アミノグリコシド系抗菌薬
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/06/07 15:07:43」(JST)
[Wiki ja表示]
|
ウィキペディアは医学的助言を提供しません。免責事項もお読みください。 |
アミノグリコシド系抗生物質(アミノグリコシドけいこうせいぶっしつ)とは抗生物質の区分で、アミノ糖を含む配糖体抗生物質の総称である。アミノグルコシド系抗生物質ともいわれる。
最初に発見されたアミノグリコシド系抗生物質はストレプトマイシンであり、1944年にセルマン・ワクスマンによって発見された。その後、適用菌種の拡大と抗菌活性の増大を目的にして、フラジオマイシン、カナマイシンなどの放線菌などの微生物が産生する抗生物質が発見され、それらを出発物質として半合成されているものがある。
ストレプトマイシン自身は、黄色ブドウ球菌などを代表とするグラム陽性菌、大腸菌などを代表とするグラム陰性菌、抗酸菌に対して強い抗菌活性を持つ。
性質としては塩基性・可溶性であり、真正細菌のリボソームに作用して蛋白質合成を阻害する。抗菌力が強いため、殺菌的で、なおかつ抗菌スペクトルが広い。欠点としては、内耳神経や腎臓への強い毒性、耐性獲得、内服不可能などが挙げられる。
耐性獲得の機構として、不活化酵素を産生する遺伝子を持っている、リボソーム構造の変化によってストレプトマイシンが反応出来ない、などのことが考えられる。
大部分が腎臓から未変化体で排泄されるため、腎機能による投与設計が必要であり、血中濃度を測定しながら、毒性(聴力障害、平衡障害、腎機能障害)に注意して投与しなくてはいけない。
目次
- 1 代表的アミノグリコシド系抗生物質
- 1.1 抗結核菌作用のあるもの
- 1.2 抗緑膿菌作用のあるもの
- 1.3 抗MRSA作用のあるもの
- 2 アミノグリコシド系抗生物質の特徴
- 3 主な使い分け
- 4 関連項目
- 5 参考文献
|
代表的アミノグリコシド系抗生物質
抗結核菌作用のあるもの
- ストレプトマイシン (SM)
- カナマイシン (KM)
抗緑膿菌作用のあるもの
- ゲンタマイシン(GM、商品名 ゲンタシン)
- トブラマイシン(TOB、商品名 トブラシン)
- アミカシン(AMK、商品名 注射用硫酸アミカシン「萬有」100mg)
- ジベカシン(DKB)
抗MRSA作用のあるもの
アミノグリコシド系抗生物質の特徴
- Post Antibiotic Effect
- 血中濃度が下がった後も一定期間効き目が持続する効果があり、十分量投与すれば一日一回投与で十分な抗菌力をえる。
- 濃度依存性
- アミノグリコシド系の抗菌薬は濃度依存性であるので、濃度を高めるほど効果が増す。但し、中毒も起こしやすいため血中濃度のモニターが必要である。血中濃度のモニターは一日二回の採血による測定で行うことが多いが、アミノグリコシド一日一回投与の場合は、十分量投与されているという前提の下、翌日投与前の採血で血中濃度1μg/ml以下であれば中毒域には達していないという法則も使える。
- シナジー効果
- 多剤と併用することで相乗効果が得られる。特にβ-ラクタム系抗生物質との併用が多い。特に黄色ブドウ球菌による感染性心内膜炎の場合はシナジー狙いで5日ほど投与することが多い。アミノグリコシド自体では黄色ブドウ球菌にほとんど効果はなく、これはシナジー狙いの処方である。
- 臨床効果
