アリピプラゾール
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IUPAC命名法による物質名 |
7-[4-[4-(2,3-dichlorophenyl) piperazin-1-yl] butoxy]- 3,4-dihydro- 1H-quinolin- 2-one |
臨床データ |
ライセンス |
EMA:Link, US FDA:link |
胎児危険度分類 |
C |
法的規制 |
処方せん医薬品、劇薬 |
投与方法 |
経口(錠剤、散剤、液剤、口腔内崩壊錠)、筋注*(*:日本未発売剤形) |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
87% |
血漿タンパク結合 |
>99% |
代謝 |
肝臓 - CYP3A4 and CYP2D6 |
半減期 |
75h (未変化体と同様の活性を有する代謝物OPC-14857 : 94h) |
排泄 |
糞、尿 |
識別 |
CAS登録番号 |
129722-12-9 |
ATCコード |
N05AX12 |
PubChem |
CID 60795 |
DrugBank |
APRD00638 |
ChemSpider |
54790 |
KEGG |
D01164 |
化学的データ |
化学式 |
C23H27Cl2N3O2 |
分子量 |
448.385 |
SMILES
- O=C1CCc2ccc(OCCCCN3CCN(CC3)c3cccc(Cl)c3Cl)cc2N1
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アリピプラゾール(Aripiprazole)(商品名:エビリファイ®)は大塚製薬が発見・開発し、世界60カ国・地域以上で承認されている非定型抗精神病薬の一つである。略称はARP。2006年1月に許可。
2009年、アメリカのFDAは自閉症児の癇癪を抑制する作用を承認した[1]。
目次
- 1 剤形及び規格
- 2 作用機序
- 2.1 ドパミン受容体
- 2.2 セロトニン(5-HT)受容体
- 2.2.1 5-HT1Aパーシャルアゴニスト
- 2.2.2 5-HT2Aアンタゴニスト
- 3 禁忌・注意
- 4 副作用
- 5 用量・用法
- 6 受賞
- 7 脚注
- 8 外部リンク
剤形及び規格[編集]
- 錠剤(素錠): 3mg, 6mg, 12mg(12mgは2007年に発売)
- ザイディス錠(口腔内崩壊錠): 3mg, 6mg, 12mg, 24mg - 2012年5月発売
- 内用液0.1%(分包): 3mL, 6mL, 12mL - 2009年4月発売。飲みやすいようにオレンジ味である[2]
- 散剤1%
作用機序[編集]
ドパミン受容体[編集]
脳内のドパミン作動性ニューロンが形成する中脳辺縁系および中脳皮質系に作用し、ドパミン刺激を調節する。アリピプラゾールはドパミンのパーシャルアゴニストとしての作用を有する。パーシャルアゴニストとして作用すると約20~30%の内因性ドパミン活性が低下するという報告がある。[要出典]また前シナプスのドパミン自己調節受容体にも結合し、前シナプスにおいてドパミン放出量を調節する作用を有する。このためドパミンシステムスタビライザー(DSS)ともいわれる。
ドパミンが不足している前頭前皮質ではこれを増量させて感情表出能力や無為・自閉などの陰性症状を改善し、またドパミンが過剰に作用している中脳辺縁系ではこれを減少させて幻覚、妄想などの陽性症状を改善する。
また、適度なドパミン活性があるために側座核に作用することで快楽消失などを伴わず、統合失調症患者の物質濫用を防ぐことができる。
セロトニン(5-HT)受容体[編集]
5-HT1Aパーシャルアゴニスト[編集]
同じ抗精神病薬でSDAに分類されるペロスピロンや抗不安薬であるタンドスピロンと同じ5-HT1A受容体のパーシャルアゴニストでもあり[3]、タンドスピロンが抗うつ作用や抗不安作用を示すことから、アリピプラゾールも同様の効果を発現するとされる。
5-HT1Aパーシャルアゴニストは前頭前皮質の血流を改善し、認知機能の向上も期待される[4]。
また、タンドスピロンによって、EPSや攻撃性、妄想が軽減したとの報告があり、同様にアリピプラゾールもそのような効果は発現するとされる。
この5-HT1A受容体を介した薬理作用から、「ドパミン・セロトニンシステムスタビライザー」と呼ばれることがある[3]。
5-HT2Aアンタゴニスト[編集]
