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多発性骨髄腫 | |
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分類及び外部参照情報 | |
多発性骨髄腫の病理写真
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ICD-10 | C90.0 |
ICD-9 | 203.0 |
ICD-O: | M9732/3 |
OMIM | 254500 |
DiseasesDB | 8628 |
MedlinePlus | 000583 |
eMedicine | med/1521 |
MeSH | D009101 |
多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ、 Multiple Myeloma (MM))は、血液癌の一種であり、骨髄で腫瘍性形質細胞が増殖し、さらにその産物として異常グロブリンであるM蛋白が血液中に出現し、多彩な症状を呈する。治療法としては、MP療法(メルファランとプレドニゾロン)やCP療法(シクロホスファミドとプレドニゾロン)などの化学療法や、自家造血幹細胞移植などがあるが、治癒は一般的には困難であり、予後は望ましくない。このため近年、欧米を中心に新規治療の開発がめざましく、サリドマイド(サレド)、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(ベルケイド)、サリドマイド誘導体レナリドミド(レブラミド)が新しい治療法として注目され、近年、本邦でも当局に認可された。
目次
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腫瘍性形質細胞(plasma cell)の増加により、モノクローナルな異常γグロブリン(M蛋白)を産生する。これにより総蛋白の上昇がおこり、赤沈促進が進み、過粘稠症候群を起こす場合もある。形質細胞が骨に浸潤することで高カルシウム血症をおこす。異常産生されるグロブリン軽鎖蛋白であるベンズジョーンズ蛋白(BJP)により腎障害もおこる。
多発性骨髄腫は多くの臓器に影響を与えるため様々な徴候が発生しうる。多発性骨髄腫の代表的な徴候には、高カルシウム血症(Calcium)、腎障害(腎不全)(Renal failure)、貧血(Anemia)、骨の損傷(Bone lesions)があり、それぞれの頭文字をとってCRABと表され、これらの症状があるものを症候性骨髄腫という。
多発性骨髄腫の徴候を発生頻度の高いものから順に示す。
多発性骨髄腫による骨の痛みは脊髄と肋骨にみられることが多く、運動することにより悪化することがある。同じ部分が持続的に痛む場合は、病的骨折を来している可能性がある。脊椎に病変がある場合は、脊髄圧迫を引き起こす場合がある。
多発性骨髄腫では、増殖した腫瘍細胞によってIL-6 が放出される。IL-6は破骨細胞を活性化する因子(OAF:osteoclast activating factor)としても知られ、IL-6によって活性化された破骨細胞が骨を吸収・破壊するため、多発性骨髄腫に侵された骨をレントゲン撮影すると、骨に穴が開いているように見える(打ち抜き像:"punched-out" resorptive lesions)。また、骨の破壊によって血中カルシウム濃度が高まり、高カルシウム血症や、それに起因する様々な症状が発生する。
多発性骨髄腫患者で発生しやすい感染症に、肺炎・腎盂腎炎・帯状疱疹などがある。肺炎の病原体としては、肺炎連鎖球菌・黄色ブドウ球菌・肺炎桿菌(はいえんかんきん)などがある。腎盂腎炎の病原体としては、大腸菌やグラム陰性細菌などがある。
多発性骨髄腫が発症すると、抗体の製造能力が低下する。そのため、免疫不全が引き起こされ、上記のような感染症のリスクが高まる。
急性腎不全も慢性腎不全も起こりうる。その一般的な原因としては、高カルシウム血症や、腫瘍細胞から異常産生されるグロブリン軽鎖による腎尿細管障害がある。その他の原因として、腎糸球体へのアミロイド蛋白沈着(アミロイドーシス)、繰り返す腎盂腎炎、腫瘍細胞浸潤などがある。
骨髄腫で認められる貧血は一般的には正球性・正色素性貧血である。骨髄における腫瘍細胞の浸潤とサイトカイン産生により、骨髄での赤血球産生が抑制されておこると言われている。
よくある問題として、高カルシウム血症による易疲労感・脱力感・意識障害がある。頭痛・視覚障害・網膜症は異常産生されたグロブリン蛋白によって血液の粘稠度が高まることにより生じうる(過粘稠症候群)。腫瘍細胞が脊柱管浸潤に浸潤すると、脊髄圧迫による根性疼痛・膀胱直腸障害がおこり、さらに進行すると麻痺を生ずる。また、アミロイド蛋白の蓄積によって末梢神経障害を生ずることもある(アミロイドーシス)。
蛋白分画,免疫蛋白電気泳動
症候性骨髄腫が治療適応である。MP療法(メルファランとプレドニゾロン)やCP療法(シクロホスファミドとプレドニゾロン)などの化学療法により一時反応することが多いが、その後、多くの症例で治療中に薬剤耐性を獲得するため、一般的に治癒困難である。予後は症例によりさまざまであり、生存期間は2~3ヶ月から10年以上と幅広いが、平均生存期間は3〜4年である。また、かつては再燃時や難治例に対し用いられていたVAD療法(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)も早期からの適用が有効であるとの報告がなされている。適応がある症例では自家造血幹細胞移植が行われており、平均生存期間は4〜5年と幾らかの延長を認める。このように、治癒困難で予後が望ましくないことから、近年、欧米を中心に新規治療の開発がめざましく、更なる予後改善が期待されている。本邦においても、2006年にプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(ベルケイド)、2008年にサリドマイド(サレド)、2010年にサリドマイド誘導体 レナリドミド(商品名レブラミド)が当局に認可され、使用されている。
IgM型免疫抗体産生細胞であるIgM産生B細胞が腫瘍性に増殖する悪性腫瘍。病態は、IgMの増加によって血液の粘りが強くなる過粘稠症候群を起こす。症状は、過粘稠症候群による眼底出血、等がある。検査は、血液検査ではIgMが異常高値を示す。治療は、腫瘍細胞に対してMP療法、CP療法、フルダラビンなどの化学療法を行い、過粘稠症候群に対して血漿交換療法を行う。血漿交換療法は、血液のうち細胞成分を除いた液体部分の成分を交換する治療で、大量のIgMを取り除くことで粘度を正常に戻して症状を防ぐ。
かつては良性単クローン性ガンマグロブリン血症と呼ばれた疾患である。多発性骨髄腫やアミロイドーシスに移行する場合もある。骨病変、高カルシウム血症など多発性骨髄腫に特有な症状は認められない。BJPを認める症例も極めて稀である。厳重な経過観察が必要である。
アミロイドーシス(amyloidosis)とはアミロイドと呼ばれる蛋白が全身の臓器に沈着する疾患である。原発性アミロイドーシスは特定疾患(難病)に指定されており、心アミロイドーシスを合併すると予後は特に不良である。反応性AAアミロイドーシスでは基礎疾患の治療により改善を期待できるが、他の病型では予後を変える治療法はなく、対症療法のみである。近年、全身性(AL型)アミロイドーシスに自家造血幹細胞移植が有効であると報告され、本邦においても一部施設で行われている。
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β2ミクログロブリン (mg/L) |
5.5 | Stage III | ||
Stage II | ||||
3.5 | Stage I | |||
0 | ||||
0 | 3.5 | |||
アルブミン(g/dL) |
stage1 | 血清β2MG<3.5mg/lかつ |
血清Alb≧3.5g/dl | |
stage2 | 1,3以外(血清β2MG :3.5<,<5.5もしくは血清β2MG<3.5かつAlb<3.5) |
stage3 | 血清β2MG≧5.5mg/l |
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