スルピリド
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スルピリド
|
IUPAC命名法による物質名 |
(RS)-N-[(1-ethylpyrrolidin-2-yl)methyl]-2-methoxy-5-sulfamoyl-benzamide
|
薬物動態データ |
半減期 |
約7時間 |
識別 |
CAS番号 |
15676-16-1 |
ATCコード |
N05AL01 N05AL07 |
PubChem |
CID: 5355 |
DrugBank |
APRD00032 |
KEGG |
D01226 |
化学的データ |
化学式 |
C15H23N3O4S |
分子量 |
341.427 g/mol |
日本国内で処方されるスルピリドの一つ、ドグマチール50mgの錠剤
スルピリド錠50mg(TYK)錠剤
(テバ製薬、旧大正薬品工業製後発医薬品、日本国内版)
スルピリド(英:Sulpiride)は、非定型抗精神病薬の一つで、日本国内では統合失調症、うつ病および胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療薬として承認されている。かつてよく用いられた薬剤である[1]。ヨーロッパでは販売されているが、北アメリカでは承認されていない。商品名は、ドグマチール、アビリット、ミラドールなど。ハイリスク薬である[2][3]。アカシジアや錐体外路症状を起こすことがある[4]。
スルピリドは多くの後発医薬品が存在するため薬価が安くなるケースもある。
日本うつ病学会による治療ガイドラインは、抗精神病薬としての副作用のため、うつ病に対する使用を推奨していない[5]。使用されている地域が限られているため、使用のための証拠が乏しい[4]。
目次
- 1 種類
- 2 薬理
- 3 日本での経緯
- 4 国外での経緯
- 5 副作用(高用量の服用の場合)
- 6 禁忌
- 7 脚注
- 8 関連項目
- 9 参考資料
- 10 外部リンク
種類
- 錠剤:50mg(カプセル)、50mg、100mg、200mgの錠剤
- 細粒:10%、50%
- 注射液:50mg、100mg
※以上はドグマチール(アステラス製薬)の場合
薬理
スルピリドは、ベンザミド誘導体に分類される[4]。ベンザミド系は、ドパミンD2受容体とD3受容体に選択性が高い[4]。ヒスタミン、ムスカリン性アセチルコリン、αアドレナリン受容体拮抗作用はほとんどない。そのため、他の抗精神病薬にあるような眠気や沈静などの副作用が比較的に少ない。
スルピリドの抗うつ作用は、ドパミン神経系前シナプスのドパミン自己受容体遮断によって、ドパミンの分泌が増加することに因り、抗精神病作用は後シナプスのドパミンD2受容体を遮断することに因るものと考えられている。
また、消化管のドパミンD2受容体を遮断する結果、アセチルコリンの分泌が促進される。そのアセチルコリンにより消化管運動が亢進し、食物の胃内貯留時間が短縮するため、食物と潰瘍部の接触が通常より回避されることから、胃潰瘍部分へのダメージを減少させ治療を促進する。
日本での経緯
1973年8月にドグマチール錠(カプセル)が発売された。
医師の管理の下、1日最大1200mg迄の投与が認められている。
国外での経緯
ベンザミド系の薬剤として、フランスでまず開発が進んだため、アメリカでは承認されておらず欧州でも主に統合失調症に用いられる[4]。
副作用(高用量の服用の場合)
吐き気、口の渇き、ふるえ、立ちくらみ、肝機能障害、不整脈、便秘、空腹感による食欲増進に加え、プロラクチン値上昇などが挙げられる。眠気をきたすが、16時以降の服用は、逆に不眠を引き起こす可能性があるため、避けた方がよい場合もある(ただし、服用すべき時間帯は医師の指示に従うこと)。また、錐体外路症状(震えや強張り、そわそわ感など)が現れる場合がある(薬剤性パーキンソン症候群)。時に、スルピリドは睡眠パターンの異常な変化、極度の疲労と脱力を引き起こす。
男性の場合、性欲減退や射精困難(もしくは射精不能)を招く場合があるほか、乳頭痛、乳汁の分泌が発現する場合がある。女性はホルモン異常(生理不順や乳汁の分泌など)が現れる場合がある。母乳内で検出されることもあるため、服用中は授乳を避けた方がよい。
なお、長期間の服用によって、遅発性ジスキネジア(口の周辺の異常な運動や舌の震え)が起きる可能性がある。
禁忌
- プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍の患者
- 褐色細胞腫の疑いのある患者
脚注
- ^ 小野寺憲治(編集) 『イラストで見る疾病の成り立ちと薬物療法』 医学評論社、2013年、287頁。ISBN 978-4863992122。
- ^ 日本薬剤師会 (2011-04-15) (pdf). 薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン (Report) (第2版 ed.). 日本薬剤師会. http://www.nichiyaku.or.jp/action/wp-content/uploads/2011/05/high_risk_guideline_2nd.pdfline.pdf 2014年5月22日閲覧。.
