ドパミン
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/12/02 22:31:48」(JST)
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ドーパミン |
|
|
IUPAC名
4-(2-アミノエチル)ベンゼン-1,2-ジオール
|
別称
ドパミン, DA
2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチルアミン
3,4-ジヒドロキシフェネチルアミン
3-ヒドロキシチラミン
Intropin Revivan
オキシチラミン
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
51-61-6 |
KEGG |
D07870 |
|
特性 |
化学式 |
C8H11NO2 |
モル質量 |
153.178 g/mol |
融点 |
128 ℃ (401 K)
|
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ドーパミン(英: dopamine)は、中枢神経系に存在する神経伝達物質で、アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもある。運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる。セロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ヒスタミン、ドーパミンを総称してモノアミン神経伝達物質と呼ぶ。またドーパミンは、ノルアドレナリン、アドレナリンと共にカテコール基をもつためカテコールアミンとも総称される。医学・医療分野では日本語表記をドパミンとしている[1]。
統合失調症の陽性症状(幻覚・妄想など)は基底核や中脳辺縁系ニューロンのドーパミン過剰によって生じるという仮説がある。この仮説に基づき薬物療法で一定の成果を収めてきているが、一方で陰性症状には効果が無く、根本的病因としては仮説の域を出ていない。覚醒剤はドーパミン作動性に作用するため、中毒症状は統合失調症に類似する。強迫性障害、トゥレット障害、注意欠陥多動性障害 (ADHD) においてもドーパミン機能の異常が示唆されている。
一方、パーキンソン病では黒質線条体のドーパミン神経が減少し筋固縮、振戦、無動などの運動症状が起こる。また抗精神病薬などドーパミン遮断薬の副作用としてパーキンソン症候群が起こることがある。
中脳皮質系ドーパミン神経は、とくに前頭葉に分布するものが報酬系などに関与し、意欲、動機、学習などに重要な役割を担っていると言われている。陰性症状の強い統合失調症患者や、一部のうつ病では前頭葉を中心としてドーパミンD1の機能が低下しているという仮説がある。
下垂体漏斗系においてドーパミンはプロラクチンなどの分泌抑制因子として働く。そのためドーパミン作動薬は高プロラクチン血症の治療薬として使用され、逆にドーパミン遮断薬は副作用として高プロラクチン血症を誘発する。
目次
- 1 生合成過程
- 2 放出・再取り込み・分解
- 3 関連人物
- 4 関連項目
- 5 脚注
- 6 外部リンク
生合成過程
ドーパミンの前駆体はL-ドーパである。L-ドーパはフェニルアラニンやチロシンの水酸化によって作られる。
- チロシン→L-ドーパ(L-ジヒドロキシフェニルアラニン)
-
- チロシン水酸化酵素 (tyrosine hydroxylase, TH) EC 1.14.16.2
-
- ドーパ脱炭酸酵素(dopa decarboxylase, DDC; 芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素 aromatic amino acid decarboxylase, AAAD, AADC, DDCなどと表記される)EC 4.1.1.28
さらに一部のニューロンにおいては、ドーパミンから、ドーパミン-β-モノオキシゲナーゼ (dopamine beta hydroxylase, DBH; あるいは dopamine beta-monooxygenase) EC 1.14.17.1によってノルアドレナリンが合成される。
放出・再取り込み・分解
ニューロンでは、ドーパミンは合成された後、小胞の中へ充填され(中枢神経系では小胞性モノアミン輸送体2 vesicular monoamine transporter 2 (VMAT2, SLC18A2) の働きによる)、活動電位の発生に伴って、放出される。
放出後のドーパミンは、ドーパミン輸送体 (dopamine transporter, DAT, SLC6A3) によって、ドーパミン作動性の軸索に再取り込みされる。その後、カテコール-O-メチル基転移酵素 (catechol-O-methyl transferase, COMT) EC 2.1.1.6およびモノアミン酸化酵素 (monoamine oxidase, MAO) EC 1.4.3.4によって、分解される。酵素による分解を免れたドーパミンは、再び小胞へと充填されて再利用されると考えられている。
ドーパミンが関係する薬剤には以下のようなものがある。抗精神病薬は、主にドーパミンD2受容体を遮断することで効果を発現する。抗パーキンソン病薬のほとんどは、ドーパミンの前駆体であったりドーパミン受容体を刺激したりすることでドーパミン作動性に働くことで効果を発現する。
- ドーパミン(イノバン、カタボン):急性循環不全治療薬
- L-ドーパ(ドパストン)、L-ドパ・カルビドパ配合剤(ネオドパストン)、カベルゴリン(カバサール)、ブロモクリプチン(パーロデル)、アマンタジン(シンメトレル)、アンフェタミン、メタンフェタミン、メチルフェニデートなど
- 抗精神病薬、メジャートランキライザーとも呼ばれるクロルプロマジン、ハロペリドールなど。
関連人物
関連項目
- ドーパミン受容体
- ドーパミン作動性ニューロン
- ドーパミン拮抗薬
- ドーパミン-β-モノオキシゲナーゼ
- 神経伝達物質
- 覚醒剤
- 統合失調症
- ドーパミン仮説
- パーキンソン病
