
- NGY.287
- 正期産では500g、直径20cm、厚さは中央部で2cmの扁平な円盤状構造物である。
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
機能
ガス・物質交換と代謝
単純核酸
|
酸素、二酸化炭素、遊離脂肪酸、脂溶性ビタミン、ナトリウム、カリウム、尿素、尿酸、薬剤の大部分、麻酔学
|
促進拡散
|
グルコース。GLUT1とGLUT3による
|
能動輸送
|
アミノ酸、水溶性ビタミン、カルシウム、リン酸塩、鉄、ヨード
|
エンドサイトーシス
|
IgG, LDLコレステロール
|
薬物・毒物・感染性物質の胎盤通過性
- 脂溶性・非イオン性薬剤、分子量≧600、非抱合型ステロイドホルモン、脂質
- 水溶性・イオン性薬剤、分子量<1000、血清蛋白結合能の強い薬剤、ポリペプチドホルモン、抱合型ステロイドホルモン
ホルモン産生
[★]
- 英
- adhesion、adherence、accretion、coalescence、adhere、coalesce、adhesive、coalescent、symphysial
- 関
- 結合、固執、固着、接着、接着剤、接着性、粘着、粘着性、付着、付着性、癒合、固着性、密着性、合体、粘着剤、アドヒアランス