- 英
- gentamicin, GM
- 化
- 硫酸ゲンタマイシン gentamicin sulfate ゲンタマイシン硫酸塩
- 商
- エルタシン、ルイネシン、ゲルナート、ゲンタシン。(点眼液)ゲンタロール、リフタマイシン。ルリクール、リンデロン、リダスロン、ベトノバール、デルモゾール、デキサン(ベタメタゾン、ゲンタマイシン)
- 関
- 抗菌薬
-
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ゲンタマイシン
|
|
IUPAC命名法による物質名 |
2-[4,6-diamino-3- [3-amino-6-(1-methylaminoethyl) tetrahydropyran-2-yl] oxy-2-hydroxy- cyclohexoxy]-5-methyl- 4-methylamino-tetrahydropyran-3,5-diol |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
?
|
投与方法 |
点滴静注、筋注 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
経口ではほとんど吸収されない |
血漿タンパク結合 |
0-10% |
半減期 |
2 時間 |
排泄 |
腎臓 |
識別 |
CAS番号 |
1403-66-3 |
ATCコード |
D06AX07 J01GB03 , S01AA11 , S02AA14
, S03AA06 |
PubChem |
CID 3467 |
DrugBank |
APRD00214 |
KEGG |
D08013 |
化学的データ |
化学式 |
C21H43N5O7 |
分子量 |
477.596 g/mol |
ゲンタマイシン(英: gentamicin, gentamycin)は、アミノグリコシド(アミノ配糖体)系抗生物質である。
英語名称は、正式にはgentamicinという。同じアミノグリコシドのtobramycin、streptomycin、kanamycinとは意図的に異なる綴りが与えられている。これは、これらのStreptomycesに由来する薬物に-mycinの名を与えたのに対し、Micromonospora由来のゲンタマイシンには-micinの名を与えたからである。
また、ゲンタマイシンは熱に安定な抗生物質の一つであり、高温高圧滅菌後においても活性を持つ。そのため、ある種の微生物培地の調製に使われる。
作用機序
ゲンタマイシンは殺菌性の抗生物質で、細菌のリボソーム 30S サブユニットに結合して、蛋白合成を阻害する。
他のアミノグリコシド系抗生物質と同様経口投与では無効である。これは、小腸にて吸収された後、門脈を経由して肝臓に到達し、不活化されるためである。そのため、静脈注射、筋肉注射、局所投与にて利用される。
臨床応用
ゲンタマイシンは、グラム陰性桿菌による感染症にほぼ専門的に用いられる。殺菌能の高い薬剤で、緑膿菌などの日和見感染症の起炎菌による敗血症に対する効果が高い。また、広範囲の薬剤が無効である腸球菌に対しても、ペニシリン系薬剤と併用することによって相乗効果を発揮する。緑膿菌のほか、大腸菌、インフルエンザ桿菌、クレブシエラ菌、セラチア菌、アシネトバクター、シトロバクター、エンテロバクターなど血液感染の原因となるようなグラム陰性桿菌はほぼ網羅する抗菌スペクトラムを有する。ゲンタマイシンは黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌や、淋菌・髄膜炎菌 のようなグラム陰性球菌、またレジオネラ菌 による感染症には効果がない。アミノグリコシド系抗生物質には、他の抗生物質に比較すると非常に耐性化しにくいという特徴がある。よく似たトブラマイシンとは、ゲンタマイシンが緑膿菌を得意とするに対し、トブラマイシンはセラチア菌により活性が高いという違いが知られている(どちらもよく効く)。緑膿菌に対しては、有効性、また耐性化の予防の観点から、かならずセフタジジムなど他の抗緑膿菌活性を持った薬剤との併用が行われる。
敗血症のほかは、腎盂腎炎に主に用いられる。組織移行性が低いので、肺炎などといった主要臓器の感染症に用いられることは少ないが、上記の日和見感染症に対する効果を期待し用いることはある。一方血液脳関門を通過できないため、静脈注射では、髄膜炎には完全に無効である。髄腔内投与を行う場合もあるが、この効果を積極的に支持する科学的根拠はない。また、軟膏製剤もあるが、この使用を正当化するような科学的根拠も乏しい。
副作用