- PKの問題として肺への移行性は極めて悪く、肺炎に単独で用いても効果はない。またアルカリ性下で抗菌力が発揮されるので膿瘍など酸性の条件下では効果が低い。
- 副作用
- 聴力、平衡感覚の障害は非可逆的になるので注意が必要である。腎毒性は非乏尿性の腎障害がでることが特徴的で可逆的障害と言われているがあまりに進行すると不可逆的になる。
主な使い分け
アミノグリコシドは起因菌によって使い分けることが多い。
- 抗酸菌
- ストレプトマイシンやアミカシンを用いる。
- 腸球菌
- セファロスポリンが全く効かない腸球菌に対してはゲンタマイシンがよく用いられる。
- 緑膿菌
- トブラマイシンがよく用いられる。
- セラチア
- ゲンタマイシンやストレプトマイシンがよく用いられる。
- ペスト、野兎病
- ゲンタマイシンがよく用いられる。
- アメーバシスト
関連項目
参考文献
- 感染症レジデントマニュアル ISBN 4260106600
- 抗菌薬の考え方、使い方 中外医学社 ISBN 4498017587
- レジデントのための感染症診療マニュアル ISBN 4260109928
- Dos&Don'ts! Dr.青木の感染症大原則 ISBN 490333127X
- サンフォード感染症治療ガイド―日本語版 (2006) ISBN 4897752167
- Dr.岩田の感染症アップグレード(第1巻)ISBN 4903331415
- Dr.岩田の感染症アップグレード(第2巻) ISBN 4903331423
- Dr.岩田の感染症アップグレード(第3巻) ISBN 4903331431
- Dr.岩田の感染症アップグレード(第4巻) ISBN 490333144X
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- アミノグリコシド系薬のTDM : 感染性心内膜炎に対するゲンタマイシン処方例 (こうすれば上手くいく! 抗菌薬TDMガイドラインの実践的活用法) -- (症例からみる投与設計のポイント)
- 西 圭史,笠原 敬
- 月刊薬事 = The pharmaceuticals monthly 55(1), 65-69, 2013-01-00
- NAID 40019548245
- アミノグリコシド系薬のTDM : 多剤耐性菌感染症に対するアミノグリコシド系薬処方例 (こうすれば上手くいく! 抗菌薬TDMガイドラインの実践的活用法) -- (症例からみる投与設計のポイント)
- 三鴨 廣繁,木村 匡男,山岸 由佳
- 月刊薬事 = The pharmaceuticals monthly 55(1), 59-64, 2013-01-00
- NAID 40019548235
- アミノグリコシド系薬のTDM : MRSA感染症に対するアルベカシン処方例 (こうすれば上手くいく! 抗菌薬TDMガイドラインの実践的活用法) -- (症例からみる投与設計のポイント)
- 浜田 幸宏,?倉 俊二
- 月刊薬事 = The pharmaceuticals monthly 55(1), 53-57, 2013-01-00
- NAID 40019548222
Related Links
- アミノグリコシド系について解説しています ... アミノグリコシド系抗生物質の特徴 アミノ糖とアミノサイクリトールがグリコシド結合をした構造を有するアミノグリコシド系に属する抗生剤は大きく、ストレプトマイシン群 ...
