出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/11/04 22:22:04」(JST)
経口血糖降下薬(OHA: oral hypoglycemic agent)は、2型糖尿病において血糖値を正常化させることで慢性合併症のリスクを軽減させる目的にて処方される薬物の総称である。
1998年イギリスでUKPDSという大規模比較試験が行われて以来、糖尿病慢性合併症予防目的にてこれらの薬は用いられている。特にインスリン分泌が残存している2型糖尿病のインスリン非依存状態において有効である。2型であっても、重篤な感染症の様にインスリン需要の多いとき、清涼飲料水ケトアシドーシス(ペットボトル症候群)の様に分泌を上回るブドウ糖摂取があるとき、周術期や妊娠などはインスリン治療が必要である。
一般名 | 商品名 | 血中半減期(Hr) | 作用時間(Hr) | 一日の使用量(mg) | 薬効(参考) |
---|---|---|---|---|---|
グリベンクラミド | オイグルコン®やダオニール® | 2.7 | 12~24 | 1.25~7.5 | 強 |
グリクラシド | グリミクロン® | 6~12 | 6~24 | 40~120 | 弱い |
グリメピリド | アマリール® | 1.5 | 6~12 | 1~6 | 中、インスリン抵抗性改善作用あり |
抗生物質の開発中、副作用の低血糖が起きて、薬効が発見された。1950年代から使用されている。開発された順に第一世代、第二世代、第三世代と分類される。第一世代にはトルブタミドなど薬理学的には重要な薬物も含まれているが、近年新規に処方される薬は殆ど第二世代と第三世代なのでそれらを表にまとめた。作用機序としては膵臓のランゲルハンス島β細胞のSU受容体のSUR1サブユニットに結合しATP依存性Kチャネルを抑制することによってインスリン分泌を促進させる。SUは経口投与可能であり、肝臓で代謝される。おもな副作用はインスリン過剰分泌による低血糖である。したがって交感神経機能が障害されている患者、意識障害がある患者、低血糖を認識できない高齢者、低血糖に対して適切に対応できない患者は慎重投与する必要がある。また、グリベンクラミド及びグリメピリドは活性代謝物の腎排泄性が高いために、糖尿病性腎症の進行に伴う腎機能低下により、遷延性の低血糖を起こしやすい。したがって、腎機能低下が認められた場合、代謝物の活性が低いグリクラシドやミチグリニドカルシウム水和物、超持続型以外のインスリンの自己注射への変更を考慮していく必要がある。
SU薬は基本的にはインスリン基礎分泌を促進する薬であるため食前に低血糖を起こしやすく、インスリン追加分泌を促進しないため食後高血糖のコントロールが困難になりやすい。このためHbA1cといった平均値のみで効果判定を行うとコントロール良好であったにも関わらず心筋梗塞といった大血管障害が起こる可能性がある。インスリン分泌を高めることは同化反応を亢進させ、体重増加を起こしインスリン抵抗性を悪化させることもある。これも空腹時低血糖により過食となり食事療法が乱れた場合との区別が難しい。第三世代のアマリール®は従来のSU薬が持つインスリン分泌作用のほかインスリン抵抗性改善作用があると考えられており、副作用による体重増加が少ない。そのため、空腹時低血糖による食事療法の乱れなども発見しやすく好まれる傾向がある。
2008年現在SU薬は軽症糖尿病の場合はあまり用いられなくなっている。重症糖尿病の場合は高血糖の持続がβ細胞の破壊という糖毒性を起こし、またインスリン抵抗性の悪化よりSU薬の効果がなくなる二次無効という現象が知られている。日本の場合、緩徐進行1型糖尿病 (slowly progressive IDDM) が多いため、抗GAD抗体測定といった精査が必要だが、2型糖尿病で二次無効ならば多剤併用療法を考慮する。
空腹時低血糖を起こしやすいため、そのような時間帯に悪心、強い空腹感、倦怠感、発汗、震えを感じたら食事療法関係なく、糖分の補給が必要であることの説明が必要である。αGI併用時はブドウ糖を補給しなければ低血糖の治療にならないことに注意が必要である。空腹時低血糖は意識障害を招くだけでなく、虚血性心疾患や網膜症を増悪させる可能性がある。