すべてのアミノグリコシド系抗生物質は耳に対し毒性を持つ。前庭神経に対する毒性は平衡感覚障害をきたし、一方蝸牛神経に対する障害は聴覚障害をおこし、まれに聾にいたる。アミノグリコシドの中で、ゲンタマイシンの聴覚毒性は最も強い。聴覚障害は、薬剤中止によってもあまり改善しない。
ゲンタマイシンは高い腎毒性をもち、場合によっては急性腎不全に至ることがある。腎障害は、薬剤中止によって改善することが多い。腎毒性の発症頻度は、ゲンタマイシンの血中最低濃度(トラフ)と相関する。腎障害を予防するため、体重により投与量を調節する。欧米では、ゲンタマイシンの投与量の計算式があるが、日本の保険医療の範囲内でこれに従うことは、よほど体が小さくない限り難しい(投与量が上限をこえてしまう[要出典])。治療中は血清中のゲンタマイシン濃度を監視する。
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 硫酸ゲンタマイシン(GM)などの鼓室内注入によるめまい治療--内服薬治療抵抗めまい症例に対する低侵襲治療 (AYUMI 耳鼻咽喉科の低侵襲治療--外来処置,日帰り・短期入院手術の進歩)
- 症例 ゲンタマイシン軟膏使用中に短期間で完全消失した女性外陰部の巨大尖圭コンジローマの1例
Related Links
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ゲンタロール点眼液0.3%
組成
*成分・分量
- 1mL中 日局 ゲンタマイシン硫酸塩 3mg(力価)
*添加物
- ベンザルコニウム塩化物、乾燥亜硫酸ナトリウム、結晶リン酸二水素ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウム、等張化剤
禁忌
- 本剤の成分、アミノグリコシド系抗生物質及びバシトラシンに対し過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
- 〈適応菌種〉
ゲンタマイシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、インフルエンザ菌、ヘモフィルス・エジプチウス(コッホ・ウィークス菌)、緑膿菌
〈適応症〉
眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、角膜炎
- 通常、1回1?2滴、1日3?4回点眼する。
- 本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最少限の期間の投与にとどめること。
薬効薬理
抗菌作用
- ゲンタマイシン硫酸塩はグラム陽性・陰性の好気性菌及び嫌気性菌に対し、広範囲の抗菌スペクトルを有し、特に緑膿菌にすぐれた抗菌性を有する。2)
- 8種類の代表的眼感染症起炎菌について、ゲンタマイシン硫酸塩の最小発育阻止濃度を測定した結果、同じアミノグリコシド系のジベカシン、トブラマイシンと類似の抗菌スペクトルと抗菌力を示した。3)4)
- 常用抗生剤においては、黄色ブドウ球菌では約50%、緑膿菌については、極めて高い耐性分布を示すが、ゲンタマイシン硫酸塩は、黄色ブドウ球菌では0.78μg/mL、緑膿菌では、1.56?6.25μg/mLで発育を阻止した。5)
作用機序
- 作用機序は、蛋白合成阻害であり、作用は殺菌的である。
有効成分に関する理化学的知見
ゲンタマイシンC1硫酸塩:R1=CH3 R2=NHCH3
ゲンタマイシンC2硫酸塩:R1=CH3 R2=NH2
ゲンタマイシンC1a硫酸塩:R1=H R2=NH2
★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、60~62の問いに答えよ。
- 20歳の男性。発熱と右下肢の発赤、疼痛および腫脹とを主訴に来院した。
- 現病歴:4日前、屋外でバスケットボールの練習中に転倒し右下腿を打撲した。次第に打撲した部位の発赤、疼痛および腫脹が出現して急速に拡がり、発熱も出現したため救急外来を受診した。
- 既往歴:3歳時に肺炎で入院。薬物アレルギーはない。
- 生活歴:大学生。バスケットボールのサークルに所属している。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
- 家族歴:父親が高血圧症で内服治療中。母親は健康。