- これらアミノグリコシド系抗生物質はグラム陰性菌(緑膿菌を含む)によく作用するので、比較的多く使用されていますが、第8脳神経障害の他にも腎毒性をも持ちますので、その使用は短期間が望ましいとされています。 上記の文章 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 61歳の男性。発熱と皮疹を主訴に来院した。一昨日から発熱があり、昨日から体幹に紅斑が出現した。本日になり紅斑が四肢にも広がってきたため来院した。発熱は持続し、頭痛を伴っている。紅斑に痒みは伴っていない。腹痛や下痢を認めない。1週間前に山に入り、伐採作業をした。同様の症状を訴える家族はいない。意識は清明。身長 162cm、体重 62kg。体温 38.8℃。脈拍 96/分、整。血圧 146/88mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 97%(room air)。体幹、四肢に径2~3cmの紅斑が散在する。右鼠径部に、周囲に発赤を伴った直径5mmの痂皮を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。咽頭の発赤や桃の腫大を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察に異常を認めない。関節の腫脹を認めない。尿所見:蛋白 (-)、糖 (-)、潜血 (-)。血液所見:赤血球 488万、Hb 14.1g/dL、Ht 42%、白血球 4,300(桿状核好中球 12%、分葉核好中球 55%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 15%、リンパ球 16%)、血小板 9万。血液生化学所見:総蛋白 7.5g/dL、アルブミン 3.9g/dL、総ビリルビン 0.9mg/dL、AST 76U/L、ALT 46U/L、LD 356U/L(基準 176~353)、γ-GTP 45U/L(基準 8~50)、CK 46U/L(基準 30~140)、尿素窒素 22mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、血糖 96mg/dL、Na 134mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 98mEq/L。CRP7.4mg/dL。
- 適切な治療薬はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [113D056]←[国試_113]→[113D058]
[★]
- 日
- げんうん、めまい
- 英
- vertigo, dizziness
- ラ
- vertigo
- 同
- めまい発作 dizzy spell
- 関
- めまい、耳鳴り
めまいの分類
IMD. 276
- SOD.134
原因部位による分類
めまいをきたしうる疾患
- IMD.277
原因部位と眼振
原因部位の鑑別
- 研修医当直御法度 症例帳 p.22
- IMD.279
|
末梢前庭性めまい
|
中枢性めまい
|
性状
|
回転性が多い
|
回転性は少ない
|
強さ
|
強い
|
軽度
|
持続時間
|
数日まで
|
数日以上
|
眼振の方向
|
一方向性
|
注視方向性
|
自発眼振の性状
|
水平回旋性が多
|
純回旋性、垂直性
|
固視の影響
|
抑制される
|
抑制されない
|
注視眼振の増強する方向
|
健側
|
患側
|
蝸牛症状
|
多い
|
稀
|
中枢神経症候
|
なし
|
あり
|
悪心・嘔吐
|
軽度~重度
|
ない or 軽度
|
疫学
- IMD.277
- 1. 末梢前庭性眩暈:4-5割 → 良性発作性頭位眩暈が多い。
- 2. 中枢性眩暈 :3割
眩暈、難聴をきたす疾患
検査
参考
- 1. [charged] Benign paroxysmal positional vertigo - uptodate [1]
[★]
- 英
- hypomagnesemia
- 関
- マグネシウム、高マグネシウム血症、電解質異常
定義
- 血清中のマグネシウム値低下による症状。
- 正常範囲以下(1.5mg/dl以下)となった病態 正常範囲は 1.5-2.3 mg/dl
病因
- 食事摂取量不足
- 消化管(腸管)からの吸収障害:飢餓状態、嘔吐、長期の胃腸液吸引、吸収不良症候群*、急性膵炎*、肝硬変
- 腎からの排泄増加
病態生理
症状
- 神経筋機能の異常:テタニー、振戦、てんかん発作、筋脱力、運動失行、眼振、めまい、感情鈍麻、うつ、易刺激性、譫妄(delirium)、精神症状 (HIM.2373)
- 心血管系:不整脈(洞性頻脈、上室性頻拍、心室性不整脈)、PR/QT延長、T波平坦化/陰性T波、ST straightening (HIM.2373)