かつての大規模比較試験UGDPではSU薬と虚血性心疾患の危険についての指摘があった。1976年、米国でSU薬のひとつであるトルブタミド(ジアベン)が心血管疾患による死亡率を増大すると報告された。この研究に対して批判も多かったが、その後クロルプロパミド(ダイアビニーズ)、グリベンクラミドなどをもちいたいくつかの研究でその結果が確認されている。SU薬が、膵β細胞だけでなく心臓の動脈(冠動脈)にも作用し、心筋梗塞などの経過に悪影響を与えることが原因とする説がある。この考えにもとづくと、グリメピリドやグリニド系の薬剤は心臓に作用しにくいことがわかっているので、これらはこの観点からは安全な薬剤と考えることもできる。あまり知られていないが、UKPDS34ではメトホルミンとSU薬を併用することによって心血管イベントのリスクが増加するという指摘がある。大血管障害は食後血糖値が増加するといった血糖値の大きな振れが影響しているという説もあり、決着はついておらず次の大規模比較試験の報告によって解釈は変わりうることに注意が必要である。糖尿病患者が心筋梗塞といった大血管障害を起こした場合、その原因が原疾患のコントロールの悪さによるものか、薬の副作用によるかは厳密には区別ができず、少なくとも医療過誤ではない。ガイドライン上も積極的に血糖値をコントロールすることが合併症の予防には効果があるとされている。
一般名 | 商品名 | 血中半減期(Hr) | 作用時間(Hr) | 一日の使用量(mg) |
---|---|---|---|---|
ナテグリニド | ファスティック®やスターシス® | 0.8 | 3 | 270~360 |
ミチグリニドカルシウム水和物 | グルファスト® | 1.2 | 3 | 30~60 |
レパグリニド | シュアポスト® | 1.0 | 5~8 | 0.75~3.0 |
フェニルアラニン誘導体 (グリニド系) はSU構造は持たないものの、SU薬と同様に膵臓のランゲルハンス島β細胞のSU受容体(SUR1)に作用し、インスリン分泌を促進させる。食後は吸収が悪くなるので食直前に内服する。5-15分で薬効を来たし数時間で作用消失する。この早く効いて、早く効果がなくなるという点がSU薬と大きく異なるところである。食後血糖降下薬ともいわれ、SU薬がインスリン基礎分泌の促進、グリニド系がインスリン追加分泌の促進と考えられている。インスリン療法の超速効型インスリンと中間型インスリンの対応に似ているが、SU薬とグリニド系の併用は保険診療上認められていない。なお、ナテグリニドは活性代謝物の腎排泄性が高いために、糖尿病性腎症の進行に伴う腎機能低下により、遷延性の低血糖を起こしやすい。
一般名 | 商品名 | 血中半減期(Hr) | 作用時間(Hr) | 一日の使用量(mg) |
---|---|---|---|---|
アカルボース | グルコバイ® | 2~3 | 150~300 | |
ボグリボース | ベイスン® | 2~3 | 0.6~0.9 | |
ミグリトール | セイブル® | 1~3 | 150~225 |
アルファ・グルコシダーゼ阻害薬 (αGI薬) は食物性糖質の1000倍も親和性の強い糖質類似物質(アナログ)である。糖質が吸収されるためには澱粉のような多糖類から消化酵素の作用を得て二糖類(麦芽糖や蔗糖)、単糖類(ブドウ糖や果糖)に分解される必要がある。その酵素、α-グルコシダーゼを阻害し、消化吸収を緩徐にすることで、血糖の上昇をおさえるので、食後過血糖改善薬ともいわれる。これらの薬物は血糖値の食後のピークを減少させ、食事とともに摂取すると有効であるが食事以外の高血糖の治療には有効ではない。鼓腸、膨満感、腹部不快感、下痢などの副作用がよく報告される。これらの原因は消化されずに腸管にのこった糖類が醗酵し発生するガスによるものである。αGIの継続的な使用によってこれらの副作用は軽減していく傾向がある。しかし炎症性腸疾患の患者では禁忌である。腸閉塞様症状に至る場合もあり糖尿病性神経障害で消化管蠕動障害がある場合は留意する。体質的に、肝障害を来す例があるので肝トランスアミナーゼの定期的な観察を行う。肝障害は薬物の中止とともに可逆的に改善する。αGIに体重増加作用はないため、食事療法の妨げにならない。
少量から開始し、体を慣らしていくことで、消化器症状によるQOL低下を防止できる。αGI薬の使用中に低血糖が発現したときは、澱粉や蔗糖では血糖上昇に時間が掛かるのでブドウ糖や清涼飲料水に砂糖の代用に使われているブドウ糖果糖液糖を低血糖の処置に用いる。
一般名 | 商品名 | 血中半減期(Hr) | 作用時間(Hr) | 一日の使用量(mg) |
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メトホルミン塩酸塩 | メルビン® | 1.5~4.7 | 6~14 | 250~750 |
ブホルミン塩酸塩 | ジベトス® | 3 | 6~14 | 50~150 |
