出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/04/17 00:50:25」(JST)
硝酸 | |
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共鳴構造式
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IUPAC名
Nitric acid |
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 7697-37-2 |
PubChem | 944 |
ChemSpider | 919 |
UNII | 411VRN1TV4 |
EINECS | 231-714-2 |
国連番号 | 2031 |
KEGG | D02313 |
MeSH | Nitric+acid |
ChEBI | CHEBI:48107 |
ChEMBL | CHEMBL1352 |
RTECS番号 | QU5775000 |
Gmelin参照 | 1576 |
3DMet | B00068 |
SMILES
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InChI
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特性 | |
化学式 | HNO3 |
精密質量 | 62.995642903 g mol-1 |
外観 | 無色の液体 |
密度 | 1.5129 g cm-3 |
融点 |
-41.6 °C, 232 K, -43 °F |
沸点 |
82.6 °C, 356 K, 181 °F (68 % 溶液は 121 °Cで沸騰) |
水への溶解度 | 完全に溶解 |
酸解離定数 pKa | -1.4 |
屈折率 (nD) | 1.397 (16.5 °C) |
双極子モーメント | 2.17 ± 0.02 D |
危険性 | |
MSDS | ICSC 0183 PCTL Safety Website |
EU Index | 007-004-00-1 |
EU分類 | 有害 (T) 腐食性 (C) |
NFPA 704 |
0
4
0
OX
|
Rフレーズ | R8 R35 |
Sフレーズ | S1/2 S23 S26 S36 S45 |
引火点 | 不燃性 |
関連する物質 | |
その他の陰イオン | 亜硝酸 |
その他の陽イオン | 硝酸ナトリウム 硝酸カリウム |
関連物質 | 五酸化二窒素 |
出典 | |
ICSC | |
特記なき場合、データは常温(25 °C)・常圧(100 kPa)におけるものである。 |
硝酸(しょうさん、nitric acid)は窒素のオキソ酸で、化学式 HNO3 で表される。代表的な強酸の1つで、様々な金属と反応して塩を形成する。有機化合物のニトロ化に用いられる。硝酸は消防法第2条第7項及び別表第一第6類3号により危険物第6類に指定され、硝酸を10%以上含有する溶液は医薬用外劇物にも指定されている。
濃硝酸に二酸化窒素、四酸化二窒素を溶かしたものは発煙硝酸、赤煙硝酸と呼ばれ、さらに強力な酸化力を持つ。その強力な酸化力を利用してロケットの酸化剤や推進剤として用いられる。
目次
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五酸化二窒素(無水硝酸、N2O5)を水に溶かすと得られる、一価の強酸性の液体で、金属と反応して硝酸塩(水に可溶)を作る。任意の割合で水に溶け、通常「硝酸」という場合には水溶液を指す。
濃度の低い硝酸を希硝酸という[注 1]。市販の濃硝酸は60%(d = 1.360 g cm−3, 13.0 mol dm−3)あるいは70%(d = 1.406 g cm−3, 15.6 mol dm−3)の水溶液が普通である。69.8%の水溶液は共沸混合物となり123 ℃で沸騰する。
濃硝酸と濃硫酸の混合物である混酸を用いたニトロ化合物の合成などから爆薬が作られ、他にも染料、肥料などの製造に用いる。
強酸化剤で、木炭の粉末とともに熱すれば木炭は酸化されて二酸化炭素となる。
二酸化窒素や四酸化二窒素を吸収させて発煙硝酸や赤煙硝酸とし、ロケットエンジンの推進剤の酸化剤として用いられる。有機系の燃料と混合するだけで点火する。
硝酸に触れるとキサントプロテイン反応によって皮膚が黄変する。
光に弱く、長時間光を浴び続けると分解し黄色を帯びる。
そのため褐色瓶中で保管する。
希塩酸とは異なり、酸化作用により希硝酸であっても水素よりイオン化傾向の小さい金属を溶かすことが可能である。白金、金を溶かすことはできないが、濃硝酸と濃塩酸を混ぜて王水を作ることにより、これらの金属も溶かすことが可能になる。また、アルミニウム、クロムおよび鉄などは濃硝酸中で表面に酸化皮膜を形成し不動態が形成されるため反応が進行しない。