- ^ 日本病院薬剤師会 (2013-02-09) (pdf). ハイリスク薬に関する業務ガイドライン(Ver.2.1) (Report). 日本病院薬剤師会. http://www.jshp.or.jp/cont/13/0327-1.pdf 2014年5月22日閲覧。.
- ^ a b c d e 小口芳世 「82 スルピリド投与中に身体がムズムズすると言っていた患者が、突然自殺してしまいました。アカシジアと自殺企図は関係があるのでしょうか?」『統合失調症の薬物療法100のQ&A』 藤井康男(編集)、稲垣中(編集協力)、星和書店、2008年5月、267-271頁。ISBN 978-4791106677。
- ^ 日本うつ病学会; 気分障害のガイドライン作成委員会 (2012-07-26) (pdf). 日本うつ病学会治療ガイドライン II.大うつ病性障害2012 Ver.1 (Report) (2012 Ver.1 ed.). 日本うつ病学会、気分障害のガイドライン作成委員会. pp. 24. http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/120726.pdf 2013年1月1日閲覧。.
関連項目
- en:Amisulpride
- スルトプリド
- ネモナプリド
参考資料
- “「ミラドール錠100、錠200」(バイエル薬品) (PDF)”. 医薬品医療機器総合機構 (2010年3月). 2010年3月31日閲覧。
- 「アビリット錠50mg、カプセル50mg、細粒10%、細粒50%」 (PDF) 大日本住友製薬
- 「ミラドール錠」添付文書(バイエル薬品)
外部リンク
- 『読売新聞 朝刊 2008年5月15日(木)』「医療ルネサンス No.4348」高齢者と薬[4]胃潰瘍で服薬 手に震え
抗精神病薬 (N05A) |
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定型抗精神病薬 |
ブチロフェノン系: アザペロン Benperidol ブロムペリドール Droperidol Fluanisone ハロペリドール Lenperone Moperone ピパンペロン スピペロン Trifluperidol; Diphenylbutylpiperidines: Clopimozide Fluspirilene Penfluridol Pimozide; フェノチアジン系: アセプロマジン Acetophenazine Butaperazine Carphenazine Chlorproethazine クロルプロマジン Cyamemazine Dixyrazine フルフェナジン レボメプロマジン Mesoridazine Perazine プロペリシアジン ペルフェナジン Piperacetazine Pipotiazine Prochlorperazine プロマジン プロメタジン Propiomazine Sulforidazine Thiethylperazine Thiopropazate Thioproperazine Thioridazine Trifluoperazine Triflupromazine; Thioxanthenes: Chlorprothixene Clopenthixol Flupentixol Thiothixene Zuclopenthixol; Tricyclics: アモキサピン Butaclamol Carpipramine Loxapine Metitepine/Methiothepin Octoclothiepin; Others: Molindone Oxypertine Prothipendyl
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非定型抗精神病薬 |
Azapirones: ペロスピロン Tiospirone; ベンザミド系: Amisulpride Levosulpiride ネモナプリド Remoxipride スルピリド スルトプリド Tiapride Veralipride; ブチロフェノン系: Cinuperone Setoperone; Tricyclics: Asenapine Clotiapine クロザピン Fluperlapine Metitepine/Methiothepin モサプラミン オランザピン クエチアピン Tenilapine ゾテピン; Others: Amperozide アリピプラゾール Bifeprunox ブロナンセリン Cariprazine Iloperidone ルラシドン Ocaperidone パリペリドン Pardoprunox Pimavanserin リスペリドン Sertindole Ziprasidone
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Others |
Cannabidiol D-Cycloserine Mifepristone Reserpine Rimcazole Secretin Talnetant Tetrabenazine Vabicaserin
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Related Links
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ベタマック錠50mg
組成
- ベタマック錠50mgは、1錠中に日局スルピリド50mgを含有する。
添加物として、カルナウバロウ、カルメロース、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、ステアリン酸Mg、乳糖、ヒプロメロース、ヒプロメロースフタル酸エステル、マクロゴール6000、メチルセルロースを含有する。
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)の患者〔抗ドパミン作用によりプロラクチン分泌が促進し、病態を悪化させるおそれがある。〕