また、5-HT2A受容体のアンタゴニストとしても高い親和性を有することから、錐体外路症状(EPS)の発現を抑えることが報告されている。これらのドパミン及びセロトニンを介した機序から、陽性・陰性症状の改善と安定化や、従来の定型及び非定型抗精神病薬の副作用であった錐体外路症状をアリピプラゾールは発現しにくいという特徴をもつ。
このように、脳内ドパミンシステムにおいては他の抗精神病薬と比較して、有意な特異的作用を有している。だが、2010年現在の日本では統合失調症急性期の薬物療法のファーストチョイスとしてリスペリドンやオランザピンが使われることが多い、しかし、アリピプラゾールが統合失調症急性期にファーストチョイスとして使用されることも多くなってきた。[要出典]
アリピプラゾールの秀でた点は、代謝系や鎮静系に関する受容体への親和性が極めて低いことである。しかし、これまでの抗精神病薬ではあまり見られなかった投与初期の不眠や激越、アカシジアなどの副作用が目立つようになった[5]。
また、抑うつ状態に対し、抗うつ薬があまり有効でない場合、少量のアリピプラゾールを加えることによって抗うつ効果を増強させることができる症例も報告され、実際の医療現場でも応用されている。
禁忌・注意[編集]
- 糖尿病またはその危険因子のある者は糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡などが起こる可能性があるため、高血糖の症状に十分注意する。特に喉の渇き、多尿、多食、脱力感などがあった場合は直ちに医師に相談すること。
- バルビツール酸誘導体等の強い影響下にある者は投与できない。
- エピネフリンを服用中の者は血圧降下作用が増強する可能性があるため、注意すること。
- 肝障害のある者は悪化させる場合があるため、慎重に服用すること。
- 眠気、集中力の低下などが起こる場合があるが(添付文書によると傾眠の副作用は1〜5%未満)、その他の統合失調治療薬と比較すると軽度である(むしろ、アリピプラゾールは前頭葉におけるドーパミン系の活性化により、認知機能を改善する効果が知られている)。
副作用[編集]
不眠、神経過敏、アカシジア(じっとしていることができない)、振戦(手足の震え)、不安、体重減少、筋強剛、食欲不振などが報告されている (これらの副作用は添付文書によると5%以上)。また、患者の1 - 5%未満ではあるが、うつ状態の誘発、1%未満は躁状態を誘発する可能性がある。
また、本剤は肝臓で代謝されるため、アルコールの摂取は悪影響を与えることがある。そのため、飲酒は控える方が望ましい。
用量・用法[編集]
発売当初は以下の用法が推奨された。しかし現在は外来においては1日12mg - 18mgを開始用量として適宜増減する方法が推奨されてきている。
- 成人に1日6mg - 12mgを開始用量として、1日6mg - 24mg を維持量とする。1回または2回に分けて経口投与し、1日30mgを超えないようにする。なお年齢や症状に応じて適宜減量する。
- 効果を発揮するまでに約2週間必要なため、2週間以内に増量しないことが望まれる。
また急性期や不安・不眠・焦燥を伴う統合失調症においてはGABA系神経を活性化させるベンゾジアゼピン系薬剤やバルプロ酸ナトリウムの併用が単剤投与より有効である。
受賞[編集]
- 2006年、大塚製薬のフランス現地子会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ社フランスは、アリピプラゾールの開発の功績が認められて、フランス・ガリアン賞を受賞している[6]。
脚注[編集]
- ^ “FDA Approves Aripiprazole to Treat Irritability in Autistic Children”. Medscape Today. (2009年11月24日). http://www.medscape.com/viewarticle/713006 2010年4月28日閲覧。
- ^ 「統合失調症患者が示した aripiprazole 内用液の「飲み心地」に関する検討」、『臨床精神薬理』第2号2011年2月、 283-288 頁。
- ^ a b “The antipsychotic aripiprazole is a potent, partial agonist at the human 5-HT1A receptor.”. Eur J Pharmacol (441): pp. 137-140. (Apr 2002). PMID 12063084. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12063084.
