出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/02/17 03:11:42」(JST)
IUPAC命名法による物質名 | |
---|---|
(S)-(+)-N-Methyl-3-(1-naphthyloxy)-3-(2-thienyl)propylamine | |
臨床データ | |
ライセンス | EMA:Link, US FDA:link |
胎児危険度分類 | C(US) |
法的規制 | ℞-only (US) |
投与方法 | 経口投与 |
薬物動態的データ | |
生物学的利用能 | ~ 50% (32% to 80%) |
血漿タンパク結合 | ~ 95% |
代謝 | 肝代謝 CYP1A2 |
半減期 | 13.46時間 (40mg, β相, 1日目) |
排泄 | 尿中: 72%, 糞中: 18.5% |
識別 | |
CAS登録番号 | 116539-59-4 (free base) 136434-34-9 (HCl) |
ATCコード | N06AX21 |
PubChem | CID 60835 |
DrugBank | APRD00060 |
ChemSpider | 54822 |
KEGG | D07880 |
化学的データ | |
化学式 | C18H19NOS |
分子量 | 297.41456 g/mol |
SMILES
|
デュロキセチン(Duloxetine)は、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と呼ばれる第三世代の抗うつ剤の一つである。
フルオキセチンの開発にも携わった、イーライリリー社によって1980年代後半に合成され、1988年に開発がスタートした。
しかし、1996年に第III相試験に入らないことを決定したイーライリリー社は開発から退き、日本での塩野義製薬の単独開発が始まり、その成果を見たイーライリリー社は1999年に再開発を始め、2001年にFDAに申請、2004年4月に承認された。2012年現在、日本をはじめ95カ国で承認されている。
日本では2010年4月にデュロキセチン塩酸塩(Duloxetine HCl)として、イーライリリー社及び塩野義製薬からサインバルタ®の商品名で薬価収載されている。
うつ病・うつ状態・糖尿病性神経障害に伴う疼痛
日本では2012年2月に「糖尿病性神経障害に伴う疼痛」として追加適応された。
また、米国では、糖尿病性ニューロパチー、線維筋痛症、全般性不安障害に適応があり、欧州では、腹圧性尿失禁、糖尿病性ニューロパチー、全般性不安障害に適応がある。
通常、成人に対して20mgを初期用量とし、1週間以上の間隔を開けて、1日1回朝食後40mgまで漸増する。
効果が不十分な場合は最大60mgを限度として増減する。
デュロキセチンは既存のSNRI(ミルナシプラン、ベンラファキシン[1])と同様にセロトニン(5-HT)及びノルアドレナリン(NA)の再取り込みを阻害し、シナプス間隙、細胞外の5-HTとNAの濃度を上昇させる。既存のSNRIと比べ、5-HT及びNA再取り込み阻害作用が強く、ドパミン(DA)再取り込み阻害作用は殆どない。第三世代の特徴としても、各神経物質受容体に対しての親和性が低く、抗コリン作用やα1拮抗作用による心毒性が少ないとされる。これらと5-HT, NA再取り込み作用の機序から、副作用を抑えた三環系抗うつ薬と見ることができる。
また、前頭前皮質におけるDAの濃度が上昇する。これは、前頭前皮質にDAトランスポーターの分布が少なく、そのためNAトランスポーターを介して前シナプス終末部に取り込まれる。しかし、デュロキセチンはNAトランスポーターを阻害するため、DAの再取り込みも阻害し、細胞外の遊離DAの濃度が高まるとされる。
DA濃度が高まり、前頭前皮質の血流が増加すると認知、情動行動などの改善にもつながることが、統合失調症患者にDAアゴニストのアンフェタミンを投与した結果の報告から分かる[2]。
中断後症候群も他のSSRIやSNRIに比べて軽いという。[3]
うつ病患者には、大うつ病エピソード以外にも付随する症状を伴っている場合が多い。特に、慢性疼痛や血管運動症状などがあり、それに付随する形でうつ病患者では非ステロイド性抗炎症薬の使用量が多くなる傾向にある。
線維筋痛症などの慢性疼痛や血管運動症状のように5-HTとNA再取り込み阻害作用が適度なバランスである必要がある疾患に対し、
試料: | ヒト トランスポーター | |||
---|---|---|---|---|
5-HT | NA | DA | NA/5-HT ratio | |
デュロキセチン | 0.8±0.01 | 7.5±0.3 | 240±23 | 9.4 |
ベンラファキシン | 82±3 | 2483±43 | 7647±793 | 30.3 |
ミルナシプラン | 123±11 | 200±2 | >10000 | 1.6 |
上記の表のように、デュロキセチンは5-HT再取り込み阻害とNA再取り込み阻害が約10対1と理想的なバランスであり、米国や欧州では慢性疼痛を含めて様々な症状に応用がされている。
本剤の意識消失発作の発症頻度は0.27%と低いが、日本における発売後8ヵ月間で2例の意識消失発作を起こしたという報告があるので[4]、注意が必要である。 1例目は手足を動かしていたことからけいれん発作である可能性が高く、2例目も発作時の脈拍、血圧が正常であったためにけいれん発作である可能性が高い[4]。 また、2例ともにデュロキセチンの投与を中止したところ、発作は起こらなくなった。
一般的に抗うつ剤はけいれん閾値を下げうるので[5]、抗うつ剤の多剤投与を行っている患者には特に注意を要す。
主なもののみ記述する。 詳細は添付文章の慎重投与を参照されたい。
これらはノルアドレナリンの再取り込み阻害作用により、相対的に交感神経が優位になる偽抗コリン作用により引き起こされるが、デュロキセチンはムスカリン性アセチルコリン受容体に対する親和性は殆どなく、直接的な抗コリン作用より軽度である。
デュロキセチンは主にCYP1A2とCYP2D6で代謝され、各酸化的代謝にはCYP1A2が中程度に親和性を示し、特に5-hydroxy体と4-hydroxy体の酸化的代謝にはCYP2D6が強く親和性を示す。主要代謝物の活性価は低く、臨床では問題にならず、抗うつ作用を発現させるのはデュロキセチンの未変化体であることが示唆される。
デュロキセチンは中程度にCYP2D6を阻害するが、CYP2D6を誘導する薬物は知られていない。また、CYP1A2の阻害能は最小限であり、誘導をすることもないとされる。
このことから、チトクロームP450に関与しないミルナシプランには劣るが[6]、デュロキセチンの薬物相互作用は比較的少ないとされる。
しかし、デュロキセチンは軽いCYP2D6阻害薬であり、強力なCYP2D6阻害薬のパロキセチンや高用量(100mg~)でCYP2D6を阻害するセルトラリン、強力なCYP1A2阻害薬のフルボキサミンとの併用で最大血中濃度とAUCの上昇が見られたため、それらの阻害薬との併用には注意すべきである。
モノアミンの代謝が阻害されることにより、脳内のモノアミン濃度が高まった上でのモノアミン再取り込み阻害により、昏睡や全身痙攣などの症状が現れるおそれがある。
主なもののみ記述する。 詳細は添付文章の併用注意を参照されたい。
併用により、ピモジドの酸化的代謝が阻害されて血中薬物濃度とAUCが上昇した結果、心電図でQT延長をきたす可能性がある。
「SSRI離脱症候群」も参照
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サインバルタカプセル20mg
リンク元 | 「デュロキセチン」「精神神経用剤」 |
関連記事 | 「サイン」 |
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179052M1022_2_03/
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