- 68歳の男性。健康診断で肝障害を指摘され来院した。 20年前にB型肝炎ウイルス感染を指摘されたがそのままにしていた。意識は清明。身長165cm、体重61kg。体温36.2℃、脈拍76/分、整。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知せず、圧痛を認めない。血液所見:赤血球 408万、Hb 13.2g/dl、Ht 39%、白血球 6,700、血小板 16万。血堆生化学所見:総蛋白 7.2g/dl、アルブミン 4.1g/dl、総ビリルビン 0.5mg/dl、直接ビリルビン 0.2mg/dl, AST 59IU/l、 ALT 83IU/l、LD 275IU/l(基準176-353)、ALP 159IU/l(基準115-359)、γ-GTP 125IU/l(基準8-50)、Na 141mEq/l、K 3.7mEq/l、Cl 103mEq/l。腹部超音波写真(別冊No.3A)と腹部ダイナミックCT(別冊No.3B、C)とを別に示す。
- 最も考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105D020]←[国試_105]→[105D022]
★リンクテーブル★
[★]
- 56歳の女性。下腹部の違和感と膨満感とを主訴に来院した。 50歳で閉経するまでは月経痛が強く、月経時以外でも腰痛と排便痛とがみられた。身長156cm、体重60kg、体温36.8℃。脈拍84/分、整。血圧132/84mmHg。下腹部は膨隆し、恥骨上から臍下にかけて約8cmの柔らかい腫瘍を触知する。血液生化学所見に異常を認めない。免疫学所見 CEA 1.3ng/ml(基準5以下)、CA19-9 25U/m/(基準37以下)、CA125 88U/ml(基準35以下)。術前の骨盤部MRIのT2強調矢状断像(別冊No.2A)と造影T1強調失状断像(別冊No.2B)とを別に示す。手術が施行され、卵巣腫瘍と診断された。摘出された腫瘍の病理組織H-E染色標本(別冊No.2C、D)を別に示す。
- 考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105D019]←[国試_105]→[105D021]
[★]
- 60歳の男性。従来は周囲に対する配慮ができていたが、最近は著しく自己中心的な言動が目立つようになったことを心配した家族に伴われて来院した。 1年前から気力がなくなり、ぽーつとたたずんでいることが多くなった。自室内には、数か月前から収集し続けているペットボトルが山積みになっているという。
- 最も考えられる疾患はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105D021]←[国試_105]→[105D023]
[★]
[★]
- 英
- hepatocellular carcinoma, HCC, hepatocarcinoma, liver cell carcinoma
- 同
- ヘパトーム hepatoma
- 関
- 肝腫瘍、肝癌
特徴
- 外科的治癒切除を行っても、5年以内の再発率は約70%以上 ← 他の癌より高い。3年で50-60%とも
- リンパ節転移は少なく、肝内転移が多い ← 経門脈
- 多中心発癌が多い
- 肝細胞癌の約70-80%に肝硬変、10%前後に慢性肝炎を合併
疫学
- 原発性肝癌のうち肝細胞癌は95%を占める
- 男女比は3-4:1
- 死因では男性では3位、女性では4位である。
- 原発性肝癌の90%以上が肝炎ウイルス陽性である。
- 原発性肝癌の解検例の84%に肝硬変を合併している。
- 肝細胞癌の70-80%に肝硬変が認められ、10%前後に慢性肝炎の合併が見られる。
- 肝硬変から肝癌が発生する年間発生率はB型肝炎で3%、C型肝炎で7%である。
病因
- 病因の90%が肝炎ウイルスである。
- HCV(+) 75%、HBV(+) 15%、HBV(+)&HCV(+) 3%、TTV(+) 1-3%、アルコール性 3-4% (YN)
- その他
病理
