- 56歳の男性。妻に顔色が悪いといわれて来院した。1か月前から強い腰痛を自覚していた。眼瞼結膜に貧血を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腰部に叩打痛を認める。血液所見:赤血球 353万、Hb 10.8g/dl、Ht33%、白血球 3,600(好中球70%、単球2%、リンパ球28)、血小板 22万。総蛋白 8.8g/dl。胸腰椎エックス線写真(別冊No.23)を別に示す。
- 診断確定のために必要な検査はどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [105I071]←[国試_105]→[105I073]
★リンクテーブル★
[★]
- 34歳の女性。右手のしびれ感を主訴に来院した。2か月前から右手のしびれ感が断続的に続いていた。脈拍68/分、整。血圧120/68mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。頚椎に異常を認めない。右上腕二頭筋反射と腕橈骨筋反射とに異常を認めない。握力は両側上肢とも正常範囲内である。右手関節を屈曲するとしびれ感が増強する。触覚低下を認める領域を斜線で表した図を示す。
- この患者の初期治療として適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [105I070]←[国試_105]→[105I072]
[★]
- 59歳の男性。鼻出血と膿性鼻漏とを主訴に来院した。1か月前から著しい鼻痛が続いている。鼻腔内粘膜の発赤とびらんとを認める。血液所見:赤血球 408万、Hb 12.1g/dl、Ht 34%、白血球 8,300、血小板 35万。免疫学所見:CRP 16.8mg/dl、PR3-ANCA陽性。副鼻腔単純CTで鼻腔から上顎洞、筋骨洞、眼窩内に及ぶ腫瘤を認める。鼻内腫瘍の生検で壊死組織、炎症細胞浸潤および多核巨細胞を認める。
- 確定診断のために精査が必要な臓器はどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [105I072]←[国試_105]→[105I074]
[★]
[★]
- 英
- multiple myeloma, MM
- 同
- 形質細胞性骨髄腫、plasma cell myeloma、カーラー病 Kahler disease、カーラー-ボゾーロ症候群 Kahler-Bozzolo syndrome
- 関
- 単クローン性免疫グロブリン血症
- first aid step1 2006 p.219,296
概念
- 免疫グロブリン産生細胞である形質細胞が腫瘍化し、骨髄を主体として増殖する疾患
病因
- 腫瘍細胞の増殖と生存:形質細胞と骨髄間質細胞の産生するIL-6の作用による (APT.77)
- 遺伝子、染色体:t(4;15), which jyxtaposes the IgH locus with fibroblast growth factor receptor 3(FGFR3) gene
疫学
- 罹患率:10万人に対して約2人
- 60歳以上の高齢者に多い。50-60歳でピーク
病変形成&病理
症候
- 全身倦怠、貧血 ← 貧血による症状
- 腰痛
- (進行した例)
- 病的骨折や骨融解(骨融解像)などの骨病変 →腰痛・背部痛、高カルシウム血症
- 腎機能障害:蛋白尿
骨病変 (WCH.2561)
- 骨病変は少なくとも70%の患者に見られ、精度の高い検査方法では殆どの患者で発病変が見いだされる。四肢が冒されるかもしれないが、もっとも頻度が高いのは脊柱である。動きや体重の加重により痛みが増悪するのが特徴である。
- 椎体圧迫骨折や腫瘤により脊椎圧迫症状をきたしうる → 対麻痺、膀胱直腸症状
腰痛 (WCH.2561)
- 5-10%の患者で背中痛を訴える。この痛みは動きと関連しており、咳、くしゃみ、体重の加重によって悪化する。患者は堅苦しく歩き、検査台やx線の台の乗り降りをするのが非常に困難である。
合併症
検査
血算
- 赤血球:中程度の正球性赤血球貧血
- ときに、白血球減少・血小板減少
血液生化学
- 血清総蛋白量:増加
- アルブミン:減少
- γグロブリン(=免疫グロブリン)↑
- 血清蛋白分画Mスパイク出現