極めて薄い硝酸水溶液の場合、マグネシウムは初期において水素ガスを発生する[1]。
しかし、希硝酸中であっても亜鉛などの比較的イオン化傾向の大きな金属は硝酸イオンをアンモニウムイオンまで還元する[2]。
また希硝酸はよりイオン化傾向の小さな金属の場合は主に一酸化窒素を発生する。
濃硝酸では二酸化窒素の発生が主反応となり、発熱により反応は次第に激しくなる。
硝酸は硫酸中では塩基として挙動しプロトン化を受け、脱水によりニトロイルイオン(nitroyl / NO2+)を生成する。濃硝酸と濃硫酸を混合した混酸中では以下のような平衡が成立している。
このニトロイルイオンが芳香族化合物などに対し求電子置換反応を起こしニトロ化が進行する。
純粋な遊離酸も0 ℃で硝酸カリウムと純硫酸を反応させ、真空蒸留により単離することが可能である。
しかし不安定であり光反応などにより分解し、二酸化窒素などを発生させる[1]。
純硝酸は遊離酸として知られているものの中ではもっとも強く自己解離し、さらに生成するリオニウムイオンは脱水されニトロイルイオンとなり、その平衡定数は25℃で以下のようである
。
高い電気伝導度を示し、25℃における比電気伝導度は3.72×10−2 ohm−1 cm−1であり、純硫酸よりさらに高い[1]。
また、純硝酸のハメットの酸度関数はH0=−6.3であり純硫酸などに比べるとかなり酸性度は低い[3]。
硝酸の第一水和エンタルピー変化および溶解エンタルピー変化は以下の通りであり、過塩素酸および硫酸などより発熱量は少ない[4]。 ,
,
硝酸は水溶液中では強酸として挙動し、0.1 mol/dm3程度の水溶液ではほぼ完全に解離し塩酸および過塩素酸などと電離度に大きな差は認められないが、濃厚溶液ではこれらの酸との電離度に差が認められ、2 - 4 mol/dm3溶液については糖転化の触媒作用についてこれらより弱いことが示され、非解離の硝酸分子が存在することが示されている[5][6]。
濃厚溶液中における非解離の硝酸分子の濃度とデバイ-ヒュッケルの拡張理論などから硝酸の酸解離定数はK = 21(pKa = −1.32)と求められ、またメタノール中(pKa = 3.2)の値より水中ではpKa = −1.8とする推定値もある[7]。
また、水溶液中の解離に関する熱力学的な数値も報告されており、そのギブスの自由エネルギー変化によればpKa = −1.44である[8]。
−13.81 kJ mol−1 | −8.24 kJ mol−1 | −18.4 J mol−1K−1 |
8世紀のアラビアの科学者ジャービル・イブン=ハイヤーンによって緑礬 FeSO4・7H2O または明礬 KAl(SO4)2・12H2O と硝石 KNO3 とを混ぜて蒸留によって合成されることが発見された。17世紀にはいってヨハン・ルドルフ・グラウバーがこれを改良し、硫酸と硝石との混合物を蒸留し、純粋な硝酸を作っている。銅・銀などをも溶かし金属に対する作用は硫酸よりも強いということから、強い水という意味のラテン語をとり aqua fortis と呼ばれた。イギリスでは硝石の精という意味の spirit of nitre ともいわれていた。硝酸という言葉は1789年にラボアジエによってフランス語で acide nitrique と命名されて以来用いられるようになった。
2004年度日本国内生産量は 630,290 t、消費量は 331,347 t である。ヴィルヘルム・オストヴァルト考案のオストワルト法(アンモニア酸化法とも[9])による生産が一般的である。
アンモニアを白金触媒の存在下で 900 ℃ 程度に加熱すると一酸化窒素が得られる。この反応においては触媒とアンモニアの接触時間が重要であり、接触時間が長いとアンモニアと一酸化窒素とが反応して窒素が生成されてしまう[9]。触媒にはこのほかにCuO-MnO2系や、Fe2O3-Bi2O3系などの金属酸化物触媒も、かつては用いられたことがあったが、触媒活性で劣っていたり、反応中に触媒が微粉化してしまうため、現在では、白金に10%ほどのロジウムを加えた金網状の触媒が用いられている。白金-ロジウム触媒を用いた際には反応温度800°C、接触時間0.001秒の反応条件で一酸化窒素への転化が起こり、その収率は95から98 %である[9]。そのほかに粘土によっても酸化に成功した事例もあるが、収率は半分以下である。
一酸化窒素は自発的に空気中の酸素と反応し二酸化窒素となる。空気酸化によるこの工程での収率はおよそ50 %であり、純粋な酸素を用いて酸化させることでその収率は62 %まで向上する[9]。
二酸化窒素を水(温水)と反応させると硝酸と一酸化窒素が発生する(一酸化窒素は最初のサイクルに戻る)(冷水との反応は「二酸化窒素」を参照)。常圧で反応させた場合は硝酸の濃度が低いため、ポーリング式硝酸濃縮法と呼ばれる方法を用いて硝酸濃度を98 %になるまで濃縮が行われる。また、10気圧ほどの圧力を加えて反応させる高圧法を用いれば、濃縮の必要なく直接98 %の硝酸が得られる[9]。
全体として、