- 肝細胞類似の細胞からなる上皮性の悪性腫瘍。多くが皮膜を有する。(SSUR.595)
- 多発性、多中心性
- 胆汁のために肉眼的に緑色に見える
- 壊死、出血しやすい。 → hemoperitoneum
病態
転移
症状
検査
超音波エコー
[show details]
造影CT
- ダイナミック造影CTでは動脈相で不均一な造影効果、門脈相、平衡相になるにつれ造影効果が低下する。(RNT.209) ⇔ 肝血管腫:造影効果が持続
- [show details]
- 被膜がある腫瘍に対しては造影効果が残存。(RNT.209)
前癌病変の造影CT
- SRA.479
- 肝細胞癌は多段階発癌により発生するという説が唱えられている。
- 腺腫様過形成(adenomatous hyperplasia AH)は肝癌とは異なる結節病変を形成するものである。
- 多段階発癌次の順に肝細胞癌に至るという;異型腺腫様過形成 → 肝細胞癌を内包する異型腺腫様過形成 → 高分化肝癌 → 中~低分化肝細胞癌(古典的肝癌)
- 多段階発癌の初期には門脈血の支配が多いが次第に肝動脈からの新生血管により支配されるようになる。
- すなわち、中~低分化肝細胞癌は肝動脈で支配される多血性肝細胞癌であり、高分化肝細胞癌は肝動脈の支配が比較的少ない。
- 造影CTにおいてもこれを反映し、高分化細胞癌では動脈相では造影効果が弱い(文献によっては乏血性で濃染しないとも)が、中~低分化細胞癌では高い造影効果が認められることになる。
MRI
- T1:等信号 低~高信号(YN.B-50)
- T2:高信号 ⇔ 肝血管腫のような著しい高信号は呈しない?
血管造影
腫瘍マーカー
- PIVKA-II:≦2cmの陽性率は25-30%
- AFP:≦2cmの陽性率は30%。肝細胞癌、卵黄嚢腫瘍、肝芽腫の腫瘍マーカー、炎症性肝疾患における肝再生の指標
診断
- 病歴、身体所見、血液検査所見(肝炎ウイルスマーカー、腫瘍マーカー、肝機能検査)、画像検査に基づいて判断する。
- 画像で確定診断される場合は組織診断を行わないように勧められている。 → 針生検に伴う重篤な合併症として,針穿刺経路播種(needle tract seeding)と出血がある。前者の発生頻度は1.6~3.4%とされている(ガイドライン1)
治療
。
治療アルゴリズム
- 肝癌診療ガイドライン 2017年版
- http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/examination_jp_2017
局所療法
手術療法
- 肝機能A,Bであって、腫瘍の数が1,2個の場合は腫瘍切除が適応となる。
- 再発肝癌であっても肝切除が標準治療となる(ガイドライン1 CQ19 再発肝細胞癌に対する有効な治療は?)
推奨
- ガイドライン1
- TA(C)EはOkuda分類I、II、Child A、Bの進行肝細胞癌(手術不能で、かつ経皮的凝固療法の対象とならないもの)に対する治療として推奨される。
- 化学塞栓される非癌部肝容積の非癌部全肝容積に占める割合と残肝予備能を考慮したTACEが推奨される。
- 高ビリルビン血症のない肝細胞癌破裂症例の治療には救急TA(C)Eは有効な治療法である。
禁忌
- ガイドライン1
化学療法
- 肝癌は抗癌剤に対する抵抗性が高い。肝癌患者は肝機能の低下が存在するため十分量の抗癌剤治療はできない。このようなこともあり、肝癌に有効な抗がん薬は少ない。
日本で使用できる薬剤
- ガイドライン1
肝移植
- 肝硬変に肝細胞癌を合併する場合は、多発最大径3cm・3個まで、単発5cmまで、遠隔転移・リンパ節転移・脈管侵襲なし
- ミラノ基準によれば、他の両性疾患と同程度の移植成績
- 肝機能不良でミラノ基準を満たすものは肝移植を考慮。
ガイドライン
- http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0018/0018_ContentsTop.html
国試
原発性肝細胞癌
- 英
- primary hepatocellular carcinoma
- 関
- [[]]