肝臓に作用して糖新生を抑え,筋肉での糖の取り込みを促進、さらに腸管でのブドウ糖吸収を抑制すると考えられている。詳細な作用機序は不明であるが、分子標的はAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPPK)と考えられている。インスリン抵抗性改善薬であるので、体重は不変から減少傾向となり、食事療法の妨げにならない。かつて副作用である乳酸アシドーシス(乳酸ピルビン酸が蓄積しやすくなるため)に対する懸念からあまり用いられることはなかった。しかし、実際は乳酸アシドーシスの頻度は低いことが英国でのUKPDSでの再評価によって判明した。乳酸アシドーシスを起こしやすい病態、すなわち、肝障害、腎障害、心障害の既往がある患者には使用をさける。塩酸メトホルミンが主流である。塩酸ブホルミンは塩酸メトホルミンに比べて薬効が低く、乳酸アシドーシスを起こしやすいといわれている。2008年現在、インスリン抵抗性のある患者に広く使われるようになりTZDとの合剤も海外では販売されている。
その他の問題点は軽度の胃腸障害であるが、これは一時的なもので少量から開始し、ゆっくりと漸増すれば軽減できる。
発熱時、下痢など脱水のおそれがあるときは休薬する。ヨード造影剤使用の際は2日前から投与を中止する。
一般名 | 商品名 | 血中半減期(Hr) | 作用時間(Hr) | 一日の使用量(mg) |
---|---|---|---|---|
ピオグリタゾン塩酸塩 | アクトス® | 5 | 20 | 15~45 |
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ (PPAR‐γ) 作働薬やインスリン抵抗性改善薬とも呼ばれる。核内受容体のひとつであるPPAR-γに結合し、インスリンの抵抗性を悪化させる様々な因子の転写調節をする。主として末梢組織のインスリン抵抗性改善にあたる。有効性及び安全性に性差を認め、女性で浮腫を来し易い一方で、小用量で血糖降下作用を見る事が多い。脂肪細胞に作用しブドウ糖の取り込みを増やす事で血糖が低下する。その代わり肥満を助長しやすくなる。塩酸ピオグリタゾン(商品名:アクトス®)だけが現在、国内で上市されている。最初に商品化されたトログリタゾン(商品名:ノスカール®)は肝障害の死亡例が相次ぎ、その原因の一つとして肝臓での薬の代謝に関わるグルタチオン抱合酵素GSTT1とGSTM1の変異が重なると特に副作用の発症率が高い事が示された。類薬ではトログリタゾン程の肝障害は報告されていないが留意して使用するのが望まれる。副作用として浮腫や貧血を合併することがあるが、腎でのインスリン感受性亢進のため、Naの再吸収を促進するためだといわれている。脂肪細胞を分化誘導する一方で骨芽細胞の減少により骨折のリスクが増加するのではないかと云われている。
副作用に浮腫があるために心不全の既往がある患者には禁忌となる。浮腫が出現しなくとも効果が出ると体重が増加する傾向があるため、食事療法のコントロールに気をつける必要がある。
大血管障害の既往を有する2型糖尿病患者に対して、心血管イベントの発症の抑制、およびインスリン治療の導入を遅らせるという欧州での成績がある。
インクレチンは主に小腸で産生され、膵臓のβ細胞に作用しインスリン分泌促進させるホルモンで、インクレチンを増強させる薬として以下がある。
DPP-IV阻害薬は、インクレチンの分解酵素のDPP(dipeptidyl peptidase)-IVを阻害する事で、インクレチンの血中濃度を上昇させる。インクレチンは血糖値依存的に膵β細胞からのインスリン分泌を促進させると共に膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制し、更に胃からの内容物排出速度を遅らせて血糖値の急激な上昇を抑える働きを持つ。
一般名 | 商品名 | 血中半減期(Hr) | 作用時間(Hr) | 一日の使用量(mg) | 特徴的な禁忌・慎重投与 |
---|---|---|---|---|---|
シタグリプチン | グラクティブ® ジャヌビア® |
9.6~12.3 | 50~100 | (慎)中等度以上の腎機能障害 | |
ビルダグリプチン | エクア® | 1.77~3.95 | 50~100 | (禁)重度肝機能障害 (慎)肝機能障害・ |
|
アログリプチン | ネシーナ® | 17.1 | 25 | (慎)中等度以上の腎機能障害・心不全 | |
リナグリプチン | トラゼンタ® | 96.9~113 | 5 | 特になし | |
テネリグリプチン | テネリア® | 17.4~30.2 | 20~40 | (慎)高度肝機能障害・心不全 | |
アナグリプチン | スイニー® | α相1.87~2.02 β相5.75~6.20 |
100~200 | (慎)重度腎機能障害 | |
