出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/11/08 13:59:01」(JST)
トキソプラズマ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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トキソプラズマの急増虫体のギムザ染色
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Toxoplasma gondii (Nicolle et Manceaux, 1908) Nicolle et Manceaux, 1909[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
トキソプラズマ |
トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)は、アピコンプレックス門コクシジウム綱に属する寄生性原生生物の1種。幅2-3μm、長さ4-7μmの半月形の単細胞生物で、ヒトを含む幅広い恒温動物に寄生してトキソプラズマ症を引き起こす。通常は免疫系により抑え込まれるため大きな問題とはなりにくいが、免疫不全の状態では重篤あるいは致死的な状態となりうる。特に妊娠初期に初感染した場合、胎児が重篤な障害を負うことがある。
トキソプラズマの生活環は有性生殖期と無性生殖期からなる。有性生殖はネコ科の動物の腸内でのみ起きるが、無性生殖はネコ科を含む幅広い哺乳類や鳥類で行われる。したがってネコ科動物が終宿主、その他の動物は中間宿主である。
主な感染経路は経口感染であり、腸管壁から宿主体内へ侵入し、血流に乗って全身の組織に広がる。
宿主の細胞に侵入すると寄生体胞 (parasitophorous vacuole) を作ってその内部で内生二分裂 (endodyogeny) を行い増殖する。これは、母虫体の細胞内に2つの娘虫体が生じ、それが母虫体を破壊するという特殊な分裂様式である。原虫の増殖にともない寄生体胞は肥大化していき、宿主細胞が耐えきれなくなると破裂して、ふたたび原虫が周囲の細胞に侵入することを繰り返す。この時期の原虫のことを急増虫体 (tachyzoite) と呼ぶ。急増虫体は通常は宿主の免疫系の作用によって排除されていくが、免疫系の作用が及びにくい筋肉や脳ではシスト (cyst) を作ってその中で緩やかに増殖を続ける。シスト中の原虫を緩増虫体 (bradyzoite) と呼ぶ。以上が無性生殖期であり、アピコンプレックス門一般で言うメロゴニーに相当する。
一方、終宿主に初感染した場合には、腸の粘膜上皮細胞の中で有性生殖(ガメトゴニー)を行う。上皮細胞に侵入した原虫は雌雄どちらかの生殖母体となり、配偶体を生じる。雌雄の配偶体が受精すると、オーシスト (oocyst) を生じてその中でスポロゴニーが始まる。オーシストは12×10μmの大きさで、未成熟なままで糞便内に排出される。外界で2個のスポロシスト (sporocyst) ができ、成熟するとその中にそれぞれ4個計8個のスポロゾイト(sporozoite、種虫)が無性的に生じる。オーシストの排出は数週間でおさまる。排出されたオーシストは生体外の環境で1年は生存することが確認されている。[2]
トキソプラズマは生活環を通じて感染能をもっている。緩増虫体やスポロゾイトはシストやオーシストに包まれているため消化液に抵抗性があり、経口感染して腸管壁に侵入する。また血流中の急増虫体は、胎盤を経由して胎児に移行することがある。環境中に急増虫体があることは稀であり、また消化液に弱いため経口感染することは少ないが、それでも実験条件下などで眼や鼻の粘膜や外傷から感染することがある。
また不顕性感染する。
トキソプラズマに感染したネズミはネコのフェロモンを怖がらず、ネコに捕食されやすくなり、トキソプラズマのネコへの感染を助けている[3]。
1908年にアトラスグンディ Ctenodactylus gundi の寄生虫として発見され、当初は Leishmania gondii と命名され、翌年に Toxoplasma gondii と新属が与えられた。
以後約60年間、胞子虫綱の所属不明とされていたが、1965年から1970年にかけて生活環が明らかになり、コクシジウム類であることが確定した。アイメリア亜目トキソプラズマ科を置く[1]、あるいはアイメリア亜目住肉胞子虫科にトキソプラズマ亜科を置く場合がある。
ノーマン・D・レヴィン Norman D. Levine は、トキソプラズマ属 Toxoplasma には7種があるとしている[4]が、T. gondii 以外は爬虫類や両生類から見出されたものが多く、その後詳しい研究はされていない。通常は T. gondii のみが認められている。
