出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/06/12 13:29:46」(JST)
風疹(ふうしん、英: Rubella)とは、ウイルス感染症の一種で、風疹ウイルスによる急性熱性発疹性疾患[1]。一般に日本では三日はしかとしても知られ、英語では「German measles(ドイツはしか)」とも呼ばれている。日本では「風しん」として感染症法に基づく五類感染症に指定して届出の対象としている[1]。
伝染力は水痘(水疱瘡)、麻疹(はしか)より弱い。妊娠初期に妊婦が感染した場合の先天性風疹症候群が大きな問題となる。効果的な治療法は無く、ワクチンによる予防が最も重要である。
風疹にかかった人は免疫ができて二度とかからないといわれるが、経年により免疫が低下していた場合や、がん治療などで免疫力が落ちた場合など、ごくまれに再発することがある。日本ではかつて5〜9年ごと(1976、1982、1987、1992年)に大流行があったが男女幼児が定期接種の対象となって以降は大きな流行は発生していなかった[2]。
感染者の鼻汁に含まれる風疹ウイルスによる飛沫感染または直接接触感染による。伝染期間は発疹の発症前1週間~発疹出現後4日間[3]。トガウイルス科ルビウイルス属、直径50~70nmの一本鎖RNAウイルス。正十二面体のカプシド構造を有する。
麻疹(はしか)、デング熱、突発性発疹、コクサッキー・エコー・アデノウイルス感染、伝染性紅斑、猩紅熱等
妊婦の妊娠初期の感染は胎児に先天性風疹症候群を引き起こす。また関節炎、血小板減少性紫斑病(1/3,000~5,000人)を合併する可能性があるほか、急性脳炎を起こす(1/4,000~6,000人)ことがあり、極めてまれに重篤な状態に陥る。
妊娠10週までに妊婦が風疹ウイルスに初感染すると、90%の胎児に様々な影響を及ぼす。この先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)の典型的な三大症状は、心奇形・難聴・白内障である。11~16週までの感染では10~20%に発生する。妊娠20週以降の感染で発生することはまれとされる[4]。診断は新生児血清IgM特異抗体検出で確定診断可能。エコー下穿刺液によるPCR法で胎内診断も可能である。
1941年にグレッグによって新生児に白内障や心奇形が発生したと初めて報告された。成人でも15%程度の無症状感染者があるので、母親が無症状であってもCRSは発生し得る[5]。また、出生前に感染した乳児は、出生後数ヶ月感染力を持ち続ける[3]とされている。
妊娠初期に自然感染を起こした場合、先天性風疹症候群の危険性について十分な説明を受けた上で、妊娠継続についての判断が求められる。妊娠21週以降の感染であればCRSのリスクは低く、通常は妊娠が継続される。
特異的な治療法はなく、対症療法を行う。
この項目はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点からの説明がされていない可能性があります。ノートでの議論と記事の発展への協力をお願いします。(2009年2月) |
幼小児期に予防接種が行われている。世界的にはMMRワクチンに含まれた形で2回接種を行うのが主流である。なおワクチンの効果は完全ではなく、2013年春に島根の保育園で風疹ワクチンを接種した園児の集団感染が起きた事例が報告されている[6]。
妊娠可能年齢の女性で風疹抗体が無い場合、ワクチン接種はCRSを予防する観点からも強く推奨されているが、妊娠中のワクチン接種は避ける。ワクチン接種後は2ヶ月間の避妊が必要。2006年4月以降、新規にワクチンを接種する1歳以上2歳未満の幼児からは麻疹・風疹混合ワクチンを接種することとなった。授乳中の母親がワクチン接種を受けた場合、乳を飲んでいる赤ちゃんに、ワクチン・ウイルスが感染し赤い発疹が出る事があるが、重い合併症は起こさない[7]。
アメリカでは風疹をはじめとする指定の予防接種を受けていない事には、永住できない[8]。