- 報酬系
- 大脳基底核
脚注
- ^ 日本神経学会用語委員会編『神経学用語集 改訂第3版』文光堂、2008年、p.42
外部リンク
- (百科事典)「Dopamine Modulation」 - スカラーペディアにある「ドーパミンによる神経修飾」についての項目。(英語)
- ドーパミン - 脳科学辞典
- ドーパミン仮説 - 脳科学辞典
内分泌器:ホルモン(ペプチドホルモン、ステロイドホルモン) |
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視床下部 - 脳下垂体 |
視床下部
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GnRH - TRH - ドーパミン - CRH - GHRH - ソマトスタチン - ORX - MCH - MRH - MIH
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脳下垂体後葉
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バソプレッシン - OXT
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|
脳下垂体中葉
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MSH(インテルメジン)
|
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脳下垂体前葉
|
αサブユニット糖タンパク質ホルモン(FSH - LH - TSH) - GH - PRL - POMC(ACTH - エンドルフィン - リポトロピン)
|
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副腎 |
副腎髄質
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副腎髄質ホルモン(アドレナリン - ノルアドレナリン - ドーパミン)
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副腎皮質
|
副腎皮質ホルモン(アルドステロン - コルチゾール - DHEA)
|
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甲状腺 |
甲状腺
|
甲状腺ホルモン(T3 - T4 - カルシトニン)
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副甲状腺
|
PTH
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生殖腺 |
精巣
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テストステロン - AMH - インヒビン
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卵巣
|
エストラジオール - プロゲステロン - インヒビン/アクチビン - リラキシン(妊娠時)
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その他の内分泌器 |
膵臓
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グルカゴン - インスリン - ソマトスタチン
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松果体
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メラトニン
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内分泌器でない器官 |
胎盤:hCG - HPL - エストロゲン - プロゲステロン - 腎臓:レニン - EPO - カルシトリオール - プロスタグランジン - 心臓:ANP - BNP - ET - 胃:ガストリン - グレリン - 十二指腸:CCK - GIP - セクレチン - モチリン - VIP - 回腸:エンテログルカゴン - 脂肪組織:レプチン - アディポネクチン - レジスチン - 胸腺:サイモシン - サイモポイエチン - サイムリン - STF - THF - 肝臓:IGFs(IGF-1 - IGF-2) - 耳下腺:バロチン - 末梢神経系:CGRP - P物質
|
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誘導タンパク質 |
NGF - BDNF - NT-3
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Japanese Journal
- 塩酸ドパミン(イノバン^<[○!R]>注)院内製剤の安定性試験
- 城武 昇一,小原 義巳,鈴木 重夫,平野 裕美,岩田 政則
- 病院薬学 17(6), 467-469, 1991-12
- Dopamine hydrochloride is a drug frequently used in many departments to treat acute circulatory insufficiency. The pharmaceutical preparation for convenient use inside the hospital was made, and the t …
- NAID 110001798789
Related Links
- イノバン注100mg,ドパミン塩酸塩注射液. ... 商品名, イノバン注100mg, 薬品情報 添付文書情報 成分一致薬品. 薬効, 2119 その他の強心剤. 一般名, ドパミン塩酸塩 注射液, 英名, Inovan. 剤形, 注射液, 薬価, 868.00. 規格, 100mg5mL1管, メーカー, 協和 ...
