出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/05/24 04:04:15」(JST)
IUPAC命名法による物質名 | |
---|---|
3-ethyl-4-methyl-N-(4-[N-((1r,4r)-4-methylcyclohexylcarbamoyl)sulfamoyl]phenethyl)-2-oxo-2,5-dihydro-1H-pyrrole-1-carboxamide | |
臨床データ | |
商品名 | Amaryl |
AHFS/Drugs.com | monograph |
MedlinePlus | a696016 |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
|
投与方法 | Oral |
薬物動態的データ | |
生物学的利用能 | 100% |
血漿タンパク結合 | >99.5% |
半減期 | 5 hours |
排泄 | Urine, faeces |
識別 | |
CAS番号 | 93479-97-1 |
ATCコード | A10BB12 |
PubChem | CID 3476 |
DrugBank | DB00222 |
ChemSpider | 16740595 |
UNII | 6KY687524K |
KEGG | D00593 |
ChEBI | CHEBI:5383 |
ChEMBL | CHEMBL1481 |
化学的データ | |
化学式 | C24H34N4O5S |
分子量 | 490.617 g/mol |
SMILES
|
|
InChI
|
グリメピリド(Glimepiride、商品名:アマリール)は、スルホニルウレア(SU)系の経口血糖降下薬の一つ。クロルプロパミド等の腎排泄型の第1世代やグリクラジド等の胆汁排泄型の第2世代との対比から、第3世代のSU薬とも呼ばれる[1]。
2型糖尿病。ただし、食事療法・運動療法のみで十分な効果が得られない場合に限る。と但し書されている[2]。膵臓のランゲルハンス島β細胞に働き掛けてインスリン分泌を増加させる。この機序の為、β細胞が機能しない1型糖尿病には効果が無い。
グリメピリドは膵臓のランゲルハンス島β細胞の細胞膜に発現しているATP依存性K+チャネル(英語版)(KATPチャネル)に結合する。カリウムチャネルが閉じた結果、膜の脱分極を起こし、膜電位がより+になり、電位依存性Ca2+チャネルが開いてCa2+が細胞内に流入する。細胞内カルシウム濃度の上昇に因り細胞膜でインスリン顆粒の融合が進行し、(プロ)インスリンが放出される[3]。
SU剤がβ細胞のグルコース感受性を改善し、肝臓での糖新生を低下させ、脂肪組織での脂肪分解と脂肪酸放出を減少させ、肝臓でのインスリン分解を抑制するというエビデンスが有る。
KATPチャネルは内向き整流カリウムイオンチャネル Kir6.2×4とスルホニルウレア受容体(英語版)SUR1×4からなる八量体構造をしている(Kir6.24/SUR14)。
SU剤が投与開始直後から奏効しない事を一次無効、投与を継続していると徐々に効果が失われていく事を二次無効と言う。
二次無効の原因として[4]、
等がある。SU剤は膵臓に負担を掛ける[5]とされるので、膵β細胞の破壊が考えられたら他剤の使用を考慮すべきである。
下記の患者には禁忌となっている。
添付文書に記載されている重大な副作用は、低血糖、汎血球減少、無顆粒球症、溶血性貧血、血小板減少、肝機能障害、黄疸である[2]。
特に低血糖は昏睡に至り遷延化する事が有り、脳に不可逆的変化を齎す事も有る[6]。
他にも5%未満に発現する副作用として、白血球減少、貧血、AST上昇、ALT上昇、Al-P上昇、LDH上昇、γ-GTP上昇、BUN上昇、嘔気、嘔吐、心窩部痛、下痢、発疹、眩暈、血清カリウム上昇・ナトリウム低下等の電解質異常、倦怠感が、0.1%未満に発現するものに、便秘、腹部膨満感、腹痛、掻痒感、頭痛、CK(CPK)上昇、浮腫、脱毛、一過性視力障害が、頻度不明のものに光線過敏症、味覚異常が有る。