- 現症:意識レベルはJCSⅠ-2-R。身長 175cm、体重 63kg。体温 40.6℃。脈拍 120/分、整。血圧 82/40mmHg。呼吸数 22/分。SpO2 96%(room air)。全身に発汗を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。右鼠径部に径2cmで可動性良好なリンパ節を3個触知し、圧痛を認める。右下腿は打撲部位を中心に膝から足首に及ぶ著明な発赤、腫脹および圧痛を認め、皮膚表面には大小の血性水疱を認める。右膝関節および足関節は腫脹と疼痛のため十分な診察ができない。足背動脈は両側とも触知可能である。
- 検査所見:血液所見:赤血球 468万、Hb 13.9g/dL、Ht 42%、白血球 15,300(桿状核好中球 30%、分葉核好中球 55%、好酸球 1%、好塩基球 0%、単球 7%、リンパ球 7%)、血小板 9万、PT-INR 1.6(基準 0.9~1.1)、Dダイマー 3.4μg/mL(基準 1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白 6.0g/dL、総ビリルビン 0.9mg/dL、AST 114U/L、ALT 30U/L、LD 602U/L(基準 176~353)、CK 12,200U/L(基準 30~140)、尿素窒素 30mg/dL、クレアチニン 1.9mg/dL、血糖 98mg/dL、Na 134mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 22mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.30、PaCO2 32Torr、PaO2 70Torr、HCO3- 14mEq/L。
- 骨盤部・下肢CTで右膝関節周囲から足部にかけての皮下組織と筋肉の強い浮腫像と、下腿の筋肉表面に沿った広範な液体成分の貯留像とを認める。
- 急速大量輸液を開始した。
- 来院時に採取した血液培養から菌の発育を認めた。培養液のGram染色標本(別冊No. 13)を別に示す。当初、広域スペクトル抗菌薬が投与されていたが、この結果から抗菌薬の変更を検討することとなった。
- 最適な候補薬はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111E061]←[国試_111]→[111E063]
[★]
- 42歳の女性。 3日前から出現した呼吸困難を主訴に来院した。 5年前に全身性エリテマトーデスと診断され、副腎皮質ステロイドによる治療を受けている。身長154cm、体重45kg。体温38.8℃。脈拍104/分、整。血圧128/68mmHg。呼吸数25/分。胸部全体に軽度のfine cracklesを聴取する。赤沈68mm/1時間。血液所見:赤血球328万、 Hb9.8g/dl、 Ht27%、白血球11,800(桿状核好中球35%、分葉核好中球52%、好塩基球1%、単球7%、リンパ球5%)、血小板32万。血液生化学所見:総蛋白6.8g/dl、アルブミン3.2g/dl、尿素窒素28mg/dl、クレアチニン0.9mg/dl、 AST 43IU/l、 ALT59IU/l、 LD 423IU/l(基準176-353)、 IgG800mg/dl(基準960-1,960)。免疫学所見: CRP7.1 mg/dl。 β-D-グルカン585pg/ml(基準10以下)。抗核抗体40倍(基準20以下)。 CH50 39U/ml(基準30-40)。動脈血ガス分析(自発呼吸、 room air) : pH7.48、 PaCO2 29Torr、 PaO2 50Torr、HCO3-21mEq/l。胸部単純CT(別冊No. 10)を別に示す。
- 治療薬として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [106D030]←[国試_106]→[106D032]
[★]
- 68歳の男性。発熱、咳嗽および膿性痰を主訴に来院した。5日前から発熱、3日前から咳嗽および膿性痰が出現したため受診した。意識は清明。体温 39.2℃。脈拍 124/分、整。血圧 88/60mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 93%(room air)。両側の胸部にcoarse cracklesを聴取する。血液所見:白血球 18,800(桿状核好中球 4%、分葉核好中球 84%、単球 2%、リンパ球 10%)。CRP 19mg/dL。胸部エックス線写真の正面像(別冊No. 19A)、側面像(別冊No. 19B)及び喀痰のGram染色標本(別冊No. 19C)を別に示す。同日、敗血症を疑い血液培養を行った。
- 現時点の対応として正しいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111I065]←[国試_111]→[111I067]
