- 71歳の女性。発熱と下腿浮腫とを主訴に来院した。65歳時から2型糖尿病のため自宅近くの医療機関に通院中である。これまで網膜症は指摘されていない。1か月前から37℃台の微熱があり、両側の下腿浮腫を自覚するようになった。かかりつけ医で血尿と蛋白尿とを指摘され、精査のために紹介されて受診した。体温 37.6℃。脈拍 92/分、整。血圧 146/88mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 98%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。両側の下腿に浮腫と網状皮斑とを認める。左下腿の温痛覚の低下を認める。尿所見:蛋白3+、潜血3+、沈渣に赤血球 50~100/1視野、白血球 10~20/1視野、赤血球円柱を認める。血液所見:赤血球 324万、Hb 10.0g/dL、Ht 31%、白血球 10,300(桿状核好中球 20%、分葉核好中球 52%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 3%、リンパ球 22%)、血小板 22万。血液生化学所見:総蛋白 6.0g/dL、アルブミン 2.3g/dL、尿素窒素 40mg/dL、クレアチニン 2.5mg/dL、血糖 98mg/dL、HbA1c 5.8%(基準 4.6~6.2)、Na 138mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 100mEq/L。免疫血清学所見:CRP 6.5mg/dL、リウマトイド因子(RF) 陰性、抗核抗体 陰性、MPO-ANCA 84U/mL(基準 3.5未満)、PR3-ANCA 3.5U/mL未満(基準 3.5未満)。胸部エックス線写真で異常を認めない。腎生検のPAS染色標本(別冊No. 5)を別に示す。
- この患者でまず行うべき治療はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112A022]←[国試_112]→[112A024]
★リンクテーブル★
[★]
- 69歳の男性。全身倦怠感と食欲不振とを主訴に来院した。2年前に進行胃癌のため胃全摘術を受けた。その後受診をしなかったが、3か月前から倦怠感を自覚し、最近食欲不振が増強して食事摂取量が平常時の1/3以下となったため、不安になり受診した。身長 170cm、体重 45kg。体温 36.2℃。脈拍 80/分、整。血圧 130/70mmHg。呼吸数 14/分。胸部エックス線写真で多発肺転移を認め、腹部CT及び超音波検査で多発肝転移と軽度の腹水貯留とを認めた。悪心、嘔吐、呼吸困難および疼痛を認めず、患者と家族は在宅医療を希望している。
- 今後の方針として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112A023]←[国試_112]→[112A025]
[★]
- 75歳の男性。頭部の皮疹を主訴に来院した。皮疹は3か月前に同部位を打撲した後に出現し、徐々に拡大して、わずかな刺激で出血するようになってきた。頭部の写真(別冊No. 4)を別に示す。
- この疾患について正しいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112A021]←[国試_112]→[112A023]
[★]
[★]
- 英
- microscopic polyangiitis, MPA
- 同
- 顕微鏡的多発性血管炎、顕微鏡的多発動脈炎 microscopic polyarteritis
- 関
- 血管炎。MPO-ANCA、ANCA関連血管炎
概念
- 古典的なクスマウル・マイアー型(Kussmaul-Maier)の多発動脈炎に対し、分節状壊死性糸球体腎炎のような微小血管炎を伴う多発動脈炎を顕微鏡型と称したのに由来する。
- 小血管の炎症であるので、小血管が集まった臓器が冒される、腎臓(急速進行型糸球体腎炎 RPGN)、肺(間質性肺炎)
定義
- CHCC 2012
- 免疫沈着を全くまたはほとんど認めない壊死性血管炎。主に小型血管(すなわち毛細血管、細静脈、または細動脈)を侵す。壊死性血管炎は小型動脈や中型動脈にも認めることがある。壊死性糸球体腎炎は非常によくみられる。肺毛細血管炎もしばしば生じる。肉芽腫性炎症は認めない。
症状
- https://www.nanbyou.or.jp/entry/245
全身症状
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約70%
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高血圧
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約30%
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皮疹
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約60%
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多発性単神経炎
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約60%
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関節痛
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約50%
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筋痛
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約50%
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間質性肺炎
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約25%
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肺胞出血
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約10%
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心不全
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約18%
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消化管病変
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約20%
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検査
尿検査
治療
- ANCA関連血管炎 診療ガイドライン2017
- https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0094/G0000931
- ベースとなるのはステロイドであるが、単独で使われるより、組み合わせて使われていることが多い。
- どの治療が最適化は議論中のようである。
- GC
- GC+POCY/IVCY
- GC+RTX
- GC+MTX
- GC+MMF
国試
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症状
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検査
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病理
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治療
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結節性多発動脈炎
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polyarteritis nodosa,PN
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細動脈に壊死性血管炎を引き起こす。糸球体腎炎なし。
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① 全身症状あり ② 他臓器の虚血障害〈脳出血、肺出血、虚血性心疾患(心臓の冠動脈が虚血)〉 ③ 進行性腎機能低下、腎血管性高血圧(炎症動脈狭窄→レニン分泌)
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尿所見に乏しい進行性腎機能低下、腰痛
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・ 腎臓を含む多臓器の動脈に炎症が生じる。 ・ 腎動脈造影で弓状動脈に生じた結節様病変、糸球体病変は軽度。
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ステロイド&免疫抑制剤(シクロホスファミド)
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顕微鏡的多発動脈炎
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microscopic polyangitis,MPA
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小血管の炎症。糸球体腎炎あり。
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①全身症状:発熱、体重減少、多発関節炎、筋肉痛 ②多臓器の虚血障害:肺出血(血痰) ③進行性腎機能低下(急性進行性糸球体腎炎)(高齢者のRPGNにMPAが多い)
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①RPGN症状が(血尿、蛋白尿、円柱、週単位での腎機能低下) ②MPO-ANCA陽性が85%を占める。
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腎の微小血管と糸球体及び、肺の微小血管に炎症が生じる。 ① 半月体形成:糸球体係蹄壁の外側に増殖した細胞が半月状の形態をとる。 ② 免疫グロブリンや補体の沈着はなし。(p-ANCAがELIZA法で検出される。)
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