- ^ 住吉 大幹「セロトニン1A 受容体と統合失調症患者の認知機能および治療」、『臨床精神薬理』第2号2011年2月、 349-356 頁。
- ^ 『今日の治療薬 2011』、2011年、837頁。ISBN 978-4524263622。
- ^ [http://www.otsuka.co.jp/company/release/2006/0616_01.html 抗精神病薬 「エビリファイ」 仏プリ・ガリアン(Prix Galien)賞を受賞(大塚製薬ホームページ)2011年7月14日閲覧]
外部リンク[編集]
- 「Aripiprazole」 - Medpediaにある「アリピプラゾール」についての項目。(英語)
- エビリファイ添付文書 - 大塚製薬(PDF)(2010年4月17日閲覧)
- エビリファイ錠-アリピプラゾール(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
抗精神病薬 (N05A) |
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定型抗精神病薬 |
ブチロフェノン系: アザペロン Benperidol ブロムペリドール Droperidol Fluanisone ハロペリドール Lenperone Moperone ピパンペロン スピペロン Trifluperidol; Diphenylbutylpiperidines: Clopimozide Fluspirilene Penfluridol Pimozide; フェノチアジン系: アセプロマジン Acetophenazine Butaperazine Carphenazine Chlorproethazine クロルプロマジン Cyamemazine Dixyrazine フルフェナジン レボメプロマジン Mesoridazine Perazine プロペリシアジン ペルフェナジン Piperacetazine Pipotiazine Prochlorperazine プロマジン プロメタジン Propiomazine Sulforidazine Thiethylperazine Thiopropazate Thioproperazine Thioridazine Trifluoperazine Triflupromazine; Thioxanthenes: Chlorprothixene Clopenthixol Flupentixol Thiothixene Zuclopenthixol; Tricyclics: アモキサピン Butaclamol Carpipramine Loxapine Metitepine/Methiothepin Octoclothiepin; Others: Molindone Oxypertine Prothipendyl
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非定型抗精神病薬 |
Azapirones: ペロスピロン Tiospirone; ベンザミド系: Amisulpride Levosulpiride ネモナプリド Remoxipride スルピリド スルトプリド Tiapride Veralipride; ブチロフェノン系: Cinuperone Setoperone; Tricyclics: Asenapine Clotiapine クロザピン Fluperlapine Metitepine/Methiothepin モサプラミン オランザピン クエチアピン Tenilapine ゾテピン; Others: Amperozide アリピプラゾール Bifeprunox ブロナンセリン Cariprazine Iloperidone ルラシドン Ocaperidone パリペリドン Pardoprunox Pimavanserin リスペリドン Sertindole Ziprasidone
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Others |
Cannabidiol D-Cycloserine Mifepristone Reserpine Rimcazole Secretin Talnetant Tetrabenazine Vabicaserin
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抗うつ薬 (N06A) |
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再取り込み阻害薬 |
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選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)
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フルオキセチン フルボキサミン パロキセチン セルトラリン
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セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 (SNRIs)
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デュロキセチン ミルナシプラン ヴェンラファキシン
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ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 (NRIs)
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アトモキセチン
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ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬 (NDRIs)
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ブプロピオン
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受容体拮抗薬 / 再取り込み阻害薬 |
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セロトニン2受容体拮抗・再取り込み阻害薬 (SARIs)
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トラゾドン
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ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬 (NaSSAs)
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ミアンセリン ミルタザピン セチプチリン
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ノルアドレナリン・ドパミン脱抑制薬 (NDDIs)
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アゴメラチン フリバンセリン
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三環系抗うつ薬 と 四環系抗うつ薬 (TCAs/TeCAs) |
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三環系: アミトリプチリン クロミプラミン イミプラミン ノルトリプチリン アモキサピン 四環系: マプロチリン ミアンセリン ミルタザピン セチプチリン
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アザピロン と 5-HT1A阻害薬 |
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アリピプラゾール タンドスピロン
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サプリメント (ビタミン, ミネラル, アミノ酸など) |
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アスコルビン酸 (Vitamin C) 魚油 葉酸 (Vitamin B9) L-5-HTP (Oxitriptan) レボドパ (Levodopa) L-Methionine フェニルアラニン トリプトファン チロシン マグネシウム メラトニン ナイアシン/Niacinamide (Vitamin B3) ω-3脂肪酸 ピリドキシン (Vitamin B6) S-アデノシルメチオニン 亜鉛
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