- 腫瘍化した形質細胞(骨髄腫細胞)がIgG、IgA、IgD、IgEを産生 (IgMを単クローン性に産生する場合は別の病名がつく。)
血液塗沫標本
- 赤血球の連銭形成:M蛋白(γグロブリンは正に帯電。Mタンパクもおそらく正に帯電)
- 骨髄腫細胞は稀 → 多数なら形質細胞性白血病
免疫グロブリン
骨髄検査
- CD38(+), CD56(+), CD19(-)。(⇔正常な形質細胞:CD56(-), CD19(+)
- 多発性骨髄腫においてCD56(+)は70%、CD56(-)は30%
骨髄穿刺
- 異型性の形質細胞が有核細胞の10%以上認められ,細胞表面抗原検査にて単クローン性形質細胞と同定されることによりなされる。
- →血清中に単クローン性免疫グロブリン↑(=M蛋白)
- 尿中に免疫グロブリンのL鎖(κ,λ鎖)出現
- ベンス・ジョーンズタンパク質
血清蛋白電気泳動
- ガンマグロブリン分画に急峻なピーク(M-peak)
[show details]
尿検査
単純X写真
- 頭部:頭蓋骨の打ち抜き像 punched-out lesion
- 腰部:脊椎の圧迫骨折
[show details]
骨シンチグラム
診断
診断基準(2003年)
- Mタンパク + (高カルシウム血症 + 腎機能障害 + 貧血 + 骨病変) CRAB(calcium, renal insufficiency, anemia, bone lesion)
病期
- 参考3 YN.G-68
- International staging system, ISSが未知いられる。
- 血清アルブミンとβ2ミクログロブリンの値で予後を予測する者である。
- Stage I:アルブミン3.5g/dl以上、β2ミクログロブリン3.5mg/L未満
- Stage II: Stage I ~ Stage III
- Stage III: β2ミクログロブリン5.5以上
- Stage別平均余命:I 62ヶ月、II 44ヶ月、III 29ヶ月
治療
- (参考1)
- 治療方針:初期治療、維持療法、再発・難反応期治療がある。
- 初期治療:
- 化学療法:MP療法と多剤併用療法があるが、後者は奏効率は高いが生存期間延長効果がないため、一般的にはMP療法を行う。化学療法のみで治癒は困難であり、プラトー(臓器障害を認めない状態が3ヶ月以上持続)に達した後に維持療法を行う。
-
- インターフェロン:無事象生存期間、全生存期間の中央値はそれぞれ6ヶ月、7ヶ月の延長効果があったが、副作用を考慮し必ずしも推奨されない。
- プレドニゾロン:50mg投与隔日投与でで有効性が認められたが、副作用の発現リスクが高くなるため日本ではあまり行われていない。
- サリドマイド(認可??):単剤で30%、デキサメタゾンとの併用で40-50%、化学療法との併用では50-60%の奏効率が報告されている。
- ボルテゾミブ(認可??):デキサメタゾンとの併用が推奨されている。副作用は末梢神経障害、血小板減少。
- レナリドマイド(認可??):サリドマイド誘導体。サリドマイドに比べて効果は高く、末梢神経障害、消化器症状、神経症状、DVT等の副作用が軽い。
-
- 口渇・意識障害など明らかな臨床症状:生理食塩水+ビスホスホネート点滴静注。ステロイドやカルシトニンを併用すると有効な場合もある。
- 腎障害:M蛋白による尿細管の障害、高カルシウム血症、高尿酸血症、アミロイドーシス、尿路感染症、骨髄腫細胞浸潤などで腎障害をきたす。輸液、アシドーシス補正、電解質補正、血液透析。腎障害がある場合の化学療法には腎障害の少ないVAD療法()かデキサメタゾン大量療法が推奨される。
- 心臓、腎臓、消化管、舌等の臓器に沈着し、臓器障害をきたす。約30%の症例にみられるが、有償状は10%未満。予後を規定する心機能をモニターするため、心エコーでフォローする。アミロイドーシス自体に対する有効な治療はなく、原疾患の治療を早くすることが必要である。
参考
- http://ganjoho.jp/public/cancer/data/myeloma_therapy.html
- 2. [charged] 多発性骨髄腫の臨床的特徴、検査所見、および診断 - uptodate [1]
- 3. [charged] 多発性骨髄腫における病期分類および予後研究 - uptodate [2]
国試