- 褐色細胞腫の疑いのある患者〔急激な昇圧発作を起こすおそれがある。〕
効能または効果
- スルピリドとして、通常成人1日150mg(本剤3錠)を3回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。
- 統合失調症
- スルピリドとして、通常成人1日300〜600mg(本剤6〜12錠)を分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日1200mg(24錠)まで増量することができる。
- うつ病・うつ状態
- スルピリドとして、通常成人1日150〜300mg(本剤3〜6錠)を分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日600mg(12錠)まで増量することができる。
慎重投与
- 心・血管疾患、低血圧又はそれらの疑いのある患者〔症状を悪化させるおそれがある。〕
- QT延長のある患者〔QT延長が悪化するおそれがある。〕
- QT延長を起こしやすい患者〔QT延長が発現するおそれがある。〕
- 著明な徐脈のある患者
- 低カリウム血症のある患者 等
- 腎障害のある患者〔高い血中濃度が持続するおそれがある。〕
- パーキンソン病の患者〔錐体外路症状が悪化するおそれがある。〕
- 脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者〔悪性症候群(Syndrome malin)が起こりやすい。〕
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
- 小児(「小児等への投与」の項参照)
重大な副作用
- (頻度不明)
- 悪性症候群(Syndrome malin):悪性症候群があらわれることがあるので、無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CK(CPK)の上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。
なお、高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎不全へと移行し、死亡した例が報告されている。
- 痙攣:痙攣があらわれることがある。このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
- QT延長、心室頻拍:QT延長、心室頻拍(Torsades de Pointesを含む)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
- 無顆粒球症、白血球減少:無顆粒球症、白血球減少があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、Al-Pの上昇を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
- 遅発性ジスキネジア:長期投与により、口周部等の不随意運動があらわれ投与中止後も持続することがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
- 肺塞栓症、深部静脈血栓症:抗精神病薬において、肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されているので、観察を十分に行い、息切れ、胸痛、四肢の疼痛、浮腫等が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
薬効薬理
- 交感神経中枢の興奮を抑制して、胃血流の改善をもたらし、組織の修復を促進する。また、潰瘍に伴う種々の消化器不安定症状を改善する。
- 粘膜血流とともに重要な防御因子である胃粘液成分(硫酸ムコ物質、硫酸グリコプロテイン、コンドロイチン硫酸分画)の増加をもたらす。
- 慢性潰瘍のモデルとされている焼灼潰瘍、酢酸潰瘍等に対して治癒促進効果を示す。
- 難治性潰瘍における病理組織学的研究において、肉芽組織の増生促進、再生上皮形成及び組織内毛細血管増生等の潰瘍組織修復効果が認められている。
- 抗精神病作用を裏付けると考えられる、抗ドパミン作用・抗アポモルヒネ作用を有する。
- 抗うつ作用を裏付けると考えられる抗レセルピン作用・muricide behavior(同一ケージ内に入れたマウスをかみ殺す行動)抑制作用を示すが、生体アミンの神経終末への取り込み抑制作用を示さない。
- カタレプシー惹起作用、抗アドレナリン・抗ノルアドレナリン作用は弱く、また、鎮静作用が認められないため、意識の清明度を低めることはない。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
化学名
- N-(1-Ethylpyrrolidin-2-ylmethyl)-2-methoxy-5-sulfamoylbenzamide
分子式
分子量
融点
性状
- スルピリドは白色の結晶性の粉末で、においはない。酢酸(100)又は希酢酸に溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール(99.5)に溶けにくく、水にほとんど溶けない。0.05mol/L硫酸試液に溶ける。メタノール溶液(1→100)は旋光性を示さない。
★リンクテーブル★
[★]
商品
[★]
- 関
- 抗精神病薬
商品
[★]
- 英
- sulpiride
- 商
- アビリット、クールスパン、ドグマチール、ピリカップル、ベタマック、マーゲノール、ミラドール
- 関
- 抗精神病薬
特徴
構造
作用機序
消化性潰瘍治療薬
- 視床下部の交感神経中枢の興奮を抑制することで腸管の血流を改善する
副作用
- →抗精神病薬の副作用 参照
[★]
- 英
- Mac
- 関
- マッキントッシュ