[★]
- 9歳の男児。今朝からの眼瞼浮腫と血尿とを主訴に来院した。2週前に扁桃炎で治療を受けた。体温36.5℃。脈拍96/分、整。血圧180/102mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。脛骨前面を指で圧迫すると圧痕が残る。尿所見:蛋白2+、糖(-)、沈渣に赤血球多数/1視野、白血球4~6/1視野、赤血球円柱3~5/1視野を認める。血清生化学所見:総蛋白6.4g/dl。アルブミン3.8g/dl、尿素窒素44mg/dl、クレアチニン2.3mg/dl、総コレステロール160mg/dl。免疫学所見:ASO128単位(基準250以下)、CH50 12U/ml(基準25~35)。
- 治療薬として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [101A034]←[国試_101]→[101A036]
[★]
- 日齢10の新生児。発熱、嘔吐および哺乳力低下を主訴に来院した。昨夕、発熱がありグズグズ泣くことが多く哺乳力が低下した。抱き上げても泣き止まなかった。夜半から嘔吐が4、5回出現し元気がなくなってきた。体温39.1℃。大泉門0.5×0.5cmであり緊張が強い。四肢冷感があり、運動に乏しい。Moro反射は弱いが、両側指趾の把握反射は陽性である。脳脊髄液検査:細胞数1,380/mm3(基準30以下)で95%以上は多核球、糖10mg/dl(基準20~60)。
- この患児の薬物治療で適切でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096I035]←[国試_096]→[096I037]
[★]
- 肺感染症の原因微生物と治療薬の組合せで正しいのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [100B067]←[国試_100]→[100B069]
[★]
- 頻度が最も高い非淋菌性尿道炎に対する治療薬はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [100B071]←[国試_100]→[100B073]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[★]
- ☆case10 背痛
- ■症例
- 27歳 女性
- 主訴:背中に突き抜ける?痛み(pain across her back)
- 現病歴:背中に広がる痛みを訴えて、27歳の女性が救急部に運ばれてきた。2日前に熱が出て背部痛が始まり、以降調子が悪い。痛みは増強している。6時間前に2度嘔吐した。
- 既往歴:3ヶ月前に合併症のない胆嚢炎。
- ・身体診断
- 調子が悪そうであり、紅潮している。体温:39.2℃。脈拍:120/分。血圧:104/68 mmHg。心血管系、呼吸器系に異常を認めず。腹部:全体的に圧痛。両側の腰部で著明な圧痛。
- ・検査
- (血液生化学)
- 白血球↑、血清尿素↑、CRP↑
- (尿検査)
- タンパク:++、鮮血:+++、亜硝酸塩:++
- 尿の顕微鏡検査:(おそらく400倍の一視野に)赤血球>50、白血球>50
- 腹部X線:正常
- ■glossary
- loin n. (pl)腰、腰部(→(adj.)lumbar)。(獣の)腰肉、ロイン。(pl)陰部、生殖器、性器
- 腸雑音、腸音、intestinal murmur、intestinal sound、bowel sound
- urine microscopy 尿の顕微鏡検査
- dysuria 排尿障害
- urgency n. 切迫、急迫、危急。緊急、火急、焦眉の急。[pl]しつこい要求、懇願。せき立てる力、刺激
- hydronephrosis 水腎症
- -nephros 腎臓
- -stomy 開口術
- nephrostomy n. 腎瘻造設術、腎造瘻術、腎瘻術
- obstructive urophathy 閉鎖性尿路疾患
- intravenous fluid 静脈内輸液
- commence vt. 始める、開始する。 vi. ~から始める、始まる(with)
- urgently
- eradication n. 根絶、撲滅
- mimic vt. ~の物まねをする、まねて馬鹿にする。そっくりに[卑屈に]まねる。~によく似る
- renal ultrasound 腎臓超音波検査
- obstructive uropathy 閉塞性尿路疾患
- polycystic kidney disease 多発性嚢胞腎