日本での風疹ワクチン接種は、当初は女子のみに限定されていた為に、男子が対象ではなかった事。男女の接種を可能にした際に、予防接種の対象年齢を中学生から満1歳以上7歳半未満に変更した事。上記年齢層の変更の際に、中学生に対する経過措置が設けられたが、それまでの集団接種から個別接種となった事。MMRワクチン接種による重度健康被害の多発により、予防接種の安全性が揺らぎ、予防接種控えの現象が起きたことにより、予防接種率が低迷した時代が存在した。
接種率が見込めない世代は以下の通りである。
予防接種の徹底したアメリカ等では日本人の入国に際して風疹の予防接種を行う指導がなされていたりする。なお、アメリカの医学書では日本や日本人は風疹の感染源として説明されている程である。
日本では2004年に推計患者数約4万人の流行があり、2005年以降は急速に患者が減少していたが、2011年にアジアで大規模な風疹流行が発生し、帰国後に風疹を発症する成人男性と職場での集団発生が散発的みられ[9]、2011年度の風疹の届出数は371件と増加し(2010年度の報告数は87件)、2012年はout breakの兆しがみられ、2012年の年間報告数は2392件に達した。2013年7月3日現在、2013年の報告数が11991件に達し、out breakとなっている。
2012年以降の流行は、男女で流行の傾向が異なる。
2012年に231件の風疹ウイルスの分離・検出が報告された。遺伝子型の判別まで実施された151件では、2B型が124件、1E型が26件、1a型が1件であった[10]。 2013年7月現在、さらに東京都・大阪府を中心に都市部で大流行中である。2013年4月、神奈川県で、黒岩祐治知事が風疹流行により非常事態を宣言、5月13日、大阪府が風疹流行緊急事態宣言。未だアジアで流行中のため日本で流行が来年も続く可能性が高く患者が減少傾向にない。[11]。
ウィキメディア・コモンズには、風疹に関連するメディアがあります。 |
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胎内感染 | 分娩時感染 | 母乳時感染 | ||||
経胎盤感染 | 上行性感染 | 経胎盤感染 | 産道感染 | 母乳感染 | ||
ウイルス | 風疹ウイルス | ○ | × | × | × | × |
サイトメガロウイルス | ○ | × | × | △ | △ | |
ヒトパルボウイルスB19 | ○ | × | × | × | × | |
水痘・帯状疱疹ウイルス | △ | × | × | ○ | × | |
単純ヘルペスウイルス | △ | △ | × | ○ | × | |
B型肝炎ウイルス | △ | × | △ | ○ | × | |
C型肝炎ウイルス | △ | × | △ | ○ | × | |
成人T細胞白血病ウイルス1型 | △ | × | × | × | ○ | |
ヒト免疫不全ウイルス | △ | △ | △ | ○ | △ | |
細菌 | 梅毒トレポネーマ | ○ | × | × | △ | × |
淋菌 | × | × | × | ○ | × | |
B群連鎖球菌 | × | × | × | ○ | × | |
真菌 | カンジダ・アルビカンス | × | × | × | ○ | × |
原虫 | トキソプラズマ | ○ | × | × | × | × |
クラミジア | クラミジア・トラコマチス | × | × | × | ○ | × |
病原体 | 疾患 | 感染経路 | 問題となる感染時期 | 母体 | 胎児 | |
ウイルス | 風疹ウイルス | 先天性風疹症候群 | 経胎盤感染 | 妊娠12週未満。18週未満は軽微 | 初感染妊婦 | |
サイトメガロウイルス | 巨細胞封入体症 | 経胎盤感染 | 妊娠前半 | 初感染妊婦。感冒様症状 | 小頭症、脳内石灰化、精神遅滞、網脈絡膜炎、感音性難聴、貧血、黄疸、出血斑、低体重児、肝脾腫 | |