グリメピリドは胎盤を通過するので、新生児の低血糖等が発生する。又、動物実験(ラット、ウサギ)で催奇形性作用が報告されている。
グリメピリド1mgを経口投与した場合、tmax:1.33時間でCmax:103.5±29.1ng/mLに達し、t1/2は1.47時間であった。排泄は尿中へ57.5%、胆汁中へ35.0%(単回経口投与後168時間までの累積)である。また、一部が肝臓のCYP2C9で代謝され、シクロヘキシル環に付くメチル基が水酸化される。
先発品の商品名「アマリール」は、交感神経α・β受容体遮断薬である「アルマール」と良く似た語感を持ち、医師の処方間違いや薬剤師の調剤ミス等[7]、明らかになっているものだけで15件[8]に上り、寝たきりになった事例も起きていた。発売日はアマリール錠が2000年4月、アルマール錠が1985年12月でアルマール錠の方が早い。通常の商慣習では後から発売する商品は他剤との弁別性(間違え難い事)に考慮するが、アマリールでは為されなかった[注 1]。厚生労働省がサノフィ及び大日本住友製薬に対して販売名の変更を含む改善策を要請した処、サノフィは「医療機関からさまざまな声を聞き取った結果、販売名は変更しないことにしました」と回答したのに対して大日本住友製薬は「当社が先に発売した医薬品だが、取り違えられて困るのは患者。製薬会社のあるべき姿を考えた」として、販売名を変更した[9][10]。
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
グリメピリド錠1mg「TCK」
リンク元 | 「乳糖水和物」「経口血糖降下薬」「スルホニル尿酸系薬」「糖尿病用剤」「ソニアス配合」 |
名称 | 一般名 | 主な特徴 | 適応 | 副作用 | 空腹時 血糖改善 |
食後 過血糖改善 |
低血糖の 少なさ |
肥満者に 使いやすい |
他の リスク ファクター 改善 |
膵β細胞を 疲弊させない | |
インスリン分泌促進薬 | スルホニル尿素薬 (SU薬) |
グリベンクラミド グリクラジド グリメピリド |
・インスリン追加分泌・基礎分泌上昇 ・食後血糖の選択的低下は期待できない |
・空腹時高血糖が顕著 ・非肥満がよい適応 (肥満にはグリメピリド) |
・低血糖 ・肝障害 ・腎障害 ・白血球減少 ・貧血 |
++ | - | - | - | - | - |
フェニルアラニン誘導体 (速効型インスリン分泌促進薬) |
ナテグリニド メチグリニド |
・食後のインスリン追加分泌上昇 ・インスリン分泌パターンの改善 ・SU薬に比べ低血糖を来しにくい |
・食後高血糖が顕著 (軽症2型糖尿病) |
-~+ | ++ | + | -~+ | - | -~+ | ||
インスリン抵抗性改善薬 | チアゾリジン誘導体 | ピオグリタゾン | ・脂肪細胞のインスリン抵抗性惹起物質分泌を抑制 ・その他 ・肝臓・筋のインスリン抵抗性改善 ・肝臓の糖新生抑制 |
・インスリン抵抗性を呈す (肥満2型糖尿病) |
・肝機能障害 ・浮腫 ・心不全 ・貧血 |
+~++ | - | + | ++ | ++ | + |
ビグアナイド薬 (BG薬) |
メトホルミン ブホルミン |
・肝臓:糖新生抑制による糖放出率抑制 ・小腸:糖吸収抑制 ・筋・脂肪組織:糖取り込み増加・インスリン抵抗性改善 |
・乳酸アシドーシス (嫌気性解糖の亢進による) |
+ | - | + | ++ | + | + | ||
糖吸収調節薬 | α-グルコシダーゼ阻害薬 (α-GI) |
アカルボース ボグリボース |
・食後の急激な血糖上昇を抑制 (高血糖刺激によるインスリン分泌も抑制) |
・食後高血糖 | ・消化器症状(腹部膨満・放屁・下痢など) ・低血糖 ・肝機能障害 |
-~+ | + | + | ++ | + | + |
.