- medullary sponge kidney 海綿腎
- loin-pain hematuria syndrome 腰痛血尿症候群
- ■解説
- (第1パラグラフ)疫学
- 急性腎盂腎炎:男性より女性でmore common。尿路からの細菌の上行感染。リスク:妊娠、糖尿病、免疫低下者、尿路奇形(尿の腎臓への逆流。そして多分、狭窄していたりして結石で閉塞されやすいこともあると思う)
- (第2パラグラフ)病態
- 食欲不振、悪心、嘔吐と共に40℃の発熱が出ることがある。
- 腎盂腎炎患者の中には膀胱炎の先行症状(排尿障害、頻尿、尿意切迫、血尿)がある人がいるけど、こういう下部尿路症状がいつも出現するわけではない。
- 多くの腎盂腎炎患者は、先行する6ヶ月以内の膀胱炎の既往がある。
- 老人の場合、非典型的な症状を示し、そして混乱した状態でやってくる。
- 腎盂腎炎は他の病態によく似ている:急性虫垂炎、急性胆嚢炎、急性膵炎、下葉の肺炎
- 普通、体表から見て腎臓の直上に前からも後ろからも圧痛を感じる。
- 未治療の腎盂腎炎では敗血症になるかもしれない。
- (第3パラグラフ)本ケースについて
- ・CRP上昇は急性感染症を示唆
- ・顕微鏡的血尿・タンパク尿、白血球増多は尿路の炎症を示す。
- ・硝酸塩(nitrate, HNO3と何かの塩)から亜硝酸塩(nitrite, HNO2と何かの塩)への還元により細菌の存在が確認される。
- 覚え方:亜硝酸は(Oが一つ)足らないi(愛)
- でも複雑です。
- HNO2 亜硝酸 nitrous acid, nitrite 。亜硝酸塩 nitrite
- HNO3 硝酸 nitric acid, nitrate 。硝酸塩 nitrate
- (第4パラグラフ)管理
- ・女性は入院すべき。
- ・血液と尿の採取
- ・静脈内輸液+抗生物質で治療開始。微生物が同定されたら、感受性のある抗菌薬を使用する。初期治療ではゲンタマイシン、アンピシリン、シプロフロキサシンを用いる
- ・腎臓エコー検査:尿路閉塞を除外するため。閉塞性尿路疾患では、激しい痛み、発熱、敗血症ショック、腎不全を伴う脳腎症を起こしうる。
- ・尿路敗血症の経過で水腎症が疑われたら、合併症を防ぐために緊急に腎瘻を造設すべき
- (第5パラグラフ)薬物治療
- ・(腎結石など合併していない)腎感染症(ucomplicated renal infection)患者は抗生物質2週間のコースで治療すべき。
- ・感染の根絶を確実にする治療が終わった後10-14日間は、反復して細菌培養をする。<
- ・尿路結石を有する感染症や腎瘢痕を有する患者では抗生物質6週間のコースが用いられる。
- ■鑑別診断のポイント
- 腎盂腎炎は片側性、あるいは両側性の腰痛を引き起こす。
- 腰部痛の鑑別診断:
- 閉塞性尿路疾患
- 腎梗塞:心疾患などで生じた血栓が腎動脈またはその分枝を閉塞し、その血管の支配領域が虚血性壊死に陥った状態。
- 腎細胞癌:腎尿細管上皮細胞より発生する悪性腫瘍
- 腎乳頭壊死:腎乳頭より腎髄質にかけて、その支配動脈の虚血により壊死を来したもの。 主として基礎疾患に糖尿病を有する人にみられ、しばしば急性腎盂腎炎などの尿路感染に伴って発症する。
- 腎結石:
- 糸球体腎炎:
- 多発性嚢胞腎:先天性かつ両側性に腎実質内に大小無数の嚢胞を発生する。 ほとんどが両側性で、貧血、顕微鏡的血尿、蛋白尿、高血圧といった症状を呈しながら腎機能が低下し、最終的には腎不全となる疾患
- 海綿腎:腎錐体における集合管の先天性嚢状拡張症。症状としては拡張した集合管に尿の停滞 → 感染・細かな結石ができる。
- 腰痛血尿症候群:若年女性に好発し、反復して出現する腰部から側腹部の強い疼痛と血尿を主徴とする病因不明の疾患。肉眼的血尿や軽度の蛋白尿がみられることもあるが、特異的な検査所見はなく、診断は他疾患の除外診断による
- ■KEYPOINT
- ・急性腎盂腎炎は下部尿路症状があったり無かったりする。
- ・腎臓超音波検査は尿路閉塞を否定するために、入院24時間後に行うべき。
- ・抗菌薬は、再発のリスクを最小限にするために、少なくとも2週間継続すべき。
- □閉塞性尿路疾患(http://merckmanual.jp/mmpej/sec17/ch229/ch229a.htmlより引用)
- □KUBの陰影から尿路結石成分の推定
- リン酸カルシウム(22.0)
- シュウ酸カルシウム(10.8):シュウ酸カルシウム結石は,尿路結石のうちで最も頻度が高く(70~80%),シュウ酸カルシウム結石の約半数はリン酸カルシウムとの混合結石である。