窒素酸化物は大気中でもこのような反応を起こし、酸性雨の原因の一つとなる。ただし僅かなレベルであれば植物の栄養源となる。
硝酸イオン(しょうさんイオン、NO3−, nitrate)は硝酸およびその化合物の電離、分解によって主に生じる1価の陰イオン、窒素化合物であり、硝酸塩中にも存在し、平面正三角形型構造でN−O結合距離は硝酸三水和物中において124.7~126.5 pmである[7]。
硝酸は強い酸化剤であり、多くの金属と反応するため多種の塩を生成する。また一般に、金属の硝酸塩は水に溶解しやすい。
希薄水溶液中における標準酸化還元電位は以下の通りである。
,
,
硝酸イオンは白金電極を用いた水溶液の電解により陰極でアンモニアまで還元される。
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詳細は「硝酸塩」を参照
消防法により硝酸塩類は危険物 第1類 酸化性固体に分類される。硝酸イオンは本来無色透明であるが、遷移金属イオンを含むものは有色であることが多い。
主に火薬、肥料、食品添加物(発色剤)などに用いられる。
水溶性であるため雨量の多い日本国内での産出は確認されていないが、南米チリが主な原産国である。
硝酸は好気性菌によって生物の屍骸等からアンモニア、亜硝酸を経て生成される。さらに嫌気性菌によって窒素等に分解され空気中等に放出されていく。なお、アクアリウムの生態系において嫌気性菌の発生は困難であり、水槽中に硝酸が分解されないまま溜まっていくので、高濃度となる以前の適度な水換えが必要となる。ただし一般的に、アクアリストにとって硝酸はアンモニアや亜硝酸との比較において毒性の低い物質と認識されている。
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関連記事 | 「酸」 |
。]] オキソ酸(オキソさん、Oxoacid)とは、ある原子にヒドロキシル基 (-OH) とオキソ基 (=O) が結合しており、且つそのヒドロキシル基が酸性プロトンを与える化合物のことを指す<ref>IUPAC Gold Book - oxoacids</ref>。ただし、無機化学命名法IUPAC1990年勧告のオキソ酸の定義では、先述した化合物の他にアクア酸(aqua acid)<ref>中心金属イオンに配位した水分子に酸性プロトンが存在する酸。例:ヘキサアクア鉄(III)イオン</ref>、ヒドロキソ酸(hydroxoacid)<ref>隣接するオキソ基が存在しないヒドロキシル基に酸性プロトンが存在する酸。例:オルトケイ酸 (H4SiO4)</ref>もオキソ酸に含まれることになる。無機化合物のオキソ酸の例としては硫酸や硝酸、リン酸などが挙げられる。有機化合物で最も重要なオキソ酸はカルボン酸である。酸性の強弱は化合物の種類によりさまざまなものがある。一般に、オキソ酸は多原子イオンと水素イオンを与える。
オキソ酸が脱水縮合することで、ポリオキソ酸が生成する。例えば、リン酸では二リン酸、三リン酸である。酸無水物も同様に、オキソ酸の脱水縮合生成物にあたる。遷移金属元素のオキソ酸は金属オキソ酸(ポリ酸)と呼ぶ。
単核オキソ酸の酸性度の強さを推定する2つの経験則としてポーリングの規則(Pauling's rules)が知られている。
ただし、この規則に従わないオキソ酸も存在する。例えば炭酸の推定値は3であるが実測値は6.4である。これは水溶液中に溶けている二酸化炭素が僅かしか炭酸にならないためである。このことを考慮に入れるとpKa値は規則通り約3.6となる。また、亜硫酸も規則に従わない。これは溶液中に亜硫酸分子は検出されず、さらにSO2が複雑な平衡を持っているからである。
テンプレート:脚注ヘルプ <references/>
毒物及び劇薬取締法 | 毒物 | シアン化合物、ヒ素、黄リン、水銀、ニコチン |
劇物 | 硫酸、硝酸、塩酸、メタノール | |
特定毒物 | パラチオン、四アルキル鉛、メタノール | |
毒薬 | アトロピン、ジギタリス配糖体、スコポラミン、ストリキニーネ | |
劇薬 | カフェイン、プロカイン | |
麻薬及び向精神薬取締法 | 麻薬 | アヘンアルカロイド、コカイン、合成麻薬、LSD |
第1腫向精神薬 | セロバルビタール、メチルフェニデート | |
第2腫向精神薬 | アキサゾラム、ペンタゾシン、ペントバルビタール | |
第3腫向精神薬 | アロバルビタール、オキサゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、トリアゾラム、フェノバルビタール、トラゼパム | |
覚醒剤取締法 | 覚醒剤 | アンフェタミン、メタンフェタミン |
大麻取締法 | 大麻 | 大麻草及び製品 |
あへん法 | けし属 | けし、けしがら、アヘン |
[★] ナファゾリン。naphazoline nitrate
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