ヒトパルボウイルスB19 | 経胎盤感染 | 妊娠20週未満 | 伝染性紅斑 | 非免疫性胎児水腫、胎児死亡 | ||
水痘・帯状疱疹ウイルス | 先天性水痘症候群 | 産道感染 | 妊娠20週未満 | 初感染妊婦 | 精神遅滞、網脈絡膜炎、皮膚瘢痕、四肢低形成、低出生体重児 | |
単純ヘルペスウイルス | 新生児ヘルペス | 産道感染 | ~ | 中枢神経:小頭症、眼:脈絡網膜炎、角結膜炎、皮膚:水疱疹 | ||
B型肝炎ウイルス | 産道感染 | ~ | 無症候キャリアー化 | |||
C型肝炎ウイルス | 産道感染 | ~ | ||||
成人T細胞白血病ウイルス1型 | 母乳感染 | ~ | ||||
ヒト免疫不全ウイルス | HIV感染症 | 産道感染 | ~ | HIV感染症 | HIV感染症 | |
細菌 | 梅毒トレポネーマ | 先天梅毒 | 経胎盤感染 | 妊娠14週以降 | 梅毒 | 水頭症、難聴、老人様顔貌、鼻炎、粘膜斑(梅毒性天疱瘡)、黄疸、貧血、点状出血、パロー仮性麻痺、肝脾腫、骨軟骨炎 晩発性梅毒、ハッチンソン三徴 |
淋菌 | 淋疾 | 産道感染 | ~ | 産科合併症(流産・早産、前期破水、絨毛膜羊膜炎、子宮内膜炎) | 化膿性結膜炎(膿漏眼) | |
B群連鎖球菌 | B群連鎖球菌感染症 | 産道感染 | ~ | 常在菌 | 髄膜炎 | |
真菌 | カンジダ・アルビカンス | 産道感染 | ~ | 常在菌。カンジダ膣炎 | 口腔内カンジダ症 | |
原虫 | トキソプラズマ | 先天性トキソプラズマ症 | 経胎盤感染 | 妊娠中後期 | 初感染妊婦。無症状 | 脳室拡大、小頭症、脳内石灰化、髄膜炎、精神遅滞、脳性麻痺、けいれん、網脈絡膜炎、黄疸、発疹、貧血、リンパ節腫脹、肝脾腫、低出生体重児 |
クラミジア | クラミジア・トラコマチス | 産道感染 | ~ | 無症状。早産・流産 | 新生児結膜炎、新生児肺炎 |
先天性心疾患.xls
心室中隔欠損症 | 30.5 |
心房中隔欠損症 | 9.8 |
動脈管開存症 | 9.7 |
肺動脈狭窄症 | 6.9 |
大動脈縮窄症 | 6.8 |
大動脈狭窄症 | 6.1 |
ファロー四徴症 | 5.8 |
完全大血管転位 | 4.2 |
その他 | 20 |
心疾患による症状 | |||
肺血流増加 | 肺血流減少 | 低心拍出 | |
1.新生児期・乳児早期 | 多呼吸,陥没呼吸, 呼吸困難,喘鳴, 多汗, 哺乳障害 | チアノーゼ | 蒼白,末梢冷感, 冷汗,網状チアノーゼ, 体重増加不良, 弱い泣き声 |
2.乳幼児期 | 多呼吸, 易感染性,反復する肺炎 | チアノーゼ, 低酸素発作, 蹲踞 | 体重増加不良, 運動発達遅延, 易疲労性, 顔色不良,やせ |
3.小児期 | 運動能低下, 息切れ | ばち状指 | 運動能低下, 動悸 |
4.思春期以後 合併症による症状 | 胸痛,失神発作,突然死,喀血,不整脈,出血傾向,痛風,けいれん 等 |
疾患 | 先天性心奇形 | その他 |
22q11.2欠失症候群 | ファロー四徴症、総動脈幹症(truncus arteriosus)、心室中隔欠損を伴う肺動脈弁閉鎖症、 大動脈弓離断、右側大動脈弓、右側肺動脈の大動脈起始 |
胸腺低形成、低カルシウム血症、特有の顔貌、口蓋裂 |
ダウン症候群 | (50%の例に合併)。心房中隔欠損症(ASD), 心室中隔欠損症(VSD) | |
先天性風疹症候群 | 心房中隔欠損症、動脈管開存症、末梢肺動脈狭窄 | |
ターナー症候群 | 大動脈縮窄症 | 低身長・翼状頚、外反肘 |
ヌーナン症候群 | 肺動脈弁狭窄、肥大型心筋症 | ターナー症候群に似る |
マルファン症候群 | 僧帽弁逸脱症、大動脈弁閉鎖不全症 | |
糖代謝異常合併妊娠母体からの出生児 | 大血管転位症 | |
ウイリアムズ症候群 | 大動脈弁上狭窄、末梢肺動脈狭窄 | |
無脾症、多脾症 | 単心房、単心室、総肺静脈還流異常 |
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