- リン酸マグネシウムアンモニウム(4.1):ストラバイト結石:尿素分解菌(Proteus 、Klebsiella 、Pseudomonas )による尿路感染が原因で、尿素が分解されアンモニアとなると尿がアルカリ性となり、リン酸マグネシウムアンモニウム結石が形成される。
- シスチン(3.7):ホモシスチン尿症
- 尿酸(1.4):痛風
- キサンチン(1.4):プリン体
- □多嚢胞腎
- 常染色体劣性多発性嚢胞腎:ARPKD
- 旧名:幼児型嚢胞腎
- 常染色体優性多発性嚢胞腎:ADPKD
- 旧名:成人型嚢胞腎
[★]
- 英
- aminoglycoside antibiotic
- 関
- 抗菌薬、アミノグリコシド系薬、アミノグリコシド
GOO. chapter.45
- タンパク質合成阻害による抗菌薬は静菌的なのもが多いが、アミノグリコシド系抗菌薬は「殺菌的」に作用
構造
- amino sugars linked to an aminocyclitol ring by glycosidic bonds (GOO.1155)
- 名前の通りアミノ基-NH2を多数有しているため正電荷を帯びる
- →経口吸収不良
- →脳脊髄液に移行しにくい。
- →腎排泄されやすい
動態
- 内服不可能→外来患者に使いにくい
- 細胞膜(内膜)の通過は膜電位ポテンシャルに依存している。ここが律速段階となる。 → 細胞内移行性悪
- 阻害、拮抗要素:二価陽イオン、高浸透圧、pHの低下、嫌気的条件
- 膿瘍など嫌気的条件、酸性の高浸透圧尿など細菌の膜電位ポテンシャルが低下する場合に薬効低下
作用機序
- 1. 翻訳開始を阻害
- 2. 翻訳を停止させる
- 3. 誤ったアミノ酸を取り込ませる
- 異常蛋白が細胞膜に挿入され、膜の透過性を変えてさらにアミノグリコシド系抗菌薬の取り込みを促す
薬理作用
- 薬効は迅速。濃度依存的。
- post-antibiotic effectがある。
- 抗菌薬の血漿濃度がminnimum inhibitory concentration以下になっても殺菌活性が残存。殺菌活性の残存時間は濃度依存的
抗菌スペクトル
副作用
- 腎障害:近位尿細管の壊死変性。用量依存的
- 耳毒性:CN VIII障害。内耳の有毛細胞を破壊。用量依存的
- 神経・筋遮断作用:(稀であるが)神経筋遮断作用(およびこれによる無呼吸)を呈する。遮断作用はネオマイシンが一番強く、カナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシンがこれに続く。通常、胸腔内、腹腔に大量投与した時に生じるが、静脈内、筋肉内、あるいは経口投与でも起こりうる。大抵の発作(神経筋接合部が遮断される発作)は麻酔薬やその他の神経筋接合部遮断薬の投与で生じる(←どういう意味?)。重症筋無力症の患者はアミノグリコシド系抗菌薬による神経筋接合部遮断作用を受けやすい。(GOO.1164)
アミノグリコシド系抗菌薬
[★]
- 英
- sodium sulfate
- 商
- 乾燥硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アストーマ、アスペノン、アプリトーン、アモキシシリン、アモペニキシン、アモリン、アルギスタット、アルフロシン、アレンフラール、アンチレクス、イソパール・P、イノバン、ウレパール、エカテリシン、エクセラーゼ、エクセラーゼ配合、エホチール、エルゴメトリンマレイン酸塩、オーネスSP、オーネスSZ、オーペグ 、カズマリン、ガモファー、カラシミンC、カルデナリン、カルメゾシン、グルコリンS、ケイラーゼA、ケフラール、ケフレックス、ゲンタマイシン、ゲンタロール、コスパノン、コバマミド、コントミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ジアイナミックス、シーシーエル、シータック、シェトラゾーナ、ジソピラミド、スクリット配合、セクロダン、セフジトレンピボキシル、セフジニル、セブンイー・P、センセファリン、ダイメジンスリービー、ダウンテンシン、タフマックE、ダラシン、タンチパン配合、テクネMAG3、デトキソール、トキクロル、ドキサゾシン、ドキサゾン、ドパミン塩酸塩、トレキサメット、ドロキシドパ、トロキシン、ニザチジン、ニトレナール、ニトロールR、ニフプラス 、ニフレック配合、ニューロライト、ネオ・エフラーゼ配合、ハイポ、プロモーション
- 関
- 塩類下剤
[★]
- 英
- Pseudomonas aeruginosa
- 同
- シュードモナス・エルジノーサ
- 関
- 日和見感染、SPACE
治療
[★]
- 英
- renal excretion
- 関
- 肝排泄、薬物排泄
国試