サキサグリプチン | オングリザ® | 6.0~6.8 | 2.5~5 | 特になし | |
トレラグリプチン |
下部小腸に存在するL細胞から産生されるインクレチンの一つである「GLP-1(glucagon like peptide-1)」の受容体に作用することで、インスリン分泌を増強する薬剤。
一般名 | 商品名 | 血中半減期(Hr) | 作用時間(Hr) | 一日の使用量 |
---|---|---|---|---|
リラグルチド | ビクトーザ® | 10~11 | 0.3~0.9 mg | |
エキセナチド | バイエッタ® ビデュリオン® | 1.27~1.35 | 10~20μg | |
リキシセナチド | リクシミア® | 2.01~2.45 | 10~20μg |
ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT2)阻害薬は、Na+-ブドウ糖共輸送体(SGLT:sodium-dependent glucose transporter 2)は尿細管内腔にあり糸球体で、ろ過された原尿には血漿と同じ濃度含まれているブドウ糖をナトリウムと共に尿細管細胞内に再吸収する。この蛋白のお陰で尿糖閾値までブドウ糖が外に失われずに済む。尿糖を増やせば血糖が減るので、血糖が正常化すれば、膵でのインスリン分泌の負担が軽くなり、糖毒性が取れるのではないかというコンセプトで開発された。同様の蛋白(SGLT1)は小腸上皮粘膜細胞にもあり 腸管からの糖の吸収に携わっている。SGLT2阻害薬は、SGLT2に選択的に作用し、SGLT1に対する影響は軽微である。 糖排泄によるグルカゴン濃度上昇と肝に於ける内因性糖産生が起こり、ケトアシドーシスに繋がることが有ることに注意が必要である[1]。また、本剤に共通する可能性のある副作用として皮疹・紅斑が挙げられている。この系統の薬剤はその作用機序から高度又は末期の腎障害患者での有効性は期待できない。他、SGLT2阻害薬が糖尿病新薬として、2014年から相次ぎ発売されるようになったが、服用していた患者2人が死亡していたことが2014年10月に判明している。これらの患者は利尿薬と併用するなどしていた模様である[2]。
一般名 | 商品名 | 血中半減期(Hr) | 作用時間(Hr) | 一日の使用量(mg) |
---|---|---|---|---|
イプラグリフロジン | スーグラ® | 11.71~14.97 | 50~100 | |
ダパグリフロジン | フォシーガ® | 約8~12 | 5~10 | |
ルセオグリフロジン | ルセフィ® | 8.96~11.2 | 2.5~5 | |
トホグリフロジン | デベルザ®、アプルウェイ® | 5.40±0.622(SD) | 20 | |
カナグリフロジン | カナグル® | 10.2~11.8 | 100 | |
エンパグリフロジン |
など
幾つかの健康食品や漢方薬にSU薬などの経口血糖降下薬の含有があったと報告されている。中国語を列記する。 「格列本脲(ニクヅキに尿)」グリベンクラミド、「伏格列波糖」ボグリボース、「二甲双胍(ニクヅキに瓜)」メトフォルミン
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国試過去問 | 「104G060」「104G059」「104G058」「106D041」 |
リンク元 | 「経口血糖降下薬」「フェンホルミン」 |
関連記事 | 「糖尿病」「薬」「経口」「糖尿」 |
B
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A
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B
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E
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名称 | 一般名 | 主な特徴 | 適応 | 副作用 | 空腹時 血糖改善 |
食後 過血糖改善 |
低血糖の 少なさ |
肥満者に 使いやすい |
他の リスク ファクター 改善 |
膵β細胞を 疲弊させない | |
インスリン分泌促進薬 | スルホニル尿素薬 (SU薬) |
グリベンクラミド グリクラジド グリメピリド |
・インスリン追加分泌・基礎分泌上昇 ・食後血糖の選択的低下は期待できない |
・空腹時高血糖が顕著 ・非肥満がよい適応 (肥満にはグリメピリド) |
・低血糖 ・肝障害 ・腎障害 ・白血球減少 ・貧血 |