- 電解質:低カルシウム血症、低カリウム血症 ← 個別に治療しても無駄。マグネシウムを補正する必要がある。1,25(OH)2Dの産生を阻害、細胞にPTHへの耐性をもたせ、さらに<1mg/dLではPTHの分泌を阻害する。 (HIM.2373) また、低マグネシウム血症では尿細管でのカリウム再吸収が低下するらしい。
- その他:ジギタリス毒性上昇(MgはATPaseの補酵素だからね)
低マグネシウム血症と高マグネシウム血症の比較
検査
心電図
- HIM.2373
合併症
[★]
- 英
- aminoglycoside antibiotic
- 関
- 抗菌薬、アミノグリコシド系薬、アミノグリコシド
GOO. chapter.45
- タンパク質合成阻害による抗菌薬は静菌的なのもが多いが、アミノグリコシド系抗菌薬は「殺菌的」に作用
構造
- amino sugars linked to an aminocyclitol ring by glycosidic bonds (GOO.1155)
- 名前の通りアミノ基-NH2を多数有しているため正電荷を帯びる
- →経口吸収不良
- →脳脊髄液に移行しにくい。
- →腎排泄されやすい
動態
- 内服不可能→外来患者に使いにくい
- 細胞膜(内膜)の通過は膜電位ポテンシャルに依存している。ここが律速段階となる。 → 細胞内移行性悪
- 阻害、拮抗要素:二価陽イオン、高浸透圧、pHの低下、嫌気的条件
- 膿瘍など嫌気的条件、酸性の高浸透圧尿など細菌の膜電位ポテンシャルが低下する場合に薬効低下
作用機序
- 1. 翻訳開始を阻害
- 2. 翻訳を停止させる
- 3. 誤ったアミノ酸を取り込ませる
- 異常蛋白が細胞膜に挿入され、膜の透過性を変えてさらにアミノグリコシド系抗菌薬の取り込みを促す
薬理作用
- 薬効は迅速。濃度依存的。
- post-antibiotic effectがある。
- 抗菌薬の血漿濃度がminnimum inhibitory concentration以下になっても殺菌活性が残存。殺菌活性の残存時間は濃度依存的
抗菌スペクトル
副作用
- 腎障害:近位尿細管の壊死変性。用量依存的
- 耳毒性:CN VIII障害。内耳の有毛細胞を破壊。用量依存的
- 神経・筋遮断作用:(稀であるが)神経筋遮断作用(およびこれによる無呼吸)を呈する。遮断作用はネオマイシンが一番強く、カナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシンがこれに続く。通常、胸腔内、腹腔に大量投与した時に生じるが、静脈内、筋肉内、あるいは経口投与でも起こりうる。大抵の発作(神経筋接合部が遮断される発作)は麻酔薬やその他の神経筋接合部遮断薬の投与で生じる(←どういう意味?)。重症筋無力症の患者はアミノグリコシド系抗菌薬による神経筋接合部遮断作用を受けやすい。(GOO.1164)
アミノグリコシド系抗菌薬
[★]
- 英
- Fanconi's syndrome, Fanconi syndrome
- 同
- ファンコニ症候群、ファンコニー症候群、Fanconi症候群、近位腎尿細管機能障害 proximal renal tubular dysfunction、デトーニ・ドゥブレ・ファンコニ症候群 De Toni-Debre-Fanconi syndrome、腎ファンコニー症候群 renal Fanconi syndrome
- 関
- 腎尿細管転送障害症、尿細管性アシドーシス、近位尿細管
概念
- 以下の病態の総称 : 近位尿細管の障害 → アミノ酸 + 糖 + リン酸 などの漏出 & 近位尿細管アシドーシス(RTA I)
原因
- 参考1,2
-
病態
- 近位尿細管の障害により、吸収されるべき分子が尿中に排出され、その結果として生じる血液検査、尿検査、様々な症候を呈する。
- 血液検査:低リン血症、低カルシウム血症、低カリウム血症、低尿酸血症
- 尿検査:腎性糖尿、汎アミノ酸尿、尿細管性蛋白尿(β2ミクログロブリン)、高リン酸尿症
参考
- 1. SPE.606
- 2. Etiology and clinical manifestations of renal tubular acidosis in infants and children - uptodate [2]
[★]
- 英
- Pseudomonas aeruginosa
- 同
- シュードモナス・エルジノーサ
- 関
- 日和見感染、SPACE
治療
[★]
- 英
- aminoglycoside-resistant Enterococci
- 関
- 腸球菌属
[★]
- 英
- aminoglycoside-modifying enzyme, AME
[★]
アミノグリコシド系抗菌薬
[★]
アミノグリコシド系抗菌薬
[★]
- 英
- glycoside
- 同
- 配糖体
- 関
- 強心配糖体
[★]
- 英
- glyco、glycated
- 関
- 糖、糖化