- イノバン注0.3%シリンジ,ドパミン塩酸塩キット. ... 商品名, イノバン注0.3%シリンジ, 薬品情報 添付文書情報 成分一致薬品. 薬効, 2119 その他の強心剤. 一般名, ドパミン 塩酸塩キット, 英名, Inovan. 剤形, キット類, 薬価, 1354.00. 規格, 0.3%50mL1筒 ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
イノバン注50mg
組成
- イノバン注50mgは、1管中に次の成分を含有する。
容量(1管中)
有効成分
- 日局ドパミン塩酸塩※ 50mg
- ※旧薬局方における日本名:日局塩酸ドパミン
添加物
禁忌
- 褐色細胞腫[カテコールアミンを過剰に産生する腫瘍であるため、症状が悪化するおそれがある。]
効能または効果
- 急性循環不全(心原性ショック、出血性ショック)
下記のような急性循環不全状態に使用する。
- 無尿、乏尿や利尿剤で利尿が得られない状態
- 脈拍数の増加した状態
- 他の強心・昇圧剤により副作用が認められたり、好ましい反応が得られない状態
- 通常ドパミン塩酸塩として1分間あたり1〜5μg/kgを点滴静脈投与し、患者の病態に応じ20μg/kgまで増量することができる。
必要に応じて日局生理食塩液、日局ブドウ糖注射液、総合アミノ酸注射液、ブドウ糖・乳酸ナトリウム・無機塩類剤等で希釈する。
投与量は患者の血圧、脈拍数および尿量により適宜増減する。
慎重投与
- 末梢血管障害のある患者(糖尿病、アルコール中毒、凍傷、動脈硬化症、レイノー症候群、バージャー病等)[末梢血管収縮作用により症状が悪化するおそれがある。]
- 未治療の頻脈性不整脈又は心室細動の患者[陽性変時作用により症状が悪化するおそれがある。]
重大な副作用
麻痺性イレウス
- 麻痺性イレウス(0.08%)があらわれることがある。
四肢冷感等の末梢の虚血
- 末梢血管の収縮により四肢冷感(0.5%)等の末梢の虚血が起こり、壊疽を生じることもあるので、四肢の色や温度を十分に観察し、変化があらわれた場合には投与を中止し、必要があればα-遮断剤を静脈内投与する。
薬効薬理
心収縮力増強作用4)
- 冠動脈血流、大動脈血流及びLVdp/dtは投与量に比例して増加する。
腎血流量増加作用5)
上腸間膜血流量増加作用6)
- ドパミン受容体を介して上腸間膜血流量を増加させる。
血圧上昇作用7)
有効成分に関する理化学的知見
性状
溶解性
- 水又はギ酸に溶けやすく、エタノール(95)にやや溶けにくい。
pH
融点
分配係数
- logP′OCT=−2.3〔測定法:フラスコシェイキング法、n-オクタノール/pH7.4緩衝溶液〕
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- dopamine DA DOA 3,4-dihydroxyphenethylamine
- 同
- ドーパミン
- 化
- 塩酸ドパミン, dopamine hydrochloride, ドパミン塩酸塩
- 商
- イノバン、イブタント、カコージンD、カコージン、カタボン、ガバンス、クリトパン、ツルドパミ、ドパラルミン、ドミニン、トロンジン、プレドパ、マートバーン、ヤエリスタ
- 関
- ドパミン受容体、カテコラミン。強心剤
概念
生合成
視床下部-下垂体系
- 視床下部弓状核や脳室周辺の隆起漏斗系ドパミンニューロンで産生される。
- 下垂体のD2受容体を介してホルモン分泌の調節を受けている。 → e.g. プロラクチン放出抑制ホルモン(PIF)
- 低用量での血管拡張はこの受容体を介して起こる (GOO.249)
- 中枢神経系に存在
神経伝達物質の薬理 (GOO.324)
薬理学
- D1受容体に作用して血管拡張→腎血流量↑→GFP↑→Na排出↑→利尿
- β1受容体に作用→心拍出量↑・心収縮力↑(頻脈はない)・収縮期圧↑・拡張期圧不変
- アドレナリン低用量投与と同じ?