++ | - | - | - | - | - |
フェニルアラニン誘導体 (速効型インスリン分泌促進薬) |
ナテグリニド メチグリニド |
・食後のインスリン追加分泌上昇 ・インスリン分泌パターンの改善 ・SU薬に比べ低血糖を来しにくい |
・食後高血糖が顕著 (軽症2型糖尿病) |
-~+ | ++ | + | -~+ | - | -~+ | ||
インスリン抵抗性改善薬 | チアゾリジン誘導体 | ピオグリタゾン | ・脂肪細胞のインスリン抵抗性惹起物質分泌を抑制 ・その他 ・肝臓・筋のインスリン抵抗性改善 ・肝臓の糖新生抑制 |
・インスリン抵抗性を呈す (肥満2型糖尿病) |
・肝機能障害 ・浮腫 ・心不全 ・貧血 |
+~++ | - | + | ++ | ++ | + |
ビグアナイド薬 (BG薬) |
メトホルミン ブホルミン |
・肝臓:糖新生抑制による糖放出率抑制 ・小腸:糖吸収抑制 ・筋・脂肪組織:糖取り込み増加・インスリン抵抗性改善 |
・乳酸アシドーシス (嫌気性解糖の亢進による) |
+ | - | + | ++ | + | + | ||
糖吸収調節薬 | α-グルコシダーゼ阻害薬 (α-GI) |
アカルボース ボグリボース |
・食後の急激な血糖上昇を抑制 (高血糖刺激によるインスリン分泌も抑制) |
・食後高血糖 | ・消化器症状(腹部膨満・放屁・下痢など) ・低血糖 ・肝機能障害 |
-~+ | + | + | ++ | + | + |
糖尿病との関係 | 疾患 | 臨床的特徴 |
糖尿病が直接病因に関与する疾患 | 糖尿病性手関節症(diabetic cheiroarthropathy) | コントロール不良の糖尿病に多い。原因不明の皮膚硬化が徐々に進行し、手指の屈曲拘縮を来し手全体に及び、強皮症と誤診される。手指を合わせることができない(Prayer徴候)。 |
シャルコー関節 | 頻度は低い(1%)が、長期糖尿病コントロール不良患者に多い。通常、足根中足関節などの中足部が多く、足底表面、前足部、中足部に潰瘍形成の合併を認めることがあり、骨髄炎との鑑別が困難な例あり。 | |
糖尿病性骨溶解(diabetic osteolysis) | 原因不明の足趾の末節骨や基節骨の骨吸収が起こリ、足痛の原因となる。X線ではickedcandy変形を呈し、骨髄炎との鑑別が困難。 | |
糖尿病性筋梗塞 | 外傷、感染、腫瘍がなく大腿部などに急激に増大する疼痛を伴う腫瘤を認める。生検は出血の危険があるため行わない。通常1~2カ月で自然寛解する | |
糖尿病性筋萎縮症(diabetic amyotrophy) | 糖尿病性末梢神経障害の一型。大腿前部の痛みで、時に脱力や萎縮が非対称性に起きる。CPKの上昇はなく、脳脊髄液で軽度蛋白上昇以外の有意な所見はない。神経伝導速度.筋電図では神経原性変化を認め、筋生検では炎症細胞浸潤を伴わない筋線経の萎縮あり。 | |
直接の関係は不明だが糖尿病患者に頻度が高い疾患 | 癒着性関節包炎(凍結肩または五十肩) | 糖尿病患者の10-33%にみられる。長期2型糖尿病を有する女性に多く、肩の痛みと可動域障害を呈する。約半数が両側性だが非利き手側で症状が強い。炎症反応やX線異常を認めず、数週~数カ月で自然寛解する。 |
複合性局所疼痛症候群1型(complex regional pain syndrome CRPS) | 四肢の疼痛、皮膚色変化、皮膚温の変化、浮腫、可動域制限などの症候を呈するまれな症候群。 | |
手掌屈筋鍵炎 | 糖尿病患者の5-33%に認められる。長期に罹患した女性に多く、利き手側の母指に頻度(75%)が高いが、どの指にもみられる。 | |
Dupuytren拘縮 | 手掌筋膜の短縮と肥厚(有痛性結節)を生じ、第4、5指の屈曲拘縮を呈する。1型糖尿病で長期に罹患した患者に多いが、血糖コントロールとの関係はない。 | |
手根管症候群 | 手根管症候群の全患者の最大15%に糖尿病を認める。 | |
広汎性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis DISH) | 2型糖尿病患者の約20%にみられ、50才以上の肥満患者に多い。頭部、腰部のこわばリ、関節の可動域制限を呈する。全身の腱付着部痛を呈することもある。 | |
その他 | 感染性関節炎や骨髄炎 | 血糖上昇による免疫力低下が感染症リスクを上昇させることによる |
正常 糖尿病型 空腹時血糖値 <110mg/dL ≧126mg/dL and or 75g OGTT2時間値 <140mg/dL ≧200mg/dL
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