トキソプラズマ科(トキソプラズマ亜科)には、ネコ科を終宿主とする Hammondia hammondi と Besnoitia 属、イヌ科を終宿主とする H. heydorni と Neospora caninum などが知られている。このうちネコ科を終宿主とする H. hammondi は、トキソプラズマと極めて近縁である[5]。
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検査項目 | 計測値 | 基準値 |
風疹抗体(HI) | 8倍未満 | 8倍未満 |
HTLV-1抗体(PA) | 陽性 | 陰性 |
トキソプラズマ抗体(PHA) | 320倍 | 160倍未満 |
RPR | 32倍 | 1倍未満 |
TPHA | 640倍 | 80倍未満 |
C型肝炎ウイルス抗体(EIA) | 陽性 | 陰性 |
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A
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胎内感染 | 分娩時感染 | 母乳時感染 | ||||
経胎盤感染 | 上行性感染 | 経胎盤感染 | 産道感染 | 母乳感染 | ||
ウイルス | 風疹ウイルス | ○ | × | × | × | × |
サイトメガロウイルス | ○ | × | × | △ | △ | |
ヒトパルボウイルスB19 | ○ | × | × | × | × | |
水痘・帯状疱疹ウイルス | △ | × | × | ○ | × | |
単純ヘルペスウイルス | △ | △ | × | ○ | × | |
B型肝炎ウイルス | △ | × | △ | ○ | × | |
C型肝炎ウイルス | △ | × | △ | ○ | × | |
成人T細胞白血病ウイルス1型 | △ | × | × | × | ○ | |
ヒト免疫不全ウイルス | △ | △ | △ | ○ | △ | |
細菌 | 梅毒トレポネーマ | ○ | × | × | △ | × |
淋菌 | × | × | × | ○ | × | |
B群連鎖球菌 | × | × | × | ○ | × | |
真菌 | カンジダ・アルビカンス | × | × | × | ○ | × |
原虫 | トキソプラズマ | ○ | × | × | × | × |
クラミジア | クラミジア・トラコマチス | × | × | × | ○ | × |
病原体 | 疾患 | 感染経路 | 問題となる感染時期 | 母体 | 胎児 | |
ウイルス | 風疹ウイルス | 先天性風疹症候群 | 経胎盤感染 | 妊娠12週未満。18週未満は軽微 | 初感染妊婦 | |
サイトメガロウイルス | 巨細胞封入体症 | 経胎盤感染 | 妊娠前半 | 初感染妊婦。感冒様症状 | 小頭症、脳内石灰化、精神遅滞、網脈絡膜炎、感音性難聴、貧血、黄疸、出血斑、低体重児、肝脾腫 | |
ヒトパルボウイルスB19 | 経胎盤感染 | 妊娠20週未満 | 伝染性紅斑 | 非免疫性胎児水腫、胎児死亡 | ||
水痘・帯状疱疹ウイルス | 先天性水痘症候群 | 産道感染 | 妊娠20週未満 | 初感染妊婦 | 精神遅滞、網脈絡膜炎、皮膚瘢痕、四肢低形成、低出生体重児 | |
単純ヘルペスウイルス | 新生児ヘルペス | 産道感染 | ~ | 中枢神経:小頭症、眼:脈絡網膜炎、角結膜炎、皮膚:水疱疹 | ||
B型肝炎ウイルス | 産道感染 | ~ | 無症候キャリアー化 | |||
C型肝炎ウイルス | 産道感染 | ~ | ||||
成人T細胞白血病ウイルス1型 | 母乳感染 | ~ | ||||
ヒト免疫不全ウイルス | HIV感染症 | 産道感染 | ~ | HIV感染症 | HIV感染症 | |
細菌 | 梅毒トレポネーマ | 先天梅毒 | 経胎盤感染 | 妊娠14週以降 | 梅毒 | 水頭症、難聴、老人様顔貌、鼻炎、粘膜斑(梅毒性天疱瘡)、黄疸、貧血、点状出血、パロー仮性麻痺、肝脾腫、骨軟骨炎 晩発性梅毒、ハッチンソン三徴 |
淋菌 | 淋疾 | 産道感染 | ~ | 産科合併症(流産・早産、前期破水、絨毛膜羊膜炎、子宮内膜炎) | 化膿性結膜炎(膿漏眼) | |
B群連鎖球菌 | B群連鎖球菌感染症 | 産道感染 | ~ | 常在菌 | 髄膜炎 | |
真菌 | カンジダ・アルビカンス | 産道感染 | ~ | 常在菌。カンジダ膣炎 | 口腔内カンジダ症 | |
原虫 | トキソプラズマ | 先天性トキソプラズマ症 | 経胎盤感染 | 妊娠中後期 | 初感染妊婦。無症状 | 脳室拡大、小頭症、脳内石灰化、髄膜炎、精神遅滞、脳性麻痺、けいれん、網脈絡膜炎、黄疸、発疹、貧血、リンパ節腫脹、肝脾腫、低出生体重児 |
クラミジア | クラミジア・トラコマチス | 産道感染 | ~ | 無症状。早産・流産 | 新生児結膜炎、新生児肺炎 |
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