- α1受容体に作用→血管平滑筋収縮(→収縮期圧↑、拡張期圧↑???)
- アドレナリン高用量投与と同じ?
ran]]
(PT.218)
- 中脳に細胞体を持つものが多く、黒質から線条体に至る黒質線条体系と黒質や腹側被蓋野から報酬系の神経核、辺縁系、前頭葉に至る中脳皮質系がある。視床下部やその周辺にもドーパミン作動性線維の細胞体とその終末があり、隆起漏斗系、隆起下垂体系、不確帯視床下部系、脳室周囲系を形成する。黒質線条体系の変性はパーキンソン病をもたらす。ドーパミン誘導体には幻覚剤となるものがある。ドーパミンの分泌増大や脳のD2受容体の増加は精神分裂病(統合失調症)の発病に関与している可能性がある。モルヒネはドーパミンの分泌を促進する。コカインは輸送体によるドーパミンの取り込みを阻害し作用の持続時間を延長する。一部の覚醒剤中毒はドーパミン輸送体の抑制による。
ホルモンの調節
- プロラクチンは視床下部でドパミンの産生を促進 ← プロラクチン抑制因子として作用
- ドパミンは視床下部でGnRHの分泌を抑制 → 卵巣機能の抑制
- ドパミンは下垂体前葉?でD受容体に作用してプロラクチンを抑制 ← 抗精神病薬(D2受容体をブロックする)を使うと高プロラクチン血症となる。
循環不全治療薬として
- イノバン
- 下記のような急性循環不全(心原性ショック、出血性ショック)
- (1) 無尿、乏尿や利尿剤で利尿が得られない状態 ← 低濃度で用いれば、腎血流を増加させ尿量の増加が期待できる → ドパミン#薬理学
- (2) 脈拍数の増加した状態 ← 高濃度でなければ、頻脈を起こさず心拍出量を増やす。 → ドパミン#薬理学
- (3) 他の強心・昇圧剤により副作用が認められたり、好ましい反応が得られない状態
[★]
- 英
- cardiac stimulant、cardiotonic、cardiotonics
- 関
- 強心、強心性、強心薬、心保護薬
商品
[★]
- 英
- sodium sulfate
- 商
- 乾燥硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アストーマ、アスペノン、アプリトーン、アモキシシリン、アモペニキシン、アモリン、アルギスタット、アルフロシン、アレンフラール、アンチレクス、イソパール・P、イノバン、ウレパール、エカテリシン、エクセラーゼ、エクセラーゼ配合、エホチール、エルゴメトリンマレイン酸塩、オーネスSP、オーネスSZ、オーペグ 、カズマリン、ガモファー、カラシミンC、カルデナリン、カルメゾシン、グルコリンS、ケイラーゼA、ケフラール、ケフレックス、ゲンタマイシン、ゲンタロール、コスパノン、コバマミド、コントミン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ジアイナミックス、シーシーエル、シータック、シェトラゾーナ、ジソピラミド、スクリット配合、セクロダン、セフジトレンピボキシル、セフジニル、セブンイー・P、センセファリン、ダイメジンスリービー、ダウンテンシン、タフマックE、ダラシン、タンチパン配合、テクネMAG3、デトキソール、トキクロル、ドキサゾシン、ドキサゾン、ドパミン塩酸塩、トレキサメット、ドロキシドパ、トロキシン、ニザチジン、ニトレナール、ニトロールR、ニフプラス 、ニフレック配合、ニューロライト、ネオ・エフラーゼ配合、ハイポ、プロモーション
- 関
- 塩類下剤